労働生産性とは?種類・国別比較、向上の方法、活用事例を解説

近年、働き方改革により、限られた時間内での業務効率化を図るため、労働生産性向上の必要性が高まってきています。「日本は労働生産性が低い」と言われており、OECD加盟36ヶ国中21位に位置しています。
では、労働生産性をあげるにはどうするべきでしょうか。また、業界や企業によって違いはあるのでしょうか。具体的な施策や方法も踏まえて、解説していきます。

 労働生産性とは

そもそも生産性とは、ある成果を生み出すのに、どのくらい効率よく生産したかを測ることです。それを「労働」に焦点を当てたのが、労働生産性です。

具体的に労働生産性とは、従業員が成果を得るためにかかった労働量を数値化したものです。簡単にいうと「社員ひとりが1時間にどれだけ成果を出したのか」を数値にしたものです。

労働の成果÷「労働量(投入資源)」で算出することができます。労働量とは、人件費や制作費などが含まれます。

では、具体的な計算方法と種類について見ていきましょう。

労働生産性の種類

労働生産性には「物理的労働生産性」と「付加価値的労働生産性」の2つの種類があります。成果の対象が異なり、会社単位や国単位で、用いられ方が異なります。
それぞれの違いについて見ていきましょう。

物理的労働生産性

物理的労働生産性は、生産量÷労働量で求められます。商品やサービスの生産にどれくらいの労働量(労働者数×労働時間)を費やしたのかの効率性を測ることができます。

例をあげましょう。

A社  1ヶ月で、50人の従業員を投入し、200万円売り上げた。

       (労働生産性=4万円/人)

B社 1ヶ月で、30人の従業員を投入し、150万円売り上げた。

    (労働生産性=5万円/人)   

このように、売上を見るとA社がよく見えがちですが、労働生産性の観点からみると、B社が優れていることが分かります。
物理的労働生産性は、企業の生産力を測るときに用いられ、少ない労働量で多くの商品を生産する企業は、市場価値が高まります。

付加価値的労働生産性

付加価値労働生産性は、付加価値額÷労働量で求められます。まず、付加価値とは、商品の元々の価値(原価)に、新たに付け加えられた価値のことです。人件費や広告費、経常利益などの諸経費が含まれます。例えば、100円(原価)のりんごが200円で売れた場合、差額の100円が付加価値になります。
付加価値とは、社会に対してどのくらい価値を付け加えられたか。つまり、企業の付加価値は、国の生産性を表すことを意味します。よって国家レベルの生産性を測るときは、付加価値的労働生産性が用いられます。

海外比で見る日本の労働生産性の状況

次に、日本の労働生産性についてみていきましょう。また、海外と比較してどのレベルに位置づけられているのでしょうか。

企業の労働生産性と国際社会としての労働生産性の違い 

各企業としての労働生産性と、国際社会としての労働生産性の算出方法は異なります。
先述しましたが、

・物的労働生産性 = 企業の生産力
・付加価値労働生産性 = 国際社会としての生産力

つまり、国際社会での労働生産性 = GDP(国内総生産)を示します。
詳しく説明すると、ここでいうGDPは名目GDPにあたり、「一定期間内に産出された付加価値の総和」を意味しています。表現は異なりますが、付加価値的労働生産性と同意義であることが分かります。

日本の労働生産性の状況

海外と比較すると、日本の一人当たりの労働生産性は、OECD加盟36か国中21位です。先進国の中でも低い水準に位置し、年別にみても横ばいであることが分かります。
また、時間当たりの労働生産性をみても、平均を下回っており、上位に位置していないのが現状です。

しかし、近年の日本では非正規雇用の増加や働き方改革など、働く上での環境が大きく変化しており、労働生産性は変わりつつあることも考慮に入れるとよいでしょう。

(引用:日本生産性本部「労働生産性の国際比較2019」,<https://www.jpc-net.jp/research/list/pdf/comparison_2019.pdf>,2029年11月発表)

海外の労働生産性について

ここで、注意して頂きたいのは、上記のような労働生産性の指標に関しては、国ごとの経済構造によって換算の方法が異なるため、正確ではないことを理解しておく必要があります。
また、国によっては、地方による格差を考慮することができなかったり、数値が不正確であったりするため、あくまでも全体としての平均値であることを、念頭に置いておきましょう。

労働生産性が注目される背景

最近では、働き方改革の推進により生産性の向上が求められるようになってきています。日本の社会が変化していくなか、なぜ労働生産性が注目されるようになってきたのでしょうか。

