愛社精神は必要か?高める方法や社員が働きやすさを感じる条件を解説

愛社精神は、必要であると考える人もいれば、不要であると考える人もいます。
「会社のことを好きでないと仕事に対するモチベーションが上がらないし、仕事の時間が苦痛になってしまう」など愛社精神を重視する考えがある一方、「1つの会社に生涯を捧げる時代でもないし、愛社精神の有無はパフォーマンスに影響しない」という考えもあります。
この記事では愛社精神が高いことで企業が得られるメリットやデメリットを紹介しながら、愛社精神がなぜ必要なのか、高めるための施策や方法について解説します。
愛社精神とは

愛社精神とは、従業員が自分が勤務している会社のことを愛する気持ちで、仕事に誇りをもっている状態を指します。
愛社精神が高いと「会社に貢献したい」という気持ちが芽生え、高いパフォーマンスが期待できるといわれています。終身雇用が一般的な時代においては、勤続年数に伴っての昇進・昇給が愛社精神を育むと考えられていました。
単純に好きか嫌いかというだけでなく、会社が描いているビジョンや理念に共感したり、上司や同僚と切磋琢磨しながら仕事に打ち込める環境がある場合に愛社精神は高まりやすく、会社全体に対する総合的な評価として理解するのがよいでしょう。
一方、あまりにも愛社精神が高すぎたりやみくもに会社を善とする思考に陥ったりしてしまうと、客観性に欠けた判断をしてしまうこともあるでしょう。
愛社精神が高いことによるメリット

では実際に、愛社精神が高いことによるメリットとしてどんなものが挙げられるのでしょうか。いくつか具体的にピックアップして紹介します。
離職率の低下
愛社精神が高いことにより、離職率が下がることが期待できます。
自分の会社を愛しているということは会社に対する不満が少ないということでもありますから、平均勤続年数も高くなります。その分新しい人材を採用するコストや1から教育し直すコストも削減できるので、大きなメリットであることが分かります。
また従業員にとっても、1つの会社で満足しながら長く働き続けることで、任される仕事の裁量が増えたり昇進や昇給のチャンスが増えたり、メリットを感じやすくなります。

モチベーションの向上
愛社精神が高いと、仕事に対するモチベーションも上がりやすくなります。
仕事に対するモチベーションが向上することで、生活のためと嫌々出勤している人も、仕事に喜びや楽しみを見出して明るくポジティブに働いてくれるようになるでしょう。従業員同士のコミュニケーションが活発化し、お互いに良い影響を与えるかもしれません。
会社の業績が上がったり後輩が成長したりすることを素直に喜べるようになり、「仕事=楽しい」と思ってもらいやすくなります。
成果の向上
愛社精神が高くモチベーションが向上することにより、結果として仕事のパフォーマンスも向上する傾向にあります。
会社の成長に貢献したいと思うことで自然と自分なりの目標を立てるようになり、達成のために上司や同僚と協力しあいながら工夫して業務に当たるようになります。指示待ちの時間が減り、自主性をもって能動的に仕事をしてくれるようになります。
また、ポジティブで活発な従業員が増えることで、取引先や顧客からの評判が改善する効果も期待できます。
愛社精神が高いことによるデメリット
反対に、愛社精神が高いことによるデメリットはあるのでしょうか。一概に「愛社精神が高い=いいこと」と言い切れない理由についても解説します。
客観的な視点を失う
愛社精神が高すぎることで自社に対する客観的な評価ができなくなり、必要以上に自社評価を高くしてしまうことが考えられます。同業他社の優れた情報を入手しなくなったり、良いものを良いと認めず否定的になったり、固定概念に縛られるようになってしまいます。
それによって大きなビジネスチャンスを逃したり、成長のきっかけを失ったりするようなこともあるでしょう。自社の理念やビジョンを愛することは大切ですが、それが100%正しいと思い込まないようにすることも大切です。
変化に柔軟に対応できない
自社の今の状態が既に素晴らしく、改善する必要がないと思ってしまうくらい偏った愛社精神があると、変化に対し柔軟に対応しづらくなってしまいます。慣習や前例に縛られ、時代に合わせた新しい考え方や取り組みから置いていかれてしまうこともあるでしょう。
結果として少しずつ顧客が離れたり、新興企業に追い抜かれてしまったりすることもあります。自社を愛しているとしても、常にハングリー精神をもって改善ポイントを探していく姿勢が大切です。
社員に働きやすさを感じてもらうための3条件

