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縦割り組織とは?部門間の対立を防ぎ、横のつながりを生む方法を解説!

髙橋 新平

公開日:

2022.02.15

更新日:

2025.07.11

縦割り組織とは、企業が業務内容や地域などの特性に応じて、部門を縦型に細分化する組織構造のことです。

専門性を高めやすく多くの企業で採用されている形態ですが、部門間の連携が難しく対立が起こりやすいなどデメリットもいくつか存在します。そこで今回は縦割り組織のメリット、デメリット、その改善策を解説していきます。

目次

縦割り組織とは?

縦割り組織とは、企業が業務内容や地域などの特性に応じて、部門を縦型に細分化する組織構造のことを指します。

部署ごとに専門性が分かれているからこそ生じる組織体制ですが、近年はネガティブなキーワードとして使われることが多くなりました。

なぜなら、営業がバックオフィスに対して「現場や顧客のニーズを分かっていないくせに勝手な通達ばかり出す」と考える一方、バックオフィスは「営業は勝手なことばかりしていつも組織運営の和を乱す」と考えるなど、部門間の軋轢につながりやすいからです。

こうした壁が生じるのは部門間だけに留まらず、本社と支店など地域の差・新卒か中途かなど出身の差などでみられることもあります。

また、YouTubeでも「日系製造業が直面する縦割り組織の課題」を解説しておりますので、ぜひご覧ください。組織課題と現場での具体的な解決アプローチの理解がより深まります。

縦割り組織とセクショナリズムの関係

セクショナリズムとは、企業や組織の中で自分が所属する部署・チームの利益だけを優先する状態を指します。

「自分がいるチームのことだけ考えていればよい」というマインドになるため、他部署や会社全体の利益について配慮することが少なく、非協力的な姿勢になることも少なくありません。

こうしたセクショナリズムは、縦割り組織のように部門が分かれていて、横のつながりが希薄な場合で特に起こりやすい傾向にあります。

なお、セクショナリズムの意味や原因、対策については以下の記事で詳しく解説しています。

縦割り組織のメリット

縦割り組織は、業務領域ごとに人材が集まり、専門性の高いノウハウが蓄積しやすいこと、部署間で競争意識が生まれ、成果を出そうという意識が高まるというメリットが存在します。

これらのメリットについて詳しく見ていきましょう。

専門性の高いノウハウが集まる

縦割り組織では、業務領域ごとに人材が集まるため、専門性の高いノウハウが部門内に蓄積されやすいというメリットがあります。

同じ分野の業務に集中できるため、社員一人ひとりのスキルも磨かれやすくなります。またノウハウが共有されることで、業務の効率化や品質の安定にもつながります。

部署間で競争意識が生まれる

部署ごとに明確な役割や目標がある縦割り組織では、自然と自部署の成果を出そうという意識が高まりやすくなります。

各部門が成果を意識して取り組むことで、健全な競争意識が生まれ、全体の生産性やパフォーマンスの向上につながることがあります。

互いに刺激を受けながら、高い基準を目指せる環境は、組織の活性化にもつながるでしょう。

縦割り組織のデメリット

一方、縦割り組織は部署ごとの分断が生まれやすく、視野の狭まりや意思疎通の不足といった課題を抱えがちです。場合によっては、部門間のトラブルや離職、顧客からの信頼低下といった事態になることもあります。

これらのデメリットについて詳しく見ていきましょう。

トップダウン型により視野が狭まる

縦割り組織はトップダウン型になりやすく、広い視野を持った思考や柔軟な発想がしづらくなります。

上司からの指示をすべて是として受け入れ、言われたことだけをやる働き方になったり、上司からの評価が全てになりやすく、自分の出世や所属するチームの成長だけを考えるようになります。

