組織活性化とは?重要性や妨げる要因取り組む施策とキーパーソン
終身雇用制度の撤廃や働き方の多様化に伴い「組織活性化」に取り組む企業も増えているのではないでしょうか?
この記事では、組織活性化が注目されている背景から、組織活性化の重要性やそれを妨げる要因、実際に取り組む際にキーパーソンとなる役職や人物について詳しく紹介します。
組織活性化とは
活性化した組織とは「組織のメンバーが、能動的に組織と共有している目的・価値の実現に取り組む状態」を指します。
つまり従業員が組織の中で自らが持っているミッションをただ受け身に処理するのではなく、積極的に実現するために従業員自らアクションを起こしていく状態を意味しています。
あるいはミッションやビジョンの実現のために社員同士の自発的なコミュニケーションが盛んに行われるような雰囲気を指しているとも言えるでしょう。ポイントは従業員が組織の目指す方向性に一体感を持っており、なおかつ自主的に行動している点です。
組織活性化の重要性
組織活性化は従来から企業の重要な目標ですが、現代の日本においてその必要性は一層高まっています。
少子高齢化による市場縮小と日本を支えてきた終身雇用制度の崩壊により、日本の企業経営は今まで以上に大きな変革を迫られており、社員一人ひとりが自発的に行動を起こしていくような生産性高く活気ある組織の体制を整えることが急務となっています。
少子高齢化による市場縮小と終身雇用制度の撤廃についてそれぞれ詳しく紹介します。
少子高齢化による市場縮小
国立社会保障・人口問題研究所の試算では2050年までに日本の人口は1億人を下回るといわれています。ますます深刻化していく少子高齢化により、現在企業が収益の基盤としている市場において消費者が減少していきます。
こうなると新規顧客の獲得だけでは早々に市場成長の限界に達してしまうため、1人の消費者にいかに自社の商品・サービスをリピートしてもらうか、ロイヤリティを醸造していくことができるか、という顧客との長期的関係を追求する市場戦略へシフトしていくことが、企業の持続的成長には不可欠になります。
顧客との長期的関係を構築するためにも、自社の組織活性化は重要になってきます。
終身雇用制度の崩壊
少子高齢化による人口縮小や働き方の多様化といった変化に対応するために、中途採用等の多様な人材確保が本格化しており、一方で社内に活躍の場がない管理職層の処遇を見直す動きがあり、終身雇用制度が崩壊しつつあります。
終身雇用制度の崩壊は有能な社員からすれば「今の会社以上に評価される場所を見つけやすくなった」ことを意味しており、就活生の間でも成長環境や社内の雰囲気を重視する傾向もあることから、企業は今まで以上に働き手から「選ばれる組織」であり続けるように組織運営をしていく必要があります。
「選ばれる組織」である続けるためにも、組織活性化はより重要視されています。
組織活性化を妨げる要因
従来の日本企業は新卒一括採用で迎え入れた社員の間に不和が起こらないように評価制度に厳格な基準を設けず、年功序列の労働慣行の下で社員を長い時間をかけて育て上げ、長年勤めた社員が経営幹部としてトップダウンの意思決定を行ってきました。
そのため組織活性化を成し遂げるには日本ならではの様々な課題が存在します。
トップダウンによる意思決定
組織活性化を妨げる要因の一つとして挙げられるのが、トップダウンによる意思決定を行っていることです。
組織活性化とは社員が自発的にミッションを達成するための行動を起こす状態を指しますが、経営層の意思決定がトップダウン的に社員に伝えられる組織は、社員が自分自身でアクションを起こしていく力を鍛えにくい環境ということになります。
もちろん経営に関わる重要な判断は経営幹部や管理職層の役割ですが、企業の進むべき方向性を決定するプロセスが不透明で社員の関わる余地が少ない場合や、あまりに多くの事柄が限られたメンバーのみで決められるような組織は、社員が自ら思考する機会を奪い、自発的に行動するためのモチベーションを損ないます。
年功序列の文化
また、年功序列の企業文化も組織活性化を妨げる要因となりえます。
年功序列の下では実力に関わらず、勤続年数の長い従業員が社内で発言力を持つことになります。もちろん古参の社員が各々の要職に就いてこれまでに培った経験を活かしていれば心強い限りですが、実際には勤続年数や上下関係から社内政治が生じる原因にもなります。
