セクショナリズムとは?生まれる理由と対策方法や企業事例を解説
セクショナリズムとは、主に企業や組織の中で自分が所属する部署、チームの利益だけを優先する状態を指します。外部からの干渉を排除したり、非協力的な態度をとったりするため、時には組織全体の利益や生産性に影響する可能性のある危険な状態です。
本記事では、2種類のセクショナリズムを2種類について解説し、企業に及ぼす弊害や生まれる理由を追及します。記事後半では、実際にセクショナリズムに悩んでいる企業担当者の方に向け、対策方法や企業事例を詳しく解説します。
セクショナリズムとは
セクショナリズムとは、主に企業や組織の中で自分が所属する部署・チームの利益だけを優先する状態を指します。
「自分がいるチームのことだけ考えていればよい」というマインドになるため他の部署や会社全体の利益について配慮することが少なく、非協力的な姿勢になることも少なくありません。特に縦割り型の組織や社内競争が苛烈すぎる企業で起きやすい考え方であり、全体の効率を度外視してしまうため非生産的になるケースもあるので注意が必要です。
セクショナリズムの2つの種類
セクショナリズムには、大きく2つの種類が存在します。下記でそれぞれの特徴を解説するので、参考にしてみましょう。
無関心型・非協力型セクショナリズム
無関心型・非協力型セクショナリズムは、「自分が所属するチーム以外のことはどうでもよい」という考え方のことを指します。そもそも他のチームについて関心がなく、協力を依頼されても面倒な気持ちが勝ってしまい積極的な姿勢を示すことがありません。
反対に自分が所属するチームについては積極的であり、自分事として考える性質が強いです。そのため、チーム内での評価が高くなりやすい一方、他チームからは「影が薄くあまり目立たない人」と思われることが多いです。
批判型・排他型セクショナリズム
批判型・排他型セクショナリズムは、「自分が所属するチーム以外を排除しよう」という考え方のことを指します。自分の立ち位置をより優位にしようとするあまり、他を蹴落とそうとする姿勢が強く現れます。
競争的な性格であるため個人の成果が重視される営業職などに適性がある一方、チームワークを優先しなければいけないシーンや協力が欠かせない職種には適性がありません。時には手段を選ばず行動してしまうこともあり、周りを傷つけてしまう可能性もあります。
セクショナリズムが企業に及ぼす弊害
セクショナリズムは、いずれの場合でも企業にとって大きな弊害となります。下記でどのような弊害が起きるか、代表例を紹介します。
同調圧力により組織が停滞し従業員にストレスが生じる
セクショナリズムは同調圧力が強いという特徴があり、自分と意見の異なる人を徹底して排除しようとすることもあります。そのため同調圧力を感じた同僚・部下が意見を発信しづらくなり、組織が停滞してしまうことも少なくありません。
また、「反対意見を出すと職場いじめに遭う」「常にイエスと言っていないと上司の機嫌が悪くなる」などマイナスのイメージが根付いてしまい、周囲にストレスを与えることもあるでしょう。風通しの悪い雰囲気になりやすく、社内コミュニケーションも円滑に進まなくなるので注意が必要です。
部署間での対立や業務妨害に繋がる
セクショナリズムが強くなると、部署間での対立や業務妨害につながります。
部署ごとで仕事を押し付けあって非効率が生じたり、トラブルやクレームを「他部署のせいだ」と考えて責任逃れをしたりすることで、さらに大きな問題が生じる可能性が高くなります。また、他部署のミスに気づいていてもあえて見逃すこともあり、大きな対立を生むケースも出てくるでしょう。
これは部署間だけでなく、役職間・地域間・職種間でも同じようなことが起こり得ます。
組織全体を意識できなくなり生産性が低下する
自チームだけの利益を優先するあまり、組織全体の利益を追求できる総合的な生産性が下がってしまうケースもあります。非効率が生まれて余計な残業・休日出勤が生じたり、クレームのカバーにばかり時間と労力がかかったりすることもあるでしょう。
また、他部署のことがわからず重複した設備投資をしてしまったり、異動したくないが故に新たなチャレンジを避けたりすることも出てきます。
顧客視点を見失い企業の信頼を失う
自分のことばかり考えてしまうセクショナリズムは、顧客視点を見失いやすく、企業全体への信頼を損ねる要因となります。クレームが生じたときにいち早く対応することなく「〇〇部署のせいだから」と考えて放置することでどんどん対応が後手になり、二次クレームにつながることも少なくありません。
