マネジメントの種類一覧と必要なスキルとは?注意すべきポイントも解説
マネジメントの種類は、大きく分けて「階層別マネジメント」と「業務別マネジメント」の2つです。階層別マネジメントは管理職など、組織内の役割に応じた分類方法です。対して業務別マネジメントは名前のとおり各業務に応じており、主に組織運営、人材管理、メンタルヘルス管理の3つに分けられます。その中でもマネジメントの種類は多岐にわたり、それぞれの特徴を理解することが重要です。
本記事では、マネジメントの種類だけでなく、どのマネジメントの種類でも共通している必要なスキルや注意すべきポイントを解説します。
マネジメントとは
マネジメントとは、会社などの組織における「管理」「経営」を指します。組織目標を達成するために、経営資源である「ヒト・モノ・カネ・情報」を管理し、成果を出すことがマネジメントの目的です。
アメリカの経営学者、ピーター・F・ドラッカー氏は、その著書「マネジメント」のなかで、マネジメントとは「組織に成果を上げさせるための道具・機能・機関」と定義づけました。マネジメントの担い手である「マネージャー」「管理職」には、限られた経営資源を有効に活用し、最大限の成果を上げることが求められます。
マネジメントは、その担い手となる人材の組織内の位置づけや、マネジメントの対象・目的に応じてさまざまな種類が存在します。いずれのマネジメントにおいても、担い手となるマネージャーには一定のスキルが必要であることはいうまでもありません。
マネジメントの種類は大きく分けて2つ
マネジメントの種類は、組織内の役割に応じた分類「階層別マネジメント」と、対象となる業務による分類「業務別マネジメント」の大きく2つに分けられます。
それぞれ、詳しく解説します。
階層別マネジメント
組織上の役割を階層別に分類し、それぞれの役割に求められるマネジメントを定義したものが「階層別マネジメント」です。現場を取りまとめる立場の人材と、全社的な経営を担う人材では、当然、求められるマネジメントの内容と必要なスキルも異なります。
それぞれの立場に応じた役割を全うするために、階層別マネジメントが必要となるのです。
業務別マネジメント
業務別マネジメントは、業務内容やマネジメントの対象に応じて分類されます。「組織運営に関するマネジメント」「人材の有効活用に関するマネジメント」「メンタルヘルスに関するマネジメント」の3分類です。
それぞれのマネジメントは、その対象や切り口によってさらに細分化され、手法が確立されています。
階層別マネジメントは3つの種類に分類される
アメリカの経済学者、ロバート・L・カッツ氏は、マネジメントを階層で分類し、それぞれの階層に求められるスキルを定義した「カッツモデル」を提唱しています。カッツモデルではマネジメントの階層を、以下の3種類に分類しました。
- トップマネジメント
- ミドルマネジメント
- ローアーマネジメント
それぞれ詳しく解説します。
トップマネジメント
トップマネジメントとは、企業の経営を担う人材に求められるマネジメントです。企業全体の舵取りをおこなうため、経営トップには強いリーダーシップが求められます。組織の将来ビジョンの設定や、経営戦略の立案・実行など、総合的な意思決定がトップマネジメントの重要な役割です。
トップマネジメントに必要なスキルは、カッツモデルによると「コンセプチュアルスキル」とされています。これは、現状を客観的に分析し、本質を捉えた最適解を導き出すスキルです。方針の決定が役割である上位階層の人材ほど、このコンセプチュアルスキルが強く求められます。
ミドルマネジメント
ミドルマネジメントとは、いわゆる中間管理職に求められるマネジメントです。この立場の人材には、経営層と現場との橋渡し役が求められます。会社の方針を現場に分かりやすく伝えたり、反対に現場の意見を経営層に伝達したりといったことが重要なミッションです。
社内外の関係者と意思疎通を図り、組織運営を円滑にすることや、人材育成の担い手ともなるため、周囲との良好な人間関係を築く「ヒューマンスキル」が強く求められます。
ローアーマネジメント
ローアーマネジメントとは、現場監督的な役割の人材に求められるマネジメントです。現場で実務にあたるメンバーをまとめあげ、ミドルマネジメント層からの指示や方針を落とし込み、業務を進める役割を担います。
実務担当者を直接マネジメントする性質上、メンバーの信頼を得ることが必要です。そのため、「ヒューマンスキル」だけでなく、秀でた実務能力「テクニカルスキル」が欠かせません。
業務別マネジメントの種類は目的ごとに分類される
業務別マネジメントはその目的ごとに、大きく次の3つに分類されます。
- 組織運営を目的とするマネジメント
- 人材管理を目的とするマネジメント
- メンタルヘルス管理を目的とするマネジメント
それぞれのマネジメントは、対象や切り口によりさらに細かく分類されます。
組織運営を目的とするマネジメントの種類
組織運営を目的とするマネジメントは、以下の4つが挙げられます。
- チームマネジメント
- プロジェクトマネジメント
- ナレッジマネジメント
- リスクマネジメント
円滑な組織運営そのものを目的としたものや、将来に備えノウハウを蓄積するもの。あるいは組織運営の障害を排除する目的のものなど、マネジメントの切り口はさまざまです。
チームマネジメント
