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エンパワーメントとは?意味・使い方・導入するメリットを分かりやすく解説

エンパワーメントとは、部下に裁量権や権限を委譲することで、組織のパフォーマンス向上を目指す施策を指します。

企業がエンパワーメントをうまく導入できると、意思決定のスピードが上がるなど組織力の強化につながります。しかし、基本的な知識やポイントを押さえておかないと、従業員の負担が増すだけという事態になりかねません。

そこでこの記事では、エンパワーメントの意味や注目されている背景、導入するメリット・デメリットと、導入する手順とポイント、企業事例について詳しく解説します。

目次

エンパワーメントとは

エンパワーメントとは、部下に裁量権や権限を委譲することで、組織のパフォーマンス向上を目指す施策のことです。

部下の自発的な行動を促進しやすく、指示待ち人間ではない自主性あふれる組織にできることがメリットです。また、意思決定のスピードも上がるので、トレンドに合わせて柔軟な決定をしたいときや万が一のトラブル発生時に役立ちます。

まずはエンパワーメントに関する基本的な概要をチェックしておきましょう。

ビジネスにおけるエンパワーメントの意味

ビジネスにおけるエンパワーメントには、「権限を委譲すること」「部下に裁量権を持たせること」という意味があります。

「権限委譲」とは上司が持つ業務上の権限を部分的に部下へ委譲することであり、部下が毎回上司の決定を待つ時間を短縮できます。また、稟議を回したり会議に参加したりする頻度が下がるので、事務的なロスも少なくなるでしょう。

また、「能力開花」の意味合いでエンパワーメントというキーワードを使う企業も多く、権限の委譲が個人の能力を引き出すことにつながるとする考え方もあります。

エンパワーメントを導入する目的

エンパワーメントを導入する目的は、部下の育成とマネージャー陣の工数削減にあります。

部下が自ら決定しなくてはいけない場合、「自分がマネージャーだったらどうするか」と視点を広げる必要があります。多角的な意見を捉えながら最適解を探ったり、トラブルやクレームの芽がないかチェックしたり、やるべきことが多くなるのも特徴です。そのため部下の成長につながりやすいとされており、育成のためにエンパワーメントを導入する企業が増えています。

また、細かな決定を委譲できれば、マネージャーの手が空きやすくなります。その分組織づくりやより重要な決定などに時間を割きやすくなり、コア業務に集中しやすくなるでしょう。

組織全体のパフォーマンス向上に、エンパワーメントが役立つとわかります。

エンパワーメントが注目されている理由とは

ここでは、エンパワーメントが注目されるようになった背景を解説します。なぜ従来のトップダウン型組織からの脱却を目指す企業が増えているのか、根本的な理由を探っていきましょう。

VUCA時代への対応

VUCA時代とは、未来の予測が難しい時代のことを指します。「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字からきている造語であり、ビジネスをするうえでのリスクとしてみなされることが増えました。

特に、インターネットやSNSの発展に伴い、トレンドの入れ替わりが激しくなっていることが要因として挙げられます。また、グローバル化が進んだことで多種多様な考え方・文化が入り混じるようになり、ターゲットが定まらなくなっていることも影響しています。

このようなVUCA時代を生き残るにはスピーディーな意思決定が欠かせません。だからこそ、エンパワーメントが重視されるようになっているのです。

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人手不足への対応

少子高齢化に伴う労働人口不足が深刻化している昨今、人手不足に悩む企業は珍しくありません。その場合、意思決定を担うマネージャー陣に負担が集中しやすく、かつ現場で働く従業員はいつまでもルーティンワークに忙しくしていてスキルアップできない、などの問題が生じます。

一方、エンパワーメントを導入できれば現場に一定の裁量を委譲できるため、マネージャーの工数を削減できます。また、新人の早期戦力化など積極的な人材育成ができるようになるので、少ない人員でも効率よく仕事を回しやすくなるのです。