本来の事業推進に無関係なところで年配の社員に配慮しなければいけないとすれば、現場の社員は不要なところにエネルギーを費やさなくてはならず、次第に意欲は低下していくでしょう。
不透明な評価制度
不透明な評価制度は組織活性化を大きく妨げる要因になります。
評価制度とはある意味で企業が掲げる目標を実現するために社内で育てていきたい人材やスキルがどのようなものかを示すメッセージともいえます。
評価基準の内容やその運用の在り方が不透明であれば、社員はどのような行動様式・スキルの獲得を目指せば評価につながるのか分からない状態で日々の業務を行うことになります。
業務上のゴールが見えずにいれば、社員が自発的に行動せず上司からの指示を待つような受け身の姿勢になるのは当然です。
活性化している組織の特徴
終身雇用制度といった日本独自の文化的背景から、組織活性化は多くの日本企業が苦手とするところですが、一方で活性化に成功している組織にはどのような特徴があるのでしょうか。
「組織のメンバーが組織と共有している目的・価値を、能動的に実現していこうとする状態」という組織活性化の定義に立ち返ると、企業の目指す姿と社員個人の目標とが適切に結びついて活性化している組織には以下の5つの特徴が見えてきます。
組織の社会的な使命、役割が定義されている
企業は商品の生産やサービスの提供を通じて社会に役立つ価値を提供することで、消費者から対価を得て成り立っています。
組織活性化に成功している企業はそのような企業の社会的使命や果たすべき役割を明確に定めて従業員に伝えています。
社員が自社の社会的使命を知ることは日々行う業務と社会がどのように関わるのかを再認識することでもあり、企業の目指す姿を踏まえたアクションを理解することにもつながり、モチベーションの向上にも寄与します。
ミッション・バリューが従業員に浸透している
世界で一番著名な経営学者の一人であるピーター・F・ドラッガーは企業の経営方針としてビジョン・ミッション・バリューという3つの要素を提唱しました。
ビジョンとは企業の目指すべき社会の姿であり、ミッションはそれを実現するための企業の使命、バリューはビジョンやミッションを成し遂げるための社員個人の行動規範を表します。
個人の行動規範としてのバリューが社員自身が自分の言葉で語れる程に浸透しているのはもちろんのこと、バリューの先にある企業の価値や目指す姿についても社内で広く共有された土壌でこそ、企業のミッションに繋がる社員の自発的な行動が促されます。
従業員のキャリアビジョンが組織の方向性の延長にある
上記2つは経営者の目線で組織を上から見た際に見えてくる活性化した組織の特徴ですが、社員個人の視点というのも重要です。
従業員のライフスタイルや職業の選択肢が幅広くなった昨今では、社員は多様なキャリアビジョンを持っています。
「いつか自分で起業して会社を持ちたい」「グローバルで競争的な環境に身を置きたい」「家庭とキャリアを両立させたい」といった様々なキャリアビジョンが組織の方針と整合していれば、社員は今自分がいる組織で努力することで思い描くビジョンに近づくことができるため、熱意と意欲を持って業務に取り組むことができます。
従業員が個々の業務の役割を理解している
企業のバリューや社員のキャリアビジョンは組織と個人が目指す未来に向かうための指標ですが、実際の日々の業務は地道な作業やトライアルの積み重ねです。
そんな中でも社員が自発性を損なわずにいるためには、今担っている役割や進めている仕事の背景を適切に当人に伝えていく必要があります。
「なぜその仕事を行うのか、その先に何があるのか」という業務の意味づけや将来的なミッション・バリュー、またはキャリアビジョンとの繋がりを描くことができれば、社員が日々の業務で集中力を維持しながら主体的に行動する助けとなります。
従業員同士の心理的安全性が担保されている
心理的安全性とは、「psychological safety(サイコロジカル・セーフティ)」を和訳した心理学用語です。この言葉は、ハーバード大学で組織行動学を研究するエイミーエドモンソン氏が、最初に提唱しました。
エドモンソン氏は心理的安全性について、次のように定義しています。
“A shared belief held by members of a team that the team is safe for interpersonal risk taking.”