部署間の意思疎通を損なう

自分が所属していない部署への敵対心が強く、効果的な意思疎通ができなくなります。

業務上、最低限必要な情報共有もできなくなり、仕事の抜け漏れやミスコミュニケーションが原因の業務重複が生まれやすくなるでしょう。

ミスが起きたときに責任を押し付け合うようなトラブルが起きたり、あえて情報を隠して足を引っ張りあうなどの非生産的な行動が増えることも。

部署内で同調圧力が生まれやすい

部署内で同調圧力が生まれやすく、自由な意見やアイディアを口にすることが難しくなります。

周りの顔色を伺って仕事をするようなシーンが増え、息苦しさを感じる従業員が増えていくでしょう。

例え自部署の従業員でも意見が対立するのであれば排除しようとする動きが大きくなり、場合によってはいじめやパワハラの原因となるケースも。

生産性が低下する

斬新なアイディアを出したり部門間の連携を強化する動きが嫌われるため、全員が無難な仕事に終始しやすくなります。

組織のパフォーマンスが低下し、生産性が下がる原因となるでしょう。

せっかく優秀な人材を揃えていてもスキルや経験を発揮できるシーンがなく、人的リソースのロスにつながります。業績へダイレクトに現れたとき、原因が縦割り組織にあると見抜きにくいことも問題です。

顧客からの信用が低下する

部署間の連携が損なわれ、自分本位な競争ばかりが続くと、業務に支障をきたすことが多くなります。

その結果、ミスコミュニケーションによるトラブルが増え、顧客からの信頼が低下するケースも少なくありません。顧客は「部署」や「個人」ではなく「会社」としての対応を評価するため、会社全体でのチームビルディングが欠かせないのです。

離職者が増加する

他部署の悪口が飛び交う環境に嫌気が差したり、業務に適したチームの意識が育たないことに気づいた社員は、やがてエンゲージメントを失い、「10年、20年と会社に貢献したい」という気持ちも薄れ、離職につながるケースも少なくありません。

また、同調圧力が強い環境では、本音で離職理由を話すことに心理的なハードルが高く、無難な理由を添えて静かに転職していく人が増えていきます。

その結果、採用や育成にかかるコストばかりが膨らむことになります。

縦割り組織のデメリットの改善方法

先ほど紹介した縦割り組織のデメリットを改善するために効果的な取り組みについて紹介します。

横割り組織の要素を入れる

縦割り組織という形態を崩さずに、横割り組織の要素を取り入れる方法も、組織問題の改善につながるでしょう。

例えば部署を超えたプロジェクトを編成して横断的にやり取りする機会を与えるなど、横割り組織を意識した要素を取り入れることができます。

普段関わることのない他部署の社員と仕事することで、新たな視点や相互理解が生まれ、部門間のコミュニケーションが自然と活発になるきっかけになります。

ジョブローテーションを行う

ジョブローテーションを行うことで、人材の流動化を促すことができます。

部署異動を通じて複数の部門を経験することで、異なる業務に触れる機会になります。また、異動先でも前の部署とのつながりがあるので、部署を横断したコミュニケーションが生まれるきっかけになります。

人事評価制度の見直し

人事評価制度を見直し、年齢・勤続年数だけでなく実績・スキル・意欲や熱意も評価に含めることも改善方法の一つです。

定量・定性の観点から正当な評価を得られれば業務へのやりがいが醸成され、部署ごとの連携や情報共有などパフォーマンス向上につながる施策を積極的に受け入れる風土が培われます。

会社に対するエンゲージメントも向上するため、離職防止策としても有効です。

社内イベントを実施する

部署を超えた交流を促すには、社内イベントの実施が効果的です。

業務から離れた場でのレクリエーションや勉強会を通じて、普段話す機会のない社員同士の接点が生まれ、自然なコミュニケーションのきっかけになります。

情報共有ツールを導入する

情報共有ツールを活用することで、部門間のコミュニケーションをスムーズに行うことができます。

例えば、社内報を使って「どの部署がどんな業務を担当しているか」を紹介すれば、他部署の動きが把握しやすくなり、認識のズレや情報の断絶を防ぐことができます。

さらに、プロフィールの公開や社員インタビューの発信を通じて、人となりを知る機会をつくることで、部署を超えたコミュニケーションのハードルも下がります。

縦割り組織の運用に必要な視点とは

縦割組織は、専門性を高めるうえで非常に効果的な構造ですが、一方で部門間のコミュニケーション不足が起こりやすい組織形態です。

大切なのは、縦割りの中に「どう横のつながりを補完し、一体感ある組織をつくるか」です。

今回紹介した改善策を参考に、ぜひ自社に合う方法で試してみてください。