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社員と会社をつなげるだけの存在ではない!30年続く社内報の存在価値

「ガリガリ君」でおなじみの赤城乳業株式会社。1994年から社内報を発行し続け、30年が経っています。今回はそんな赤城乳業株式会社 顧問で社内報委員会(元)オブザーバーの本田さま(以下、本田さん)と、社内報責任者の岩月さま(以下、岩月さん)にインタビューを実施。

どのようにして30年間続けてきたのか、社内報を発行し続けた結果、社内はどのような雰囲気になっているのかについてお話を伺いました。

社内報作りがカルチャーそのものになっている

──社内報を始められたきっかけを教えてください。

岩月さん:1994年に当時の会長の一声で始まりました。それから30年が経ちますが、当時の記事を見ても、“社内の相互理解をしっかり深める”という根底にあるテーマは、今とほとんど変わりません。そのため、各部門の方針や部署の紹介(人、業務内容など)、社内表彰者や従業員の紹介(出産、結婚、新入社員、内定者、異動者など)、外国人研修生・技能実習生の紹介などのヒトにフォーカスした内容も多く載せていましたね。

その他にも商品のプロモーション情報、担当者(開発、営業)目線での新商品情報や季節ごとの社内報独自のイベントや職場周辺の観光スポットなど、従業員に関わりを感じてもらえる企画など掲載してきました。

本田さん:昨年、当社の売上は520億円と過去最高で、今年はさらに上回る予想なのですが、社内報を始めた30年前は年間売上が80億円程度。まだ安定した企業とは言えず、大手企業と戦いながら生き残ろうとしているような企業でした。

そんな中、自分たちが強くなるために何をすべきかを考えた会長が、会社の情報を社員同士でしっかり共有することが大事だと考えたのだと思います。人のつながり、社員同士のつながりを非常に大事にされる方でしたから。

──社内報が30年も続いているのはすごいことですね。どのような体制で社内報を制作しているのでしょうか?

岩月さん:部署横断的に集められたメンバーでPR委員会を構成し、社内報を制作しています。社内の横の理解を深めることが社内報発行の根幹目標なので、社内全体の情報収集がしやすいような体制になっています。全ての本部から最低でも1人ずつメンバーを出してもらっています。年齢層としては、私が最年長で他のメンバーは比較的若く20代が多いですね。

本田さん:チーム編成はトップダウンで決めていますが、今では「ガリプレス(社内報)」に携わりたいと思ってPR委員会に入りたいと手を挙げてくれる人がかなり増えています。

岩月さん:「制作に関わりたい」と思えるような冊子を作ることが、1つのテーマにもなっています。長い間社内報を実施してきたことで、社内報作りに協力することが、すでに当社のカルチャーになっています。ですから「協力してください」と言ったら、取締役も含めて大半の社員が快く協力してくれるんですよ。

以前、各製造部門に「自己紹介を送ってください」と連絡したら、詳細な自己紹介や休日の過ごし方、プライベートな写真まで、全てを載せられないくらいのボリュームが返ってきたこともありました。

──企画はどのように立てているのですか?

岩月さん:企画会議を月の半ば頃に1回開いています。大体2時間で終わりますが、そこで16ページ分の全ての企画が決まります。前の企画会議で出たものの載せられなかった企画などもあるので、意外とあっという間に全て埋まってしまうんです。

企画会議では、担当の割り振りまで行ってしまいます。営業に関わることは営業所属のメンバーに、本社に関わることは本社所属のメンバーに……と、少しでも関わりがあるメンバーが取材に行くようにしています。そのほうが、やはり取材しやすいですからね。若手だと取り組みにくいような取締役への取材案件などは「私が窓口になるから、誰か一緒にやろうよ」とどんどん関りを増やしていきます。

その後は、各自で記事集めを進めていきます。メンバーそれぞれが他の業務も抱えながら進めているので、思い通りに進まないことも。そういった時には、常にTeamsで情報共有できるようにしているので、適宜相談したりアドバイスをもらったりできるようにしています。

毎月半ばの企画会議で翌々月号の企画を決め、月末から翌月2週間程度で記事集め、20日過ぎ頃に最終入稿というスケジュール感で動いています。

「もっとこうしたら?」社員からも改善案が来る

──読んでもらうための工夫としてはどのようなことをしていますか?

本田さん:当社はアイスクリーム専業メーカー。お客さまが喜ばない限り商品は売れませんよね。一方、社内報のお客さまは社員です。つまり、社員にどうやって喜んでもらうか――ここが大事なので、真面目に取り組む必要がありますが、真面目すぎると堅くなってしまうので、“あそび”も必要。そのバランスが難しいんですけどね。

岩月さん:“真面目で不真面目”がちょうどいいかなと思っています。

──社員からはどのような反応がありますか?

