社内報は企業の情報を社員に届けるの重要なツールですが、記事を書くときに「めんどくさい」「工数がかかる」と感じることも多いのではないでしょうか。本記事では、効率的に記事を作成する生成AIの活用方法を詳しく解説します。
そもそも何が「めんどくさい」のかー5つの典型課題
社内報の作成にあたり、めんどくさいと感じる部分は実際の記事執筆以外にも存在します。まずは、どこで工数がかかっているのかを明確にするために、典型的な課題を5つご紹介します。
ネタ出しが毎回ひと苦労
多くの社内報担当者が最初に悩むのが、「今回は何を書こうか」というネタ出しの部分です。
特に定期発行の場合、ネタが尽きたり、内容がマンネリ化しがちです。他部署の話題にアクセスしづらい場合だと、視野も狭まり、結果として「何を書けばいいのか分からない」と手が止まってしまいます。
ネタ出しにお困りの方はこちらの記事でネタ131選をご紹介しておりますので、ご覧ください。
記事執筆に時間とスキルが求められる
社内報を運用する目的はさまざまですが、まずは社員に読んでもらうことが重要です。
そのため、「読まれる文章」であることが求められ、記事の構成を考えるスキルやライティングスキルが必要ですが、広報が専任ではない担当者にとっては大きなハードルになります。
本記事で解説する生成AIの活用テクニックを参考に、効率的に記事を作成していきましょう。
社員への執筆依頼がしにくい
「誰に頼めばいいか分からない」「断られるのが怖い」――これらは執筆の依頼時によくある心理的なハードルです。依頼のハードルが高いと、結局自分で書くことがメインにになり、担当者の負担はなかなか軽減されません。
社内報の執筆を依頼するときの企画書の書き方はこちらで解説しております。まずは、部署のリーダー的存在の方や、よく社内報を見てくれている方に依頼をしてみましょう。
デザインやレイアウト作業が負担
紙やPDF形式で作る社内報は、見た目の整え方にも手間がかかります。
社内にデザイナーがいない場合、デザインの編集や画像の配置など、細かな作業が大きな負担になります。思った以上に時間を取られがちな工程です。
社内報におけるデザインのポイントはこちらで解説しております。
成果が見えづらく、やりがいを感じにくい
どれだけ時間をかけて作っても、読まれたか、伝わったかがわからない場合、記事を書き続けるモチベーションが続かない場合があります。フィードバックが少なく、リアクションも見えづらいと、どうしても「やっている意味があるのか」と感じるでしょう。
読者アンケートを定期的に取得したり、閲覧率や読了率(どれだけ読まれたか)を測定できるweb社内報の検討もおすすめです。
生成AIを活用した執筆テクニック
効率的に記事を執筆するために、どのように生成AIを活用していくのかを解説していきます。あくまでAIは補助ツールであることを念頭に置きつつ活用していきましょう。
【全体の流れ】
1.テーマ設定、目的の明確化
まずは「社内報で何を伝えたいのか」「どのような社員に読んでほしいのか」「どのような行動を促したいか」を明確にします。AIに投げかける前に、最低限の方向性を整理しておくことで、的確な出力を得やすくなります。
2.AIへのプロンプト設計・実行
・記事のアイデア出し
・構成案の作成
・下書きのドラフト作成
・文体の調整・修正
など工程ごとにAIが得意とするタスクにプロンプトを組みたてて入力します。
3.最終確認・修正
生成AIのデメリットとして、「事実でないこと」や「不正確な情報」を作り出す傾向がありますので、必ず一次情報を確認しましょう。また読みやすさや企業のトンマナ(トーン&マナー)に合っているかも確認しましょう。
【工程別】具体的なプロンプト例
生成AIに出す指示(プロンプト)によって、文章の内容が大きく変わります。曖昧な指示は避けて、正確で具体的な情報を提供して、わかりやすいプロンプトを作成しましょう。
今回は社内報の執筆における「企画・アイデア出し」「構成・アウトラインの設計」「下書き・初稿の作成」「リライト・文体の調整」の4つの工程別に、プロンプトをご紹介します。
企画・アイデア出し
「そもそもどんな記事を書けばいいのかわからない」ときは、AIに丸投げしてみましょう。複数のテーマ・トピックを出してもらうと、自分では思いつかないユニークな企画が得られるかもしれません。
プロンプト例
あなたは企画のプロです。現在、社内報にどんな記事を載せるかアイデアがなく困っています。社員が興味を持ち、読んでメリットを感じる記事企画を10個提案してください。
#記事の目的
この記事で達成したい目標(例:社内コミュニケーション促進、部署間連携強化など)
#提案フォーマット
企画タイトル(短め)
ターゲット読者(例:全社員、新入社員、管理職など)
内容の概要(どんな情報を載せるか、どんな構成にするか)
社内でのメリット(なぜ面白い・役立つのか、一言で)
想定する形式(インタビュー、座談会レポート、コラム、写真特集など)
できるだけ具体的で、実際に取り組みやすい企画にしてください。
文章は簡潔に、かつ興味をそそる表現で書いてください。
回答の最後に「他に活用できる社内報向けアイデアがあれば教えて」と追記してください。
出力結果例 ※ChatGPT 4oを利用
1.あの人の「一日」をのぞいてみた!
ターゲット読者:全社員
内容の概要:異なる部署の社員の1日を密着取材。業務の流れ、工夫している点、やりがいを紹介。
社内でのメリット:他部署への理解が深まり、協働のヒントになる。
想定する形式:写真付きルポ+インタビュー
2.このスキル、誰に聞く?社内の“師匠”図鑑
ターゲット読者:全社員
内容の概要:専門スキルや知識を持つ社員を紹介。どんな相談ができるかを明記。
社内でのメリット:知見の社内共有と、相談しやすい風土づくりに。
想定する形式:プロフィール+一問一答
3.管理職の「しくじり先生」
ターゲット読者:管理職、中堅社員
内容の概要:過去の失敗談とその後の改善策を紹介。学びや気づきを共有。
社内でのメリット:チャレンジや成長を後押しする社風づくりに役立つ。
想定する形式:コラム or インタビュー
