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インセンティブ制度とは?具体例や注意点とユニークな企業事例を解説

インセンティブ制度とは、従業員の実績を報酬などに反映させる評価制度です。成果がわかりやすい営業職や販売職の従業員を対象に導入されることが多く、モチベーションの向上などが期待されます。

しかし個人主義に陥りやすいなどのデメリットもあり、導入には注意が必要です。

そこで本記事では、インセンティブ制度のメリット、デメリットのほか、具体例や導入を失敗させないための注意点を解説します。最後に独自のユニークな制度を導入している企業事例を紹介しますので、インセンティブ制度への理解が深められるはずです。

目次

インセンティブ制度とは

インセンティブ制度とは、従業員の実績に対し報酬という刺激を与え、モチベーションを向上・持続させる仕組みを制度化したものです。「ご褒美」のようなイメージがあるため、インセンティブというと「金銭的報酬」を連想しがちですが、昨今では報酬のタイプもさまざまです。

語句としての「インセンティブ」は、もともと「動機づけ」を意味します。外部からの刺激により意欲を掻き立て、行動を促す「外発的動機づけ」と考えればよいでしょう。そのほか、刺激により起きた行動がもたらす成果そのものを指して、「インセンティブ」と呼ぶこともあります。その場合は「報酬」のニュアンスが強くなります。

ボーナスや歩合制との違い

インセンティブと混同しがちな「ボーナス」と「歩合制」の違いを解説します。「歩合制」とは、個人の売上に対し一定の歩合率を乗じた金額を、固定給にプラスして歩合給として支給する仕組みです。当然、売上を上げれば上げるほど、受け取る給与も高くなります。

これに対しインセンティブは、目標達成や一定の業績を上げるなど、貢献した従業員に支給される「ご褒美」のようなものです。しかもその「ご褒美」は、金銭的なものとは限りません。
一方、「ボーナス」は会社の業績に連動して支給される一時金です。インセンティブは功績があった個人を対象とするのに対し、ボーナスは原則全従業員に支給されます。

インセンティブ制度を導入するメリット

インセンティブ制度を導入する目的は、従業員のモチベーションを刺激して高い成果を求めることにあります。インセンティブ制度のメリットは、主に以下の3つが挙げられます。

  • 従業員のモチベーションが向上する
  • 公平に評価できる
  • 意欲的な従業員が確保できる

従業員のモチベーションが向上する

個人の実績に対し給与以外のプラスの報酬があることは、従業員のモチベーションを向上させます。「頑張り」が分かりやすく報われる仕組みがあれば、目標達成への執着心が高くなるなど、意欲的な業務行動につながりやすくなるためです。

金銭的な報酬以外にも、表彰や上司・同僚からの賞賛といった「名誉」もモチベーションを向上させ、意欲的な業務行動を引き出します。こうした状態が連鎖することにより、会社の業績も向上し、組織の活性化が促進されるのです。

公平に評価できる

従業員への報酬が給与や賞与だけであれば、「自身の成果が正当に評価されていない」と不満を持つ従業員が出てくることもあります。こうした不満が募ることで会社への不信感につながり、離職リスクを高めます。

インセンティブ制度は、成果に対し目に見える形で報酬が与えられるため、結果を出した人物が分かりやすく報われる仕組みです。インセンティブの対象となる基準も明確に定められているため、公平な評価が可能になります。

意欲的な従業員が確保できる

日本における報酬制度は、現代においても年次による横並び意識が高い側面があります。インセンティブ制度を導入している企業は、そう多くはありません。こうしたなか、インセンティブ制度を積極的に活用していることは、対外的なアピール材料になります。目標達成意識が高い意欲的な人材にとっては、魅力的な会社と映るためです。

成果に応じたインセンティブを明確に打ち出すことにより、結果にこだわる高いモチベーションを持った人材が集めやすくなることも考えられます。

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インセンティブ制度を導入するデメリット

一方で、インセンティブ制度を導入することによるデメリットも存在します。制度設計や運用次第では、組織運営に悪い影響を及ぼすかもしれません。

具体的なデメリットは、以下の3点が挙げられます。

  • モチベーションが低下する従業員もいる
  • 個人主義に陥る危険がある
  • 従業員へのプレッシャーが大きい

モチベーションが低下する従業員もいる

インセンティブの対象となった従業員は、達成感を得てモチベーションをさらに高めます。一方で、頑張ったが成果を出せなかった人もいます。インセンティブをもらえなかった従業員のモチベーション低下は仕方のないことです。