顧客は個人ではなく企業への信頼を重視することが多いので、ゆくゆくは収益悪化など重篤な課題に発展してしまいます。セクショナリズムが企業にとって大きなマイナスとなる理由は、信頼の失墜にあると言えるのです。
セクショナリズムが生まれる理由
ここからは、セクショナリズムが生まれてしまう理由を解説します。下記に該当する部分があれば、表面化していないだけで自社にセクショナリズムがいるかもしれません。
個人の性格だけでなく組織の体制がセクショナリズムを生んでしまうケースもあるので、注意してチェックしてみましょう。
強い縄張り意識
部署間で強い縄張り意識があり、他部署からの関与やアドバイスを嫌う風潮が強いと、セクショナリズムの考え方が根付いてしまいます。
例えば、部署合同で実施する会議の際に経営層から「どの部署が担当の業務か」「どの部署の責任なんだ」と追及されるような場面があれば、当然縄張り意識が強くなるでしょう。同様に、権限の及ぶ範囲が完全に分断されている組織体制の場合も、縄張り意識の強化を助けてしまいます。
ジョブローテーションが少ないことによる視野の狭まり
ジョブローテーションが少なく、10年以上同じ部署で同じ働きをするだけの会社に在籍していると、どうしても視野が狭くなりがちです。特定の分野に関する知識・経験に長けているプロフェッショナルであったとしても、全体を俯瞰して考える視点やゼネラリストとしての思考が身につかず、偏った意見になってしまうことも少なくありません。
人事異動は一見従業員に負担のかかる制度であると思われがちですが、会社を活性化させる効果もあることに注目しておきましょう。
競争に繋がる評価制度
部署同士・従業員同士の競争を評価し、実績の有無次第で厳しいインセンティブを与える企業には、セクショナリズムの考え方が根付きやすくなります。「自分がより優位に立つために他社を蹴落としてでも勝ち上がりたい」という気持ちが育ってしまうことも少なくありません。
また、相対評価だけによる給与査定なども、セクショナリズムの要因となることが多いです。個々の強み・弱みを可視化しながら評価することが、セクショナリズムの打開策として有効です。
セクショナリズムの対策方法
万が一セクショナリズムが発生しても、根気よく対策していくことで改善することがあります。また、下記の手法を導入してセクショナリズムを予防している企業もあるので参考にしてみましょう。
ジョブローテーションの実施
ジョブローテーションを実施し、多彩な仕事・考え方・従業員のタイプに触れさせて視野を広げるのが効果的です。同じ事象でも部署や働き方次第で意見が異なることを理解しておけば、相手の話に自然と耳を傾けるようになるでしょう。
また、他部署で働く同僚の顔を認識することで、いざというときの連携やコミュニケーションが取りやすくなることもメリットです。風通しのよい組織づくりの一歩として、導入してみましょう。
部署をまたぐコミュニケーションの促進
部署をまたぐコミュニケーションを取り入れ、普段から交流する癖をつけるのもおすすめです。
合同会議や社内イベントなど大規模かつ業務に直結するようなものから、部署間ランチ・社内SNSなど小規模にできるものまで内容はさまざまです。普段直接やり取りする人以外にも目を向けることができれば広い仲間意識が育ち、会社全体の利益を考えて動けるようになるかもしれません。
評価制度の見直し
評価制度を見直し、過度な競争を煽らないことも大切です。相対評価から絶対評価に切り替えて個々の良さを見つけるような評価体制にできれば、他人の成功を喜ぶ風潮が育っていくでしょう。
一方で、従業員のモチベーションを妨げることがないよう、一定以上の実績を出した人にインセンティブを与えることも大切です。インセンティブは予算制にせず一律に与えるようにすれば、牌を奪い合うような競争もなくなります。
企業理念や目標の共有
企業理念・目標を全体に共有し、経営層から新入社員まで同じ意識を持たせることも大切です。全体の方針をブレずに抱くことができれば、個人の利益だけでなく会社全体の利益を追及するようになるでしょう。
また、「部署は違っても同じ会社で働く仲間」という意識が育ち、協力的な姿勢を構築しやすくなることもメリットです。従業員から共感されるような企業理念を描いて、エンゲージメントを向上させていきましょう。
セクショナリズムの予防や解消に努めている企業事例
最後に、セクショナリズムの予防・解消に努めている企業の事例を紹介します。自社にも役立つ取り組みがないかチェックしてみましょう。
NTTデータ