(引用:Edmondson (1999) Administrative Science Quarterly. 44(2) ,2021年2月閲覧)
これは、「対人関係においてリスクのある行動をしてもこのチームでは安全であるという、チームメンバーによって共有された考え」と訳すことができます。
そういった従業員同士の心理的安全性が担保された組織は、従業員が自発的に行動を起こしやすく、組織活性化に繋がってるといえます。
組織を活性化させる取り組み・施策
組織活性化は長年の組織風土の問題でもあります。
その推進には一朝一夕の処方箋はなく、経営へのコミットメントと社内コミュニケーションの徹底が必要です。
以下では組織活性化に有効な7つの取り組み・施策を解説していきます。
(1)組織の社会的使命、ミッション・バリューを定義する
まずは社内外に示すべき自社の存在意義について再考してみましょう。
企業が目指している社会の姿やそのために提供していく価値について端的に言語化することができないのであれば、それは企業のビジョンが曖昧である証です。
会社設立当初に定めたミッションは経営環境の変化が激しい現代において陳腐化していることもあります。自社が存在することで生まれる価値を現代の環境を見据えて適切に再定義することがスタートです。
(2)ミッション・バリュー策定の背景を発信し、共感を得る
企業の経営方針が定まっていても、それが一般社員まで適切に浸透していなければ社員の行動にはつながりません。
企業の果たすべき使命が明確なのであれば、その実現のために何をするのかを組織レベル・個人レベルまで分解し、各々の目指すべきゴールとして周知する必要があります。
もちろんこれらのゴールは上からの一方的な指令ではなく、策定の背景についても社員に心から納得されるような双方向性を備えていることが肝心です。
(3)ミッション・バリューを実業務に落とし込む
ミッションやバリューは将来の姿や望ましい在り方を示す方針ですから、時に壮大な文言になったり、日々の繁忙な業務の中で意識されなくなったりする可能性があります。
このような事態を防ぐためにはミッションやバリューを、組織・社員のより具体的な実業務上の要素に置き替えて評価制度の中に落とし込み、目指すべき行動様式として組織全体に馴染ませていくことが重要です。
経営理念などの浸透には社内報などのツールが有効的です。
(4)個々の業務に社会的な意義をつける
何事も始めること以上に継続・発展させていくことのほうが難易度は高いものですが、それは組織運営についても同様です。
本来の企業の社会的使命と業務の関係性が常に意識されるよう、マネージャーなどの管理職と従業員が日々コミュニケーションをとり社員の管理をきめ細やかに行うことで、ミッション・バリューの浸透度を維持していきましょう。
(5)従業員のエンゲージメントを測定し改善する
従業員のエンゲージメントを測定し、改善につなげることは組織活性化には欠かせない要素です。
エンゲージメントサーベイ(社員意識調査)などのツールで従業員と組織の状態を把握することが有効です。
エンゲージメント(社員が企業に対して抱いている一体感や満足度)の高低は組織活性化と密接に関係しており、定期的なエンゲージメントサーベイを用いた組織状態の診断は現状把握や施策効果の計測に役立ちます。
(6)組織のビジョンと個々のキャリアが一致した人材を採用する
組織のビジョンと個々人の目指すキャリアが同じ方向にあることは活性化した組織の特徴でもあります。
今働いている社員がどのようなキャリアビジョンを抱いているのか把握し、組織と個人の目指す姿を適切にすり合わせる面談などはもちろん効果的な施策です。
また、採用面接において求職者のキャリアビジョンが企業の方向性が整合するかを確認しておくことで、退職しにくく意欲のある人材を採用することが可能です。
(7)従業員のコミュニケーションを促進させる機会を設ける
社員が自発的にコミュニケーションを取ることも組織活性化には重要です。
チームメンバーが活発に話し合うことが大切なのはもちろんですが、上下関係にある上司と部下、戦略を描く経営層と実務オペレーションを担う現場の間ではコミュニケーションが不足しがちです。
飲み会などの自然発生の場に任せるのではなく、1on1や社内勉強会、全社総会などの仕組み化された交流の機会を設けることで組織内の情報の流れを活性化できます。
組織活性化におけるキーパーソン
とはいえ、これらの取り組みを社内のすべての従業員に対し一様に推進することは難しいでしょう。
そこでミドルマネジメント層と新卒入社の若手というキーパーソンにフォーカスすることで効果的に組織活性化を進めることができます。それぞれの役割と育成上のポイントしてみましょう。
キーパーソン(1) ミドルマネジメント層
組織の活性化は大きく分けて
- 経営理念の明確化・浸透
- 社内コミュニケーションの活発化
という2つの要素に区分できますが、ミドルマネジメント層は双方の面で実務上の推進者という役割を担う立場にあり、組織活性化の鍵を握る存在です。
ミドルマネジメント層の役割と重要性
