EVPとは?注目される背景や導入するステップとポイントを解説
EVPとは、Employee Value Propositionの頭文字を並べた単語で、「従業員への価値の提案」を意味します。従業員に対して、安心して働ける環境や、成長、共感できる環境を提供することを言語化して示すのが特徴です。EVPの導入により、自社に対する愛着が高められるほか、社会からの企業イメージの向上にも繋がります。
本記事では、EVPの導入で得られるメリットを明確にしたのち、導入方法を5つのステップに分けて解説します。導入時のポイントや具体例も解説しますので、参考にしてください。
EVPとは
EVP(=Employee Value Proposition)とは、「従業員への価値の提案」を意味する言葉です。具体的には、安心して長く働ける環境・生活を安定させる収入・自己成長を実感できる体験・相互理解による信頼などを指します。
EVPの導入は、従業員のモチベーションやエンゲージメント向上に貢献します。自社に対する愛着が高まるので自発的な努力がしやすくなり、生産性や収益の向上が期待できるなど企業側にとってのメリットも高いと注目を集めました。
そのため、近年は業種を問わずEVPを提供する企業が増えています。
EVPが注目されている背景
EVPが注目されるようになった背景には、転職が前提のキャリアパスを描く人が多くなり、人材定着が難しくなったことが関係しています。
企業側も労働者側も終身雇用を前提にすることが減り、より望ましい環境があれば転職をする人が増えました。そのため、優秀な人を安定して確保したいと考える企業はEVP導入に力を入れ、待遇以外のメリットを押し出すようになったのです。
また、少子高齢化に伴う労働人口の減少も大きく影響しています。今後さらに労働人口が減少するだろうと予想されている昨今、今のうちにEVPを導入し、転職市場における価値を高めて人材確保戦略とする企業が増えたのです。
EVPの具体例
具体的な価値の提供方法ですが、以下の5つの要素が大きな役割を担います。それぞれ詳しく解説します。
企業のミッションやビジョン
自社が掲げるミッション・ビジョン・バリューは常に可視化し、意識できるようにしておきましょう。ぼんやりとしたイメージではなく具体的に明文化しておけば、いつでもどこでも理念を見直すことができます。
新入社員研修や年次研修で背景も含めて説明したり、社内報で定期的に取り上げたり、まずは浸透に向けた対策をするのが第一です。その後、共感を得られるような取り組みをしていきましょう。
待遇
同業他社と比較して低い給与水準であれば見直したり、反対に同業他社より圧倒的な高待遇を準備したりする方法が挙げられます。
給与だけでなく充実した福利厚生・柔軟な勤務体系・豊富な休暇など、自社ならではの強みとなる部分を付け加えていきましょう。目に見えてよい待遇であれば離職者も出づらく、採用市場で優位に立てるなどメリットが得られます。
福利厚生
前述の通り、福利厚生を充実させるのもおすすめです。
子どもや要介護者と暮していても安心して働き続けられるようワークライフバランス施策を採用したり、従業員の健康を守るため運動プログラムや栄養コンサルティングを導入したりするのもよいでしょう。また、オリジナリティの高い福利厚生を整備し、業界内外から注目を浴びればEVP施策としても効果的です。
公平な評価制度
公平かつ客観性のある人事評価体制がある会社であれば、努力することが楽しくなるでしょう。周りの期待に応える喜びを知ったり、会社の方針に合わせてコツコツ努力して評価されたりすれば、より組織への信頼感が増していきます。
上司の好き嫌いだけで左右されない人事評価体制を作り、給与テーブルと連絡させるなどすれば納得感がさらに高まります。
キャリアアップ支援
従業員のキャリアアップを支援するため、誰でも昇格試験を受験できるようにするなどの配慮が求められます。年功序列ではなく成果主義で評価するなど、若手でも実力さえあればどんどん上にいけるような取り組みをするのが理想です。
また、セミナー・勉強会・資格予備校へ支払う金額の一部を福利厚生として支給したり、勉強に必要な書籍費を補助したりすることもひとつの手段です。
