デジタルワークプレイスとは?成功のポイントと必要なツールを解説
デジタルワークプレイスとは、オンライン上で全ての業務をこなせるように、デジタル空間に社内情報やコミュニケーションツールなどを集約させた仕事環境を指します。
コロナ禍によってテレワークを行う機会が増えた現在では、一部業務をデジタル化やオンライン化したとしても、生産性はむしろ下がってしまうケースも見られます。
そのため、生産性や従業員間のコミュニケーションを推進するために、デジタルワークプレイスを導入する企業が増えています。
そこで本記事では、デジタルワークプレイスのメリットや成功させるためのポイント、実現に必要なツール、企業事例を詳しく解説します。
デジタルワークプレイスとは?
デジタルワークプレイスとは、仕事に必要なリソースをクラウド上に集約した業務環境を指します。必要な情報やアプリ・ツールなどは、すべてデジタル上のプラットフォームに集約され、従業員はどこにいてもデバイスを介してアクセスすることで仕事を進められます。
デジタルワークプレイスは、インターネット環境さえあれば、時間や場所を選ばないフレキシブルな働き方を可能にするビジネス戦略です。情報やデータ、ツールやアプリといったリソースが集約されることで大幅な効率化が見込めるため、近年注目を集め導入する企業が増えています。
労働環境のデジタル化との違い
新型コロナウイルス感染症の流行を契機に、テレワークを導入し労働環境のデジタル化を進めてきた企業は多いでしょう。しかし一方で、オンライン上のコミュニケーションの課題や、セキュリティ面の問題も浮き彫りになったことも否めません。
デジタルワークプレイスは、こうした業務環境のデジタル化による課題や問題点の解決を図り、業務プロセスを最適化しようとする概念です。単に労働環境のデジタル化を図るのではなく、デジタル化・オンライン化を事業成長につなげようとする戦略的な視点を有することが特徴です。
デジタルワークプレイスで実現する仕事環境
デジタルワークプレイスで実現できる仕事環境は、5つの「Any」で示すことができます。
- 「Anytime(いつでも)」
- 「Anywhere(どこでも)」
- 「Any Device(どんなデバイスでも)」
- 「Anybody(誰とでも)」
- 「Any Application(どんなアプリでも)」
時間や場所、デバイス・アプリの制約がない仕事環境を構築することで、多くの従業員に多様な働き方を提供することが可能になります。そのことが企業価値を高めることにもつながるでしょう。
デジタルワークプレイスを導入することにより、具体的には以下2つの特徴を持った仕事環境を実現できます。
場所や時間に縛られない働き方
デジタルワークプレイスの導入により、インターネット環境さえあれば、どこにいても業務を遂行できるようになります。出社の必然性がなくなるため、時間的な制約からも解放され、育児や介護など個人的な事情にも対応できる、柔軟な働き方が可能になるでしょう。
また、自宅のみならず、出張先や旅行先など遠隔地でも業務を遂行できます。会社の所在地から遠く離れた地方へ移住し、そこを拠点に業務活動をおこなう「ワーケーション」という働き方も可能です。政府が注力する「地方再生」にもつながる働き方として、注目を集めています。
デジタルコラボレーション
デジタルワークプレイスにより、部署間・担当者間の業務連携や情報共有が密になる効果が期待できます。たとえば各部門が紙でファイリングした資料がデジタル化され、クラウド上で共有されることにより、どこからでも閲覧できるようになります。また、マニュアルや規程などの周知事項も、アップロードしておくことで配布する必要はなくなるでしょう。
スケジュールやタスクも、クラウド上で一元的に管理できるため効率的です。ビジネスチャットや社内SNS、Web会議ツールを活用すれば、情報伝達の確実性を担保しつつコミュニケーションの活性化も図れます。
デジタルワークプレイスのメリット
デジタルワークプレイスのメリットは、多様な働き方を提供できることです。テレワークでも不便を感じない業務環境は、以下のメリットをもたらします。
- 社内の連携が強化される
- 生産性が向上する
- 従業員のエンゲージメントが向上する
詳しくみていきましょう。
社内の連携が強化される
従業員が頻繁に顔をあわせる機会がなくなっても、デジタルワークプレイス上にコミュニケーションツールを充実させることで、社内の連携強化が期待できます。チャットツールや社内SNSを活用することで、よりオープンなコミュニケーションが可能になるためです。
