HRテック(HRtech)とは?注目されている背景や市場規模・最新のトレンドを解説

労働人口の減少が進む日本において、業務効率化と労働生産性の向上が求められています。

こうした中、人事領域の業務にテクノロジーを活用した「HRテック(HRtech)」に注目が集まっており、多くの企業がHRテックのサービスを導入しています。

この記事では、HRテックとは何か、導入メリット、市場規模やAIやクラウド、ビッグデータなどのテクノロジーについて詳しく説明します。

この記事が何かしらの役に立てば幸いです。

HRテックとは?

「HRテック(HRtech)」は、人的資源を意味する「Human Resources」と、技術を意味する「Technology」を組み合わせた造語です。

HRテックとは、人工知能(AI)やクラウド、ビッグデータ解析、モバイルなど最先端技術を活用し、採用・勤怠・配置・評価などの人事業務の効率化と生産性の向上を目指すサービス全般のことを指します。

HRテックの歴史

この章ではHRテックの歴史について解説します。

1990s ~ 2000s Automate時代前半

企業は、給与支払い・勤怠管理を正確に行うべく、人事ツールの導入を開始しました。

ツールはIBMやOracle、SAPが提供する給与管理システムや勤怠管理システムなどが主要でした。

1990s ~ 2000s  Automate時代後半

この頃アメリカでは、インターネット時代が到来します。

また、人事の仕事は、給与・勤怠の人事業務の効率化だけではなく、優秀な人材の採用・育成が重要視されるようになりました。

これらのニーズを受け、効率的な評価管理システムを提供するSuccessFactors、採用を効率化する採用管理ツールで有名なTaleo、育成を効率的に行うCornerstone Ondemandなどが主要なツールになりました。

2004 ~ 2012 Integration時代

多くのサービスが生まれる中、ニーズは「採用管理ツール、評価管理ツール、育成管理ツールなどを一括管理したい」というものになり、ベンダーのM&Aと機能統合が開始します。

「ツールの一元管理」という流れは、統合型の人事管理システム、HCMS(Human Capital Management System)の誕生により一段落つきました。

