意思決定には一貫性を持たせよ! カルチャーを純度100%で浸透させつづける方法
2023年6月にバリューに基づいた行動指針を策定したばかりの株式会社SUPER STUDIO(以下、SUPER STUDIO)。一般的に、行動指針とは具体度が高く、理念浸透をより深めるために策定されます。しかし、SUPER STUDIOの場合は、策定前からミッション・バリューの浸透度はほぼ100%に近い状態だったそうです。
すでにメンバーがバリューを体現できているにもかかわらず、なぜ今あらためて「バリューを実現するための具体的な行動指針」を定めたのでしょうか。また、一体どのようにして、カルチャーを社内全体に浸透させているのでしょうか。
今回は人事戦略室の吉田さん、永井さんにお話を伺いました。
カルチャーが浸透しやすい組織づくりは「採用」からはじまる
──本日はよろしくお願いします。まずは、SUPER STUDIOのバリューを教えてください。
吉田さん(以下、敬称略):SUPER STUDIOでは「コト、モノにかかわる全ての人々の顧客体験を最大化すること」をミッションに掲げ、以下3つのバリューを定めています。
- CHANGE 変われる人であれ
- INSIGHT 本質を見極めろ
- HONESTY 人格者であれ
このバリューはメンバーが100名以下のときに定めたものなのですが、全社月例での共有や評価制度への反映などを通じて、250名以上の規模になった今でも受け継がれています。浸透度合いでいうと、100%に近い状態ではないでしょうか。
──100%!全メンバーにミッション・バリューがしっかりと浸透している状態なのですね。
吉田:これだけ浸透できているのは、会社の意思決定や施策に「一貫性」があるからです。
SUPER STUDIOは「何をやるかより、誰とやるか」を重視して創業した会社で、設立時から今日まで、その軸がブレることはありません。人事ポリシーを策定するにあたっても、経営陣に求める人物像を聞いた際「HONESTYである人に尽きる!」という言葉が返ってきたほどです。
会社・組織の中心には常に「人」がいて、採用の段階で成果やスキルだけでなく、いわゆる「カルチャーマッチ」しているかを非常に重要視しているため、そもそも社内にはミッション・バリューとの親和性が高いメンバーが集まるようになっています。
永井さん(以下、敬称略):実は、日々働く上でバリューを常に意識して行動しているというわけではないんですよ。後から自分の行動を振り返ったときに、「そういえば、すべてバリューに紐づいていたんだな」と気がつく感じで。
まずは会社として大事にしている考えが明確にあって、次に「その要素をベースに持っている人を集める」というのが、弊社のカルチャー醸成のカギなんだと思います。
成長期、解釈のズレを防ぐために“先回り”して行動指針を策定
──最近新たに行動指針(CULTURE)を策定されたと伺いました。
吉田:そうなんです。今年(2023年)6月に、バリューに基づく7つの行動指針を定めました。
- 変わっていくことを楽しもう
- オーナーシップを持とう
- 一人一人が細部にこだわろう
- 現場の第一人者になろう
- 確信をとりにいこう
- 情熱と思いやりでヒトを動かそう
- 三方よしの選択を追求しよう
これは新しく策定したというより、「何をやるかより、誰とやるか」という弊社のカルチャーをわかりやすく言語化したものになります。
──すでに組織内でバリューが浸透しているにもかかわらず、なぜ改めて言語化されたのですか?
吉田:バリューが浸透できている状態とはいえ、「CHANGE」「INSIGHT」「HONESTY」はかなり抽象度が高い言葉です。メンバーが300名を超えてくると、たとえ同じ価値観を持っていたとしても、その解釈は一人ひとり少しずつ違ってくることが予想されます。
全員が同じ価値観で動くには「一貫性」が大事なので、組織のさらなる拡大に向けて先に基盤を整えるべく、このタイミングで言語化しました。
──さらなる組織拡大の事前準備として、先回りされたわけですね!
吉田:そうですね。あとは、どんな思想を持ったメンバーが働いているのかを「社外」に対しても明示する必要性を感じたことも大きいです。
弊社はかなりコミュニケーションが活発で、どちらかというとウェットな組織ですが、SaaS事業を手がけているからか、コーポレートデザインがシックだからか、外からはスタイリッシュでクールなイメージを持たれがちでした。
面接を受けられた方から、「意外に社内のつながりが深いんですね」「みなさんの人柄が明るくて驚きました」といった感想をいただくこともあります。
採用において「バリューに共感してくれるかどうか」を重視しているのに、イメージとのギャップが生じては意味がありません。普段から私たちが大事にしている価値観をできるだけストレートに社外にも伝えられるよう、行動指針として改めて言語化しました。
──行動指針の中でSUPER STUDIOらしいと感じるポイントはどこですか?
吉田:スタートアップの行動指針には確実に入るであろう「スピード」がないところですね。
私たちは、失敗してもいいからとにかくチャレンジして早さを求めよう!というよりは、地に足つけて、スピードのなかにも「着実性」を大切にしたいと思っています。
そして何より、「スピード」は言葉にして意識するものではなく、楽しみながら仕事をしていれば必然的に出てくるもの。7つの行動指針を体現していれば、自然と「スピード」は生まれるものなので、あえて行動指針として定義していません。
無意識レベルでバリューを体現する組織に
──行動指針を発表してから、社内の反応はいかがでしたか?
吉田:さっそく社内では行動指針についての理解を深めるためのディスカッションが行われており、非常にポジティブに受け入れられている印象です。
各部署の定例等の場で上長自らが行動指針にまつわる発信をするなど、社内への浸透方法を工夫してくれていることが伝わってきますね。
──最後に、カルチャーをより深めていくために今後取り組んでいきたいことを教えてください。
吉田:SUPER STUDIOには、外部からジョインしてくれた優秀なメンバーや、新卒から活躍してくれているメンバーがたくさんいます。そんな彼らに自分の可能性を最大限に発揮しながら成長してもらうには、最適な配置転換やキャリアパスを用意することが重要です。
努力している人がきちんと報われる環境を作るために、今あるカルチャーを基盤に、活躍しているメンバーをしっかり引き上げられる人事戦略も立てていきたいと思います。
永井:今日こうしてお話しするなかで私自身も再認識できたのですが、バリューは日々の業務のなかで無意識に体現していることなんですよね。
だから、行動指針についてもバリューと同じレベルで、メンバーみんなが自ずと体現している状態を作りたいですね。そうなれば本当の意味でSUPER STUDIOのカルチャーになっていくと思います。
ミッションやバリューを浸透させるための施策に頼るのではなく、引き続き、採用においては「カルチャーマッチ」を重視しながら、行動指針に基づいた行動や議論が自然に生まれるような組織を目指していきたいです。
Interview:Shimpei Takahashi
Write:Mari Onoue
Edit / Design:Sachi Kagayama
Photo:Kenta Nakanishi