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ソーシャルキャピタルとは?3要素や企業に必要な理由・人事施策に生かす4つの方法

ソーシャルキャピタルとは、人と人との結び付きに価値を置く概念です。日本語では「社会関係資本」「社会的資本」と訳され、物的資本や人的資本と並ぶ新しい概念として関心が寄せられています。

地域社会やビジネスへの活用が期待されるソーシャルキャピタルですが、抽象的な概念であることから理解が難しく、なかなか形成が進んでいないのが現状です。

そこで本記事では、ソーシャルキャピタルの定義やメリットを踏まえた上で、人事施策に生かす方法や注意点などを具体的に解説します。人と人との関係にフォーカスすることで、効果的な組織運営にお役立ていただければと思います。

目次

ソーシャルキャピタルとは

ソーシャルキャピタルとは、人と人のつながりや、関係性を価値のある「資源」と捉える概念です。日本語では「社会的資本」「社会関係資本」と訳され、社会全般における人間どうしの相互関係や、結びつきが重要であるといった価値観を指します。

ソーシャルキャピタルの概念を取り入れることにより、企業のみならず自治体や個人のレベルにおいても、さまざまな課題が改善できるとして昨今注目を集めています。

ソーシャルキャピタルの3要素

ソーシャルキャピタルが目指すのは、人々の関係性を良好にし協調行動を高めることにより、社会や組織の課題を解決し効率化を図ることです。この概念は、アメリカの政治学者である、ロバート・パットナム氏により提唱されました。パットナム氏の著書『哲学する民主主義』によると、ソーシャルキャピタルの構成要素は以下の3つとされています。

  • 1.信頼
  • 2.規範
  • 3.ネットワーク

それぞれ解説します。

1. 信頼

ビジネス上の取引に限らず、社会生活を送るうえで欠かせないものが信頼です。相互に信頼関係が構築できていれば、相手を過度に疑ったり用心したりする必要がないため、物事がスムーズに進みやすくなります。

さらに、パットナム氏は「信頼」を以下の2種類に分類しました。

  • 「知っている人に対する熱い信頼」
  • 「知らない人に対する薄い信頼」

パットナム氏は、後者の「薄い信頼」であっても、より広範囲の協調行動につながるものであれば、ソーシャルキャピタルの形成には有効であると説いています。

2. 規範

パットナム氏は、ソーシャルキャピタルにおいて、相互に利益のある「規範」を重要視しています。「WinWinの関係」、すなわち「互酬性」のある関係性が望ましいと考えました。

互酬性のある規範は、さらに2つに分類されます。

  • 「現状において等価値の交換行為」
  • 「現状は等価値でなくても、将来は均衡が見込める交換行為」

後者の交換行為は、相手には短期的なメリットを感じてもらいつつ、長期的には関係者全体がメリットを享受できるとしています。こうした長期的な視点は、利己心と連帯心のバランスを保つのに役立つものです。

3. ネットワーク

ネットワークとは、周囲の人々や所属するコミュニティ、団体・組織とのつながりを指します。パットナム氏は、このネットワークも以下の2つに分類しました。

  • 「上下関係をともなう垂直的ネットワーク」
  • 「横並びのネットワーク」

互酬性をもたらし協力関係を築きやすいのは、後者の横並びのネットワークであるとして、より重視しています。相互の協力関係を支えるのは上下関係ではなく、対面をともなう水平的なネットワークということでしょう。

ソーシャルキャピタルがもたらすメリット

昨今、ソーシャルキャピタルは、社会生活全般にメリットをもたらすものとして、注目を集めています。ビジネスだけでなく、地域のコミュニティから個人レベルにいたるまで、さまざまなよい影響を与えることが知られているためです。

地域社会へのメリット

治安の向上や地域活性化が見込めることが地域社会におけるメリットです。地域においてソーシャルキャピタルが形成されることにより、住民間のコミュニケーションの質と量が向上します。

地域のコミュニティに「強固な横のつながり」ができていれば、おのずと地域は活性化していくものです。多くの住民が顔見知りであれば、不審者情報がスムーズに共有され、犯罪の抑止につながるでしょう。また、災害など非常時においても、住民どうしの助け合いで早期の復旧が見込めます。

個人へのメリット

ソーシャルキャピタルが醸成されることは、個人レベルにもさまざまなメリットをもたらすでしょう。個人と企業の関係性が向上することにより、個人の理想とする働き方が可能になります。信頼関係が構築されることにより、厳密な管理は必要なくなります。そのため、地方に移住してフルリモートで勤務するなど、企業は多様な働き方を受容できるのです。

コミュニティ活動を通じて地域における人脈が形成され、仕事面でも恩恵を受けるかもしれません。また、行政からのさまざまなサポートが受けやすくなることや、地域の見守りにより孤独や孤立が防げる点もメリットです。

ビジネスへのメリット

ビジネスにおけるソーシャルキャピタルのメリットは、スムーズな組織運営が可能になる点です。従業員間の関係性が向上することによりコミュニケーションの質が高まり、「風通しのよい」組織風土の醸成が見込めるでしょう。

個人のパフォーマンス向上による生産性・効率アップだけでなく、離職の防止など組織課題の解決にもつながります。また地域社会との良好な関係性の構築により、地域に愛される企業として応援してもらえるだけでなく、従業員が自社に誇りを持つきっかけになるなど、さまざまなよい影響が期待できます。

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ソーシャルキャピタルが企業に必要な理由

ソーシャルキャピタルが必要とされる理由には、災害や経済情勢の大きな変動など、企業を取り巻く環境が不確実性を増していることがあります。終身雇用の崩壊や行き過ぎた成果主義により、組織内の人のつながりが希薄になったことを、危惧しはじめたこともあるかもしれません。

