組織開発のフレームワーク7選|特徴や役立つ理由と運用方法を解説
企業などの組織が組織開発に取り組むことで、チーム全体の関係性が向上し組織のパフォーマンスが向上することが期待できます。
組織開発に効率よく取り組むためには、フレームワークを用いることがかかせません。
そこで本記事では、組織開発に役立つフレームワークとして「MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)」「7S」「ワールドカフェ」「OKR」「AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)」「コーチング」「タックマンモデル」の7つについて概要や特徴、運用方法などを解説します。
組織開発の基礎知識
まずは、組織開発に必要な基本知識をチェックしてみましょう。業種・地域・企業規模問わず共通する要素を優先して紹介するので、ご参考ください。
組織開発の目的
組織開発に取り組む大きな目的は、組織力強化による生産性向上です。
例えば、業務効率が上がれば限られた人員・時間でも効果的に成果を上げられ、パフォーマンスが向上します。残業代・休日出勤手当などのコストも削減でき、その分の費用を新たな設備投資や人員獲得に回すことができるでしょう。
また、組織の風通しをよくすることで従業員のエンゲージメントやモチベーションを上げ、活気をよくするのも組織開発のひとつです。新入社員から新しいアイディアが出てくるなどイノベーションが起きやすく、組織全体の利益につながります。
組織開発にフレームワークが役立つ理由
組織開発にフレームワークが役立つ理由として、自社環境に合った効果的な組織開発手法がわかることが挙げられます。組織開発をするためには売上や成績など定量的な分析だけでなく、人間環境・モチベーション・エンゲージメント・心理的安全性など数値で評価しづらい項目も分析しなければならず、明確な方針を決められない企業は少なくありません。
しかし、フレームワークを導入することで自社の強み・弱みを可視化しやすくなり、目指すべき方向性が定まります。だからこそ、組織開発に本格的に取り組む企業ほどフレームワークを導入しているのです。
組織開発のフレームワーク7選
ここでは、組織開発を成功させる代表的なフレームワークを紹介します。自社で検討したことのないフレームワークがあれば積極的に導入し、組織開発を効率化していきましょう。
1. MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)
MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)とは、その名の通り「ミッション」「ビジョン」「バリュー」による企業理念・経営理念づくりを指します。具体的には、ミッションは「存在意義」、ビジョンは「理想像」、バリューは「行動指針・行動基準」を意味します。
MVV策定により、「何を目標に・誰のために・どんなことをするのか」を可視化できるので、従業員全員が同じ方向を向きやすくなるのが特徴です。例え部署・役職・年代が違っても同じゴールを目指して努力できるので、効果的な組織開発となるでしょう。
また、MVVに従った行動をすることで社内の統一感が図れ、取引先・顧客からの信頼が増すなど副次的な効果も期待できます。
MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の運用や浸透方法
MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)は、策定しただけでは形骸化しやすく、実際にMVVに沿った行動まで喚起できない点に注意しましょう。つまり、従業員から高い共感を得て浸透させていく必要があります。
効果的な浸透方法として、1on1ミーティングでの訴求・社内表彰制度などが挙げられます。例えば1on1ミーティンでは、定期的かつ繰り返し伝えることができるので根本的な理解を促進できます。社内表彰制度を使ってバリューに沿った行動をしている従業員をピックアップしたりすれば、MVVに沿うこと自体をインセンティブのひとつとしてアピールできます。
また、社内報を使って目的・意義も含めて広く周知するのも効果的です。年が明けるタイミングや大規模なキャンペーンを打ち出す前など、節目となるときに繰り返し掲載していきましょう。
2. 7S
