【セミナーレポート】エンゲージメントを向上させ続けるオンボーディングの構築と失敗しない運用のポイント
組織改善のインナーメディアプラットフォーム「ourly(アワリー)」を提供するourly株式会社は、6月29日(水)に、「エンゲージメントを向上させ続けるオンボーディングの構築と失敗しない運用のポイント」というテーマのオンラインセミナーを開催いたしました。
登壇者には株式会社NEWONE 代表取締役社長 上林 周平氏をお招きしました。モデレーターは弊社 執行役員/CSO 髙橋 新平が務めました。
パネルディスカッションでは、『リモートワーク下のオンボーディングと運用のポイント』、『オンボーディングに関わるステークホルダーの効果的な巻き込み方』など、エンゲージメント向上につながるオンボーディングについてお話いただきました。
登壇者
大阪大学人間科学部卒業。アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に入社。
官公庁向けのBPRコンサルティング、独立行政法人の民営化戦略立案、大規模システム開発・導入プロジェクトなどに従事。
2002年、株式会社シェイク入社。
企業研修事業の立ち上げを実施。その後、商品開発責任者として、新入社員から管理職までの研修プログラム開発に従事。
2003年より、新入社員から経営層に対するファシリテーターや人事・組織面のコンサルティングを実施。
2015年より、株式会社シェイク代表取締役に就任。
2017年9月、これからの働き方をリードすることを目的に、エンゲージメントを高める支援を行う株式会社NEWONEを設立。
米国CCE.Inc.認定 キャリアカウンセラー
モデレーター
ourly株式会社 執行役員/CSO
髙橋 新平
新卒で大手メーカーに入社。技術営業として都内の再開発案件に多数携わる。
その後、経営コンサルティングファーム ENERGIZE-GROUPに入社。4年間主にスタートアップ、ベンチャー、中小企業の事業コンサルティング、組織コンサルティング等に従事した後に独立。
2022年4月からourlyへ執行役員CSOとして参画。
コンサル経験を活かした総合的な提案とツール活用が強み。
セミナー本編
本レポートはパネルディスカッションメインでご紹介させていただくために割愛させていただきますが、セミナー前半では、『オンボーディングに関する近年の動向』というテーマで、上林様に下記のような内容をメインにお話ししていただきました。
- オンボーディングとは,オンボーディングの近年の動向
- 新人育成における課題意識
- 新人のモチベーションが主体性に結びつかない理由とその対策
- 新入社員育成で大事なこと
- 新人導入研修プログラム
詳細をご覧になりたい方は、アーカイブ配信からご確認ください。
ここからは、上林様と髙橋によって行われたパネルディスカッションの様子をご紹介いたします。
リモートワークになり、オンボーディングはどう変わったか?運用のポイントは?
——髙橋:コロナ禍において勤務形態がリモートワークにシフトすることで、今までのオンボーディングでは通用しなくなっているものはありますか?
——上林:1つは、「なんとなく状況を理解する」のが難しいという問題です。
新人がちょっと調子悪そうとか、飲みに行って本音を聞く、といったことができないので、いかに早く情報をキャッチするかというのが大切になります。
もう1つは、育成論として考えた時に、やはりリモートワークの難しいところは、観察学習ができなくなったというところです。観察学習とは何かというと、「となりの人がやっている仕事の進め方を横でたまたま見ていて、それと同じようにやろう」という学習方法です。この感覚がなくなっています。
これは、どれだけリモートワークの精度を上げても難しい部分があるので、ポイントとしては、経験学習サイクルに育成の重きを変えていくということです。
経験学習サイクルとは、一度達成した課題に対して内省と持論化を行い、応用・実践することを指します。
例えば、新人が2人いるとして、彼らに同じ仕事を与えると、成長する人と成長しない人に分かれます。
この差は、同じ仕事をして「そこそこできた」という経験になった時にその次も同じようなやり方をしてしまうか、経験学習サイクルを回せるかによって生じるものです。
経験学習サイクルを回させるということが、リモートワークの中では大切になります。
——上林:最近は1on1という言葉がはやっています。
1on1は、元々yahooさんが始めたのがきっかけになっていて、その当時の目的は「経験学習サイクルを回すため」だったのですが、最近は形だけ真似しようとして、単に雑談をしてる1on1が多くあります。
1on1を有効に活用するためには、「コーチングの問い」をやっていくことが大事なので、やはりそこも含めた「オンボーディング」ですよね。
——髙橋:私自身、新しい発見だったのは、 「新人側がチームに情報を発信しましょう」「自分のコンディションを発信していきましょう」という、マインドセットだったのですが、従来の研修とか、オンボーディングの考え方は、さきほどのコーチングの文脈のように、「マネージャーが常に問いかけましょう」「常にメンバーを観察しましょう」「常にメンバーのことを気にかけて飲み会に誘いましょう」といった、どちらかというと、会社側基点・マネージャー起点でのやり取りのスタートだったと思っています。
なので、新人側に、「あなたが発信するんですよ」「チームに馴染んでいくんですよ」というマインドセットを持たせることは、オンボーディングのコンセプトとして新しいと思いました。
——上林:やはりまずは土壌を作って、そのあとは受け入れ側も、部下のちょっとした発信を否定せずに、受け入れることが大事だと思いますね。
リモートワークの中でも主体性を育むオンボーディングを創るポイントは何か?