また、企業の地域における社会的責任が、重視されるようになった点も大きな理由です。地域とのよい関係性を構築した企業ほど円滑な事業運営が可能になり、事業成長が見込めるでしょう。

ソーシャルキャピタルの概念を人事施策に生かす4つの方法

企業運営において、従業員どうしの良好な関係性は重視すべきポイントです。多様な働き方への対応や活発なコミュニケーションは、従業員にとっての自社の価値を高める大切な要素といえます。ソーシャルキャピタルの概念を人事施策に生かす場合、以下の4つの方法を中心に考えるとよいでしょう。

人事異動

定期的なジョブローテーションにより担当業務を変更することで、社内人脈が広がる効果が期待できます。個人の適性が把握できるだけでなく、部署を越えたコミュニケーションが活発になるなど、組織によい影響を及ぼすでしょう。

また、従業員への信頼度が増すことにより、出社をともなわない働き方に抵抗がなくなります。企業が積極的にリモートワークを推奨することで、地方移住など従業員が理想とする働き方が提供できるようになります。

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オフィスのレイアウト

企業において「横のつながり」を強化するには、コミュニケーションに対する施策が有効です。それはオフィスのレイアウトを工夫するといったことも含まれます。

休憩や打ち合わせのスペースを多くすることや、個人の座席を限定しないフリーアドレス制の導入が例として挙げられるでしょう。コミュニケーションが活性化することにより、問題解決のスピードアップや、新たな事業のアイデアが生まれるといったことが期待できます。

相談環境の整備

従業員が気軽に相談できる環境を整備することも、ソーシャルキャピタルを生かした取り組みです。たとえば、メンター制度の導入や1on1ミーティングの実施など、コミュニケーションを円滑にする施策が挙げられます。

若手従業員が定着しない原因のひとつに、「気軽な相談相手がいない」といったことがあるようです。メンター制度や面談を活用し、従業員間のつながりを強化するうえで、ソーシャルキャピタルの概念は有効に機能するでしょう。

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グループへのインセンティブ

グループインセンティブとは、チーム内の連携強化を図りたいときに有効な手法です。チーム全体の成果を評価の対象とすることで、チームワークの向上が期待できます。

個人戦ではなく団体戦であることを強く意識してもらうことで、メンバーの得意分野を生かした役割分担が、自然とできるようになり生産性が向上します。情報共有も活発になるなど、業務の効率化も進むでしょう。

ソーシャルキャピタルの概念を活動に取り入れる際の注意点

一方でソーシャルキャピタルの概念を活動に取り入れる際には、デメリットも考慮しておく必要があります。まず、即効性がなく効果が出るまでには長期的な視点が必要です。ソーシャルキャピタルの概念は明瞭化しにくいため、人によって解釈の違いが出ることも考えられます。

また、閉鎖的なコミュニティを醸成してしまう原因となることも危惧されます。排他的で隠蔽体質を持つ組織を生み出す危険性があることも、認識しておかなくてはなりません。

ソーシャルキャピタルの事例

ここでは、北部イタリアにおける市民活動や、スタートアップ企業を支援する企業の事例を紹介します。いずれもソーシャルキャピタルが醸成されたことにより、好影響がもたらされた事例です。

地域社会|イタリアの市民活動

ソーシャルキャピタルの概念は、パットナム氏の20年にもわたるイタリアの地方分権の研究によりもたらされました。前述の論文「哲学する民主主義」において紹介されています。研究対象となった1970年代のイタリアは、20にもおよぶ地方政府が設置され、自治的な運営がなされていました。

そのなかでパットナム氏は、住民どうしのつながりが強い北部の各州では、スポーツクラブなどの地域活動が活発なことに気が付きます。反面、南部の各州では横のつながりが醸成されておらず、市民活動が活発ではありませんでした。このことから、ソーシャルキャピタルが形成された北部地域のほうが、民主主義が機能し発展につながったと結論づけています。

ビジネス|スタートアップ企業を支援

株式会社ガイアックスは、ソーシャルメディアやシェアリングエコノミーに注力し、社会課題の解決を目指すスタートアップ企業です。「人と人をつなげる」をミッションに掲げ、「人の思い」がつながることで、互いが自然と助け合う社会を目指しています。

同社の特徴はスタートアップスタジオとして、多くの若手起業家を輩出している点です。資金面をはじめさまざまなサポートにより、新たなスタートアップ企業のソーシャルキャピタル醸成に力を入れています。また、社内の既存事業の独立を支援する制度も実現しており、同社を卒業した人材が設立した企業への投資なども積極的におこなっています。

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ソーシャルキャピタルの概念を人事施策に取り入れよう

ソーシャルキャピタルが注目される背景には、「人と人のつながり」の重要性が再認識されたことがあるようです。テレワークをはじめとした働き方の多様化により、社内コミュニケーションの課題が変化したことも拍車をかけたのかもしれません。ソーシャルキャピタルの概念を人事施策に取り入れることは、自然の流れといえます。

従業員どうしの良好な関係性は、事業運営にとって重要な課題です。コミュニケーション強化の施策として、Web社内報の導入を検討してみてください。

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この記事を書いた人

Kanei Yoshifusaのアバター Kanei Yoshifusa ourly株式会社 コンサルティングセールス・組織開発チーム

前職は店舗ビジネス向けの業務効率化SaaS事業を展開する企業でCSに従事。
その後、ourly株式会社に参画。
200社以上の企業に組織課題解決の提案、現在30社の組織開発を支援。
富山県上市町出身。趣味は筋トレ/声マネ/滝行。

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