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世界で勝てる日本企業を生むために!最先端企業に学ぶリモート組織のつくり方

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GitLab社は世界67カ国以上に2,000名の社員がいる、世界最先端のリモート組織です。千田 和央さんはGitLab社のハンドブックを参考に、パフォーマンスの高いリモート組織づくりを進めてこられたといいます。

今回は『GitLabに学ぶ 世界最先端のリモート組織のつくりかた』の著者であり、LAPRAS株式会社 人事責任者である千田 和央さんに、パフォーマンスの高いリモート組織の作り方について伺いました。

千田和央さん

千田 和央
(ちだ かずひろ)

インタビュイー

LAPRAS株式会社
人事責任者

東証プライム企業から創業期スタートアップまで人事責任者を歴任。『作るもの・作る人・作り方から学ぶ 採用・人事担当者のためのITエンジニアリングの基本がわかる本』『GitLabに学ぶ 世界最先端のリモート組織のつくりかた』などの著書があり、国内外のITエンジニアに関連する組織づくり・制度設計・採用などの人事領域を専門としている。

髙橋さん

髙橋 新平
(たかはし しんぺい)

インタビュアー

ourly株式会社 取締役COO

WEB 社内報CMS「ourly」事業責任者。京都芸術大学非常勤講師。新卒でダイキン工業株式会社に入社。技術営業として都内の再開発案件に多数携わる。その後、株式会社ENERGIZEに入社。4年間主にベンチャー、中小企業の事業コンサル、組織コンサル等に従事して独立。2022年4月からourly 株式会社へ執行役員CSOとして参画。2023年4月より現職。

目次

世界最大のリモート組織のノウハウを日本にも広めたい

──『GitLabに学ぶ 世界最先端のリモート組織のつくりかた』は、GitLab社が公開している“The GitLab Handbook”を元に書かれているそうですね。まずは、The GitLab Handbookに出会った背景を教えてください。

オフィス出社型の組織からパフォーマンスの高いリモート組織に移行しなければならなくなった際に、どうせならば良いリモート組織を作ろうとさまざまな事例を調査するなかで出会ったのがGitLabのHandbookでした。

当時、コロナ禍の影響で多くの日本企業がリモートワークに移行せざるを得なくなりました。弊社も例に漏れず、出社型からリモートワークに移行することに。私は「一度リモートワークを経験した人は、リモートワークの快適さを忘れることはできない」と考え、パフォーマンス向上や採用の観点からリモートワークに振り切った組織にしようと意思決定しました。

「リモートでもパフォーマンスの高い組織にするためには、何が必要なのか」。その解を探すなかで出会ったのが、世界最大のリモート組織であるGitLab社の『The GitLab Handbook』だったんです。GitLab社のハンドブックは、「読めば誰でも、再現性のある、パフォーマンスの高いリモート組織の作り方がわかる」もの。それをまとめたのが、この本です。

──なるほど。『The GitLab Handbook』を元に実践したノウハウが、著者にまとめられているというわけですね。

私は人事としてのキャリアや経験が長いこともあり、GitLab社のハンドブックに書かれた組織づくりの様々なルールや施策が、どういった背景に基づいて設計されているのか想像することができました。しかし、専門でない多くの人にとっては、このハンドブックを見ても背景が理解できない人、内容をうまく自社に取り入れられない人も多いのではないかと考え、日本向けに翻訳するつもりでこの本を書きました。

リモート組織を機能させるならドキュメンテーションが不可欠

──GitLab Handbookのなかで、とくにインパクトを感じたものはなんですか?

「ハイブリッドワークは非常に難易度が高い」というワードですね。おそらく、この忠告がなかったらオフィスとリモートのハイブリッド型でスタートしてしまっていたと思います。

その教訓もあり、書籍ではリモートワークに移行するのであれば経営者からリモートにするべきだと書いています。なぜなら、経営者などのキーマンが出社をしている限り、出社をしている経営者の周りにいる社員が主役になってしまうからです。

例えば、経営者が出社しているとします。同じく出社をして経営者の近くで一緒に働いている人と、リモートで働いている人がいたときに、どうしても出社している人のほうが経営者から情報を得やすかったり、優遇されてしまったりする。そうなると、リモートワークの人たちの存在感は薄くなり、どうしてもオフィスに権力が集中してしまうんです。

ですから、リモートワーク組織をつくっていくのであれば、最初の限られた期間だけでも経営者に強い意志でリモートワークで働いてもらわなければなりません。

──経営者が出社していると、出社している社員が正義になってしまう。これは、意識をしていても起こり得ることなんでしょうか?

最近、バイアスや遺伝学を学んでおり、その領域から人間というものを考えているのですが、人間は自分に近い存在の人を無意識に仲間と認識し、遠い存在の他人を敵だと認識してしまう生き物です。人はどれだけ意識をしていても仲の良い人を評価してしまう。なので経営者に近い人、遠い人が存在してしまうと、近い人が評価されやすくなりますし重要な仕事も任されやすくなる。

本来はパフォーマンスで評価すべき点が、日常的に親密さを感じているかで評価されてしまうため、リモートワークをしている社員は頑張ろうと思っていても評価されず、モチベーションやパフォーマンスはどんどん下がってしまうのです。

重要なのは10人の社員がいたら、出社だろうがリモートワークだろうが、10人全員のパフォーマンスを発揮させるべきだということです。ハイブリッドだとオフィスワーカーは普通にパフォーマンスが出ている様に見えるのに、リモートワーカーのパフォーマンスは落ちているように感じられてしまいます。