そもそも企業におけるミドルマネジメントの最大の役割とは経営層とメンバーをつなぐパイプ役です。
もちろん経営層が現場クラスのメンバーに働きかける機会は好ましいものですが、多忙な経営層がきめ細やかな現場の管理を行うのは現実的ではありません。
だからこそ経営層が定めた企業の目指す理念を実現すべく、部下の行動を適切に管理してフィードバックを与え、多忙な業務に追われながらもメンバーが進むべき方向性を指し示すミドルマネジメントという存在が必要となります。
ミドルマネジメントに期待されるコミュニケーションとは業務やキャリア上の事柄に留まらず、個々の社員が持つモチベーションやパフォーマンスに関わるものも含まれており、部下の忖度なく気軽に本音で話し合うことができる関係性の構築も求められます。
このようなコミュニケーションで理念の浸透を担うミドルマネジメント層とは誰にでも務まるものではなく、本来は企業戦略において重要度の高い存在なのです。
ミドルマネジメント層育成のポイント
ポイント(1) 経営理念の理解を深める
ミドルマネジメント層の役割は経営理念を組織全体へ広めることです。
そのためには彼ら自身が経営層の定めた理念を正確に理解し、理念の背後にある意思決定や経営環境の変化、あるいは経営層の想いを汲み取ることが求められます。
ポイント(2) コーチングスキルを高める
広めるべき経営理念を把握したミドルマネジメント層の次の役割は、それをメンバーに適切に伝えていくことです。
しかし、従業員に対して一方的に規範や要求を伝えるコミュニケーションでは、価値観の多様化した人材に対して画一的なアプローチに終始してしまい、効果的ではありません。
相手の立場や個々のキャリア観に基づき支援的なコミュニケーションを行いながら相手の自走を促すコーチングのスキルを高めていくことが望まれます。
キーパーソン(2) 新入社員
組織活性化のもう一方のキーパーソンは新入社員です。
彼らはゼロから社会人としての基礎を学び、将来的には管理職や経営幹部へと成長して次の時代を創りあげていく人財です。
ゼロから新しいことを吸収していく彼らはいわば白紙のキャンバスであり、会社のビジョンが再定義された転換期のようなタイミングであっても、一定の経験を積んだ社員に比べて早々に新しい理念や行動様式に馴染んでいく柔軟性があります。
新入社員の役割と重要性
ミドルマネジメントが現在の理念の推進役であったのに対し、新入社員は将来的な理念の構築や推進を通じ長期的に会社の在り方を決めていく役割を持ちます。
また短期的には新入社員は職場を活気づけてコミュニケーションのきっかけを作り出します。経験を持たない彼らは分からないことが多いからこそ、先輩社員に質問するためのコミュニケーションを進んで行ってくれます。
新入社員育成のポイント
ポイント(1) 自発性を育成する
新入社員を育成していく上で重要なのは自発性を育むことです。
全てが未経験である以上、周囲からの教えを受けることは必要ですが、いずれ独り立ちして部下を率いる立場へと成長するためには、自主的に課題を発見するなど、新卒社員が自発性を発揮してチャレンジできる余地を残しましょう。
ポイント(2) プロセスも評価する
中途採用者と異なり業務経験を持たない新入社員はシンプルなタスクをこなすだけでも脳内で試行錯誤を繰り返しています。
新卒社員を評価・指導する際は結果にのみ注目するのではなく、彼らがそのアウトプットを出すに至ったプロセスも併せて確認し、良い点があれば適切に褒めていきましょう。
なかなか成果につながらず思い悩む状況でも、自信を失うことなくモチベーションを維持しながら働いてもらうことができます。
キーパーソンの特定には ourly profile
ourly profile(アワリープロフィール)は、個人のプロフィール機能や組織図機能などにより、組織のサイロ化を解消する社内コラボレーション創出ツールです。
3つの大きな特徴により、リモートワーク下でも部署を超えた相互理解や社内のコミュニケーション活性化を実現します。
- 人となりが一目でわかる自己紹介画面
- 独自の探索機能により、思いがけない出会いを創出
- 組織図により、チーム・部署を超えて組織を理解できる
顔写真や部署、役職などの基本的な項目以外に、強みや趣味、スキルなどが一目でわかりコミュニケーションのきっかけが生まれます。
また、全メンバーに共通のQ&Aを設定することができるので、部署・拠点・役職を超えたメンバー同士の相互理解促進にも役立ちます。
料金については、従業員規模に応じて幅広くご用意しております。詳しくはサービスページをご覧ください。
キーパーソンを意識して組織活性化を目指す
組織活性化のためには、組織活性化を妨げる日本企業特有の課題を打破しながら、組織の方向性と社員の方向性を一致させるべく、企業の向かう方向性を明確すると同時に社内コミュニケーションを円滑化していくことが求められます。
少子高齢化や市場縮小といった経営環境の荒波に飲まれることなく、消費者・社員から選ばれ続ける企業であるためにも、組織内のキーパーソンにフォーカスして組織活性化を目指しましょう。