人材流出を防ぐには?そのリスクや原因と対策・企業事例を解説

日本では、少子高齢化・人口減少が大きな社会問題となっています。戦後、そして高度経済成長期に増加傾向であった人口は、その後経済の停滞と共に減少傾向にうつりました。

それに伴い、労働人口も減少し始め、人材流出は企業にとって防止しなければならない課題となっています。

人材流出の原因は終身雇用制の崩壊や人々の価値観の変化など、さまざまな原因が考えられます。一方で、その対策として社内報や社内イベントなどを実施する企業も増えてきました。

この記事では、人材流出による企業のリスク原因、その対策などを解説していきます

人材流出による企業のリスク

望まない人材流出は、企業にとって悪影響しかないでしょう。少子高齢化ならびに人口減少傾向である日本社会において、企業は優秀な人材を確保するのがより困難になっています。

そんな現代における人材流出は、企業にとってどのようなリスクがあるのでしょうか?

企業を運営できなくなる

人材が流出してしまった場合、離職者の仕事の穴埋めを他の社員が負担することになります。

もちろん代替が利くような仕事、あるいはその仕事についてノウハウのある社員が存在すれば、新たな負担は少なくすむかもしれません。

しかしながら、そうでない場合には、他の社員の負担の増加、それによる残業の増加モチベーションの低下によって、生産性が減退するおそれも考えられます。

また経験豊富な社員の離職は、新入社員など若い社員の育成に支障をきたし、その後の育成サイクルを滞らせる可能性も考えられます。

評判が下がり、経営が難化する

人材流出が多い、つまり離職率が高い企業に良いイメージを持つ者はあまりいないでしょう。

就職を考えている者が企業の評判に興味を示すように、顧客もその企業の評判を無意識であっても気にしています。

またノウハウを持った社員の流出は、生産性の低下や組織バランスが崩れ、顧客に対するサービスの劣化につながる恐れもあります。その後の企業のイメージを悪化させる要因になり得るということです。

企業のノウハウが流出する

社員の退職は、その社員のノウハウを失うだけでなく、企業のノウハウの流出に直結します。

その退職者が年月をかけて得た知識や、肌で感じ取った経験というノウハウは失われます。新たな社員に、そっくりそのままノウハウを受け継がせることは極めて困難でしょう。

また他社にその企業のノウハウが流出することにつながります。退職者は新たな勤務先で、今まで培ってきた経験や知識、技術を無駄にするはずがありません。

採用・育成コストが無駄になる

採用活動や新人研修など、社員を採用し育成するには一定の時間・費用が必要となります。

人材流出は、それらの膨大なコストを無駄にしてしまうと言えるでしょう。また退職者の空いた枠を埋めるためにも、さらに新たな費用が必要となります。

以前に掛かった費用、またその後にさらなる費用が必要となるなど、1人の退職も企業にとっては大きな痛手になります。

新規人材の獲得が難化する

離職率が高い企業であなたは働きたいですか?

離職率の高さや、それに伴う評判の低さをポジティブに捉える人は少ないでしょう。離職率の高さ、評判の低さは、残業や給与、人間関係など、労働環境について悪いイメージを想起させることにつながります。

現代は終身雇用制といった安定性よりも、労働環境などを重視する若者が増加しています。その点で人材流出の多い企業は、新規人材が好む職場とは言い難いかもしれません。

つまり人材の流出は、単に人材を失うだけではなく、将来の人材確保にも苦労することを意味するでしょう。

人材流出が多い6つの原因

実際に人材流出の原因はどこにあるのでしょうか?