2015年頃

この頃から、データを活用した人事施策がトレンドになりました。

データを活用して、人事業務を最適化しようという考えから、「ピープルアナリティクス」という概念が注目され始めます。

2020年現在

労働人口の減少、働き方改革、コロナウイルスの蔓延により、従業員の生産性向上を支援するツールが求められるようになり、新しいツールが市場に到来。

HRテックが注目された背景

なぜ、HRテックは注目され始めたのでしょうか。

HRテックが注目された背景は大きく3つあります。

  • 背景1:労働人口の減少による人手不足
  • 背景2:働き方の多様化
  • 背景3:テクノロジーの発展

それぞれについて詳しく解説します。

背景1:労働人口の減少による人手不足

1つ目の背景は労働人口の減少による人手不足です。

現在、人事業務は採用、育成・研修、配置、勤怠管理など多岐に渡ります。

しかし、労働人口の減少による人手不足と業務の多様さから、これらの業務をこれまで通りにこなすのは難しくなり、業務の効率化が求められるようになりました。

また、限られた人的資源で経営を続けていくために、優秀な人材の確保や労働生産性の向上が求めらています。

そのため、最適な採用や人材配置、育成を促進する管理システムの導入が不可欠となっています。

これらの背景からHRテックに注目が集まっているのです。

背景2:SaaSの普及

2つ目の背景はSaaSの普及です。

従来のHRテックでは、ソフトウェアのパッケージを購入し、社内のサーバで管理するオンプレミス型が主流でした。

オンプレミス型は初期費用が高かったり、追加アップデートの度に課金しなければいけなかったりなど、中小企業にとってはシステム導入の敷居が高いものでした。

しかし、クラウド型サービスSaaSの登場によって、企業は常に無料でアップデートでき、初期費用も抑えた導入が可能となりました。

背景3:テクノロジーの発展

3つ目の背景はテクノロジーの発展です。

AI、ビッグデータ解析、クラウドやモバイルなどのテクノロジーの目覚ましい発展により、HRテックは進化を遂げました。

特にAIやビッグデータ解析を用いることで、人事領域のさまざまな仕事において、人間では導き出すのが難しかった最適解を容易に出すことが出来るようになりました。

テクノロジーの発展のおかげで、人事担当者が戦略的人事のような付加価値の大きい仕事に注力できるようになったのです。

HRテック導入のメリット

HRテックを導入することで、どんなメリットがあるのでしょうか。

期待される主なメリットは次の3つです。

  • 効果1:業務の効率化や労働生産性の向上
  • 効果2:データに基づいた最適な人材配置と採用
  • 効果3:インナーコミュニケーションの活性化

それぞれについて詳しく説明します。

効果1:業務の効率化や労働生産性の向上

従来、人事領域の仕事は、excelへのデータ入力や従業員の給与計算、勤怠管理や労務管理などの煩雑な業務に追われていました。

こうした時間と労力がかかる業務もHRテックの導入によって、データ入力の自動化や一元管理が可能になります。

また、業務における人的ミスの防止、人件費の削減も可能となります。

さらには、余った人員に戦略や創造性、新たな価値創出を求められる部署に異動してもらうなど、企業の売上に直結する仕事を任せることができます。

関連記事:労働生産性とは?種類・国別比較・向上の方法を解説

効果2:データに基づいた最適な人材配置と採用

これまで人材配置や採用は人事の経験や勘に基づいていたので、従業員と企業・仕事内容のミスマッチが多発していました。

しかし、HRテックの導入により、データに基づいた客観的な意思決定が可能となり、最適な人材配置や採用が可能となりました。

企業側が従業員のことを把握し、適材適所に配置することで従業員エンゲージメント、労働生産性や成果の向上に繋がり、企業にとっても従業員に最高の状態を作り出せます。

また、最適な人材配置や採用の結果として、優秀な人材の確保にもつながります。

関連記事:タレントマネジメントとは?メリットや導入ステップ、中小、大企業導入事例、他社システムを解説!

関連記事:従業員エンゲージメントを高める方法は?効果・導入ポイント・課題・事例

効果3:インナーコミュニケーションの活性化

社内チャットやビデオ通話もHRテックの1つです。

新型コロナウイルスの蔓延によって、リモートワークが推進され、多くの企業で社内のコミュニケーション量が減りました。

そんな中、slackやzoomなどのツールを使うことで、従業員間の柔軟なコミュニケーションが可能となり、インナーコミュニケーションの活性化につながります。

関連記事:インナーコミュニケーションとは?効果や種類、他社事例、導入ポイントと対策

HRテックにおけるテクノロジー

ここでは、HRテックを支える以下の5つのテクノロジーについて簡単に解説します。

  • AI(人工知能)
  • ビッグデータ
  • SNS
  • クラウド
  • モバイル

AI(人工知能)

AI(人工知能)は「Artificial Intelligence」の略で、辞書的な定義では「学習・推論・判断といった人間の知能のもつ機能を備えたコンピューターシステム」と記されています。(大辞林 第三版より抜粋)

昨今AIが人の仕事を奪うといったことをよく耳にしますが、生産性の向上や人的ミス削減を考えると、人事領域におけるAIの必要性はますます増していき、人間の働き方を変えていくでしょう。

すでに人事担当者の意思決定支援としてAIを活用するシステムが急増しています。

ビッグデータ

履歴書の内容、評価、適性検査の結果やソーシャルメディアでの行動など、従来のシステムでは記録や分析が困難なほど巨大なデータ群をビッグデータと言います。

それらのデータをAIなどによって分析することで、採用や育成、組織状態の改善に活かせるようなシステムも次々と登場しています。

SNS

SNSは「Social Networking Service」の略で、インターネット上にネットワークを構築し、交流するサービスのことを指します。

HR領域では、社内SNSやslackのような社内チャットツールなど、インナーコミュニケーション活性化のためのサービスが多くあります。

クラウド

従来、ユーザーがサービスを利用するには、インストールやライセンス購入が必要でした。

しかし、近年は世界的なクラウドの普及によって、インターネットにさえ繋がっていれば、どこであってもサービスにアクセスできるようになりました。

クラウドはSaaS、PaaS、IaaSの3種類に分類されます。

モバイル

スマートフォンやノートパソコンなど、持ち歩くことを前提に作られたインターネット端末のことを指します。

現在では、スマホを使ったサービスも登場するなど、ユーザーの利便性が非常に高まりつつあります。

HRテックの市場

現在、日本においてもHRテック市場は拡大を続けています。

ミック経済研究所の発表によると、HRテックの市場は2017年以降、右肩上がりに拡大傾向にあります。

2017年には約179億円、2018年は前年比約140%の 約250億円、2019年は 約355億円となっています。

さらに、2023年には 1000億円 を超えると予想されています。

中でも、「採用管理クラウド 」と「人事・配置クラウド 」の市場規模が伸びていますし、今後も伸び続けると予測されることが分かります。

(引用:日本経済新聞,ミック経済研究所、「HRTechクラウド市場の実態と展望 2019年度版」を発刊,<https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP527215_R20C20A1000000/>,202010月閲覧)

