近年、社内コミュニケーションが重要視されるようになっています。
働き方改革やコロナ社会の影響で、人々の労働環境は急激に変化しています。その中で、社員同士のコミュニケーションに課題を持つ企業が増加しているのが現状です。
この記事では、社内コミュニケーションとはそもそも何か、重要視される時代背景や改善するメリット、また社内コミュニケーションの具体的な改善施策や成功事例などを解説していきます。
社内コミュニケーションとは?

社内コミュニケーションとは、社内で行われるコミュニケーション全般を指します。
社内で行われるコミュニケーションには、普段接している同じ部署内の社員同士のコミュニケーションから始まり、他部署間のコミュニケーション、また社長や経営層と一般社員間のコミュニケーションなど、多岐に渡ります。
年齢や入社時期が近いなど、同じ世代同士のコミュニケーションは比較的簡単だと考えられます。しかし、上司と部下間や、他の部署とのコミュニケーションとなれば、課題を持つ企業が多いかもしれません。
社内コミュニケーションの必要性
それでは、社内コミュニケーションはどれだけ必要なのでしょうか?
HR総研が実施した、社内コミュニケーションに関するアンケート(【図表4】)によれば、社内コミュニケーション不足が業務の障害になるかという問いに対して、95%が肯定的な回答を示しました。

やはり社内コミュニケーションは、会社が事業を進めていく中で必要不可欠なもののようです。
(引用:人事ポータルサイト【HRpro】, 「HR総研:『社内コミュニケーションに関する調査』結果報告」,〈https://www.hrpro.co.jp/research_detail.php?r_no=153〉, 閲覧日2020年12月)
社内コミュニケーションを活性化させる5つのメリット
社内コミュニケーションが重要である一方で、それに課題を持つ企業が多い現状を述べてきました。
では実際に社内コミュニケーションを活性化させることによって、企業はどのようなメリットを得られるのでしょうか。
⑴離職率の低下・従業員の定着
社内コミュニケーションが活性化することで、離職率の低下を見込むことができます。
エン・ジャパンによる「退職のきっかけ」についてアンケートによると、下記【図1-a】に示すように、退職を考え始めたきっかけの上位には、「給与が低かった」「やりがい・達成感を感じない」「企業の将来性に疑問を感じた」「人間関係が悪かった」であることがわかります。

実はこれら4つの理由のどれもが、社内コミュニケーションを活性化することが、その改善に繋がる可能性を持っています。
4位の「人間関係が悪かった」は、想像し易いように、社内コミュニケーションの活性化によって、同部署内の関わりが深くなることによるすれ違いや情報伝達のずれなどがなくなり、また、部署外でも新たな人間関係を築くことができます。
また他の「やりがい・達成感を感じない」「企業の将来性に疑問を感じた」に関しても、例えば、社長や経営層の経営計画やビジョンが詳細まで共有することができれば、目の前の小さな仕事に対してもそのやりがいや意義を感じることができますし、企業の将来に対する不安も払拭されるかもしれません。
また、「給与が低かった」に関しても、会社にとっても人材の流出は大きな経営損失であり、給与の面の折り合いもつけることがでできる可能性があるのです。
(引用:エン・ジャパン, 「8,600名に聞いた「退職のきっかけ」調査。転職理由は「給与」「やりがいのなさ」「企業の将来性」。―『エン転職』ユーザーアンケート調査 結果発表―」, 〈https://corp.en-japan.com/newsrelease/2018/13174.html〉, 2020年12月閲覧)
⑵情報の共有による企業リスクの低下
社内コミュニケーションの活性化によって、社内での情報の共有が促進され、企業リスクが低下することが見込まれます。
コンプライアンス違反や、社員の会社情報の非認知などは、企業にとって大きなダメージとなり得ます。
しかし、社内コミュニケーションを活性化させれば、情報が迅速に共有され、企業に一貫性を生み出します。
社員の意識改革にもつながり、コンプライアンス違反や社員の会社情報の非認知といった企業リスクの低下が期待できます。
⑶従業員のモチベーションの向上
社内コミュニケーションの活性化によって得られるメリットの3つ目は、従業員モチベーションの向上です。
同じ部署内での社員間交流が盛んになることに加え、部署を超えたコミュニケーションが増えれば、社内で新たな繋がりや情報の交換をすることができます。
同部署内でのコミュニケーションが増えることによって、日頃互いに伝えずらかったことや、小さく気にしていなかったような事柄も、互いに共有することができ、より親密な関係構築が期待できます。
これらによって、従業員のモチベーションの向上が期待できるのです。
⑷労働生産性の向上
社内コミュニケーションの活性化によって、労働生産性の向上も見込まれます。
社員同士のコミュニケーションが活性化されれば、情報の共有や意思疎通がよりスムーズに行われ、労働生産性の向上が期待できます。
業務をより円滑に遂行できるだけではなく、課題に直面した場合にも迅速に解決できるようになるでしょう。
また、従業員のモチベーションが向上することにより、やる気のアップによる労働生産性の向上も期待できます。
⑸顧客満足度の向上
労働環境が良いなど、ホワイトな企業というイメージは、顧客の信頼につながります。
また、情報の共有は企業内の一貫性だけではなく、顧客に対するサービスの統一にもつながるでしょう。
コンプライアンスが遵守され、また従業員のモチベーションが高まれば、自ずと顧客満足度も向上します。
このように、社内コミュニケーションの活性化は、社員に対してのみではなく、顧客に対するメリットも期待できるのです。
社内コミュニケーションを活性化させる8つの施策
では、どのような方法で社内コミュニケーションを活性化させることができるのでしょうか。具体的なその施策を次に見ていきましょう。
では、社内コミュニケーションを活性化させる施策を紹介していきます。
⑴社内報

