売上高500億円超の企業創業者が語る、優秀な人を集め、強い組織文化をつくる秘訣とは
あの企業には優秀な人が多くいる…。皆さんも思い浮かぶ企業がいくつかあると思いますが、そういった企業が採用や組織文化づくりで何を大切にしているのか、気になりませんか。
今回は、ワークスアプリケーションズを創業し、売上高500億円超の企業へと成長させたのち、パトスロゴスを創業した牧野正幸CEOにインタビュー。スタートアップにおける採用、組織文化づくりについて伺いました。
「良いものが、売れる」のではなく「売れたものが、良いものになる」
──まず、パトスロゴス社はどのような事業を営んでいるのか教えてください。
我々は、人事領域向けのBtoB SaaS間のデータ連携、管理をシームレスに行うためのサービス、HR共創プラットフォーム「PathosLogos」を提供しています。
一昔前は、BtoB向けでは統合型ERPが主流でしたが、リリースまでのサイクルが長く、柔軟性に欠くことから時代に合わなくなり、代わりに労務管理、経費管理、タレントマネジメントなど様々な領域に特化したSaaSが主流となったのはご存知の通りです。
統合型ERPではデータが一元管理されていましたが、現在主流の領域特化型のSaaSでは、企業内で利用するサービスが増えていくと、それぞれのSaaSにデータを登録したり、統合分析するときにあちこちからデータを持ってきたり、そういう管理面の負担が大きくなる。そこで、我々はそのSaaSをつなぐハブ機能を提供することにしたのです。これがHR共創プラットフォーム「PathosLogos」です。
──日本経済が停滞する中、スタートアップへの期待が大きくなっています。日本のスタートアップ経営者が意識すべきことはなんでしょうか。
アメリカにはよく「スタートアップのエコシステムがある」と言われますが、これは何かというと、サービスの作り手、資金の出し手、そして新しいサービスを積極的に取り入れる買い手が揃っているということなんです。
日本のスタートアップ経営者がよく間違えてるのが、「良いものが、売れる」と思っているところ。これは逆で「売れたものが、良いものになる」のです。日本はスタートアップのエコシステム内にサービスの買い手となる企業がいないので、売るということを真剣に考えなくちゃいけない。営業がものすごく大事です。
一方で、営業だけを考えるのもいけない。製品やサービスは何でも良いからとにかく売ればいいとなると、いつの間にか、社会に対して新しい価値を提供するのではなく、売れるものを売っちゃうビジネスになる。
だから両方の視点が経営者のなかにあることが大事なんです。
優秀な人がなぜ自社に来るのか。その理由を徹底的に突き詰めること。
──スタートアップがサービスを広げるためには強い組織づくりが必須です。優秀な人を集めるために重要なことはなんですか。
大きく分けると3つあります。まず優秀な人しかいない組織を作ること、次に事業に社会貢献性があること、そして最後は競争力のある報酬であることです。
まずこの話の大前提として、優秀な人にはいろんな選択肢があるんです。自分で起業してもいいし、大手にいってもいいし、世の中には良いスタートアップもたくさんある。
そんな人が、なぜ自社で働きたくなるのか、なぜ選んでもらえるのかを徹底的に考えなければいけない。
それを踏まえて1つ目ですが、やっぱり優秀な人は優秀な人と一緒に働きたいんですよね。組織に優秀な人が1人2人しかいないと、その人にめちゃくちゃ負担がかかってしまうし、他の人をサポートするエネルギーをもっと違うところに向けたいと考えてしまう。世の中にないものを広げることに、優秀な人のエネルギーを向けられるようにすることが、サービスを飛躍させるうえでは欠かせません。
2つ目も1つ目に通じる話です。例えば、経営者が「自分が豊かになるために会社やってます」ってところに優秀な人が集まるわけないですよね。優秀な人は、なんで自分が社長の金を稼ぐために頑張らなくちゃいけないんだってなる。選択肢は沢山あるんだから。社会に対して新しい価値を提供する、この大義がないと優秀な人は集まらないし、採用時に嘘ついて入社させたって結局、定着はしないです。