岩月さん:一番よく聞く声は「あのページに誤字があったよ」です(笑)。もちろん校正はしているのですが、見落としがあった時には社員から優しく指摘があるんです。「毎月楽しみにしているよ」との声を添えてくださることもあります。

あとは「ここのところは、もっとこうした方がより社員に伝わると思うよ」と、社内報をより良くするためのフィードバックも素直に伝えてくれるんですよね。PR委員会メンバーでなくても、社内報をより良くするにはどうしたらいいかを考えてくれる社員もいるのです。

社員家族にも喜んでもらえる社内報を

──社内報を発行していて良かったと思うことはどのようなことですか?

本田さん:まずPR委員会のメンバーにとっては、委員会内で普段接点がない部署の社員とつながりができることが何よりですね。

岩月さん:取材に行くこともメンバーにとってはいい経験ですよね。そこでも普段関わりのない部署の社員の話を聴き理解を深められる上に、新たなつながりもできますから。

本田さん:新卒の採用面接で、当社に入りたい理由を聞くと「社員同士の仲が良さそうだから」という答えが返ってくることがよくあるんです。上下関係があまりなく人間関係が良いことが雰囲気として伝わっているのかもしれません。

もちろん社内報だけでそのような風土がつくれているわけではなく、他にも経営側と社員や社員同士が交流できる機会を数多く設けていることも要因だと思います。ですが社内報が欠けても、ここまでの風土はつくれなかったとも思いますね。

最初にもお話したように、当社の社内報は社員と会社をつなぐことが出発点になっていて、今はそこに家族も含まれています。ですから毎月、社員のご家族にも社内報を郵送しているんです。

途中から私の親にも送り始めたのですが、結構喜んでいました。その姿を見て「社内報を作っていて良かった」と思いましたし、社員の親御さんも、我が子がどういう会社に勤めているのか知る機会があることは、とても嬉しいことなのではないかと思っています。

実は、インドネシアから受け入れている外国人技能実習生のご家族にも見てもらえるようにしているんです。実習生の送り出し機関に郵送して、ご家族の元に届けてもらっています。

岩月さん:自分の子どもが働いている会社の様子が分かったり、我が子が社内報に載っていたりしたら、やはりすごく嬉しいものですよね。

──売上に直結するのか分からず社内報導入に二の足を踏む企業もあります。実際に赤城乳業さんでは、売上につながっている感覚はありますか?

本田さん:確かに社内報と売上の関係を明確に示すのは難しいですが、30年間続けてきて思うのは、社内報によって間違いなく社内コミュニケーションは活性化してますし、会社として売上が過去最大にもなってる1つの要因にはなってると思います。また、結果的にコンプライアンス遵守に大いに役立っているのではないでしょうか。

岩月さん:また、赤城乳業のことを少しでも好きになってもらえるようなきっかけづくりにはなっていると思います。

例えば、新入社員が入社したら必ず写真入りで全員を紹介していますし、新入社員研修に記事を書く研修も含まれています。新入社員が社内報に載る機会をつくることで、多くの社員がどんな社員が新たに入社したのか知れる機会となっています。もしこのような機会がなかったら、私自身にとっても顔の知らない社員がもっと多かったかもしれません。

始めた当初の目的通り、社内報を通じて自分の部署以外のことが知れたり、どんな人が働いているのか知り横のつながりができることで、赤城乳業への帰属意識を少なからず高めているように思います。

全ての部署にスポットを当てたい

──現在感じている課題と今後の目標を教えてください。

岩月さん:社内報の記事に載る社員に偏りがあることが今の課題です。全ての部署に均等に目を向けたいと思っているのですが、とりわけ社員数の多い工場で働く社員一人ひとりにスポットを当てるのが難しいのが現状です。

ですが、同僚が取材を受ければやはり社内報を読みたくなると思うので、各部門ごとに注目の社員を発掘してスポットを当てていきたいですね。そうして、より一層全社員を巻き込んでいきたいと思います。

本田さん:現在当社は正社員400人、非正規社員500人で、総勢900人の規模です。そして工場には100人、200人単位の社員がいますからね。キラリと光るものを持っている社員がいたとしても、どうしても人数の多さに埋もれてしまう。そういった人にたどり着くにはどうしたらいいか、悩ましいところです。

岩月さん:ですから全社員を対象にした抽選会を行い、当選者に社内報に載ってもらう試みも行っています。それだけでも、当選した社員と近いところで働く人にとっては、社内報が少し身近な存在になりますから。本来なら、もっとその社員の思いや考えにまで迫ることが理想ではありますが――。 いずれにしても、社内報は相互理解を深めるために重要なものであり、社員のご家族にも喜んでもらえているので、私が委員長を務める間に全部署をインタビューし、全ての部署にスポットを当てていきたいですね。

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