エン・ジャパン株式会社が実施した、「退職のきっかけ」についてのアンケート(【図2】)を基に、人材流出すなわち退職者の主な理由を紹介します。 

【図2】退職を考え始めたきっかけを教えてください。(複数回答可、年代別)

(引用:エン・ジャパン,「8,600名に聞いた「退職のきっかけ」調査。転職理由は「給与」「やりがいのなさ」「企業の将来性」。―『エン転職』ユーザーアンケート調査 結果発表―」,<https://corp.en-japan.com/newsrelease/2018/13174.html>,閲覧日2020年9月23日)

給与面でのミスマッチ

1番多かったのは給与が低かった」という理由でした。全体の約40%という半数近い結果になっています。

25歳以下・26~34歳の解答結果が共に40%を超えるなか、35歳以上では36%と少し低い解答となっていました。いずれにしろ他の選択肢よりも高い結果ですが、年齢を重ねるにつれて、給与面よりも他の理由が転職の決め手になるということがわかります。

高度経済成長期のように金銭面で余裕がある社会ではありませんが、余裕が無い分人々は高い給与を求めるのかもしれません。

やりがい・達成感の欠如

2番目に多かった理由は「やりがい・達成感を感じない」(36%)でした。

以前は終身雇用制が普及していたために、労働者は転職の1番の理由であった給与面について、長く同じ会社にいることでその問題を解決できました。

しかしながら、給与面での安定性が乏しい中、やりがいすらない、極端に言えばやりたくない仕事を続けたいとは思わないのでしょう。

特に25歳以下の場合、「やりたい仕事ではなかった」人が26%と他の年代(26~34歳:18%、35歳以上:13%)に比べて高い結果となっています。若い世代の人材流出に課題を持つ企業は、この点を省みる必要があるかもしれません。

事業・会社の将来への不安

3番目に多かった解答が「企業の将来性に疑問を感じた」(35%)という理由でした。

また「業界や企業の将来性が不安だった」人も全体で16%いるため、事業・会社の将来への不安が、人材流出の大きな1つの要因といえるでしょう。

企業の将来性に疑問を感じた」という解答では、25歳以下は30%を切りましたが、26~34歳・35歳以上では共に36%と若者に比べて高い結果となっています。

やりたい仕事ではなかった」「他にやりたい仕事ができた」などの解答では、25歳以下に比べて26歳以上の解答は低い結果となっています。すなわち年を取るにつれて、目先の仕事よりも、長い将来を見据えて転職に踏み切っているのではないでしょうか。

人間関係の悪さ

4番目に多かった理由は「人間関係が悪かった」(27%)でした。

各年代で解答結果(25歳以下:26%、26~34歳以下:26%、35歳以上:29%)に大きな差はなく、どの年代にとっても同じように付きまとう原因といえます。

人間関係は職場のみの話ではなく、プライベートにまで関わる重要な問題です。インターネットやSNSが発達した現代において、人間関係の悪さは表に見えにくい状態になっています。

この問題は、各個人が独自に解決するのは難しいため、企業の協力が必要と考えられます。

労働時間の長さ、休暇の少なさ

5番目に多かった解答は「残業・休日出勤など拘束時間が長かった」(26%)でした。

年齢によって結果にばらつきがあり、25歳以下は32%あるところ、35歳以上では22%という結果になりました。

近年、「ブラック企業」という言葉をよく耳にするようになりました。人々は残業時間外労働という言葉を聞くと、すぐに「ブラック企業」を連想するでしょう。

若者は以前に比べて、「ホワイト企業」を重視し、プライベートな時間の確保に重きを置くようになったと考えられます。

評価における不満

6番目に多かった理由は「評価・人事制度に不満があった」(25%)という解答でした。

先に述べたように、従前の終身雇用制は崩壊の道を進んでいます。その中で人々は成果主義を見出し、成果や努力に合った昇給を求めるようになっています。

評価や人事制度に対して何かしらの不満を持つ人は、やはり自身の努力や成果が報われていないと感じているのではないでしょうか。

各企業に明確で正当な昇格や昇給の基準があれば、そのような不満は減っていくと考えられます。

人材流出を防ぐ具体的な対策

この章では、1つ前の章で紹介した人材流出の主な原因1つ1つ (給与面でのミスマッチ、やりがい達成感の欠如、事業・会社の将来への不安、人間関係の悪さ、労働時間の長さ・休暇の少なさ、評価における不満) に対して、より具体的な対策をご紹介します。