新規採用に代わる人手不足対策として、エンパワーメントが注目されています。

エンパワーメントを導入するメリット

ここでは、改めてエンパワーメントを導入するメリットを解説します。なぜ部下に権限を委譲することが得になるのか、チェックしてみましょう。

組織の意思決定スピードが上がる

小さな決定を現場に任せることができれば、組織の意思決定スピードが上がります。上司の判断を待つため手が止まる時間が少なくなり、時間のロスを最小限にできるでしょう。

また、トラブル発生時にすぐ動けるようになり、二次クレームを防ぐなどのメリットも生じます。スピーディーな行動を意識したい企業にこそ、エンパワーメントが最適なのです。

管理職がマネジメントに専念できる

本来であれば意思決定はマネージャーの仕事とされていますが、マネージャーの業務内容は多岐に渡ります。だからこそ意思決定のボリュームが多いと他に手が回らず、最適な組織運営ができなくなるケースも多いでしょう。

反対に、エンパワーメントが導入されていてマネージャーに任せられる意思決定が最小限で済む場合、その分の時間をマネジメントに活かせます。部下の個性を知りながら適材適所な人材配置案を出したり、個別のミーティング機会を多くしてコミュニケーション機会の向上を図ったりできるので、組織の安定につながります。

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従業員のリーダーシップや管理能力を醸成できる

現場の従業員に裁量権を与えることは、会社の決定や自分の業務に責任感を持たせるきっかけになります。結果的にリーダーシップを発揮する人が増えたり、意思決定を後押しするデータ収集に積極的な人が出てきたり、さまざまな成長を後押しできるでしょう。

なかには今後のリーダーになることが期待できる人材が出てくるかもしれません。次世代リーダーや管理職を育成したいときにこそ、小規模な範囲からでもエンパワーメントを導入すべきことがわかります。

エンパワーメントを導入するデメリット

エンパワーメントの導入にはさまざまなメリットがありますが、一方でデメリットも存在します。下記では代表的なデメリットを解説するので、導入後のギャップ予防に役立てましょう。

企業理念の浸透不足による方向性のズレ

企業理念や行動指針が定着していない状態でエンパワーメントを導入してしまうと、個人の主観に応じて意思決定の軸がブレてしまいます。会社のビジョンとズレた方向性に走ってしまったり、経営層が意図しない決定がおこなわれてしまったりすることも多いです。

また、意思決定をする現場担当者ごとに意見がぶつかって小さな争いになるなど、思わぬトラブルが増えるかもしれません。エンパワーメントを導入する際はまず企業理念を正しく伝えること、そのうえで共感してもらい深く浸透させることが大切です。

経験不足による判断ミス

意思決定の経験が不足している場合、判断ミスや失敗が起きる可能性があります。また、ミスやトラブルが起きたとしても現場で解決できてしまい、上層部まで情報が上がってこないこともあるでしょう。結果として現場とマネジメント層の溝が深くなったり、事業に損失が出たりすることもあるのです。

ある程度失敗が生じることをよしとするスタンスを構築するためにも、最初のうちは大きな意思決定まで任せないのが理想です。また、部下に任せきりにせず適切にフォローするなど、過度なプレッシャーを与えない配慮もしていきましょう。

業務過多による生産性の低下

既に現場に任せられている業務が多くパンク間近な状態でエンパワーメントを導入すると、業務過多による生産性の低下が起こります。優先順位を見誤ってトラブルが発生したり、業務が終わらず過度な残業・休日出勤を招いたりすることがあるかもしれません。

また、権限委譲に向いていない従業員がいるのも事実で、心理的な抵抗を示されることもあります。「意思決定はマネージャーがやってほしい」「自分たちが意思決定するなら何のためにマネージャーがいるのか」という反発を招くケースもあるので、導入の意図を伝えたり現場の業務効率化を進めてから始めたり、対策していきましょう。