3つ目はすごく重要なのにみんな勘違いしていることだけど、優秀な人が多くいて社会性があるから、報酬低くていいよねっていうのはダメです。
繰り返しになりますが、優秀な人は選択肢がたくさんある中で、スタートアップにリスクを取って来てもらう必要があるわけで、そうなると競争力のある報酬設計が必要になります。大手企業は生涯年収から逆算して報酬設計されているところが多く、若手の給与は低く抑えられているので、30歳くらいまではスタートアップでもなんとか戦える。
もちろん初期フェーズだと競争力のある報酬にできないこともあるわけですが、そこを解決するために、2年くらいで実績を作って何とか資金を集める、ストックオプションも含めた報酬設計にするなどの努力が必要です。
事業の競争優位性は人にある。経営者が優れたアイデアを持っていても、それを実現するメンバーがいなかったら何も生まれない。優秀なメンバーに報酬を払うことは費用ではなく投資なのです。
自分たちは「どういう人を集めたいか」が組織文化をつくるヒント
──優秀なメンバーを集めた後、一つのコトに向かう組織にするため、どう組織文化を作っていますか。
いちばん重要なことは、自分たちの組織文化に合う人を集めるということです。
自分たちはどういうものの考え方、行動を求めているのか。それを好きになってもらうのではなく、最初から自分たちの組織文化に賛同してくれる人に来てもらう。自分たちは「どういう人を集めたいか」から組織文化を考えると良いでしょう。
その上で、皆が触れられるものに具現化します。わかりやすいこと、実践できること、そして何を大切にしているか明確なことがポイントです。
よくあるのが、ミッションやビジョンはしっかり考えているけど、バリューはそこまで考えられていないというケース。スーパーマンじゃないと到底できないような網羅的なバリューを掲げても無意味です。この会社は何を大事にしているのか、どこに重心を置いているのか、それが社員に伝わるものになっていることが重要です。
そして、それを定着させるために日常から使える言葉にしておくこと。
例えば、ワークスアプリケーションズでは「なぜなぜ思考」や「他責NG」など口にしやすいバリューを掲げていたので、日々の会話やフィードバックの中で良く飛び交っていましたね。
──牧野社長にとって優秀な人とは、どんな人ですか。
頭の回転が早いこと、思考が柔軟であること、そしてポジティブ・シンキングであることですね。
よく勘違いされるのですが、ポジティブ・シンキングは”シンキング=考え方”なので、誰でも身につけることができます。混同されがちですが、楽観主義/悲観主義は生まれつきの性質なので変えるのは難しい。ただ、その上で、起きた物事をポジティブに捉えるか、ネガティブに捉えるかはクセの問題。
私は慎重に物事を捉える悲観主義で、かつ起きたことをポジティブに捉えられる人が一番だと思っています。ただ採用で見分けるのは難しいので、会社としてポジティブ・シンキングを是とするバリューを掲げるのが良いでしょう。
繰り返し伝え続けることが社内広報の役割
──最後に、自社の組織文化を強くする上で、社内広報が押さえるべきポイントはなんでしょうか
それは、自社のミッションやビジョン、バリューを繰り返し、いろんな形で伝え続けることです。
何回も社員に言ってるんだけど…という経営者はいますが、じゃあ1万回言ったのかと。それぐらい言い続けることが大事です。
ただ、毎回同じ話だと聞いてる方も当然飽きますし、浸透していきません。入口の話は様々な角度からしていくんだけど、最後はミッション、ビジョン、バリューに行き着くようにする。
そのために、このストーリーはこういう切り口からミッション、ビジョン、バリューにつながるな…と日頃から考えておくと良いでしょう。
HR共創プラットフォーム「PathosLogos」とは
「PathosLogos」は、長年の人事業務に関するノウハウを集約し、「人」に関するデータを標準化しデータベースとして保持するサービスであり、機能レベルで各SaaSとデータ連携することが可能です。
これにより、専門領域の処理に特化した便利なサービスを組み合わせ、業務をシームレスに実現することで、SaaSを組み合わせた統合型ERPを実現します。