1on1ミーティングとは?成功のポイント、製造業・小売業での導入事例を紹介

1on1ミーティングとは?
1on1ミーティングは、上司と部下が1対1で定期的(週1~月1程度)に対話する場です。
グローバル競争が激化するなか、組織全体の成果を上げるには、個人ごとの状況を把握し、迅速に対応する“1on1”が有効であり、従来の全体面談だけでは拾いにくい悩みやアイデアを吸い上げる意味でも、いまや多くの企業が導入を進めています。
1on1ミーティングの実施時間は30分~1時間が一般的ですが、10~15分の超短時間ミーティングを高頻度で行う企業もあります。目的は以下のとおり多岐にわたります。
・個々の仕事の進捗確認・問題解決
・キャリア開発やモチベーション向上
・組織の戦略・施策の浸透
・信頼関係・心理的安全性の構築
この記事では、実証研究なども紹介しながら成功のポイントや、製造業や小売業など現場勤務する従業員が多い会社での導入事例も紹介します。
1on1ミーティングが注目される背景
近年、1on1ミーティングが多くの企業で導入されています。これは、従来の組織マネジメント手法(集団面談・査定面談・定期的な全体会議など)の限界を補完し、個々人の悩みやキャリア志向、日々の進捗状況を“個別最適”で把握・支援できる点が注目されてきたからです。
背景と隆盛の理由
・従来型の定期面談では個々の悩みを拾いきれない:大人数が集まる会議や年1,2回の査定面談のみでは、社員一人ひとりの細かいニーズに対応できない。
・アジャイル(俊敏)なマネジメントが求められるVUCA時代:変化が激しいビジネス環境下で、部下の仕事や課題感を素早く把握し、タイムリーにサポートする必要性が高まっている。
・シリコンバレー企業の成功事例:元インテルCEOのアンドリュー・グローブが著書でその手法を紹介したことで、GoogleをはじめとするIT企業が1on1を導入し、高い生産性やイノベーションを実現したことで一気に世界に広まる。


1on1ミーティングのメリットと課題
1on1ミーティングの主なメリットは以下のとおりです。
・部下との信頼関係強化:上司が部下の話に耳を傾け、フィードバックを与えることで、相互理解が深まり、離職率低減につながる。
・個々の仕事ぶりを把握しやすい:小さな課題や悩みを早期に発見・対処できるため、パフォーマンス低下やトラブルを未然に防ぎやすい。
・キャリア形成やモチベーション維持に寄与:定期的に将来像を聞き、スキルアップ機会を提供することで、部下が「自分の成長が会社に認められている」と感じられる。
一方で1対1で実施することから以下のような課題もあります。
・実施コスト(時間)がかかる:社員数が多いほど1on1の実施頻度・時間を確保するのが難しくなる。
・形骸化のリスク:目的・アジェンダを明確にしないと、雑談に終始しやすい。
・成果測定の難しさ:1on1が直接的に業績向上や離職率低減につながったかを定量化しづらいが、エンゲージメント調査と合わせることで効果を把握しやすくなる。
調査結果から見る、1on1ミーティング成功のポイント
1on1ミーティングの効果
Gallupの調査(”State of the American Manager”など)
1on1を月1回以上行い、具体的なフィードバックを部下へ与えているマネージャーの下では、仕事への没頭感(ワークエンゲージメント)スコアが約15~20%向上したケースが報告されています。
CIPDの調査 (“Good Work Index” など)
1on1を導入している企業では、早期離職率(入社1~2年以内の退職)が顕著に低い傾向が認められ、主な要因として「自分の意見を言える場がある」「キャリア支援を受けられる」などが挙げられています。
研究から見える、成功のポイント
上記の調査結果から、1on1ミーティング成功のポイントとしては以下の3点があげられます。
・上司の“コーチ型リーダーシップ”
指示や説教ではなく、部下の意欲を引き出す“コーチング的な質問”を行うとエンゲージメントが高まりやすい。
・フィードバックの具体性と頻度
週1回以上の短時間1on1でも、業務上の成功・改善点を具体的に伝えるとパフォーマンス向上に効果大。
・部下主体のアジェンダ(議題)設定
アメリカの複数研究では、部下がアジェンダを提案できる1on1のほうが、モチベーションとコミットメントが高まる傾向あるとされている。