社内報とは、社員やその家族に向けて、企業に関する幅広い情報を発信するものです。冊子だけではなく、ウェブ上で情報を発信することもでき、気軽に利用できるツールです。
普段関わりがない上司や、他部署の情報などを知る機会となります。業務に関することだけではなく、社員のプライベートの様子なども発信することができ、社員同士の交流にもつながるでしょう。
HR総研が実施したアンケート(【図表8】)によれば、コミュニケーション不全の防止・抑制策として、「社内報」が最も利用されていることが分かります。

また、社内報は、日頃関わりの持ちにくい経営層と社員のコミュニケーションを図る最大の機会です。経営層は、自身が持つ会社のビジョンや想いを、社員全体と共有する気持ちで社内報作成に携わることが大切です。
⑵社内イベント
社内イベントとは、スポーツ大会や飲み会、BBQなど社員が集まって開催する企画・イベントを指します。
業務中とは違い、社員同士の気軽なコミュニケーションが活性化され、オフィス内では見られない、社員の新たな一面を知ることができます。
同じくHR総研が実施したアンケート(【図表8】)によれば、コミュニケーション不全の防止・抑制策として、「レクリエーション」や「クラブ・サークル活動」や「運動会・スポーツ大会」など、社員同士で運動する社内イベントも、利用している企業が多いことが分かります。

社内イベントは特に、上司や部下という関係のコミュニケーションを促進することに効果的です。普段仕事中は集中していて声のかけずらい上司に対しても、イベントという気の抜けた空間であれば、互いに気軽にコミュニケーションを取ることができます。
⑶従業員アンケート
従業員アンケートを行うことで、普段言いにくいような社員の声を拾うことができます。
上司や経営層、ましてや社長には、なかなかその会社の不満を面と向かって伝えることは難しいものです。匿名アンケートとすることで、対面ではないが、社員と本音のコミュニケーションを取ることができるでしょう。
同じくHR総研が実施したアンケート(【図表8】)によれば、コミュニケーション不全の防止・抑制策として、「従業員アンケート」を利用している企業が多いことが分かります。

(引用:人事ポータルサイト【HRpro】, 「HR総研:『社内コミュニケーションに関する調査』結果報告」, 〈https://www.hrpro.co.jp/research_detail.php?r_no=153〉, 閲覧日2020年10月9日)
⑷イントラネット・社内SNS
会社の掲示板的な存在であるイントラネットや、普段社員間のメッセージのやりとりを行う社内SNSも、社内コミュニケーションを活性化させる一つの方法です。
SlackやChatwork、LINE WORKSなどの社内SNSなどの他に、相手の良い言動に対して小さな表彰の気持ちとしてタコスのメッセージを行い、後にそれをリワードと交換できるHeyTaco!といったサービスもあります。