そうした際にリモートワーカーのパフォーマンスを向上させる方向ではなく、権力が集まっているオフィスから遠く感じるリモートワークを問題視したり、オフィスワーカー VS リモートワーカーのような構図になってしまう傾向があります。こうした部分を適切にコントロールできない企業が増えてしまうことが、GitLab社のいうハイブリッドの難易度の高さにつながっているのだと思います。

──GitLab社の取り組みをいろいろと試しながらリモート組織をつくられるなかで、苦労した部分があれば教えてください。

GitLab社は最初からリモートワークを主軸とした組織でしたが、弊社は出社形式からリモートワークに移行した組織です。リモート移行を検討する際、オフィスに残りたい人たちの存在はどうしても無視できない部分がありました。

またリモートワークで重要なのは、本書のテーマでもある「ドキュメンテーション」です。ただ、日本では言語化が得意でない人、ドキュメンテーションの能力が高くない人も多く、そこをどうやって伸ばしていくのかは苦労した点ですね。

──ドキュメンテーション能力が高くない人に対して、どのようにトレーニングを進めたのでしょうか?

まずはコミュニケーションガイドラインや、ドキュメンテーションのテンプレートを整え、全社で認識を揃えるところからはじめました。また、「ドキュメンテーションをすることは、我々の業務の一部である」と伝えることを徹底しましたね。

──ドキュメンテーションはリモートワーク組織においてどのようなメリットをもたらすのでしょうか。

ドキュメンテーションの重要な役割のひとつはコミュニケーションエラーの予防です。GitLab社は世界67カ国以上に2,000名の社員がいるという超多様な組織なので、よりドキュメンテーションによって認識を揃えることを重視していました。たとえば日本で生まれた人と、フランスで生まれた人では、育ってきた社会の常識が違います。そんな2人がコミュニケーションをとれば、どこかで当たり前の基準に認識の齟齬が生まれる。それを防ぐのがドキュメンテーションというわけです。

日本でも生まれた地域や育った環境、これまでのバックグラウンドなどがすべて同じ人は存在しません。すべてにおいて言葉の定義をはっきりさせる、主語を明確にするなど、ルールに基づいて認識を揃えれば、コミュニケーションエラーを防ぐことに繋がります。

たとえば、あるマネージャーが「Aさんには、とにかく頑張ってもらうことを期待します!」と伝えたとします。Aさんは、とにかく頑張って100件のアポを取りました。しかしマネージャーは「100件のアポを取るよりも、10件でもいいから質の高いアポを取ってほしかった」と言いました。これは“頑張る”の意味が曖昧になっていたことが原因で生じた、コミュニケーションエラーです。

今の例からもわかる通り社内の情報をきちんと言語化して、言葉の認識を揃えることは非常に重要です。パフォーマンスの高いリモート組織をつくるなら、ドキュメンテーション文化の醸成は避けられないポイントだと思います。

組織のパフォーマンスを高めるにはバリューの浸透が重要

──ほかに、組織のパフォーマンスを高めるために取り組んだことがあれば教えてください。

社員のパフォーマンスを最大限発揮させるためには、バリューの浸透も重要だと思います。弊社では、全社定例など全員が集まる場面でしっかりと発信し続けることを重視しています。ほかにも、感謝や賞賛を送るコミュニケーションツールを導入してバリューを体現している人を賞賛するような環境づくりをしていますね。

そのほかに特徴的なのは、日常的にバリュー評価を実施している点です。グレードごとに期待しているバリューの発揮度合いを設定し、2週間に1度、現在のグレードに見合う振る舞いができているかどうかをフィードバックする機会を設けています。

──すごいですね!グレードの評価がよければ上がっていくイメージでしょうか?

今よりも高いグレードに見合う振る舞いをしていれば、バリュー評価に二重丸がつきます。期間内に二重丸を規定回数獲得すると、昇格会議の俎上に名前が載る形になっています。逆に現状のグレードに見合う振る舞いが出来ておらず、改善できない場合には、降格することもあります。

重要なのは、どれだけ役職が高かろうが公正に判断することですね。

──公正に判断すること、といいますと?

社長やマネージャーがバリューを守ってないと、それを見た社員も守らなくなってしまいますよね。なので、たとえ社長であっても、バリューを守らない人に対しては「あなたに期待されているグレードを満たしていない」とフィードバックしています。グレードが高い人ほど、厳正にフィードバックをすることを意識しています。

──なるほど。やはり、バリューと評価制度や人事制度を紐づけることはパフォーマンスを最大化する点において重要なのでしょうか。

非常に重要です。バリューが評価制度や人事制度を紐づけることは、社員のパフォーマンスを最大化する要素の1つです。

しかし、バリューと評価制度や人事制度を紐づけることはGitLab社だから成り立っている点でもあります。なぜなら、GitLab社のバリューが実用的で、事業に直結する内容だからです。曖昧で事業に直結しないバリューであれば、評価制度や人事制度とつなげても意味がありません。その点は、注意する必要がありますね。

世界を舞台に戦える日本の企業を生み出したい

──最後に、この本をどんな人に届けたいですか?

最も届けたいのは、組織のパフォーマンスを高めたいと思っている経営者の方ですね。僕がこの本をだしたのは、「世界を舞台に勝てる組織を、日本から生み出したい」からなんです。

僕が人事のキャリアを始めた当時、GoogleやAppleなど海外の素晴らしい企業がどんどんと市場に参入してきて、そんな企業と戦える日本企業があまりないことに不安を覚えました。だったら、自分が人事として、パフォーマンスの高い組織を生み出したい。そして、勝てる組織を作っていきたいと感じました。

ですから、これからも再現性のある「勝てる組織の作り方」を考えていきたいですし、この本を参考にして「勝ちました!」といってくれる組織が生まれると嬉しいです。

Write/Design:Sachi Kagayama
Photo:Narumi Miura

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