7Sとは、自社が保有する7つの経営資源を可視化し、強みを生かした戦略づくりをするフレームワークです。
7つのSとは、「戦略(Strategy)」「組織構造(Structure)」「システム・制度(System)」「共通の価値観・理念(Shared value)」「経営スタイル・社風(Style)」「人材(Staff)」「スキル・能力(Skill)」を意味します。これらは相互に関係しており、ひとつの長短が他に影響することも多いです。
例えば戦略やシステムに長けている場合、得意分野について他社にアドバイスするコンサルティングのような分野で伸びることが想定されます。反対にスタッフが充実しており個々のスキルも高い場合、技術者派遣のようなビジネスモデルを検討できるでしょう。
特に新規事業展開を考えるときに使いやすいフレームワークであり、自社の得意を伸ばせることが特徴です。
7Sの運用方法
7Sは、ハード面である「戦略(Strategy)」「組織構造(Structure)」「システム・制度(System)」と、ソフト面である「共通の価値観・理念(Shared value)」「経営スタイル・社風(Style)」「人材(Staff)」「スキル・能力(Skill)」とに分けて分析するのが一般的です。まずは各項目における自社の状況を整理整頓し、可視化していきましょう。
そのうえで、不足している項目について強化したり、強みを伸ばす施策を考案したりするのが近道です。課題に優先順位をつけておけば、着手すべき順番もわかりやすくなるのでおすすめです。
3. ワールドカフェ
ワールドカフェとは、自由なアイディアの創出やイノベーションの促進を目的としたコミュニケーションをするフレームワークです。カフェのようなリラックスした環境でおこなうので、一般的な「会議」「ミーティング」とは異なることを理解しておきましょう。
効果的にワールドカフェを運用できれば、新入社員であってもアイディアを発信しやすくなったり、思わぬ部門から効果的な意見が出たりする効果が期待できます。「参加者が自分の話を否定せず耳を傾けてくれる」という心理的安全性も高くなり、組織へのエンゲージメントが向上するのもメリットです。
ワールドカフェの運用方法
ワールドカフェは、参加者全員が気兼ねなく発言できるよう、4~5人のチームを編成するのがポイントです。チームメンバーが多くなりすぎると「聞いている時間」と「発言している時間」とのバランスが悪くなり、通常の会議と変わらなくなってしまうので注意しましょう。
また、ワールドカフェの時間内に具体的なアイディアや提案を生もうと必死にならないことも大切です。与えられたテーマについて自由に話し合うこと、それぞれがアイディアを共有しながら議論することに焦点をあてていきましょう。
最終的にチームごとで整った内容を共有し、チーム間の違いを理解します。意見・気づきを共有できれば自分にない視点を養うこともでき、次回のワールドカフェに活かすことも可能です。
4. OKR
OKR(=Objectives and Key Results)とは、組織の目標管理に役立つフレームワークです。「O(objectives:目標)」と「KR(key results:成果指標)」とに分けて進行状況を可視化し、方向性の修正や評価をおこないます。
なお、OKRは「会社」「チーム」「個人」の3つに細分化するのが望ましいとされています。
会社全体のOKRは経営目標の達成や定量的な成果を判断するうえで便利であり、今後の方針決めに役立ちます。チームのOKRはプロジェクトに対する進捗や予算管理に向いており、細かく進捗確認することで方針とのズレに早期の段階で気づけます。個人のOKRはスキルアップ・キャリアアップを考えるうえで重要であり、自分の成長を実感するきっかけとなるでしょう。
OKRの運用方法
OKRは、期限内での達成が期待できるものであり、かつ少し努力レベルが高くなるよう設定することが大切です。あまりにも高い理想を掲げた場合、ただの「目標」になってしまって具体的な行動を喚起することができません。また、簡単すぎるOKRでは張り合いがなくなり、OKRを策定する意味合いが薄れます。
そのため、ギリギリで達成できる目標を作ってモチベーションのひとつに替えていくのが理想です。振り返りの機会を定期的に設けながら確認していけば、効果的な改善施策が出やすくなるのでおすすめです。
5. AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)
AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)とは、ポジティブかつ前向きな質問を繰り返しながら組織または個人の価値を見出すフレームワークです。「Appreciative(価値を見出す)」と「Inquiry(探求・質問)」の頭文字を取った言葉でもあります。
大きなメリットとして、今後の可能性を広げる意味合いが強く、自信を持って新たなチャレンジができるようになることが挙げられます。つまり、組織の強みを最大限強化する方法といえるでしょう。
弱みや課題に焦点を当てるアプローチと異なり、義務感なく精力的な改革が望めるのも利点です。
AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)の運用方法
AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)は、原則として「発見(Discover)」「夢(Dream)」「設計(Design)」「実行(Destiny)」を繰り返しながら運用します。
まず、過去の成功体験や既に保有している知識・ノウハウ・ナレッジに焦点を当て、自社の強みを発見します。その後は、その強みを活かすことでどのような効果が発揮されるのか、将来的な期待も含めて夢を語っていきましょう。
次に、夢を現実にするための実行プランを設計します。具体的なアクションを想定したり課題となる部分を洗い出したりするフェーズであり、実行に向けた大事な要素となります。実行プランができ次第アクションを起こし、定期的なPDCAサイクルのもとで改革・改善を図っていきましょう。
ポジティブな切り口から自信や熱意を引き出せるので、参加者のモチベーションが高くなりやすいのもメリットです。
6. コーチング
コーチングとは、マネージャーなど管理する側の立場が繰り返し質問・対話の場を設け、部下や後輩が自ら答えに辿り着けるよう誘導するフレームワークのことです。
似たようなフレームワークに「ティーチング」や「カウンセリング」がありますが、本来の目的が異なると理解しておきましょう。
ティーチングは「指導」の意味合いが強く、答えを直接的に授けるのが特徴です。社員研修・勉強会・セミナーなどの場は原則としてティーチングに該当します。また、コンサルティングは「相談」を意味する言葉であり、具体的な改善成果より精神的な安心・安定を目的とすることが多いです。心理的安全性の向上には寄与しますが、具体的な成果・成績の改善は見込めないケースがあるので注意しておきましょう。
一方、コーチングは「自走力」をつけるためのトレーニングであり、ゆくゆくはマネジメントがなくても自発的に行動・判断する従業員を育てます。
コーチングの運用方法 1. 現状の把握
コーチングを運用するには、まず現状の把握が欠かせません。売上・成績など定量的な成果はもちろん、モチベーション・エンゲージメントなど目に見えづらい項目についてもリサーチツールなどを活用しながら可視化します。
この際、「結果が伴っていないから悪い」「モチベーションが高いから良い」と一方的な判断基準で評価しないことが大切です。一見順調に進んでいる従業員の悩みが意外と根深かったり、まだまだ標準のレベルには達していないものの上昇傾向にある従業員がいたりする点に配慮し、なるべく客観的な情報収集をしていきましょう。
コーチングの運用方法 2. 目標の確認
次に、チームもしくは個人の目標を確認します。
生産性向上を視野にいれると営業成績などわかりやすい目標になりがちですが、自主性の向上・内発的動機付けなど目標は何でも構いません。現在の課題に合っている内容か見直しながら、目標を策定していきましょう。
また、従業員ごとに異なる価値観や考え方を知るきっかけにもなるので、複数の部門から意見を募りながら目標を可視化していくことも大切です。経営者だけの独りよがりな目標にならないよう、複数の視点を取り入れましょう。
コーチングの運用方法 3. 課題の顕在化
現状と目標が明確になったら、両者間にあるギャップを課題として認識し、顕在化させます。何が課題になって今の問題が起きているのか、どんな課題を解決すれば目標に到達できそうか、思考していきましょう。
また、必要なリソース・コスト・時間などを算出し、今の体制のままで実現可能性があるかシミュレーションすることも大切です。場合によっては組織体制の大幅な変革が必要になるケースもあるので、具体的にイメージしていくことをおすすめします。