働き方改革

働き方改革とは厚生労働省によると

我が国は、「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「育児や介護との両立など、働く方のニーズの多様化」などの状況に直面しています。こうした中、投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境を作ること

とされています。働き手の人手不足や育児・介護を両立しながら働くなど仕事への価値観が変わってきています。働き方改革という名目で、国をあげての労働生産性の向上に注目が集まっています。

(引用:厚生労働省HP「働き方改革 目指すもの」,<https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322.html>,2020年10月閲覧)

ワークライフバランス

近年、「ワークライフバランス」を重視する企業が増えています。ワークライフバランスとは仕事×生活の調和であり、従来の日本の会社では、長時間労働によりプライベートを返上して仕事をすることが一般的でした。
しかし、女性の社会進出や高齢化による介護時間の増加などにより、プライベードも等しく重視するようになってきています。ワークライフバランスの実現には、今まで以上に効率の良い働き方をしなければなりません。 その結果、限られた時間内で効率よく成果を出す労働生産性に焦点が集まってきています。

評価制度

従来は、「長時間労働」「終身雇用・年功序列」により、勤続年数や年齢が主な評価対象でした。しかし、終身雇用・年功序列制度の崩壊により、転職がしやすい世の中になった今、優秀な人材ほど去っていきます。そして、人材確保のために、実力がしっかりと評価される成果主義へと評価方法が変わってきています。働き手としても、勤務時間内にダラダラと働くのではなく、目に見える成果が必要とされ、結果として社員一人ひとりの労働生産性の向上が求められるようになりました。ワークライフバランスの重視や、リモートワークやフレックスタイム制の導入など、今後ますます働き方が変化します。それに伴い、評価制度も変わり、どれだけの成果を残したのかが求められる時代になっています。

企業における労働生産性

日本の労働生産性と言っても、業界によって様々です。では、実際にどの業界に差があり、なぜそのような違いが生まれるのでしょうか、比較してみていきましょう。

業界別の労働生産性

下記の表は、アメリカの産業別労働生産性水準の平均を100(赤ライン)として、日本と比較を示しています。

結果として、日本の労働生産性がアメリカを超えているのは「化学」のみであり、次に「金属」、「建設」と続いています。
日本国内で業界別にみると、建設や機械などの製造業が高く、卸売・小売、宿泊・飲食などのサービス業が低い傾向にあります。

アメリカ比較で製造業全体は64.7%とあまり遜色ないが、サービス業全体は50.7%となっており、経済におけるシェアの大きな産業での日米格差が大きいことが分ります。

(引用:滝澤美帆 東洋大学経済学部教授「産業別労働生産性水準の国際比較」,<https://www.jpc-net.jp/research/rd/report/pdf/sd7.pdf>,2018年4月)

労働生産性の違いが生まれる理由

労働生産性の違いが生まれる理由として、業界企業規模の2つの観点が要因としてあげられます。どんな業界が労働生産性が高いのでしょうか。また、大企業と中小企業で違いはあるのでしょうか。

産業構造の違い

労働生産性の違いが生まれる理由として、日本の産業構造に要因があります。

金融・保険業、不動産などの労働生産性が高い業界は、一般的に資本集約型産業であるということが言えます。資本集約型産業とは、生産要素に占める資本の割合が高い産業を意味します。

一方、飲食や観光、販売などの労働生産性が低いサービス業は、労働集約型産業に当たります。労働集約型産業とは、生産要素に占める資本の割合が低く、労働力の割合が多く占める産業です。

要するに、資本か労働力のどちらが産業基盤であるかの違いであり、冒頭の労働生産性の求め方から分かるように、労働量(労働者数×労働時間)が多くなってしまう労働集約型産業は、値が低くなってしまいます。

企業規模の違い

企業規模、製造業非製造業かによっても生産性が変わります。

企業規模でみると、大企業では、製造業は労働生産性が高いですが、中小企業をみるとそうとも限りません。中小企業は、卸売や小売業との差が大企業と比べるとほとんどなく、企業の規模によって大きく異なることが分かります。

製造業か非製造業かにおいても、大きな違いあります。製造業は大きく非製造業を上回り、非製造業は経済全体を下回っています。
また、製造業は近年大きく上昇しており、日本の労働生産性を上げるには、非製造業分野の成長が鍵となるでしょう。

(引用:経済産業省「中小企業の生産性分析 第3章」,<https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H28/PDF/chusho/03Hakusyo_part1_chap3_web.pdf>,2020年10月閲覧)