EVP導入で得られる4つのメリット
前述の通り、EVPの導入には優秀な人材を確保しやすくなるというメリットが存在します。それ以外のメリットも多いので、改めて下記で確認していきましょう。
従業員のエンゲージメント向上により離職を防止
EVPを導入することで、従業員エンゲージメント施策としている企業は多いです。
例えば育児・介護・療養などライフプランに合わせて働きやすい環境を提供できる企業であれば、子育て中のワーキングペアレンツや親の介護に悩む人も退職しづらくなります。労働時間が短くても、その範囲で高い成果を上げてくれる人材を雇用し続けることは、生産性向上に寄与するでしょう。
そして、雇用されている側は「自分が社会とつながっている」「成果主義で評価してくれてうれしい」と感じるのでエンゲージメントが上がります。会社への信頼度も上がるのでさらに離職しづらくなり、人材が定着しやすくなるのです。
優秀な人材の確保
前項と同じく、EVP導入は優秀な人材の確保にも貢献します。
今まさに子育てや介護で忙しいものの本当は高いスキルを持っている人を雇用できたり、テレワーク環境を整備することで日本だけでなく世界から優秀な人材を募れるようになったり、さまざまなメリットが生まれます。スキルと実績のあるフリーランスをピンポイントで雇うなどフレキシブルな雇用形態にも対応でき、結果的に成果が上がることが多いのです。
成果を上げれば、従業員はもちろん顧客にも取引先にも株主にもいい影響を与えます。会社の成長にEVPが欠かせないとされる理由は、ここにあると言えるでしょう。
企業理念の浸透
EVPの導入は、企業理念を浸透させたいときにも役立ちます。
例えば、男女共同参画に賛同する企業が女性役員比率を上げたり男女関係ない平等な評価体制を築いたりすることは、EVPの導入として効果的です。企業理念を行動に移しているとして評価されやすく、同時に社会づくりの一旦も担うことができるでしょう。
同様に、環境問題に配慮してパッケージ素材を変える、多様性に配慮して国籍・年代・性別の枠を取り払った採用をするなどの方法もあります。このようなEVPが導入されることで企業理念はより深く現場に浸透し、高い共感を得ることができるのです。
企業イメージの向上
人材の定着率が高く、常に優秀な人材を確保しつづけ、企業理念を行動で表している企業は、社内外からのイメージがよくなります。
「健康経営に配慮している」とみなされて株式市場での評価が上がったり、「あの会社であればやりたいことができそう」と新卒求職者が増えたり、さまざまなシーンでイメージ向上の効果を得られます。また、ステークホルダーからのイメージも向上するので資金調達しやすくなったり、商品・サービス自体にブランドストーリーが生まれたり、意外なメリットも多いものです。
企業のブランディングとしてEVP導入が活きることを知り、役立てていきましょう。
EVPを導入する5ステップ
ここからは、EVPを導入するステップを紹介します。具体的に会社と従業員のためになる施策をしたいものの、方策がわからないときにぜひご参考ください。
STEP1|自社分析
まずは、自社の分析から始めます。
職場環境・各種人事制度・福利厚生・給与テーブル・企業文化・理念など、従業員が日常的に触れるものを再確認していきましょう。エンゲージメントやモチベーションなど可視化しづらい項目については、組織サーベイを使い調査していくのもおすすめです。
また、部署ごとの欠勤率・健康診断やストレスチェックの結果・昇進試験の受験人数推移・女性役員数やワーキングペアレンツ数など、普段意識しない部分を調査する企業もあります。今後どんなEVPを導入するか検討する際の材料になるので、多角的に情報収集するとよいでしょう。
STEP2|他社分析
前項で分析した自社の特徴を、他社と比較します。可能であれば同業他社が望ましいとされていますが、同じ地域の同じ規模感の会社と比べたり、似たような特徴を持つ会社がないか探したりすることもポイントです。
他社と同じ程度の価値におさまってしまうと、効果的なEVP施策とは言えません。自社の強みをわかりやすくするためにも、どの路線のEVPを導入するか検討を重ねましょう。
