入社後のギャップとは、仕事内容や環境について入社する前にイメージしていた内容と、入社後に感じた現実との相違を指します。
中にはポジティブなギャップもありますが、多くはネガティブなギャップを意味します。新入社員が入社後にギャップを感じてしまうと、早期離職の原因になってしまう可能性も。
本記事では、新入社員がどのような点にギャップを感じているのか、具体的な内容を紹介します。さらに、入社後のギャップによる問題や対策を紹介します。
入社後のギャップを限りなく小さくし、新入社員の定着率アップを目指しましょう。
入社後のギャップを感じるのは当たり前?
エン・ジャパン株式会社が2024年に実施した調査によると、約9割の方が「入社後にギャップを感じた経験がある」と回答しています。

(引用元:20代・30代のビジネスパーソン900人に聞いた「入社後ギャップ」調査ー『AMBI』ユーザーアンケートー)
このギャップにはポジティブなもの、ネガティブなものの両方含まれますが、ネガティブなギャップは、早期離職にも繋がる可能性が高く、企業にとって見過ごせない課題です。
そこで今回の記事ではネガティブな入社後のギャップの原因や対策について紹介していきます!
入社後の4つのギャップ
「実際に入社してみたら、イメージと違った」と新入社員に感じさせてしまうことは、早期の離職の原因になりかねません。ネガティブな入社後ギャップは、可能な限り生じないようしましょう。
エン・ジャパン株式会社が2024年に実施した調査によると、新入社員が感じやすい入社後のネガティブなギャップは下記の図で表されます。