(引用:HeyTaco!, <https://www.heytaco.chat/>, 閲覧日2020年11月)
⑸ミーティング・1on1

1on1とは、1対1で行うミーティングのことを指します。ミーティングや特に1on1は、社員同士が課題や解決すべき問題に向き合う機会となります。普段は言い出せないようなことも発信する機会となり、情報の共有に役立つでしょう。
定期的に行うことによって、つねに問題や情報を共有することができ、社内コミュニケーションの改善にもつながります。
定期的にこれらミーティングや1on1を行うことで、従業員も意見を伝えることに慣れ、自然なコミュニケーションの促進を期待できます。
⑹社員食堂
社員食堂は、社員同士の交流の場となります。自然と人が多く集まり、毎日様々な人とコミュニケーションをとれるでしょう。
またメニューの充実や、栄養価の高い食事を提供することによって、社員のモチベーションや集中力につながることも考えられます。
普段は仕事の時間だからと、プライベートな会話はしずらいものです。社員がいろいろな話を交換できる場を提供することは大切かもしれません。
⑺オフィスレイアウト

オフィスのレイアウトを社員同士が話しやすいような形式にすることによっても、社内コミュニケーションの活性化を見込むことができます。
いわゆる普通の対面式のオフィスレイアウトだけではなく、円卓の机を用いたり、立って仕事ができる場所を用いたり、人の通り方を考えたレイアウトにしてみたり、オフィスのレイアウトを工夫することによって、社員間のコミュニケーションがしやすくなる状況をつくることができます。
また、これは社内コミュニケーションの活性化だけにとどまらず、社員のより快適な働く空間の提供となり、従業員満足度の向上も図ることができます。
⑻社員研修・ワークショップ
社員研修やワークショップは、社員のレベルアップが大きな目的ですが、社内コミュニケーションの改善にも効果的です。
各社員の知識や能力が上がることにより、それだけ企業としての組織力も向上します。意識・行動改革につながり、意見の交換や質の高い議論などを通して、社員同士のコミュニケーションも活性化されるでしょう。
何か話題がある方が人は会話をしやすいものです。従業員のレベルアップとともに、コミュニケーションを促進させましょう。
社内コミュニケーションの促進に成功している成功事例7選!
前章では、社内コミュニケーションの施策をいくつか紹介しました。
この章では、それらの施策に沿って成功事例を7つご紹介します。
⑴丸紅:グループ社内報-M-SPIRIT-

丸紅株式会社は、グループ社内報としてM-SPIRITを発行しています。
2001年から発行を続けており、経団連の推薦する「経団連推薦社内報」も受賞されています。2012年から5年連続で受賞しており、その完成度の高さが伺えます。
2015年の受賞では、商社グループ報らしく国際色豊かであることに加えて、トップから若手まで多くの人が登場する点などが評価されたとしており、その会社の特徴を表す内容やデザイン、またさまざまな役職や部署など、幅広い社員を紹介する点が、効果的な社内報の特徴であると推測できます。
(引用:丸紅株式会社, 「2015年度「経団連推薦社内報」で、「MS+」が優秀賞、「M-SPIRIT」が総合賞を受賞」, <https://www.marubeni.com/jp/news/2016/info/00007.html>, 閲覧日2020年11月)
⑵キリンビジネスエキスパート-ビール試飲会-

キリンビジネスエキスパート株式会社は、社内イベントとして、試飲会と全体懇親会を行っています。
試飲会では、自社製品を知る機会として、また全体懇親会では、社員全員が交流できる機会として開催しています。
自社の提供しているサービスに基づくイベントは、自社ならではのオリジナルのものとなり、また、自社のサービスに関連する事柄をより深く知る機会にもなるため、効果的な社内イベントと言えるでしょう。
(引用:キリンビジネスエキスパート株式会社, 「社内イベント」, <http://www.kirinbusinessexpert.co.jp/recruit/event.html>, 閲覧日2020年11月)
⑶メルカリ:ピアボーナス導入-リアルタイムに賞賛し合える環境に-