1on1ミーティングのメリット・効果
従業員のパフォーマンスを把握・改善できる
(1) 細やかな進捗確認が行える
1on1を定期的に行うことで、部下が抱えるタスクの進捗をこまめにヒアリングし、問題があれば早期に修正できます。
実施のヒント
・前回の1on1で話し合った改善策や新タスクの状況を、次の1on1で必ずフォローアップする。
・「このタスクで困っていることはない?」などオープン質問を使い、部下が言い出しにくい問題も引き出す。
・話を聞いた上で、「次回までにどのように状況を変えられるか」を一緒に考え、次の1on1で成果を確認するサイクルを回す。
(2) 内省を促せる
自分の仕事を客観的に振り返る習慣が身につくと、問題が発生したときに気付きが早く、自己解決力も高まります。1on1が「自身の行動や成果を見直す場」として機能すれば、成長速度が向上します。
実施のヒント
・事前に振り返りシートを配布し、部下が自分で成果や課題を整理。
・「この1週間で一番うまくいった点は?」「苦戦しているのはどんな部分?」といった設問で思考を誘導し、1on1ではそれを土台に対話を深める。
・自己評価結果を上司と共有し、部下の理解や解決策が妥当かどうかを上司がフィードバックする。
エンゲージメントを高めて社員のモチベーションを引き出せる
(1) 一人ひとりへの目配りが可能になる
組織が大きくなるほど、上司が部下全員のやりがい・不満・将来目標をすべて把握するのは難しくなります。1on1を定期的に行えば、どの部下にも均等に目を配る体制を築け、個々人のモチベーション維持に直結します。
実施のヒント
・「最近やりがいを感じた仕事は?」「ストレスがあるとしたらどんな点?」と質問し、自分でも気づいていなかった感情や考えを引き出す。
・エンゲージメントサーベイの結果を見ながら、数値が改善しているかを追う。
(2) 成功体験の共有と承認
部下の「うまくいったこと」を上司が評価し認めることで、達成感や自己肯定感が高まります。承認欲求が満たされると、次のチャレンジ意欲や創造性が向上し、積極的な行動につながるのです。
実施のヒント
・「今回のプロジェクトで特に良かったのは○○だよね。どうしてあのアイデアが浮かんだの?」と詳細を聞き、部下に成功要因を自己分析させる。
・成功体験が他の業務や同僚にも応用できるよう、上司が全体会議や社内報で部下の成果を讃え、共有する。
達成感や自己肯定感は、内発的動機づけに重要な要素です。内発的動機づけについては、内発的動機づけとは?自発的な社員を増やす、実践ガイドと評価手法をご覧ください。
離職率を下げて、従業員の成長を支援する
(1) 不満や不安の早期察知
離職にはさまざまな原因がありますが、多くの場合、本人の不満や悩みが潜在化してから深刻化するまでに時間がかかります。
1on1で定期的に会話することで、「実は最近○○が気になっていて…」と表面化する前に気付き、対策を打つ余地が生まれます。
実施のヒント
・1on1の冒頭に「仕事や職場に関する悩みはある?」と必ず聞き、言い出しやすい空気づくりをする。
・対話の中でキャリアや人間関係の不満が見つかった場合、部署異動やスキル研修など具体的サポートを検討し、本人に提示する。
(2) キャリアサポート
離職要因の一つに「キャリアの見通しが立たない」が挙げられます。会社が長期的に従業員の成長を支える姿勢を示し、本人が望むキャリア形成を応援するほど、離職意向が減少します。
具体例・運用方法
・1on1で「将来的にどんなポジション・スキルを目指している?」とヒアリングし、それを踏まえた研修・資格取得支援や異動を提案する。
・管理職登用を希望する社員に対して、リーダーシップ研修やプロジェクトリーダーを任命して、キャリア実現をサポートする。
組織の問題を早期に発見して解決できる
(1) 全社視点での改善ポイントの発見
1on1ミーティングの場で個人の悩みを聞くと、実はチームや社内全体の構造的な課題が潜んでいることもあります。上司がそれを把握し、上層部や他部署と連携することで、大きな問題になる前に対処可能です。
実施のヒント
・「最近○○部署とのやり取りがスムーズにいかない」との報告を受け、該当部署の責任者と迅速に情報共有し、プロセス再設計や人員配置を見直す。