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エンパワーメント経営に取り組む3つの方法

エンパワーメント経営は、従業員一人ひとりに権限と責任を与え、自律的な行動を促進する経営手法です。これにより、個々の創造力やパフォーマンスが最大限に発揮され、企業全体の成長が期待されます。

目標の明確化と共有

従業員が自分の役割を理解し、効果的に行動するためには、企業全体の目標を明確に定めることが重要です。さらに、この目標を全社員と共有し、組織のビジョンと各自の貢献を結びつけることで、社員が自発的に成長し、主体的に業務に取り組む姿勢が強化されます。

トレーニングとスキルアップの支援

エンパワーメントを実現するためには、従業員が必要なスキルや知識を持っていることが前提です。継続的な教育やスキルアップの機会を提供し、学び続ける文化を作ることで、従業員は自信を持ち、自己判断でより良い意思決定を行うようになります。

フィードバックと信頼関係の構築

定期的なフィードバックを行い、従業員が自身のパフォーマンスを振り返る機会を与えることで、さらなる成長が促されます。また、上司と部下の間に信頼関係を築くことも重要です。信頼関係が強固であるほど、従業員は新しい挑戦を恐れず、自律的に行動できるようになります。

エンパワーメントの導入手順

ここでは、ミスマッチのあるエンパワーメント導入にならないよう、手順を解説します。急ぎすぎるあまり一段飛びの導入になってしまわないよう、まずはやるべきことを可視化していきましょう。

1. 計画

まずはエンパワーメント導入に際し、計画立案をおこないます。どの仕事をどこまで任せるか、どの程度の予算まで権限を委譲するかなど、細かなルールを決めましょう。また、現場の業務量や人員数を比較しながら、権限を委譲したときに過度な負担にならないか検証することも大切です。

まずは部下の能力で対応できる範囲からスモールステップで任せていくことを検討するのがポイントです。また、意思決定後の報告に関するフローも構築し、混乱を最小限にする方法もあります。

2. ブリーフィング

ブリーフィングとは、簡易的な報告・説明を意味する言葉です。現場に任せた意思決定はそのまま放置せず、管轄のマネージャーに適切かつスピーディーに報告してもらうようルールづくりをしていきましょう。

最初のうちはマネージャーが細かくチェックしながら、最適解でないものがあれば細かく指導していくのがおすすめです。繰り返していくことで部下に判断基準が伝わるようになり、やがて自走する組織となっていくでしょう。

3. モニタリング

マネージャーは定期的に進捗状況をモニタリングし、意思に反する方向で進んでいないかを確認します。計画通りに進んでいない場合は指導やテコ入れをするなど、マネージャーとしての権限を発揮しましょう。

問題なく進んでいるようであれば、意思決定に関わった現場の従業員を褒めるなど、次につながる行動にするのが大切です。成功事例も失敗事例もナレッジとして蓄積するためにも、「任せっぱなし」になることを避けていきます。

4. 評価

PDCAサイクルを回しながら、エンパワーメントによって得られた効果を可視化します。個人の意思決定が正しかったか(間違っていたか)よりも、エンパワーメントの導入自体が正しかったかを検証しましょう。

万が一当初のイメージとズレがあれば、委譲の範囲や担当者を変えるなど工夫します。また、マネージャー側によるフィードバックの質なども見直し、改善していくことも大切です。

エンパワーメントを導入する際のポイント

エンパワーメントの導入時には、特に下記について注意しましょう。ここでは成功させるためのポイントを解説するので、ぜひご参考にしてください

目的やビジョンを共有する

エンパワーメントを導入する際は、あらかじめ目的・ビジョンを共有します。なぜ今のタイミングでエンパワーメントを導入するのか、エンパワーメントの導入により自社のどんな課題が解決されるのか、根本的な問題意識を共有しておきましょう。

これが不十分だと、「マネージャーが楽をするために仕事を放棄した」「現場に任せっきりにするつもりか」と反発を招く可能性があります。現場にとってもメリットのある施策だとわかってもらうためにも、しっかり時間をかけて伝えることが大切です。