構成・アウトラインの設計
企画が決定したら、次は記事の構成や流れを考えましょう。ご紹介するプロンプトのカッコ{}の部分をカスタマイズして、ご活用ください。
プロンプト例
「あなたは{想定する専門家像(例:社内報の編集長、Webライターなど)}です。これから、{記事のテーマ}に関する記事を書きたいと思っています。
#記事の目的
{この記事で達成したい目標(例:社内コミュニケーション促進、部署間連携強化など)}
#ターゲット読者
{どんな社員に読んでほしいのか(例:新入社員、全社員、管理職、特定部署など)}
#メインメッセージ
{読者に伝えたい一番重要なこと(例:「この取り組みで仕事がもっとやりやすくなる」など)}
以下の内容を踏まえて、記事の構成・アウトラインを提案してください。
導入パート(読者が興味を持てるフックや、目的を簡潔に示す部分)
背景・課題(なぜこの記事が重要か、どんな経緯・課題があるか)
具体的内容・本論(主張・事例・エピソード・データなど)
読者へのメリット・アクション(読者が得られるメリット、行動喚起、Tipsなど)
まとめ・次のステップ(最終的な結論、今後の展望)
#要望事項
セクションごとに見出しを明確に示す
{希望する文量(例:A4で1ページ、約1,000文字など)}
口調・トーン(例:親しみやすいが、ビジネス的な最低限の堅さは保つ)
箇条書きや短い段落を活用し、読みやすく整理
#出力形式
見出しや段落をわかりやすく分けたアウトラインとして提示。各セクションに、どんな内容を書けばいいか概要を加えてください。
下書き・初稿の作成
構成が決定したら、次は下書きを作成しましょう。また、社員インタビューなどで音声データがある場合は、文字起こしをして、プロンプトの中に記載をしましょう。
AIに一気に文章を書いてもらい、叩き台を作ることができます。
プロンプト例
あなたは{想定する専門家像(例:社内報の編集者、ビジネスライターなど)}です。これから、社内報の記事の下書きを作成してほしいと思います。
#記事の基本情報
目的: {この記事で達成したいこと(例:社員同士の知見共有、成功事例の横展開など)}
ターゲット読者: {どの層に読んでもらうか(例:新人、全社、特定部署など)}
トーン: {希望する文体(例:親しみやすく、かつビジネス文書の基本を守る)}
#インタビュー素材の概要
インタビュイー(受け手): {誰へのインタビューか(役職、名前、所属部署など)}
取材テーマ: {インタビューの主なテーマ(例:プロジェクト成功の秘訣、新サービス開発の裏話など)}
インタビュー音声/文字起こしURLやファイル: {ここには実際の音声ファイルの場所やテキストを貼る、または一部抜粋を載せる}
#記事に盛り込みたい要素
インタビューで語られたキーエピソード(どのような話が印象的だったか)
具体的な数値や事実(もし出ている場合)
読者の業務に活かせるヒント(ノウハウ、考え方など)
インタビュイーのコメントを引用する際の表現(「〇〇さん曰く…」などの形でわかりやすく)
#下書きに関する要望
全体の構成: 導入 → 本文(インタビュー内容の要約と要点) → まとめ(読者へのメッセージや行動喚起)
文字数: {例:およそ1,000文字}
引用形式: インタビューの引用部分は、段落や「“”」などで区別して読者が分かりやすいように書いてください。
箇条書きや短い段落を適度に使い、社員が読みやすい構成にしてください。
#出力形式
見出し: 大見出し・小見出しを使って構成を分ける
本文: 段落ごとにまとめ、引用部分はインタビュイーの発言として分かりやすく表記
注釈: 必要に応じて補足説明や参照情報を入れる
それでは、以上の要件を踏まえて、社内報の記事用の下書きを作成してください。
完了後、さらにブラッシュアップが必要そうな点や、追加でインタビューから盛り込むとよい要素をコメントしてください。
AIを活用するときの注意点
AIを活用して記事を執筆することで、作業の効率化が実現できる一方で注意点もあるので押さえておきましょう。
誤った情報(ハルシネーション)の可能性
AIは、それっぽい情報を作り出してしまうことがあります。重要な数字や事実は、必ず元資料や信頼できる情報源で確認しましょう。公開前には自分だけでなく、第三者にも確認してもらうことがおすすめです。
無機質な文章になりやすい
AIが書いた文章はスムーズでも、感情や個人的な体験が薄い傾向があります。社員のリアルな声や実際にあったエピソードを盛り込んだり、必要に応じて社内ならではの用語を入れるなど、人間らしさを出すと無機質な記事になりにくいです。
プライバシーや機密情報への配慮
社員の個人情報や企業秘密を、むやみにAIのサービスへ入力しないように注意しましょう。(外部ツールへの入力は情報が学習データに入るリスクがあります)。もしくは、学習用としてデータを提供しないように設定を変更しておきましょう。
参考:https://www.tku.ac.jp/iss/guide/classroom/ai/chatgpt-2.html
ブランドイメージとの整合性
文章の口調や使う用語など、自社で決められているルール(ブランドガイドライン)に沿っているか最終確認が必要です。また、AIに複数回リライトさせると、文体がブレてしまうことがあります。最終版は必ず人の目で確認をしましょう。
音声データを簡単に文字起こしする方法
社内報の記事として社員インタビューや対談の企画を実施される企業も多いのではないでしょうか。そのときに一番負担になるのが、文字起こしです。ここでは、動画ファイルや音声ファイルから簡単に文字起こしする方法をご紹介します。
NotebookLMとは
NotebookLM(ノートブックLM)は、Googleが開発したAIを活用した次世代のノートツールです。無料でも基本的な機能は利用できるので、ぜひご活用ください。
文字起こしの手順
実際にNotebookLMを活用した文字起こしの手順を紹介します。
手順1:録音データのアップロード
iPhoneのボイスメモや音声、ご利用中のツールで録音/録画した音声ファイルをNotebookLM にアップロードします。