——髙橋:発信することに対してリスクを感じる新人もいるのではないかと思ったのですが、彼らが発信できるようにするために、具体的にどうやってオンボーディングされているんですか?
——上林:弊社では、全員が全社に1日2回はメッセージを送っています。
これは、朝一の「今から働きます」というメッセージと、終わったタイミングで日報を送るということを、私も含めて全員がやっています。全員が発信する、というようにすると、発信することが当たり前な状態をつくることができます。
こういうことを、できるところからつくっています。
——髙橋:上林さんも含めて日報を発信するというのは素晴らしいですね。
正直、組織構造において上司の情報は発信しなくても、構造上困ることは少ないと思うんです。
なので、例えば上司が今どういうディスカッションをしていて、どんな意思を持っているかは、ピラミッド型の構造だと、末端の社員は知らなくても、業務は回るんですよね。
それをオープンにすることによって、メンバーも、「オープンにすることは仕事の一部なんだ」ということに体感をもって理解できそうですよね。
——上林:やはり、新人にどう育ってほしいか、ということが大事だと思っています。
主体性を発揮してほしいとか、自分から工夫をしてほしい、という方に関しては、できるだけ上司の情報をオープンにした方が、やりやすくなります。「真っ暗闇の中で走れ」と言われると難しいので、オープンなカルチャーを作ることは大事なことだと思います。
——髙橋:最近、 リモートワークとハイブリッドになっていることもあって、やはり情報をオープンに、透明にしていくことが、特に今、社会に対しても、トレンドになっている感覚があります。
質問:規模が大きな会社と小さな会社、採用人数の多い・少ないで、オンボーディングにおいて、どんな違いがありますか。
——上林:結論、そんなには違うところはないのではないと思っていまして、企業理念の浸透などは職場単位になってくるので、チーム単位で見た時に、新人が30に入ることはあまりないので、最小単位できちんとオンボーディングできるような状態になることが大事なことだと思っています。
もう少しメタで見た時に、そういう意味では、各部署ごとにオンボーディング力を高めるような部署にする必要がある、というところが大きい会社の場合は少し異なってくると思います。
——髙橋:1つは、キャリアの自律をどう作っていくかというのは、会社の規模によって別れると感じてます。なぜかというと、キャリア自律していきましょう、という研修は大企業特有だと思うんですよね。
ベンチャー企業で働いている人は、(大企業の人も意志あって選んでると思うんですが)、より、意志が強いなと思っています。
さらに、業務が決まっていないゆえに、スキルが属人的につきやすい点、「いつかはこういうことをやってみたい」とか、「いつかはフィールドを変えて、こういうことをしてみたい」と思っている人が多い点を踏まえると、ベンチャー企業のオンボーディングはどちらかというと、どうやって末長く活躍し続けられるような業務機械・ミッション・ビジョンを植え付けられるか、というところにフォーカスが当たるな、と考えています。
——上林:ベンチャーの場合、早めに成長できそうな手応えとか、会社から期待されている、という実感とかが大事になってきますね。
——髙橋:ベンチャーの方はスキルがつくと、飽きてきてジョブチェンジし始めるパターンがありますね。これが離職の原因になっていると感じることが多いです。
一方で、大企業に勤めている人は、「自分は一体何のスキルがついたんだ?」 ということに悩んでいる人が多く、大企業の若手の離職理由は、スキルが身につかないことに起因するのではないかと思っています。
オンボーディングに関するステークホルダーの効果的な巻き込み方は?