STEP3|従業員のニーズ分析
自社分析・他社分析が終了し次第、従業員のニーズを分析します。従業員は自社に何を期待しているのか、本音を探っていきましょう。
意外と、会社が考えている従業員ニーズと、従業員が抱く本当のニーズはすれ違っているものです。経営層自らヒアリングの場を設けたり、大規模な社内アンケートを実施したりしながら調査することがポイントです。
また、幅広い年代・部署・地域のニーズを探れるよう、データに偏りがないか常に配慮していきましょう。
STEP4|策定と導入
従業員ニーズがわかり次第、EVP施策の策定および導入に進みます。
自社の強みを活かす形でEVPを導入するのが理想です。人事担当者だけでなく経営層や各部署長なども参画してもらってプロジェクトチームを発足させると、多角的な意見を収集しやすくなります。
また、社内で不公平にならない程度に限定した範囲からEVPを導入するなど、スモールステップでの成功を視野に入れてもよいでしょう。評判・評価を見ながら改善していくことを前提にすれば、余裕が生まれます。
STEP5|従業員への周知
導入するEVPが確定し次第、従業員へ周知します。
社内情報格差が出ないよう、社内報など一度に広範囲へ周知できるツールを使うのがよいでしょう。その後、部署ごとのミーティングや1on1ミーティングの場を使い、理解を深めていくことがポイントです。
最初の段階で「特定の部署にだけ知らされている」「一方的な説明のみで内容が理解できなかった」など不満を生むと、その後のEVP定着に支障が出ます。最初は広範囲かつスピーディーに、その後すぐ個別のフォローアップをするようなイメージで周知していけば、ミスマッチが生じません。
EVP導入のポイント
最後に、EVP導入のポイントと具体例を紹介します。他の企業は具体的にどんなEVPを導入しているのか、それぞれのポイントや注意点ないか調べ、実行イメージを重ねていきましょう。
安心して働ける環境を作る
誰でも安心できる環境は、貴重な価値となります。何に働きがいを感じ、何を重視して入社してきているかは人それぞれなので、価値観の多様性を認めながら多くの人に支持される取り組みにしていくことが大切です。
このポイントに関わるevpの例は、待遇や福利厚生です。従業員の生活やモチベーションに絶対的な影響を与える要素と言えるため、効果も大きいでしょう。
成長できる環境をつくる
従業員自身が成長できる環境をつくり、やりがいを持ってもらうことも重要です。長年在籍していても少しずつ成長している実感があればモチベーションも上がりやすく、自然とエンゲージメントが根付く効果的なEVPとなります。
社会的に転職が当たり前となっているからこそ、この要素の充実は従業員にとって魅力的に映るでしょう。公平な評価制度や、キャリアアップ支援、社内教育の充実から成長環境を整えられます。上司・部下の縦のコミュニケーションを活性化させることも有効です。
自社理念への共感を呼ぶ環境をつくる
自社理念に共感してもらえる環境をつくることで、エンゲージメントを高めていく方法です。エンゲージメントが高まればEVPも高まることが多く、会社で働くことが誇りに思えるような瞬間もやってきます。
MVVや経営理念の見直しや浸透施策を行いましょう。特に浸透に関しては、時間のかかる難しい施策となるため、長期的に運用できるweb社内報の活用がおすすめです。
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EVPを導入して企業価値を高めよう
EVPは「従業員への価値の提案」を意味する言葉であり、安心して働ける環境・成長できる環境・自社理念へ共感できる環境などが代表的なEVP施策であるとして注目されています。従業員から評価される高い企業価値を持つためにも、自社の強みを理解しながら施策を考案していきましょう。
自社理念の浸透や変化した社内制度があれば、短時間で全体に周知できる社内報の利用がおすすめです。近年はweb社内報など出先で確認しやすい社内報も出ているので、誰でも手軽に読むことが可能です。