チームマネジメントは、チームの活性化を目的としたマネジメントです。チームの結束力を高め、生産性を上げ目標を達成するためのマネジメント手法といえます。
現場監督的なローアーマネジメントでおこなわれることが多い手法です。メンバーと活発なコミュニケーションを重ね、士気を高めることによりチーム全体のパフォーマンスを向上させることが求められます。
プロジェクトマネジメント
プロジェクトマネジメントとは、プロジェクトを完遂させることを目的としたマネジメントです。どのような仕事にも納期があるように、担当者は期限までにプロジェクトを成功させなくてはなりません。
進捗管理や、必要なリソースを確保し運用することが、具体的なマネジメント内容です。納期厳守や、クオリティの担保に欠かせないマネジメントといえるでしょう。
ナレッジマネジメント
ナレッジマネジメントとは、自社の従業員に点在する知識・経験・ノウハウといった「知見」を集約し、組織全体の財産として共有する手法です。個々の従業員に知見が点在したままの状態は、業務の属人化の原因となるため、組織運営の健全さを損なう要因となります。
こうした知見をまとめあげ、精査したうえで組織として蓄積・共有することは、競争力や企業価値の向上に欠かせません。
リスクマネジメント
リスクマネジメントとは、組織運営の障害となるリスクの排除や、軽減を目的としたマネジメントです。企業運営にはさまざまなリスクがともないます。たとえば、業績が低迷し資金繰りが悪化することや、労務問題による訴訟などが挙げられます。予測できない自然災害も、事業継続を困難にする重大なリスクです。
こうしたリスクを想定し、発生の可能性と被害の大きさを精査するのがリスクマネジメントです。事前の予防とあわせて、発生時の対応を想定・訓練しておくことも含まれます。
人材管理を目的とするマネジメントの種類
人材管理を目的としたマネジメントは、以下の4種類が挙げられます。
- タレントマネジメント
- モチベーションマネジメント
- パフォーマンスマネジメント
- リテンションマネジメント
人材を適切に活用することは、企業力の向上に欠かせない要素です。
以下に詳しく解説します。
タレントマネジメント
タレントマネジメントとは、「適材適所」の人材活用を目的としたマネジメントです。個々の従業員の持つ資質(タレント)を把握し、能力を最大限に発揮できるように戦略的な人員配置をおこないます。昨今、「タレマネ」と称され、ツールが多くリリースされるなど、注目を集めている手法です。
また、優秀な人材を「タレント」と定義し、「タレント」が持つスキルやマインドを明確にすることにより、人材育成に活用することも含まれます。
モチベーションマネジメント
モチベーションマネジメントは、従業員が高い意欲で業務に取り組めることを目的におこなうマネジメントです。従業員のモチベーションが高いことにより、生産性が向上します。そのほか、人材の成長を加速させ離職の防止につながるなど、さまざまなメリットをもたらします。
モチベーションマネジメントを機能させるには、内発的動機づけを中心にアプローチすることがポイントです。仕事への興味・関心を高め、成長意欲を刺激する取り組みをおこなうとよいでしょう。
パフォーマンスマネジメント
パフォーマンスマネジメントは、従業員のパフォーマンスの維持向上を目的としたマネジメントです。個々のスキルに応じた業務目標を定め、達成に向け上司がフォローすることでパフォーマンスを高めていきます。
部下との対話のなかで目標達成につながる行動を考えるなど、良質なコミュニケーションをとり続け、成果につなげることが成長を促すのです。このプロセスを繰り返すことにより、部下は自身の力で、成果に直結する良質なパフォーマンスを身につけていけます。
リテンションマネジメント
リテンションマネジメントは、人材の確保と定着を目的としたマネジメントです。リテンション(保持・維持)という単語から、離職防止の印象を強く感じますが、優秀な人材が活躍し続けることを目指した施策全般を指します。
昨今では人材の流動化が進み、優秀な人材を確保することは難しくなりました。人材が定着し活躍し続けることは、生産性の向上だけでなく、企業のイメージアップやエンゲージメントの向上にもつながります。
メンタルヘルス管理を目的とするマネジメントの種類
従業員のメンタルヘルスの保全は、健全な事業運営に欠かせない課題です。メンタルヘルス管理を目的とするマネジメントには、以下の種類があります。
- メンタルヘルスマネジメント
- ストレスマネジメント
- アンガーマネジメント
詳しくみていきましょう。
メンタルヘルスマネジメント
メンタルヘルスマネジメントとは、従業員の精神的な健康維持を目的におこなうマネジメントです。長時間労働や人間関係、ハラスメントなどを原因に精神を病むことがないよう、さまざまな取り組みを実施します。
従業員が自身のストレス状態を把握し、上手に気分転換を図るといった個人レベルの活動も、メンタルヘルスマネジメントの一環です。会社としてのマネジメントは、ストレスとの向き合い方をレクチャーする研修の実施や、カウンセラーを設置して相談窓口を設けるといったことが挙げられます。
ストレスマネジメント
ストレスマネジメントも、メンタルヘルスマネジメント同様、従業員の精神的な健康維持を目的としたマネジメントです。ストレスとの上手な向き合い方をレクチャーするなど、個人のストレス耐性を高める取り組みを実施する企業は多いようです。