役職別・部署別コミュニケーションの促進

役職別・部署別コミュニケーションの促進が1つの対策として挙げられます。

特に

  • 「給与面でのミスマッチ」
  • 「やりがい・達成感の欠如」
  • 「事業・会社の将来への不満」
  • 「人間関係の悪さ」
  • 「労働時間の長さ・休暇の少なさ」

に人材流出の原因がある場合は、この役職別、部署別コミュニケーションの促進が効果的です。

社内報社内イベントがその具体的な方法として挙げられます。詳しく見ていきましょう。

社内報

社内報とは、企業の理念や各種サービスの情報、また社員のご家族に向けた情報など、その企業に関する幅広いことを冊子やデジタル記事として発行されるものです。

この社内報は、企業の情報共有や社員間のコミュニケーションの促進などに役立ちます。普段は関わりのないような、上司や部下、他の部署について知ることができるツールです。

インターネットやSNSの発達、特に2020年からはコロナ社会の影響で、リモートワークが推奨され、社員同士のコミュニケーションの場が減少しています。社内報はその減少したコミュニケーションの機会を広く簡単に補うことが期待できます

関連記事:社内報とは?効果と一からの作り方、紙とデジタル比較、企画ネタ34選!

社内イベント(飲み会やBBQ・アウトドアアクティビティなど)

社内イベントとは、飲み会やBBQに代表される、社員が集まって行うさまざまなイベントを指します。今ではその内容は多岐にわたり、各企業に合わせて様々なイベントを行うことができます。

社内イベントでは、社員同士の気軽なコミュニケーションが促進され、さらには普段関わりのないような社員同士が、仲を深めることにもつながります。

オフィス内とは違った、気軽な雰囲気だからこそ生まれる情報共有や関係性は、企業に一貫性や輪を生み出すことが期待できます。

より深い関係性は、普段持つ不満や意見を発言しやすいような環境を作り上げてくれます。社員の持つ多くの不満や不安をコミュニケーションによって共有し、解消することにつながります。

部署内・同期間コミュニケーションの促進

部署内・同期間コミュニケーションを促進させることも、1つの対策として挙げられます。

特に

  • 「人間関係の悪さ」
  • 「評価における不満」

に人材流出の原因があると考えられる場合は、部署内、同期間コミュニケーションの促進が有効的でしょう。

社内レイアウト変更社内イベントがその具体的な方法としてなります。以下で見ていきましょう。

社内レイアウト変更

自社のオフィスはどのようなレイアウトでしょうか? 社内のレイアウトを変えるだけで、職場の雰囲気は大きく変わります

ヤフー株式会社は、毎日自由な席で働くことができるフリーアドレス制を導入し、社員同士の接点を増やすことに成功しました。

(引用:ヤフー株式会社, 「『変えたいのは働き方』ヤフーの新本社オフィス」, 〈https://about.yahoo.co.jp/info/blog/20161007/kioicho.html〉, 閲覧日2020年9月18日)

他には、オフィスをカフェのような内装にし、暗い従前のオフィスというイメージから、明るい職場へと変えることもできます。

フリーアドレス制内装の変更は、職場の雰囲気を明るいものにし、そこで促進された部署内、同期間コミュニケーションは、「人間関係の悪さ」「評価における不満」をより解消してくれるでしょう。

社内イベント(飲み会やBBQ、アウトドアアクティビティなど)

社内イベントについては先に「役職別、部署別コミュニケーションの促進」で1度触れました。社内イベントはその規模によって特定のコミュニティーのコミュニケーションを促進することができます

つまり部署内で人間関係が悪い場合や、またその部署の昇給や昇格に不満が大きい場合は、部署規模の社内イベントを開催することにより、部署内の気軽なコミュニケーションを活性化させることができます。