・複数の部下から同じ不満が出ていれば、経営陣に報告し、プロジェクトチームを発足して改善策を検討する。
(2) 組織力アップへの波及
部下の声を無視していると、現場と経営に断絶が生じ、生産性や士気が下がります。1on1ミーティングで集まったアイデアや苦情を本部や経営会議にフィードバックし、改善策を実行すれば、「社員の声を大事にする会社」という企業文化が醸成され、エンゲージメントも高まります。
実施のヒント
・月次で「1on1から拾い上げた課題・提案リスト」を作成し、管理職層が経営陣に共有。
・優先度が高いテーマを部署横断のワーキンググループで取り組む。上手くいけば社内報で成果を公開し、さらに社員が発言しやすい雰囲気を作る。
1on1ミーティングを効果的に進める方法
ミーティングのゴールとアジェンダ設定
1on1ミーティングを有意義なものにするには、「今回のミーティングで何を達成したいか」を明確にして、部下にも事前にアジェンダを共有しておくことが重要です。
その際には、上司側の意図を示したうえで、部下にも相談したいことを出してもらうことで、一方的な場とならずにモチベーションを引き出すことができます。
ミーティングの1~2日前に簡単なアジェンダをメールやチャットで送付して、部下が追加したい話題や悩みがあれば追記できるようにして、当日はそのリストに沿って対話を進めると効果的です。
積極的な傾聴を心掛ける
1on1ミーティングでは、上司が話しすぎると部下の声を吸い上げにくくなるため、「部下が主役」という姿勢が欠かせません。
上司自身の業務報告やアドバイスに偏りがちな場合でも、まずは「今日は何か困っていることは?」と相手に語らせる時間を作ることが大事です。
また、部下が話したことについて、「つまり○○ということだね?」と要約をして確認しながら進めることで、認識のズレを防ぎ、相手に“話を受け止めてもらった”と感じてもらい、信頼関係を深めることができます。
フィードバックは具体的に
Gallup社などの研究によれば、行動レベルの具体的フィードバックが仕事の質やモチベーション向上に大きく寄与するとされています。
「○○の提案はとても助かった。次は△△を補足するともっと説得力が増すと思う。」のように、良かった点と改善可能な点を明確にすることがモチベーション向上に寄与します。
また、改善点を指摘するだけでなく、「次回はこのように進めてみよう」「研修に参加してみたら?」と具体的な行動提案も添えることで、部下が行動を起こしやすくなります。
フォローアップを徹底する
1on1ミーティングで話し合った内容が実際の行動や成果に結びつくためには、次のアクションを明確にして、次回のミーティングで必ず振り返ることが欠かせません。
「提案書づくりはどこまで進んだ?」「研修に参加してみてどうだった?」と、前回のミーティングで取り決めたタスクや目標の進捗を確認します。進捗が遅れていれば原因を一緒に考えて、次のアクション検討を行いましょう。
また、目標が達成できていれば、「よく達成できたね、今回の成功要因は何だと思う?」と称賛とともに、成功体験を言語化させることで、次の目標設定に活かすことができます。
製造業・小売業など、1on1ミーティングが難しい業態での実施ポイント
製造業や小売業・サービス業などの現場勤務の社員が多い場合、シフト勤務で同じ時間に揃わない、また現場業務を優先する文化が強いと、長時間のミーティング時間確保が難しいという意識も強く、1on1ミーティングの実施が困難な場合があります。
そのような場合においては以下のような解決策、運用を試してみると良いでしょう。
・短時間・高頻度アプローチ
10~15分の1on1を週1回など、細切れ時間でも定期的に対話する仕組みを作る。
シフト交代前後の“引き継ぎタイム”を利用し、立ち話感覚でフォローする。
・現場環境で行う
休憩室やバックヤードなど、少し落ち着けるスペースで短い時間を確保。
タブレットやスマホでオンライン1on1を活用する事例も増えている(コロナ禍以降のニューノーマル対応)。
・業務ピークを避けたスケジューリング
店舗やライン稼働のピークを避けるタイミングを選定し、あらかじめシフト表に1on1枠を組み込む。
“繁忙期に無理に面談を詰め込まない”調整力が重要。
・管理職層への教育・意識づけ
店長やラインリーダーが「1on1こそ現場を円滑に回すための重要ツール」と認識するよう研修を行う。