エース級の人材だけが集中してインセンティブの対象となることで、その他多くの従業員がモチベーションを下げ、意欲を失ってしまうことも考えられます。

個人主義に陥る危険がある

チーム運営に支障をきたす恐れがある点も、デメリットとして考慮しておかなくてはなりません。個人の成果を追求しすぎるあまり、チームや会社全体の利益を考える視点が欠如してしまう恐れがあるためです。

個人主義に陥った場合、チームメンバーどうしの連携や協力体制がとりにくくなり、有益な情報が共有されないといった問題が生じるかもしれません。最悪の場合、人間関係が悪化し組織運営そのものに支障をきたす恐れもあります。

従業員へのプレッシャーが大きい

常に成果を出し続ける優秀な人材にとっては、インセンティブは大きな励みになります。一方で、強く成果を求められる雰囲気に、プレッシャーを感じてしまう人材がいることも忘れてはいけません。

プレッシャーによるストレスで、本来の能力を発揮できない人材が多く出てしまうようであれば、かえって生産性を低下させます。本末転倒の結果にならないよう注意しなくてはなりません。

インセンティブ制度の具体例

インセンティブ制度における報酬は、金銭的報酬に限らないことは前述しました。昨今ではモチベーション向上の施策としてだけでなく、従業員と会社の関係性を深める施策と捉える企業も多くなり、インセンティブ制度の報酬は多様化する傾向にあります。

賞与などの金銭的インセンティブ

インセンティブ制度の報酬としてもっとも一般的なものが、金銭による報酬です。具体的には、賞与の支給額を成果に応じて変動させる「変動賞与制度」が挙げられます。通常の賞与に成果報酬を上乗せする仕組みです。

また、賞与よりも短いスパンでインセンティブを支給する方法もあります。毎月の営業成績や契約件数など、月単位の成果に応じて金銭的インセンティブを支給する方法です。

表彰

表彰により、心理的なインセンティブを与える方法もあります。全社的な社内表彰制度を設け、成果を出した従業員を表彰するものです。金一封など金銭的報酬とセットにするなど、柔軟な運用も考えられます。

売上や契約件数で成果を測りやすい営業職だけでなく、個人の成果が把握しにくい間接部門や研究職などにも対応しやすい方法です。表彰により賞賛を受けることで、承認欲求が高まりモチベーションの向上につながります。

昇格

成果を上げることにより、仕事に見合った役職が与えられる仕組みです。出世がモチベーションの源になる制度と考えれば分かりやすいでしょう。成果を上げ高い評価を得ることで、昇格・昇進し責任や権限の範囲が広がります。成果を出した人材が部下を持ち、リーダーとしての役割を担うといった制度も該当します。

役職を得てより高いレベルの業務にチャレンジできるので、承認欲求や自己実現欲求が満たされるインセンティブといえるでしょう。

特別休暇

働き方や仕事に対する価値観が多様化するなか、金銭的なインセンティブよりも休暇を求めるニーズも出てきています。成績優秀者に、1カ月程度の特別休暇を付与するといったインセンティブが例として挙げられます。雇用が確保された状態で、自由な時間が欲しいと考える人材は一定数いるのでしょう。

また、長期の海外研修をインセンティブに設定する企業もあります。旅行業界では、最長1年間の海外研修を与える制度を設ける企業もあるようです。

インセンティブ制度を導入する際の注意点

インセンティブ制度の導入は、従業員のモチベーション向上に即効性のある施策です。しかし、安易に導入した場合、組織運営にひずみを生じさせる恐れもあります。導入に際しては、副作用がないように慎重に検討しなくてはなりません。

以下に注意点を解説します。

インセンティブ制度の対象選定は慎重におこなう

インセンティブ制度の対象となる従業員の選定は、不公平感が生じないよう慎重におこなわなくてはなりません。一部のハイパフォーマーのみが恩恵を受ける制度であれば、会社を支える多くのミドルパフォーマーのやる気を削ぐ結果となるためです。