評価制度の刷新

評価制度の刷新も人材流出の問題解決に有効です。

特に、

  • 「給与面でのミスマッチ」
  • 「評価における不満」
  • 「やりがい・達成感の欠如」

に人材流出の原因があると考えられる場合は、評価制度の刷新が効果的です。

タレントマネジメントシステムの導入ピアボーナスシステムの導入がその具体的な方法となります。以下で見ていきましょう。

タレントマネジメントシステムの導入

まずタレントマネジメントとは、社員の能力やスキルを基に、より各社員が自身の能力を発揮できるような人材配置・人材育成をすることを指します。

タレントマネジメントシステムとは、社員の能力やスキル、個人情報など社員のあらゆる情報をデータ化し、管理することを指します。このシステムにより、効率的で適切な人材配置、そして人材育成が可能となります。

適切な昇給や昇格がデータによって可能になることから、具体的な基準やその数値が社員にとってより鮮明になります給与面や評価における不満は、それらの基準の可視化により解決できると考えられます。

関連記事:タレントマネジメントとは?メリットや導入ステップ、中小、大企業導入事例、他社システムを解説!

ピアボーナスシステムの導入

ピアボーナスという言葉は、「仲間」を意味するpeerと「特別賞与」を意味するbonusから成ります。社員同士が互いの成果や行動を評価し、少額の報酬を与えることができます。

ピアボーナスシステムは人事部などが普段認識することができない、日常の些細な行動なども評価の対象になります。社員の努力や貢献がより評価されやすい環境が生まれ、給与や評価に対する不満も、それに伴い解決することが期待できます。仕事に対する達成感や、やりがいにもつながるでしょう。

さらには評価し合うことにより、社員同士の関係性や職場の雰囲気の改善も期待できます。最終的にはそれが人材の流出を防ぐことにつながります。

関連記事:ピアボーナスとは?導入手順や効果、サービス紹介、導入事例を徹底解説!

人材流出防止に取り組む企業事例

人材流出防止に寄与する施策を行っている事例として、以下 つの企業事例を紹介する。

ニトリ株式会社-社内報-

ニトリ株式会社は、社内報を1979年からなんと40年以上も途切れることなく発行しています。

ニトリが目指すロマンを本気で実現するために、トップの想いや会社の方向性を従業員に共有したり、現在では、社員が自律したキャリアを描くためのサポートや、従業員同士のつながりの強化、社内コミュニケーションの活発化というようなことも行っています。

トップの理念やビジョンを積極的に共有し、さらには従業員のキャリア形成コミュニケーションのサポートとしても社内報を活用するなど、授業員にやりがいや価値を提供していることが伺えます。

このように、会社側がGiveを行えば、社員はそれに応える形で社員として貢献し、会社と社員の繋がり(エンゲージメント)が強まることで、人材流出の防止につながります。

(引用:ニトリ株式会社, 「40年以上の歴史があるニトリの社内報─社内報制作も自前主義!従業員のキャリアを本気で応援」, 〈https://www.nitorihd.co.jp/nitorimedia/culture/post-3217/〉, 2021年1月閲覧)

ドコモテクノロジ株式会社-社内イベント-

ドコモテクノロジ株式会社では、社内イベントを行っています。

試作開発コンテストでは、新たな事業領域を目指したチャレンジ精神溢れる会社風土作りを期待したり、社会貢献活動では、社員間のコミュニケーションの促進や社会貢献への意識向上が期待できる取り組みを行っています。

社内イベントを通して、社員間のコミュニケーションの促進はもちろんのこと、それに加えた効果の期待をした取り組みをしている点が特徴的です。

(引用:ドコモテクノロジ株式会社, 「社内イベント/新卒採用情報」, 〈https://www.docomo-tech.co.jp/recruit/ng_event/〉, 2021年1月閲覧)

人材流出防止は重要な経営課題

人材流出が大きな課題になっているのが、日本市場の現状です。この記事では人材流出による企業のリスク、そしてその原因。さらにはその解決方法などを解説していきました。

人材獲得競争には、外資系企業までが大きな力を持って参加するようになってきました。東京オリンピックなど、日本がよりグローバルな社会になろうとしている今、もう一度社内環境を見直す良い機会かもしれません。

日本の少子高齢化、人口減少という大きな問題をひとつの企業の力で解決することは困難です。しかしながら、限られた人材の流出を防ぐことは、それぞれの企業が成し得ることだと思います。