URL:NTTデータの社内SNSが“ITマネジメント革新賞”を受賞 2009年2月12日
NTTデータでは招待制の社内SNS「Nexti」の活用により、セクショナリズム予防を推進しています。
ピーク時には登録者数が1万人近くまで増えた大規模社内SNSであり、部署や職種の垣根を超えたコミュニケーションが生まれるようになりました。
社内SNSはワンタップで「いいね」ができるなど短時間でも使えるシステムが多数搭載されており、写真をアップロードしても閲覧者が社内の従業員に限定されています。セキュリティへの配慮が最低限で済むことなども、定着を支える要因となっています。
シャープ
SHARPでは「仕事は厳しく、人には優しく」をスローガンにした人事評価制度を導入しています。
部署単位ではなくひとりひとりの働きぶりに応じたメリハリのある人事評価にすることで、安易に妥協せず、かつ協力しながら業務を進めることがメリットとなるような仕組みを作りました。また、業務を進めるなかでお互いの個性を認めることを促進しており、チームワークの発揮に貢献しています。
タビオ
URL:ビジョン -Tabio(タビオ)
タビオでは、社内向けに「未来創造プロジェクト」を立ち上げて経営目標やビジョンを広く社内に浸透させる取り組みを始めています。一方的に経営層から伝えるだけでなく、従業員によるグループディスカッションなどの場を設けて自発的に考える機会を作りました。
他にも、階層の削減・機能集約による縦割り組織からの脱却を試みており、ブランド横断で考え方を共有する取り組みが見られます。
日本アーツ
日本アーツでは、プロジェクトチームごとの縦割り意識が強くなりすぎないよう、役職・年齢・入社年月を問わずフラットにアイディアを出し合うことを促進しています。
時には会議室や職場を離れてランチ会兼ブレインストーミング会をすることもあり、リラックスした雰囲気のなかでコミュニケーションできる工夫を凝らしました。結果、自発的な意見の発信が進むようになり、イノベーションが起きるなど多数のメリットがえられています。
クリエイティブな会社こそセクショナリズムを予防し、傾聴の姿勢を持つべきことがわかります。
リンクアンドモチベーショングループ
URL:風土 | Link and Motivation Inc. 株式会社リンクアンドモチベーション
リンクアンドモチベーションでは、組織の上下・左右・内外のコミュニケーションの充実を図っています。日ごと、週ごと、四半期ごとなどさまざまなタイミングで社内コミュニケーションの場を設けるようになりました。
特に多様な表彰制度を設けていることが特徴であり、高い成果を発揮したプロジェクトチームを称える従来型の「ベスト・モチベーション・プロジェクト」はもちろん、新卒採用において応募者に対して大きな影響力を発揮した人をたたえる「エントリーマネージャー・オブザイヤー」などを提唱しました。
さまざまな取り組みが評価される体制を作ったことで、個々の強みを伸ばす働き方ができるようになっています。
企業理念や目標の共有に ourly
ourlyは、組織改善に特化した全く新しいweb社内報サービスです。
web知識が一切不要で、誰でも簡単に投稿できるだけでなく、閲覧率や読了率(記事がどこまで読まれているか)などの豊富な分析機能が特徴的です。
また社内報運用を成功に導くための豊富な伴走支援に強みがあり、web社内報としてだけでなく組織課題を可視化するツールとしても魅力的なツールとなっています。
ourlyの特徴
- SNSのように気軽にコメントできる仕様で、社内のコミュニケーション活性化を実現
- web知識が一切不要で簡単に投稿できる
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- 分析機能に特化しており、属性・グループごとにメッセージの浸透度がわかる
- 組織課題や情報発信後の改善度合いを可視化することができる
「離職率が高い」「部署間・役職間に隔たりがある」といった悩みを抱える方におすすめのweb社内報ツールです。
セクショナリズムを防ぎ組織力の向上を
セクショナリズムが生じることによるデメリットは大きく、企業にとっても個人にとってもメリットのある取り組みにはなりません。効果的に予防・改善し、自社全体の利益を追求できるよう制度を変革していきましょう。
企業理念やビジョンを浸透させるシーンでは、社内報が便利です。全体に一律で情報発信できる視認性の高いツールなので、相互理解のためにも活用してみてはいかがでしょうか。