コーチングの運用方法 4. 計画の立案
達成に向けた計画を立てるため、いつまでに・誰が・何を・どうするのか具体的にイメージします。現実的に着手できそうな範囲になるよう少しずつ落とし込んでいくのがポイントであり、実現可能性の低い壮大な計画にならないよう注意しておきましょう。
なお、自走力がつく前の部下は「大きな目標なのでクリアできない」と後ろ向きになってしまいがちです。コーチングする側であるマネージャーや上司が最大限バックアップできるよう、体制を整えておきましょう。
7. タックマンモデル
タックマンモデルとは、組織の成長段階を可視化しながらフェーズに合った対策をしていくフレームワークです。組織は「形成期」「混乱期」「統一期」「機能期」「散会期」の順で成長するとした考え方であり、心理学者のブルース・W・タックマン氏により提唱されました。
自社が今どのフェーズにいるか判断することで、今後の組織拡大に向けた戦略がとりやすくなるのがメリットです。経営判断に妥当性を持たせることもでき、社内の混乱・衝突を避ける意味合いも強いです。
形成期における運用方法
形成期とは、組織やチームが経営されたばかりの段階を指し、まだ全体の統一感が図れていないケースがほとんどです。そのため、まずは相互理解を優先してお互いの考え方・思考特性・価値観・能力などをすり合わせていきましょう。
また、不安や緊張感が高くなりやすい時期でもあるので、リーダーやマネージャーが積極的に意見発信することが大切です。コミュニケーションの機会を増やし、発言の場を設けるのもおすすめです。
混乱期における運用方法
混乱期とは、お互いの考え方やスキル差を明確に実感する段階を指します。
あらかじめ相互理解に勤しんだつもりでも、実際に業務が進むにつれてギャップやズレはどうしても生じてしまうものです。既にコミュニケーションができているはずなのに生じるギャップでもあるので、お互いに納得できるまで話し合う機会を設けましょう。
リーダーやマネージャーはどちらの意見も否定することなく全体に耳を傾け、それぞれの「良いとこ取り」ができるよう調整することが求められます。
統一期における運用方法
統一期とは、ギャップやズレが解消されており組織全体の目標・方向性を共有できている段階を指します。
活発に意見を言い合える土壌が育っているためそれぞれの違いも「多様性」として認識しやすく、衝突が起こりません。同じ方向を向いて努力しようという気持ちが高まっているので、エンゲージメントやモチベーションも向上します。
ただし、方向性自体が間違っていないか、定期的に見直すのは忘れないようにしましょう。全員で間違った方向性に進んでしまうと、次の機能期に進むのは難しくなります。
機能期における運用方法
機能期とは、お互いの強み・弱みを理解しあえている段階を指します。
効果的な役割分担ができるのでパフォーマンスを最大化しやすく、生産性や業務効率性も上がります。目に見える成果が現れるタイミングでもあるので、個人のモチベーションも上がっていくでしょう。
これまでマネージャーに与えられていた役割を少しずつ従業員に移行するなどして、権限を譲渡していきましょう。その分、可能な限り機能期を長く継続できるよう、メンバーの疲れや不満・不安を吸い取ることに終始するのがおすすめです。
散会期における運用方法
散会期とは、目標を達成して組織が散会する段階を指します。
別のプロジェクトや新たな目標に向かって気持ちを切り替える時期でもあり、身につけたスキルを他で役立てる時期とも言えます。リーダーやノウハウやナレッジを社内に共有し、成功の秘訣を広く共有していきましょう。
また、目標を達成できないまま時間的な制約を受けて散会したり会社自体が倒産したり、思わぬ形で散会期を迎えるケースもあります。その場合も、何が課題だったのかを改めて洗い出し、次に活かすことが大切です。
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組織開発にはフレームワークを用いるのが効果的
効果的かつスピーディーな組織開発をするには、フレームワークを用いるのがおすすめです。自社の強み・弱み・課題はもちろん、働く従業員のスキル差や行動特性まで可視化しながら目標を策定できるので、無駄なく達成に向けて動くことができるでしょう。
なお、フレームワークの考え方を社内報で広く共有し、従業員の知識強化を図るのもおすすめです。「なぜこの手法で組織開発を目指すのか」など、根本的な背景・目的意識も広く共有していきましょう。