(引用元:20代・30代のビジネスパーソン900人に聞いた「入社後ギャップ」調査ー『AMBI』ユーザーアンケートー)
これらのギャップを主に以下の4つに分けました!
- 仕事内容のギャップ
- 社風や労働環境のギャップ
- 給与や待遇のギャップ
- 人間関係のギャップ
詳しく見ていきましょう。
仕事内容について
入社後のギャップでよく挙げられるのが、「仕事内容が想定と異なる」という点です。例えば、「希望した部署に配属されなかった」や「人手不足で急に責任ある業務を任された」などのケースです。
特に、責任のある仕事を早期に任されると、プレッシャーが大きくなり、離職リスクが高まります。また、やりがいや成長実感が得られない場合も、モチベーションの低下につながります。
社風や労働環境について
社風がイメージと異なる場合、入社後のギャップを感じることがあります。例えば、「成長できる環境だと思って入社したのに、先輩や上司が仕事を教えてくれない」といったケースです。
また、労働環境のギャップもよくあり、例えば、「残業はほとんどないと聞いていたのに、長時間労働や休日出勤が常態化していた」などです。
特に若手はワークライフバランスを重視する傾向が強く、過酷な労働環境は「長く働ける会社ではない」と判断され、早期離職の原因になります。
給与や待遇について
給与が求人票に提示された金額より低い場合、不信感につながり、早期退職の原因になります。また賞与や昇給についても入社前の説明が不足すると、ギャップが生じやすいです。
人間関係について
職場の人間関係にギャップを感じる場合も多いでしょう。例えば「面倒見の良い先輩がいると聞いていたが、仕事を教えてもらえない」といったケースです。
新入社員は、入社したばかりの時期は不安を抱えやすく、適度に先輩社員や上司が関わることで職場に馴染んでいきます。この最初の時期に冷たい印象を与えてしまうことが、人間関係のギャップにつながります。
入社後のギャップによる問題
入社後ギャップが生じた場合、早期離職のリスクが高まることは前述した通りです。その結果、以下のような問題に発展することも考えられます。
- 採用コストの損失
- 企業イメージの悪化
- 既存社員のモチベーション低下
以下に具体的に解説します。
採用コストの損失
入社後ギャップにより早期離職が発生した場合、それまでに費やした採用コスト(求人媒体の費用、採用担当者の人件費など)は無駄になってしまいます。
また、研修を実施していた場合、教育にかかったコストも無駄になり、さらに募集をおこなう場合は、その分の費用もかさみます。
企業イメージの悪化
入社後のギャップによって離職した元社員が、SNSなどで企業の実情を発信し、企業イメージの悪化につながる恐れがあります。
近年、求職者は口コミサイトやSNSを通じて、企業の内情を調べる傾向が強まっており、実際の内容にかかわらず、元社員の声が「事実」として受け止められることも少なくありません。
さらに、離職率は求人票や各種媒体で開示が求められるため、早期離職が多い企業は「何らかの問題がある」と見なされ、応募を敬遠されるリスクも高まります。
既存社員のモチベーション低下
入社後のギャップにより新入社員が定着せず次々と辞める環境は、既存社員のモチベーションにも悪い影響を及ぼします。新人が担当するはずの業務を負担しなくてはならなく、ストレスを抱えやすくなるでしょう。場合によっては過重労働につながるかもしれません。
このように不満を抱えたまま勤務することで、周囲との軋轢を生じ、職場全体のストレス要因となってしまう恐れがあります。
入社後のギャップを防ぐ対策
入社後のギャップが生じた場合に起こり得る問題については前述しました。そこで入社後のギャップを防ぐ対策について以下の6つを紹介します。
- 現場がどのような人材を欲しているか理解する
- 入社前インターンなど業務体験を実施する
- 社員との面談・座談会を組む
- 面接で求職者を見極める
- 入社後に求職者へフォローアップする
- 自社のカルチャーや社員の人柄を伝える
詳しく見ていきましょう。
現場がどのような人材を欲しているか理解する
採用担当者が、「現場が求める人物像」を明確に理解できていない場合、入社後ギャップが生じる可能性が高まります。現場の業務を十分に理解していない場合も同様です。
採用担当者は、配属先で必要とされるスキルや、業務内容を含めた実情を事前にヒアリングし、現場責任者と採用したい人物像を明確にすり合わせておく必要があります。
入社前インターンなど業務体験を実施する
入社前にインターンシップを実施して、求職者に業務を体験してもらうことも良い方法です。
実際の職場で業務を経験することで、業務内容のギャップは生じにくく、職場の雰囲気も理解できるため、実際に働く姿をイメージしやすくなります。
先輩社員の働く姿を見ることで、より具体的な働くイメージにつながるため、インターンシップは稼働日に実施することがポイントです。
社員との面談・座談会を組む
選考プロセスに先輩社員との座談会を組み込むのも良い方法です。自社で働く先輩社員の目線で、会社や仕事内容を語ってもらうことで、入社後の姿を具体的にイメージできるでしょう。
会社説明会やホームページの会社情報だけでは伝わらない、現場の「生の声」を伝えることで、会社が抱える課題や仕事の大変さを事前に理解してもらえます。
面接で求職者を見極める
求職者の能力や適性、性格特性を正しく把握し判断するための面接力の向上も、欠かせない取り組みです。しかしそれだけでは不十分で、求職者が自社の業務内容などをどれくらい理解しているのか、確認するプロセスを設けると良いでしょう。
また、面接官による採用基準のばらつきをなくす取り組みも必要です。共通の評価シートを用いて質問を共有するなど、面接内容を構造化するのも1つの方法です。
入社後に求職者へフォローアップする
入社後のフォローを確実におこなうことで、入社後のギャップを解消できる場合があります。定期的な先輩社員との面談などの積極的な関わりにより、新入社員が抱える悩みに寄り添う姿勢を示すと良いでしょう。
気軽に相談しやすい雰囲気があれば、新入社員が抱える悩みを相談でき、職場で発生している問題改善のヒントにつながるかもしれません。
自社のカルチャーや社員の人柄を伝える
カルチャーや人柄のギャップは、離職リスクに大きな影響を重要な要素ですが、目に見えにくい情報でもあります。
だからこそ職場のカルチャーや社員の人柄を、入社前にどれだけリアルに伝えられるかがカギになります。
いかにリアルな情報を伝えるか
入社後のギャップを防ぐには、仕事内容や待遇だけでなく、職場のカルチャーや社員の人柄といった「リアルな情報」をどれだけ事前に伝えられるかが非常に重要です。これらは数字や言葉だけでは伝わりにくく、入社して初めて気づくことも多いため、事前に知ってもらう工夫が求められます。
そこで効果的なのが、社内報の活用です。日々の社内の出来事や社員の声を紹介する社内報は、企業の空気感や価値観を自然な形で伝える手段として注目されています。
入社前の内定者に社内報を公開した事例
実際に、社内報を新卒内定者に公開し、入社前から会社のカルチャーに触れてもらうことで、ミスマッチや内定辞退の防止につなげている企業もあります。

選考前の求職者に社内報を公開した事例
また、人材紹介会社(エージェント)に社内報を共有し、求職者に事前に読んでもらうことで、企業のカルチャーや社員の人柄をリアルに伝えている企業もあります。