HRテックのサービス

人事業務の多様化に合わせて、HRテックのサービスもさまざまな種類があります。
今回は、以下の5つの種類に分類して紹介します。

  • 採用管理システム
  • 人材管理システム
  • 労務管理システム
  • 勤怠管理システム
  • 教育管理システム

それぞれについて詳しく解説します。

採用管理システム

採用管理システムは、これまでエクセルなどで管理してきた応募から内定に至るまでのプロセスや、応募者の個人情報や面接での評価などをひとつのシステム上で一元管理できます。

これらを駆使することで、選考の進捗状況を可視化できるので、PDCAを早く増すことができ、採用戦略も練りやすくなります。

このシステムのメリット・デメリットは以下のようになっています。

メリット:求人から採用までを一元管理できるので、人事工数を削減ができる。

デメリット:自社の採用に合わないシステムを導入してしまうと、無駄な時間がかかる

同じ採用管理システムでも、中途、新卒、アルバイト、リファラルなど、どの領域で活用するかによってもサービスが異なりますので、注意しましょう。

採用管理システムは、具体的には

  • MOCHICA
  • SONAR ATS
  • HR PRIME
  • HRMOS採用
  • HERP Hire
  • ジョブカン採用管理
  • talentio
  • ジョブオプ採用管理

といったサービスがあります。

人材管理システム(タレントマネジメントシステム)

タレントマネジメントとは、従業員一人ひとりの才能・スキルなどを把握し、適材適所の人員配置や育成、評価をおこなうマネジメント手法のことです。

タレントマネジメントシステムでは、従業員それぞれの個人情報、適正や評価など、個人や組織の情報をデータ化し、一元管理できます。

また、集めたデータを可視化することで、さまざまな人事戦略に活かせることがメリットです。

タレントマネジメントシステムは、具体的には

  • カオナビ
  • HRMOS Core
  • Oracle
  • jinjer人事
  • HRBrain
  • wevox
  • TUNAG
  • タレントパレット

といったサービスがあります。

労務管理システム

・労務管理システムでは、これまで人事担当者が手作業で行っていた社会保険や年末調整など、従業員の労務手続きを効率化できるシステムです。

システム上で簡単に労務関連の書類作成、人事情報収集、一元管理することができるので、担当者は他の仕事に時間を割くことができます

労働管理システムは、具体的には

  • SmartHR
  • Bizer
  • jinjer労務
  • MFクラウド給与
  • 人事労務freee

といったサービスがあります。

勤怠管理システム

勤怠管理システムはその名の通り、従業員の始業時間や終業時間などの勤怠管理ができます。

さらに単なる打刻だけでなく、従業員のデータ設定や勤怠情報の集計、休暇・残業の申請・承認、シフト設定などがWeb上で処理できます。

他にも、勤務状況に合わせた打刻方法を選択できるので、打刻漏れや不正打刻の防止にもつながる他、勤怠データの集計作業の大幅削減、残業時間や休日出勤の割増手当などの給与計算の効率化などが実現できます。

また、勤怠管理システムの大きな特徴として、従業員1人あたり数百円といったコストの安さやスマホやタブレットで入力ができるという利便性が挙げられます。

勤怠管理システムは、具体的には

  • ジョブカン勤怠管理
  • jinjer勤怠
  • TeamSpirit
  • リクナビHRTech 勤怠管理
  • KING of TIME
  • IEYASU