部署内の意思疎通はもちろん、部門や役職を超えた情報共有が容易におこなえる環境が構築されます。全社的に連帯感が高まり、連携強化が図られるでしょう。
生産性が向上する
デジタルワークプレイスを導入する過程では、業務のデジタル化が進行します。そのプロセスにおいて多くの業務は自動化され、情報が一元的に管理されるようになります。こうした環境が構築されることでヒューマンエラーが削減され、効率化が進み業務スピードが向上するのです。
業務連携が深まることによる相乗効果もあいまって、生産性の飛躍的な向上が期待できるでしょう。
従業員のエンゲージメントが向上する
デジタルワークプレイスの大きなメリットは、従業員に寄り添った仕事環境を提供できる点にあります。近年ワークライフバランスを重視する人材は増えており、時間や場所に縛られない柔軟な業務環境を提供することは、こうした人材の満足度を高められるでしょう。
また、ライフステージに応じた働き方も可能になるため、貴重な人材の流出を防ぐことにもつながります。個別の事情に配慮した働き方を提供することにより、会社に対する愛着を持ち続け、高いモチベーションで働いてもらえるのです。
デジタルワークプレイスを成功させるためのポイント
デジタルワークプレイスを成功させるためには、以下に挙げる3つのポイントをおさえておく必要があります。
- セキュリティ対策を整える
- 使いやすく不公平感のない勤怠管理を導入する
- 先行投資やランニングコストを抑える
詳しく解説します。
セキュリティ対策を整える
デジタルワークプレイスは、クラウド上で重要な業務情報をやり取りするため、ネットワークセキュリティの対策は最大の課題です。さまざまな場所から、あらゆる端末でアクセスするため、情報漏洩のリスクは当然高まります。
リスク回避に有効な手段として、VPN(Virtual Private Network)が挙げられます。これは、特定の人だけが利用できる仮想ネットワークで、権限を持つ関係者のみしか入ることができません。こうした高度なセキュリティ対策は、デジタルワークプレイスの構築に必須のものです。
使いやすく不公平感のない勤怠管理を導入する
出社を必要としない業務環境で生じる課題として、勤怠管理の透明性を保つことが挙げられます。上長の目が届かない場所で働くからこそ、客観的で公平性の高い勤怠管理が求められます。クラウド型の勤怠管理システムを導入するなど、従業員の使いやすさに配慮したシステムを導入するのも一つの方法です。
また、制度面からのアプローチも効果的です。労働時間よりも成果を重視する評価制度など、新たな働き方に対応した制度の構築も必要となるでしょう。
先行投資やランニングコストを抑える
コスト面の課題をクリアすることは、デジタルワークプレイスの導入を成功させるためには、避けて通れません。サーバーの導入やデバイスの購入など多くの初期費用がかかります。また、セキュリティなど運用時のランニングコストや、従業員へのレクチャーといった教育コストも発生するでしょう。
導入するデバイスやソフトウェアを厳選し、不必要なものを購入しないことで全体のコストを抑えることが必要です。そのためには、デジタルワークプレイスの導入目的を明確にすることが欠かせません。
デジタルワークプレイスの実現に必要なツール
デジタルワークプレイスを実現するには、時間や場所の制約をクリアしなくてはなりません。情報管理やコミュニケーションにおいても、多くの課題が存在します。こうした課題を解決するには、さまざまなツールを組み合わせることにより環境を構築することが求められるでしょう。以下に、デジタルワークプレイスを実現するために必要なツールを解説します。
いつでもどこでも働ける環境に必要なツール
「いつでも・どこでも働ける環境」を実現するには、クラウド環境が不可欠です。オフィスに出社せずに仕事を進めるには、ネットワークを経由してのデータの閲覧や、ファイルの共有・共同編集ができる環境が必要になります。
こうした環境の構築には、クラウドが適しています。クラウド上でリソースを一元的に管理できることは、作業や情報共有の効率化だけでなく、セキュリティ強化の面でも有効です。
オフィス環境のデジタル化に必要なツール
オフィス環境のデジタル化には、クラウドだけでなく、コミュ二ケーションを充実させるツールが必要です。日常業務における意思疎通には、ビジネスチャットの活用が適しています。ちょっとした報告や、それに対するリアクションなどは、気軽にやり取りできるチャットツールが好ましいためです。