社内SNSを社内コミュニケーションの活性化に利用できる企業は多くありません。
そんな中、メルカリはSlackという社内SNSサービスにピアボーナスサービスを導入することで、mertip(メルチップ)という独自のチップを用いて、社員間の良い言動をリアルタイムに賞賛し合う仕組みを取り入れています。
普段は見落とされがちな社員の色々な良い言動に対して感謝を伝えることで、社内コミュニケーションの促進に加え、自身の良い行動が評価されるということで、従業員満足度の向上も図れるのです。
(引用:メルカリ株式会社, 「贈りあえるピアボーナス(成果給)制度『mertip(メルチップ)』を導入しました。」, <https://mercan.mercari.com/articles/2017-10-24-151523/>, 閲覧日2020年11月)
⑷ヤフー:1on1-潜在力を引き出す-

ヤフー株式会社は、組織運営の向上を目指し、最大限の潜在力を引き出す目的で部下のために行う面談として、1on1を週に一度行っています。1on1を継続していく中で、その目的を明確にし、客観的なフィードバックをし続けることによって、より効果を発揮しています。
(引用:ヤフー株式会社, 「『1on1ミーティング』で強い組織をつくる 人材育成のための部下とのコミュニケーション」, <https://about.yahoo.co.jp/info/blog/20181011/1on1.html>, 閲覧日2020年10月14日)
⑸日本ビジネスシステムズ:社員食堂「Lucy’s CAFE & DINING」-気軽なコミュニケーションの促進-

日本ビジネスシステムズ株式会社は、人が集まりたくなる場所として、終日利用可能のモダンな社員食堂を開設しました。
各所に散らばっていた社員が、同僚との会話を楽しもうと集まり Face to Face のコミュニケーションを交わすそうで、社員同士の気軽なコミュニケーションの活性化につながりました。
(引用:日本ビジネスシステム株式会社, 「社員食堂 Lucy’s CAFE & DINING」, <https://www.jbs.co.jp/aboutus/lucys>, 閲覧日2020年10月14日)
⑹ヤフー:フリーアドレス制の導入-コミュニケーション量が2倍に-
ヤフー株式会社では、オフィスレイアウトの変更と共に、フリーアドレス制を導入しました。
壁を取り払い、机を斜めに配置することで、フリーアドレス制の効果をより発揮することに成功しました。
従来の配置と比べて、コミュニケーション量が約2倍に増えたといいます。
こちらは、オフィスレイアウトによる社内コミュニケーションの向上の成果の上がった好例と言えるでしょう。
(引用:ヤフー株式会社, 「『変えたいのは働き方』ヤフーの新本社オフィス」, 〈https://about.yahoo.co.jp/info/blog/20161007/kioicho.html〉, 閲覧日2020年10月14日)
⑺コンビーズ:ワークショップ-企業理念の共有-

株式会社コンビーズは、井戸端会議と題して、さまざまなテーマに対して意見を出し合うワークショップを行っています。またイズムトークという、企業の理念やビジョンについて話し合うワークショップも行っています。
企業に対する理解度が向上し、発言する力も身に付きます。
また、どちらのワークショップについても、メンバーはランダムで選出されるため、社内コミュニケーションの活性化につながります。
(引用:株式会社コンビーズ, 「社内環境」, <https://www.combz.jp/activity/environment>, 閲覧日2020年10月14日)
社内コミュニケーションが重要な時代
少子高齢化やコロナといった時代背景から、社内コミュニケーションは重要視されるようになりました。この記事では、社内コミュニケーションの必要性や、それに課題を持つ企業の現状、さらにはその具体的な施策や成功例を紹介していきました。
今後、コロナの影響や働き方改革によって、リモートワークやフレックスタイム制などがより促進され、社員同士が対面する機会が減っていくと考えられます。
その中で、各企業に合った施策を実施し、社内コミュニケーションを活性化させることは非常に重要です。