では、実際に愛社精神を高めるために職場に必要な条件として、どんなものがあげられるのでしょうか。従業員はどんな会社で働きたいと思っているのかについて考え、自社と比較してみることも大切な第一歩です。
具体的な施策については次の章で解説します。
適切な人事評価
転職する理由に「報酬を上げたい」「人事評価や査定結果に納得できない」が多く挙げられていたことからも、人事評価が愛社精神を左右することが分かります。
客観性のある人事評価システムが採用されていて、公平かつ平等に評価してもらえるのであれば仕事に対する自己反省がしやすくなるでしょう。
しかし、上司からの一方的な評価や好き・嫌いで決まってしまうような不公平な評価体制になっている場合、不満が溜まりやすくなってしまうものです。
適切な評価体制とコミュニケーションが大切です。
良好な社員間の人間関係
「上司や同僚との人間関係が合わない」ことを理由として転職を考える人が多いことから、社員間の人間関係も愛社精神に影響することが分かります。
パワハラ・セクハラが絶対にNGであることはもちろん、日々のちょっとした態度や理不尽な出来事に疑問を抱き、仕事へのモチベーションを失ってしまう社員も多いものです。
風通しがよく何でも相談できる環境が整っている会社であれば、ポジティブな提案もネガティブな悩みも話しやすく、自分も他の従業員に親身になろうと考えやすくなります。
会社の理念やビジョンへの共感・浸透
給料や人間関係に満足していても、会社の理念やビジョンに共感できない場合、仕事の意義を見失いやすくなります。
「自分がやっている仕事は世の中のためになっているのか?」
「人の足元を見る商売ばかりやっていていいのだろうか…」
と考えてしまい、人に胸を張って誇れる仕事ではないと結論づけることにより、退職してしまう人もいるでしょう。愛社精神を大きく左右する項目であることが分かります。
愛社精神を高める方法・施策

愛社精神を高める施策として、どのようなものが考えられるでしょうか。それぞれ項目別に、具体的なアクションを紹介します。
適切な人事評価・配置を行う
1つ目に、人事評価や配置体制について適切なシステムがあるか見直します。従業員の働きぶりを正当に評価すると共に、働きやすい会社であるよう意識してみましょう。
人事評価制度を見直す際は、自社が何を重視したいかを改めて言語化するのが近道です。
例えば、個人ごとの能力を重視する場合、「能力評価」ができるよう整えていくのがよいでしょう。会社の成長への貢献度を重視する場合、「業績評価」を採用するのがおすすめです。仕事に対する姿勢や意欲を重視したい場合、「情意評価」を採用します。
また、従業員が持つ才能や能力を最大限活かせるよう、人事配置に気を配るのも愛社精神に大きく貢献します。
経歴・実績・評価などの情報を収集し、毎年蓄積しておくことでタレントマネジメントは格段にやりやすくなります。また、定期的に面談の機会を儲けるのもよいでしょう。全てを叶えるのは難しくとも、従業員本人からの要望や配置希望に聞く耳を持つことも大切です。
また、なかには「立候補制度」を採用している企業もあります。次年度の配置希望がある従業員がレポートを作成して経営層にアプローチし、過去の実績や評価、受け入れ先の部署からのオーダーなども加味しながら人事異動を決めていくシステムです。