また、一定規模の事業所では、「ストレスチェック」の実施が義務付けられています。定期的に質問用紙を配布し、従業員の回答を集計することで傾向を把握することが目的です。ケースによっては、産業医との面談を推奨するなどして、従業員のメンタルヘルスを守っています。
アンガーマネジメント
アンガーマネジメントは、「怒り」をコントロールすることで周囲との人間関係を円滑にし、自身の精神の安定を図ることを目的としたマネジメントです。人間は「怒り」の感情をコントロールできずに、不適切な行動に及んでしまうことがあります。
こうした不適切な行動は、パワーハラスメントの原因となり職場の秩序を乱します。従業員、とくに管理職を対象に、アンガーマネジメントの講座を受講させる企業もあるようです。
全種類のマネジメントにおいても必要なスキル
これまで、さまざまな種類のマネジメントについて解説してきました。いずれのマネジメントにも、共通して必要なスキルがあります。マネジメントの担い手である「マネージャー」「管理職」は、必ず身に着けておきたいスキルです。
- 課題発見・分析スキル
- プロジェクト管理スキル
- リーダーシップ・意思決定スキル
- コミュニケーションスキル
それぞれ解説いたします。
課題発見・分析スキル
事業目標を達成に導くのが、マネージャーに課せられた役割です。そのためには、課題を正しく把握し、分析するスキルが欠かせません。課題が明確でなければ、どのような対策が最適か判断ができません。正しく分析ができていなければ、部下に明確な指示も出せないでしょう。
優秀なマネージャーは、客観的なデータや事実をもとに課題を抽出・分析し、組織を正しい方向に導きます。そして、結果をもとにPDCAサイクルを回すなど、検証を怠らず次の課題を見つけていくのです。
プロジェクト管理スキル
期限内に求められる成果を上げることが、マネージャーの役割です。そのために必要なのがプロジェクト管理スキルです。プロジェクトの目標達成に向けた進捗管理をはじめ、メンバーに振り分けた業務が滞りなく進んでいるかを把握します。
すべてが予定通りに進行するわけではありません。トラブルが発生していれば、サポートに回るなど、イレギュラーな対応も発生します。期限内にプロジェクトを完遂させるには、さまざまな方面に目を配る管理力が求められるのです。
リーダーシップ・意思決定スキル
組織目標を達成させるには、人をまとめあげるリーダーシップが必要です。マネジメントは目標達成に向けた管理のことを指しますが、リーダーシップは達成に導く推進力のようなものです。管理と推進力がバランスよく機能することで、目標達成の可能性が高まります。
また、チームをまとめるうえでは、意思決定スキルも重要です。メンバー間で意見が対立することも少なくありません。こうした場合は、マネージャーが明確にチームとしての意思決定を下す必要があるからです。
コミュニケーションスキル
健全なチーム運営には、マネージャーとメンバーが信頼関係を築くことが欠かせません。そのため、マネージャーにとってコミュニケーションスキルは、必須のものといえます。日頃から、十分な意思疎通を図ることで、プロジェクトの方向性や戦略を浸透させる必要があるためです。
また、コミュニケーションが良好なチームでは、トラブルやミスの報告が滞ることなく上がってくるため、素早い対処が可能になります。こうしたコミュニケーションは、メンバーの課題解決力を高めるなど、人材育成にもよい効果をもたらすのです。
全種類のマネジメントで意識すべきポイント
いずれのマネジメントにおいても、担い手であるマネージャーには、最短で目標を達成するべく手腕を振るうことが求められます。そのとき意識すべきポイントは、課題を見極め、解決への道筋を定めること。そして、人材の力を集約し最大化することにあります。
課題の見える化と明確な優先順位の設定
事業やプロジェクトが計画通りにいかない場合、なんらかの課題が発生していることが少なくありません。まず、課題の「見える化」を習慣づけることが必要です。課題の背景にある本質的な原因を繰り返し考え、改善への道筋を導き出します。
課題が明確になれば、対応策が見えてきます。対応策を具体的なタスクに落とし込み、重要度・緊急度の面から優先順位を設定し、解決を図るとよいでしょう。
人材の活用
適切に業務を配分し、それぞれのメンバーに細かくタスクを振り分けることも有効な手法です。メンバーの得意・不得意を考慮し、それぞれのタスクを担当してもらいます。割り振ったタスクを明確に把握しておけば、停滞が発生した場合、早期に察知できます。
また、自身がおこなう仕事と、メンバーに割り振る仕事を明確にすることも必要です。任せる部分はメンバーを信用して、しっかり任せる。その分、マネージャーは自身にしかできない仕事に集中するといった業務分担を構築することが大切です。
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多岐にわたるマネジメント種類を理解して人材の活用につなげよう
マネジメントは組織上の役割や業務に応じて、多岐にわたる種類が存在することを解説してきました。マネジメントの担い手は、それぞれの特徴やポイントを理解することで、より精度の高い管理ができるようになります。
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