業務範囲を明確にしておく

あらかじめ、権限委譲する業務範囲を明確にしておきます。どの範囲まで・予算いくらまで・どの部署のどの役職まで、など細かくルールづくりしておけば思わぬ意思決定がされてしまう事態を防げます。万が一失敗があったときのフォローアップもしやすくなるでしょう。

また、決定権を持つ人のルーティンワーク負担を軽減するなど、実行後のことを考えることも大切です。特定の人にばかり負担が集中したり、属人的になったりしないよう対策していきましょう。

心理的安全性を担保する

なお、失敗を許容することも大切です。重篤なトラブルにつながる決定の委譲は避け、ある程度トライアンドエラーになることを前提に業務範囲を決めましょう。失敗して当然だというスタンスを構築できていれば、部下のチャレンジ精神を折ることなくエンパワーメントを導入できます。

反対に、マネージャーではない人にこれまでのマネージャーと同等の仕事を任せてしまった場合、反発を招きます。また、マネージャーと同等の責任を負ってしまうように感じて却って消極的になるパターンもあるので、特に注意が必要です。

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エンパワーメントを導入している企業事例

最後に、エンパワーメントを導入している企業の事例を紹介します。他社でどのような仕組みづくりをしているか参考にしながら、自社に役立つ要素がないか探っていきましょう。

星野リゾート|ユニット・ディレクター制度

URL:星野リゾート 採用サイト【公式】 | CAREER PATH SYSTEM

星野リゾートでは、年2回の立候補制度で選出されるユニット・ディレクター制度を導入しています。ユニット・ディレクターとなった従業員は経営者直下にある31のユニットのリーダーとして機能できるようになり、自律的な小集団組織となれるよう工夫されています。

業績に応じた一方的な指名ではなく立候補がベースとなっているため、従業員による自発的なキャリアアップができるようになりました。経営の意思決定にも参加しやすく、会社の行く末を自分事として捉える従業員が増えています。

Google|全社員への情報開示

URL:Google について、Google の文化、企業ニュース

Googleでは、全社員に対し自社情報を開示し、権限の委譲を進めています。会社内の決定事項・今後の展望・MVV・経営状態など詳細に至るまでが公開されているので、エンパワーメントを導入して以降も大きな混乱が起きませんでした。

また、経営層の意図に大きく反する意思決定もされず、考えの違いが起きても積極的に意見交換する風土が形成されています。

スターバックスコーヒー|脱接客マニュアル

URL:スターバックスで広がる可能性

スターバックスコーヒーではあえて接客マニュアルを作らず、現場で働くスタッフに権限を委譲しています。その対象は学生アルバイトなども含まれており、目の前の顧客にとって最適だと思われることであれば何でもできるように社内体制を変えました。

結果、多くのスタッフが顧客ファーストの接客をするよう心がけるようになり、接客のレベルが向上しています。働きがいのある企業として認知されるだけでなく、接客が心地よい喫茶店としてブランディングすることも叶いました。

エンパワーメントの導入で社員一人ひとりが判断する組織へ

エンパワーメントを導入すれば、マネージャーの工数を最小化しながら現場の従業員を育成することができます。意思決定のスピードが上がるので、機会損失になることなく効果的な行動ができるようになるでしょう。

なお、エンパワーメント導入前は社内報を活用して自社のビジョンを広く訴求することが大切です。方向性がブレていると意思決定もブレてしまうことが多いので、まずは広く情報共有できるツールを使って共感を得ておくことがポイントです。

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この記事を書いた人

Kanei Yoshifusaのアバター Kanei Yoshifusa ourly株式会社 コンサルティングセールス・組織開発チーム

前職は店舗ビジネス向けの業務効率化SaaS事業を展開する企業でCSに従事。
その後、ourly株式会社に参画。
200社以上の企業に組織課題解決の提案、現在30社の組織開発を支援。
富山県上市町出身。趣味は筋トレ/声マネ/滝行。

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