また、明確に数字で成果が出る営業職のみを対象にした場合、バックオフィス業務を担当する従業員の不満が生じる恐れがあります。営業以外の職種にも対応できる制度設計が望ましいといえるでしょう。

個人成果以外も評価する

インセンティブ制度により、従業員が個人主義に陥らないように配慮する必要もあります。個人間の競争が行きすぎると、組織としての一体感がなくなります。情報の共有や人材育成への意識が薄れ、短期的な成果は上がるが、組織としての成長が見込めません。

こうした事態を避けるためには、チームの成果を評価の対象にするなどの工夫が必要です。人材育成の取り組みを評価軸に据えるなど、組織的な成長を促すためには長期的な視点による制度設計が求められます。

金銭面以外のインセンティブ制度を設ける

金銭的インセンティブによるモチベーションの向上は、短期的な効果は期待できますが持続が難しいものです。収入格差や収入が不安定になるなど従業員の不満の原因となり、離職につながるようであれば本末転倒です。

働くことに対する価値観が多様化している現代では、金銭のみがモチベーションに作用するとは限りません。自己実現欲求や成長欲求が満たされるような制度の設計・運用を検討するとよいでしょう。

ユニークなインセンティブ制度を導入している企業例

ここでは、ユニークなインセンティブ制度を導入している企業の事例を紹介します。いずれの企業も、自社が目指す組織風土の構築を視野に入れた制度を、設計している点が興味深いところです。

以下、3社を紹介します。

エストコーポレーション

医療関連のITサービスを提供するエストコーポレーションでは、遊び心のあるインセンティブ制度が導入されています。その一つが「オリジナル表彰制度」です。数値化できない従業員の人間力を評価するために、テーマに応じた賞を設け全従業員からの投票により受賞者を決めます。

受賞者はサイコロを振り、出た目に応じた報奨金がもらえるというものです。

もう一つは、「エストクエスト制度」です。経営層から出される課題を「クエスト」と呼び、チャレンジする従業員を募集し、クリアした場合は会社が用意した賞品をもらえます。チャレンジ意欲やモチベーションが向上し、好業績につながっているようです。

メルカリ

フリマアプリを展開するメルカリでは、ピアボーナス制度を導入し、従業員どうし尊重しあう組織風土の醸成に成功しています。ピアボーナス制度とは、従業員間で感謝の気持ちとともに報酬を贈りあう仕組みです。

「メルチップ」と呼ばれる報酬を、ビジネスチャットツールを用いて贈りあいます。そのやり取りは、オンライン上でほかの従業員にも共有され、拍手を送ることもできるというものです。社内に「承認しあう文化」ができたことにより、従業員満足度が向上した好事例です。

リクルートホールディングス

リクルートホールディングスは、金銭的インセンティブに特化することで優秀な人材の獲得に成功しています。同社のインセンティブ制度は、月間、半期、通年などさまざまな期間で営業成績に応じた高額のインセンティブを用意しています。達成の指標も、目標達成度の高さ、スピード、戦略商品の販売実績などさまざまです。

こうした制度が企業イメージとなり、目標達成意識の高い人材が集まりやすい企業文化の醸成に成功しています。

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インセンティブ制度の導入は自社に合わせた工夫が必要

企業事例からも分かる通り、インセンティブ制度の導入は、自社が目指したい組織文化につながる仕組みを構築することが理想です。インセンティブ制度は、持続的な組織成長につながるものでなくてはなりません。

インセンティブ制度によりモチベーションを持続させるには、従業員の制度に対する理解を促す取り組みも必要です。Web社内報など、オンライン上の社内広報の仕組みを活用することも、選択肢の一つとして検討してみてください。

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この記事を書いた人

Kanei Yoshifusaのアバター Kanei Yoshifusa ourly株式会社 コンサルティングセールス・組織開発チーム

前職は店舗ビジネス向けの業務効率化SaaS事業を展開する企業でCSに従事。
その後、ourly株式会社に参画。
200社以上の企業に組織課題解決の提案、現在30社の組織開発を支援。
富山県上市町出身。趣味は筋トレ/声マネ/滝行。

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