——髙橋:オンボーディングの中で、「上司とメンバー」はわかるのですが、サポーターをどのように効果的に巻き込むか、またリモートワークの中でどのように上司を巻き込むか、といった具体的な事例や取り組みがあれば教えてください。
——上林:縦、横、に加えて斜めの関係性って大事ですよね。ダイバーシティアンドインクルージョンとよく言われますが、 多様性の時代になっている中で、上司1人が教えるというのは、画一的なものを教えてしまうことになり、 多様性が尊重されにくくなります。
いろいろな人に教えてもらうことで引き出しを増やして、多様性も尊重される、という状態が求められる時代に変わってきています。その際のポイントとしては、誰にどんな強みがあるのか、ということをきちんと可視化して、それを新人に伝えることが大切だと思います。
——髙橋:リモートワーク下において、組織的な生産性を上げるための1つのポイントとして、社内のベストプラクティスにどのように素早くアクセスするかが重要だと思います。リモートワークになって、より、誰がどういう強みを持っているかというのは、見えなくなっていると私自身もすごく感じましたね。
——上林:そうですね。中途社員の話にはなりますが、やはり、うまく行く・行かないの分岐点の1つが、このKNOW WHO情報と言われている、「誰がその情報を持っているか」というのを、中途の方がなるべく早く理解できるように、コネクターとなる役割の人を置いて、繋ぐことができるか、というのが重要になってきます。
——髙橋:ノウハウがうまく伝わってる会社は、共通のプロトコルのような、意思決定の方法であったり、評価方法がテキスト化・明文化されていると思うんですが、確かに、KNOW WHOといった、かゆい所に手が届く情報というのは、埋もれているかもしれないですね。
特に中途の方は、カルチャーもそうですし、決定の仕方、コミュニケーション方法など、業務において誰にどういう強みがあるかということを知るきっかけを作るというのが、大切になってきますね。
——上林:新人にも当てはまることだと思いますので、どれだけ情報オープンにして、彼らが取りに行ける状態を作るかということが、大事だと思います。
——髙橋:もう一点お聞きしたいのは、先ほど上林さんのお話の中であった、貢献が1番最初に来て、次に充実感があって、最後に成長、というコンセプトが新しくていいなと思ったのですが、今までのオンボーディングの中で言われてきたのは、「成功体験を早めに作ってあげましょう」といった話だと思うのですが、この「成功体験」と「貢献」の違いというのはどんなところにあるとお考えですか?
——上林:「貢献」というのは、誰に対する貢献かと考えた時に、いい貢献をしていこうと思ったら、チーム目標が何で、チームが現状を抱えてる問題・意識が何、という点がオープンになっていって、それらを解消できる一点になっているものだと思います。
もう1つは、チームに貢献しているということは、チームの目標や問題にリーチしてるわけですから、誰かが貢献した時には、必ず感謝がある、というのが大切です。感謝される側も、感謝されることで初めて貢献したことを実感するので、 それは1つのパラメーターになるし、「この職場にいてよかった」と思うようになるので、こういった文化をつくっていくことも必要になってくると思います。
——髙橋:新人って会社のやり方とか、コミュニケーションの仕方とか、ゴールが分かっていない状態ですよね。
新卒の場合スキルもないので、貢献できることがないのでは、と思っていたんですが、上林さんのお話を聞いてわかったのは、結局チームが何を目指していて、その目標やゴールに対して、どういう戦略を報じているかということが、きちんと自分で理解できてれば、新人でも何かしらのアクションが起こせるのではないかなと思いました。新人が今まで会社で起きていなかったことを起こすというのは、それだけで貢献になりますよね。
——上林:そこは、「いいね」と言ってあげること、受け入れ方が大事なところだと思います。
今後の日本企業におけるオンボーディングの重要性とは?
——髙橋:最後に、今後の日本企業におけるオンボーディングの重要性や、どんなことに注意して取り組んでいったらいいのかという点を教えていただけますと嬉しいです。
——上林:これだけ情報がオープンになってきていて、規模が大きい会社は全員をグリップすることは無理な時代になってきまいますので、これからはエンゲージメントも含め、「どの会社に入ったか」よりも、「どのチームに所属しているか」の方が大きなウェイトを占めてくると思います。なのでチーム単位で、きちんとオンボーディングしていくってことが大事になりますし、貢献を作っていく必要もあると思います。
もう1つは、「この人はなんでうちの会社に入ったんだっけ」ということをきちんとキャッチすることです。それは、本人の希望もそうですし、採用した側もそうなんですが、今までよりもプロセスの部分を広く見て、エンゲージすることが、オンボーディングの当たり前になるのではないかと思います。
——髙橋:会社単位も、もちろん大事ですけれど、チームでオンボーディングを機能させるプラットホームを作るというのが大切ですね。
——上林:そのために、できるだけ情報をオープンにすることが大事だと思います。
【無料】当日のアーカイブ動画のダウンロードについて
本レポートでは、以下のような質問・その他多くの部分を割愛させていただいております。
当日の様子をご覧になりたい方は、アーカイブ配信よりご確認ください。
・1on1の際に、うまく質問して、新人が考えていることを引き出すための特に大切なコツ・アプローチ方法がありましたら、教えていただきたいです。
・新卒同士でつながりを作る、切磋琢磨させるために、何かいい方策はありますでしょうか。