社員の人間関係を良好にする
2つ目に、社員の人間関係を見直します。ギスギスした空気がないか、相談しやすい環境が整っているか、上司から(または部下から)疎まれている人がいないか、トータルでチェックしてみましょう。
人間関係を考える上で大切なのは、マネジメント層の教育です。本社による管理はもちろん、現場で直接従業員を顔を合わせるマネジメント層こそ愛社精神を左右するポジションにいると考え、教育体制を整備していくことが肝心です。
また全社的なコミュニケーション活性化施策も重要です。社内コミュニケーションが活発な会社は、お互いの成長を喜んだり困っていることを相談したりしやすく、愛社精神が高まりやすくなります。

理念やビジョンを浸透させる
3つ目に、理念やビジョンを浸透させられているか見直します。入社面接の時に少し会社のHP上で理念をチェックしただけで、入社後は日々の忙しさに押されて「仕事をする意義」を見失っている人も少なくありません。
社内報や社内イベントを用いて浸透させるのも1つの手段です。
社内イベントは、社内コミュニケーションを活性化させるだけでなく、会社の理念やビジョンを再認識させるチャンスでもあります。日常業務のなかであまり意識しない会社の方針や、今後の方針について話すいいきっかけにもなるでしょう。
参加に当たって動機付けをしっかり行い、意義ある時間として意識させる必要があります。

愛社精神に関する注意点

ここでは、愛社精神を高めるに当たって抑えておきたいポイントについて解説します。陥りやすいミスや失敗例も紹介しますので、逆効果にならないよう注意しましょう。
愛社精神を高めることを強要しない
愛社精神は、決して人から強制されることで高まるものではありません。
「会社に貢献することが美徳である」など、愛社精神が高いこと=善である、という考え方に囚われてしまうと、いつの間にか従業員に愛社精神の高まりを期待しすぎてしまうものです。
そうなってしまうと、プレッシャーを感じて却って居心地が悪くなってしまったり、愛社精神がある人とない人との間で必要以上に確執が生まれたり、デメリットが生じてしまいます。
愛社精神は仕事をするうえで大切なものではありますが、あくまでも「従業員が会社に対して抱く評価である」ということを忘れないように心掛けましょう。
社員が何を望んでいるのかを考える
社員が会社に対して何を望んでいるのか、考えてみることも大切です。
高い給料こそが第一だと考えて舵取りを行っても、残業や休日出勤が多くワークライフバランスを重視できない会社だと分かれば転職されてしまうことも増えるでしょう。逆に休みが取りやすい環境であっても、昇給や昇進のチャンスがほとんどなく、能力に対して正当な給料が貰えていないと感じられてしまうと、同様に離職に繋がります。
何を求めて会社に入ってきたのか、今後どんなキャリアを築いていきたいのか、人によって考えが変わるポイントでもありますが、細やかなフォローとヒアリングを重ねていくことで方針が定まるかもしれません。
社員とのコミュニケーションを定期的に行う
社内コミュニケーションが一部の範囲内に固まらないよう、部署や職種に囚われず交流する機会を設けます。また、役職・年代・男女の枠を取り払えるようなコミュニケーションを意識するのもよいでしょう。
従業員にとって経営層は特に、とっつきにくく相談しづらい存在であるように感じるケースが多いです。会社の方針を示す機会を増やすことはもちろん、経営層の方からも従業員の不満や相談を吸い上げる行動を取るのがおすすめです。
愛社精神は地道に醸成していくもの
愛社精神が高ければ、会社の業績向上や同僚・後輩の成長が喜ばしく感じられるものです。仕事が楽しくなり、プライベートとのメリハリもつきやすくなる効果も期待できるでしょう。
しかし、愛社精神は一朝一夕で形成できるものではありません。長期的な目線で戦略を立て、計画・行動・振り返り・改善を繰り返していくことにより、少しずつ効果が現れるものです。愛社精神が高い人を地道に増やしていくことができれば、離職率や業務効率に変化が現れるかもしれません。
多くのメリットを受けられるよう、人事評価体制やコミュニケーション体制を見直し、従業員にとって働きやすい会社であるよう工夫・改善していきましょう。
また、ourly magazineでは、インナーコミュニケーションに関する施策をさまざまな企業様にインタビューさせていただいていますので、ぜひご覧ください。