労働生産性をあげる手順・方法

労働生産性を向上させる手順・方法について解説していきます。ポイントを踏まえて、活用していきましょう。

労働生産性を上げる手順

労働生産性を上げる手順について解説します。

1 社員の業務・会社の状況を見える化し、課題を把握

まず、社員の業務・会社の状況を徹底的に洗い出し、無駄を省くことが最優先です。意味のない業務に時間をかけることは、労働生産性の低下を促進してしまいます。

会社全体の課題を把握し、社員一人ひとりの業務を管理することが、もっとも労働生産性の向上に繋がります。

2 課題の優先順位を決める

社員の業務と会社の課題を把握した後は、課題解決の優先順位を決めます。労働量の効率化を測っても、生産性が上がらなければ、労働生産性は横ばいになります。

そのため、会社の将来的な生産性の向上、売り上げ、設備投資などにおいて、どの課題にアプローチするのがもっともインパクトが大きいのかを考え、優先順位を決めて取りかかりましょう。

3 具体的な施策を決める

次に、実際に課題に応じた施策を決めます。

具体的な施策として、

・業務の標準化
・IT化、機械化などの設備投資
・勤務体制の見直し
・各個人のスキルアップ

などが挙げられます。近年では、ペーパーレス化による書類の電子化や社内の伝達事項はメールではなく、チャットツールの利用が主流になっており、業務の効率化が図られています。

4 打った施策の効果を測り、PDCAを回す

最後に、施策後の効果を測り、PDCA(P:計画 D:実行 C:検証 A:改善)を回しましょう。

労働生産性はすぐに向上するものではありません。適切な指標・目標をおいて、長期的な視点で追っていくことが重要です。

労働生産性を上げる方法

次に、労働生産性を上げる具体的な方法を4つ紹介します。

1 従業員エンゲージメントの向上

具体的な方法として、従業員エンゲージメントの向上が労働生産性の向上に繋がります。従業員エンゲージメントとは、従業員と企業による双方向の関係性を示し、どれだけ従業員が企業対して貢献したいのかを意味します。

以下の研究では、「ES(エンゲージメントスコア)1ポイントの上昇につき、労働生産性(指数)が0.035上昇する」ことが分かっており、労働人口が減り、労働生産性の低さが課題の現代において、従業員エンゲージメントの向上は解決策の1つになり得るでしょう。

(引用:株式会社リンクアンドモチベーション,『「エンゲージメントと企業業績」に関する研究結果を公開』,<https://www.lmi.ne.jp/about/me/finding/detail.php?id=14>,2018年9月18日発表)

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2 インナーコミュニケーションの活性化

インナーコミュニケーションの活性化も1つの方法です。インナーコミュニケーションとは、その言葉の通り、社内におけるコミュニケーションのことを指しますが、社員同士のコミュニケーションが活性化されれば、情報の共有や意思疎通がよりスムーズに行われ、労働生産性の向上が期待できます。
また、その結果、心理的安全性が高まり、失敗したらどうしよう、怒られるかもしれない、などの余計なことを考える必要はなく、目の前に仕事集中できるので、労働生産性が高まります。業務をより円滑に遂行できるだけではなく、課題に直面した場合にも迅速に解決できるようになるでしょう。

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3 評価制度の改善

長時間労働の廃止が成果主義・実力主義への転換になり、労働生産性の注目されている理由にあげましたが、それには新しい評価制度の導入が必要になるでしょう。これからは多様な働き方による評価が求められるため、長時間働くことを良しとする制度を撤廃し、逆に短い時間で効率よく成果を出すことを評価基準にしましょう。また、個人に合わせて評価方法を変えるのも、1つの方法です。

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4 適切な人材配置

従業員を適切な部署に配置することが各従業員の労働生産性の向上に繋がります。日本企業、特に大手企業は、一度部署が決まればそのまま同じ部署で働くということが一般的です。しかし、従業員の苦手なスキルや価値観を求められる部署に配属されてしまうと、なかなか成果を上げることは難しいでしょう。
企業側が従業員のことを把握し、適材適所に配置することで従業員のモチベーションが向上し、労働生産性の向上に繋がるでしょう。また、労働生産性の向上以外にも、新規プロジェクト立ち上げの際に、最適な人材をアサインできるなど、スピーディーな事業展開も可能となります。