「忙しいからこそ短時間でも対話する」風土を根付かせる。
製造業・小売業での1on1ミーティング事例
トヨタ自動車「現場での短時間1on1」
トヨタ生産方式(TPS)で有名なトヨタ自動車は、現場主導の改善活動を重視していますが、一方で管理職が作業員個々人の課題や成長意欲を把握する仕組みが必要とされていました。
そこで、ラインリーダーがシフト交代タイミングで「1人あたり5~10分の短時間1on1ミーティング」を週1回程度実施。作業トラブルや疲労感などを早期にキャッチし、生産効率低下や安全リスクの未然防止に繋げています。
ポイント
・立ち話スタイルで、作業エリア近くの安全なスペースを活用
・短時間でも「改善提案のヒアリング」と「作業負荷やキャリア意向」を確認
・職場単位で集約した意見を、生産管理部門や上層部にフィードバック
ダンフォス(デンマークの多国籍製造業)「製造ラインでの“アジャイル1on1」
工業用機器や暖房システムを製造するDanfossは、ヨーロッパの工場で「従業員エンゲージメント」と「品質向上」を同時に実現するプロジェクトを推進。
現場監督(ラインマネージャー)が週1回、10~15分程度の対話を各オペレーターと実施をして、作業中に感じた問題点や提案を、その場で聞き取り、次の週までにマネージャーがフォローする仕組みを導入しています。
ポイント
・タブレット活用で、気になった点をリアルタイム記録し、1on1で確認
・品質指標(不良率など)に加え、作業員のストレス度合い・疲労度合いもヒアリング
・エンゲージメントスコアを定期的に測定し、ラインごとに改善施策を実施する
スターバックス「店舗マネージャーによるシフト前後の1on1」
スターバックスは接客品質と従業員満足度の向上を重視する企業として知られており、全世界の店舗でバリスタとのコミュニケーションを強化しています。
店舗マネージャーがシフト前後にバリスタと一人ずつ短時間のミーティングを行い、最近の接客の振り返りや学びを確認。新商品情報や接客方針など、全体会議で伝えきれない個別のサポートを補完しています。
ポイント
・1回5分〜10分を目安に、丁寧に接客の振り返り
・バリスタが抱える接客上の悩み(クレーム対応など)を聞き取り、その日のうちに改善策を検討
・定期的に「感謝の言葉」を伝える機会にもしており、従業員エンゲージメントが高い職場作りに寄与
ウォルマート「週次のミニ1on1で人材流動を抑制」
世界最大の小売企業ウォルマートでは、店舗レベルでの離職率の高さが慢性的な課題でした。
特に正社員だけでなく、パート・アルバイト層の定着率向上が急務ということで、店舗マネージャーや部門リーダーが週1回、各スタッフと10〜15分の面談を実施。作業上の困りごとやキャリアパス(正社員登用の希望など)を聞き取り、本部側にエスカレーション。定着のためのサポート体制を強化しました。
ポイント
・専用アプリで面談日程を管理し、勤怠シフトと連動
・給与やシフトの要望など、従業員が普段相談しづらい個別事情を引き出す
・取り上げた問題を「見える化」し、本部や人事が分析・改善策を立案
テスコ「”売り場通路”での1on1ミーティング」
イギリスの大手スーパーチェーンであるテスコでは、店舗規模が大きくスタッフ数が多いため、従来は集団朝礼や伝達のみ行われていたが、個々のモチベーションと接客品質を高めるために1on1要素を導入。
“In-the-Aisle”と呼ばれる売り場の通路で短時間の1対1コミュニケーションを行う手法によって、忙しい売り場でも5分ほど確保し、その日の目標や困りごとを確認しています。
ポイント
・立ち話感覚で部下が負担に感じにくい
・「この商品売れ行きが悪いのはなぜ?」など現場状況に即した会話ができ、販売戦略にも活用可能
・部下も普段言い出せない業務上の課題を、上司がそばに来て声をかけてくれることで話しやすい
まとめ
1on1ミーティングは、部下の成長を支援し、問題を早期に把握して解決に導く重要なツールです。効果的な実施には、目的を明確にし、部下との信頼関係を深めることが欠かせません。
柔軟な対応や共感、承認の姿勢を忘れずに、定期的な振り返りと改善を行うことで、組織全体のパフォーマンス向上につながるでしょう。1on1ミーティングを積極的に活用し、社員との強固なつながりを築いていきましょう。