といったサービスがあります。

教育管理システム

教育管理システムは、eラーニングによる学習教材の配信だけでなく、成績情報や学習履歴などを一元管理出来るシステムです。

eラーニングの配信のみでは、理解度や習得状況・進捗の把握が困難です。

しかし、教育管理システムを導入すると、学習教材(テスト・レポート課題・事前や事後のアンケート)の作成ができるため、受講者に合わせた教材を配信できます。

また、成績情報や学習履歴などデータを管理・蓄積することで、次年度の育成にも活かすことができます。

教育管理システムは、具体的には

  • LearnO
  • Schoo
  • KnowledgeDeliver
  • 学びばこ
  • 研修素材.com

といったサービスがあります。

HRテックのトレンド

ここまで、HRテックの歴史や現状を説明してきました。

いったいこれからHRテックはどのようになっていくのでしょうか。

新しい採用プラットフォーム

これまでの転職では、転職サイトやエージェントから申し込むのが一般的でした。

しかし、AIやビッグデータの分析の発達によって、潜在転職者の発見が容易になってきており、企業側からのアプローチが可能になってきています。

AIやビッグデータの分析は今後さらに発展することが見込まれており、転職が一般的になっている現代では、これからプッシュ型の採用プラットフォームが増加するでしょう。

リモートワークのイノベーション

2020年、世界中を襲ったコロナウイルスの影響により、リモートワークの導入が加速しました。

リモートワークはメリットもある一方で、心理的距離が離れる、ちょっとした質問や雑談ができないなど、弊害が出ているのも事実です。

そんな世の中の動きもあり、仮想オフィスのツールが登場などリモートワーク用のツールが急増しています。

他にもオフィスの自分の席にロボットを置き、家で連携したVRを見ると、まるでオフィスで仕事をしているかのような感覚を演出することも可能となっており、今後ますますリモートワークのイノベーションは進んでいくことでしょう。

人事領域でのゲーミフィケーション

ゲーミフィケーションとは、ゲームをビジネスの世界に持ち込み、ゲーム感覚で仕事に取り組むことで、生産性を向上させる考え方のことをいいます。

この考え方は、経理、営業、エンジニアなど職種を問わず取り入れられています。

従業員のモチベーションを向上させ、より良い成果を出すためにさまざまな切り口のサービスが登場しています。

労働生産性の向上が求められている現代において、今後この流れはさらに加速していくでしょう。

HRテックの今後

人材の定着化や生産性向上が求められている現代では、作業の効率化だけではなく、従業員体験(従業員が働くことを通じて得られる体験のこと)の向上も求められています。

つまり、従業員の採用から退職までのさまざまな体験の中で、いかに各従業員にパーソナライズされた体験を提供できるかが、今後の企業の鍵になるということです。

例えば、アメリカでは従業員体験を向上させるため、給与連動ローンなど、金銭的利益を提供する企業が存在しています。

他にも、日本では人材の定着率アップを目的とした「給与前払いサービス」の導入が浸透し始めるなど、従業員体験の向上を目指す取り組みが徐々に増えています。

今後は、福利厚生の充実を目的とした「HR × Fintech」などの領域でサービスが増えてくると予測されています。

HRテックの導入で業務を効率化しよう

この記事では、HRテックとは何か、導入メリット、市場規模、AIやクラウド、ビッグデータなどのテクノロジーについて詳しく説明しました。

HRテック(HRtech) とは、人的資源を意味する「Human Resources」と、技術を意味する「Technology」を組み合わせた造語で、人工知能(AI)やクラウド、ビッグデータ解析、モバイルなど最先端技術を活用し、採用・勤怠・配置・評価などの人事業務の効率化と生産性の向上を目指すサービス全般のことを指します。

HRテックが注目された背景は大きく3つあります。

  • 背景1:労働人口の減少による人手不足
  • 背景2:働き方の多様化
  • 背景3:テクノロジーの発展

HRテックの導入で期待される主な効果は次の3つです。

  • 効果1:業務の効率化と労働生産性の向上
  • 効果2:データに基づいた最適な人材配置と採用
  • 効果3:インナーコミュニケーションの活性化

人事業務の多様化に合わせて、HRテックのサービスも多数ありますが、今回は、以下の5つの種類に分類して紹介しました。

  • 採用管理システム
  • 人材管理システム
  • 労務管理システム
  • 勤怠管理システム
  • 教育管理システム

HRテックのトレンドとして以下の3つを紹介しました。

  • 新しい採用プラットフォーム
  • リモートワークのイノベーション
  • 人事領域でのゲーミフィケーション

この記事が、御社の経営の役に立てば幸いです。