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労働生産性をあげるためのポイント

労働生産性は、機械の導入などの設備投資によって短期的に変化することができます。しかし、長期的にみると社員のエンゲージメントでも大きく変化します。そのため、短期的な効果にとらわれず、社員のモチベーション維持や勤務体制を整えることがポイントになってくるでしょう。

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労働生産性 取り組み事例5選

最後に、企業の具体的な取り組み事例について5つ紹介します。実際に、労働生産性の改善に取り組んでみてはいかがでしょうか。

Google「プロジェクト・アリストテレス」

Googleは、2012年に「プロジェクト・アリストテレス」を開始しました。プロジェクト・アリストテレスとは、何百万ドルもの資金と約4年の歳月を費やして実施され、Googleが開始した労働改革のプロジェクトです。

その結果、チームの労働生産性向上において重要なのは、「高い能力を有したメンバーを集める」ことよりも「チームがどのように協力しているか」であり、インナーコミュニケーションなどによる心理的安全性労働生産性を高める重要な要素であることを発見しました。

(引用:講談社「現代ビジネス」,<https://gendai.ismedia.jp/articles/-/48137>,2016年3月10日発表)

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GMOメイクショップ「SFA」

株式会社GMOは、SFAを2015年に導入しました。SFAとは、営業支援サービスを意味し、営業の効率化をしたりボトルネックを発見したりすることで、売上と利益を上げられるツールです。GMOは、それまで顧客の管理をExcelで行なっており、多大な時間を費やしていました。

導入の結果、各案件へスムーズな対応ができ、ミーティング時間の削減やTodo管理による案件管理の効率化などにより生産性が向上しました。

(引用:eセールスマネージャー「CRM/SFA導入事例 GMOメイクショップ株式会社」,<https://www.e-sales.jp/casestudy/gmo/>,2020年10月閲覧)

Walmart「RPA」

Walmartは、現場からの要望により2018年からRPAの導入を開始しました。RPAとはロボットによる業務自動化のことであり、近年注目が集まっています。

導入の結果、今まで紙面で行なっていた受領証明書発行が自動化され、年間1万1,000時間分の業務効率化が実現しました。単純な業務効率だけでなく、作業ミスや物理的ロスがなくなり、大幅な生産性の向上に繋がりました。

(引用:RPAテクノロジーズ株式会社HP 導入事例,<https://rpa-technologies.com/case/case023/>,2020年10月閲覧)

三井住友海上保険 働き方改革へ新たな取り組み

三井住友海上保険株式会社は、生産性の向上を目的として、「仕事の進め方」の変革に向けた取り組みを開始しました。

例えば、「19時前退社ルール」の導入以降、平均残業時間を10%削減することにより、総労働時間の短縮やリモートワークの導入により、育児と仕事を両立できる環境を整えています。
また、現場では2017年からRPAやAIも導入しており、社外からの問い合わせ対応に要する時間を大幅に削減しています。

(引用:住友海上保険株式会社『「働き方改革」の推進に向けた新たな取組の開始について』<https://www.ms-ins.com/news/fy2017/pdf/1208_3.pdf>,2017年12月8日発表)

株式会社ディスコ「個人Will会計制度」

株式会社ディスコは、あらゆる業務が値付けされおり、その請求や支払いといったやりとりが日常的におこなわれています。また、Will(=意志)という名称が示す通り、従業員の意志を尊重する制度で、例えば、スキルアップを目指して難易度の高い案件を選ぶ者や、終了時間が計算できる案件を選ぶ時短勤務者もいます。
個人Willの収支は賞与支給額の一部に連動しており、モチベーションにも繋がるため、労働生産性の向上が期待できます。

(引用:株式会社ディスコHP「プレスリリース 働きやすく生産性の高い企業」,<https://www.disco.co.jp/jp/news/press/20170303.html>,2017年3月3日発表)

まとめ

社員ひとりが1時間にどれだけ成果を出したのか」を表すのが労働生産性です。また、労働生産性のあげるには、生産性の向上・労働量の削減のアプローチが必要です。どちらか片方をを重視しても、よい成果は得られません。短期的な設備導入、長期的な従業員のスキルアップなど、長い目で考えることが重要になります。
今後日本は少子高齢化社会であり、生産年齢人口は年々減少しています。働き手が少なくなり、仕事の効率化が求められる労働生産性は、今後注目が集まるでしょう。
新型コロナウイルスが収束に向かっている今、改めて企業全体を可視化し、従業員の能力を最大限引き出せる組織構築を目指しましょう。