手順2:音声認識
NotebookLM が音声データをテキストに変換します。

効率的に画像を生成する方法
ChatGPTを使った画像生成の手順
※ChatGPTの画像生成は無料版の場合、回数制限があります。継続的な使用を想定している場合は有料版へのアップグレードを推奨します。以下の手順は有料版の画面のため、無料版と画面が異なる場合があります。
手順1:サイドバー左上の「新しいチャット」を押します。

手順2:入力欄の下にある「画像を作成する」ボタン、または、入力欄の「ツール」を選択し「画像を作成する」ボタンを押します。

手順3:「画像を生成する」の文字が挿入されているのを確認します。

手順4:プロンプトを入力します。

プロンプト例
あなたはweb社内報担当者です。以下に記載する記事のサムネイル画像を作成してください。
#条件
縦横比やピクセル数
例:横:縦=3:2の長さ比率で、柔らかい雰囲気で対話している雰囲気の分かるアニメーション画像、代表の人柄を感じるような画像 など
#記事タイトル
{記事タイトルを張り付ける}
#記事全文
{記事全文を張り付ける}
出力例

効率的に社内報を執筆しよう
社内報の目的は組織課題の解決です。しっかりと社員に情報を届けるためにも、まずは量を担保しながら、読みたくなる記事を出すことが重要です。
今回ご紹介したテクニックを使って、社内報のネタ出しや記事の構成、下書きの作成といった業務を効率化していきましょう。