また、オンライン会議ツールも不可欠です。社内の打ち合わせや、取引先との商談など、対面に変わるコミュニケーション手段として定着しつつあります。さまざまなツールのなかから、自社にあったサービスを導入するとよいでしょう。
情報の可視化に必要なツール
デジタルワークプレイスの実現においては、情報の取り扱いが大きな課題となります。テレワークでは、上長が部下の勤務状況を目視で確認できません。そのため、勤怠に関する情報は常に可視化しておく必要があります。クラウド型の勤怠管理ツールの導入が、現実的な解決策となるでしょう。
また、情報管理の面ではセキュリティに関するツールは不可欠です。クラウドへのアクセスや、デバイスの活用状況などは常に把握しておく必要があります。
社内連携の強化に ourly
ourlyは、組織改善に特化した全く新しいweb社内報サービスです。
web知識が一切不要で、誰でも簡単に投稿できるだけでなく、閲覧率や読了率(記事がどこまで読まれているか)などの豊富な分析機能が特徴的です。
またourlyは、社内報運用を成功に導くための豊富な伴走支援体制の強みを持ち、新たな社内コミュニケーションを創出する魅力的なツールとなっています。
ourlyの特徴
- SNSのように気軽にコメントできる仕様で、社内のコミュニケーション活性化を実現
- web知識が一切不要で簡単に投稿できる
- 豊富な支援体制で社内報の運用工数を削減できる
- 分析機能に特化しており、属性・グループごとにメッセージの浸透度がわかる
- 組織課題や情報発信後の改善度合いを可視化することができる
「社内の雑談が減った」「従業員にメッセージが伝わっているかわからない」といった悩みを抱える方におすすめのweb社内報ツールです。
デジタルワークプレイスを実現した企業事例
ここでは、デジタルワークプレイスを実現した企業の事例を紹介します。いずれの企業もクラウドやデジタル技術を活用し、働きやすさにつなげている点が特徴です。
キリンホールディング|本社のリニューアル
キリンホールディングでは、新型コロナウイルスの流行に対するBCP(事業継続計画)の一環として、デジタルワークプレイスの構築に着手しています。出社比率を20%程度に抑えることに成功し、それにあわせて本社オフィスのリニューアルをおこないました。
オフィス全体をデジタル化し、各座席の出社状況をスマートフォンからリアルタイムで確認できるようにしています。また、各フロアの一部をフリーアドレスとし、仕事の目的に応じてフロア・エリアを柔軟に使い分けできるようにしました。オフィスを、より機能的にすることで、組織力の強化を図っている事例といえるでしょう。
ポルシェインフォマティク|Microsoft Office 365への移行
ポルシェインフォマティック社は、自動車メーカーであるポルシェ・ホールディング・ザルツブルク社のIT子会社です。同社は、「Microsoft Office 365」プラットフォームを活用することにより、デジタルワークプレイスの構築に成功しています。
グループ会社に所属する世界27ヵ国、約3万人の従業員が時間や場所の制約を受けずに、クラウドにアクセスできる環境を整えました。全社規模で整合性を持たせたクラウド環境を構築したことにより、高いセキュリティを維持したモバイルワークを可能にしています。
アクセンチュア|Microsoft Azureへの移行
アクセンチュアは、マイクロソフト社のソリューションを活用し、デジタルワークプレイスの構築に成功しています。「Microsoft Azure」をプラットフォームとしてクラウド環境を構築し、世界中にいる50万人以上のワーカーに、柔軟な働き方を提供しています。
社内のやり取りは「Microsoft Teams」に集約することで、情報共有やコミュニケーションの活性化を図りました。こうしたツールを活用し、業務上関連の薄い従業員ともコミュニティーを構築するなど、コミュニケーションの活性化を推進しています。
デジタルワークプレイスの実現には社内連携の強化を
出社を前提としない柔軟な働き方を提供することは、従業員エンゲージメントを高め、企業価値を向上させます。そのためには、デジタルワークプレイスの構築は欠かせません。テレワークを中心に業務を遂行するには、会社全体でコミュニケーションの活性化に取り組み、社内連携の強化を図ることが必要です。
普段は顔をあわせることがなくても、仕事仲間の人となりを知ることは、業務をスムーズに進めるうえで欠かせません。Web社内報ツールの活用など、社内コミュニケーションを促進する取り組みも必要となるでしょう。