ジョブローテーションとは?目的とメリットや成功のポイントを解説
ジョブローテーションとは、社員や従業員の教育を目的として、戦略的に他部署へ配置転換することです。ジョブローテーションは異動を伴う人事戦略のため、企業によって向き不向きがあります。自社にジョブローテーションを取り入れるのであれば、充分な理解がかかせません。
そこで本記事では、ジョブローテーションの目的や導入するメリット・デメリット、向いている企業と向いていない企業の特徴、成功させるポイント、実施の流れ、企業事例について解説します。
ジョブローテーションとは?
ジョブローテーションとは、従業員の育成を目的として、戦略的におこなわれる人事異動のことです。勤務地や配属部署を変更することもあれば、同一部署内で担当業務を変更する場合もあります。
さまざまな業務を経験することになるため、自社における業務理解を深めることができたり、業務適性を見極められたりするメリットがあります。一方で、スペシャリストが育ちにくくなるといったデメリットもあるため、企業や職種によって、向き不向きがある制度といえるでしょう。
ジョブローテーションを実施する企業の割合
ここでジョブローテーションを実施している企業の割合を確認しておきます。
「独立行政法人 労働政策研究・研修機構」が、2017年に発表した資料「企業の転勤の実態に関する調査」においては、以下の通りです。
ジョブローテーション実施企業の割合(正社員規模別)
正社員規模 | 実施割合 |
300人未満 | 37.3% |
300~500人未満 | 51.3% |
500~1000人未満 | 57.2% |
1000人以上 | 70.3% |
正社員の人数が多く規模の大きい企業ほど、ジョブローテーションを実施する割合が高くなる傾向が見て取れます。小規模企業は人員に余裕がないことも多いようです。一人の従業員が多くの業務を兼任しているため、ジョブローテーションが実施されにくいのかもしれません。
一方で大企業ほど担当業務が細分化されており人員にも余裕があるため、一人の従業員にさまざまな経験を積ませる必要性がでてくるようです。
(参照:独立行政法人 労働政策研究・研修機構, 「企業の転勤の実態に関する調査」, <https://www.jil.go.jp/institute/research/2017/documents/174.pdf>, 2022年10月閲覧)
ジョブローテーションの実施期間
次にジョブローテーションの実施期間について確認します。前出の資料「企業の転勤の実態に関する調査」によると、人事異動が実施される頻度は以下の通りです。
人事異動の頻度 | ジョブローテーションあり | ジョブローテーションなし |
1年 | 14.4% | 11.2% |
2年 | 5.6% | 4.4% |
3年 | 36.5% | 18.5% |
4年 | 6.5% | 3.6% |
5年 | 18.1% | 19.4% |
6年~10年未満 | 9.5% | 20.7% |
ジョブローテーションを実施している企業は、3年をめどに人事異動をおこなっている割合が36.5%ともっとも高くなっており、比較的短期間で異動が発生していることが分かります。一方でジョブローテーションを実施していない企業は、6年〜10年未満の割合が、20.7%ともっとも高く、同一の業務を長く担当する傾向があるようです。
戦略的な人材育成の施策としての目的を達成するには、3年をめどにした短期間の異動が望ましいと見て取れる結果です。
(参照:独立行政法人 労働政策研究・研修機構, 「企業の転勤の実態に関する調査」, <https://www.jil.go.jp/institute/research/2017/documents/174.pdf>, 2022年10月閲覧)
人事異動や社内公募との違い
人事異動とは、昇進や転勤、担当業務の変更など、従業員の組織内での役割を変更することを指します。ジョブローテーションは、人事異動をともないますが、通常の人事異動とは目的が異なるものです。通常の人事異動は、欠員補充や組織強化など会社の事情により実施されます。一方、ジョブローテーションは、人事戦略に基づいた育成を目的におこなわれるものです。
社内公募との違いは、人選方法の違いです。ジョブローテーションは、会社が適切と判断する人材を選抜します。これに対して、社内公募は、対象となるポストを希望する人材を募り、そのなかから適任の人材を会社が選ぶ方式です。
海外のジョブローテーション実施状況は?
ジョブローテーションは、生涯雇用を前提とした日本特有のシステムといわれており、海外ではあまり例をみません。理由は海外企業の多くが、スキル重視の「ジョブ型雇用」を採用している点にあります。
ジョブ型雇用とは、仕事やポジションごとに人材を割り当てる方式です。ジョブ型雇用では、担当する業務の範囲は明確に定められ、その業務を担うスキルを有する人材を募集・採用・育成していきます。採用された人材は、担当の範囲を越えた業務をおこなうことは原則ありません。このことが、海外でジョブローテーションが普及しなかった理由です。
ジョブローテーションの目的
ジョブローテーションは、日本企業特有のシステムですが、入社した人材は、できるだけ長く勤務し自社の業務に精通してもらいたいという考えが前提にあります。多くの企業で実施されているのは、以下に挙げる目的があるためです。
- 企業理解を深める
- ゼネラリストの育成
- 業務の属人化の防止
詳しくみていきましょう。
企業理解を深める
ジョブローテーションの目的の一つ目は、従業員に自社の事業に対する理解を深めてもらうことにあります。自社の事業をより深く理解することは、当事者意識やエンゲージメントの向上に欠かせない要素です。
できる限り多くの部署で業務を経験することにより、各部署の業務内容や関連性が把握できます。会社全体の業務の流れを俯瞰できるため、自社の事業に対する理解が深まり、視野が広がるのです。
ゼネラリストの育成
将来の幹部となる人材には、自社の業務を幅広く知ってもらう必要があります。そのためには、候補者となる人材にジョブローテーションを実施して、将来経営を担うための幅広い見識を身に着けてもらわなくてはなりません。
企業の中核を担うためには、ゼネラリストとしてのバランス感覚と、さまざまな能力が必要です。業務に関する知識をはじめ、正しい判断を下すための高い視座や広い視野を得るためには、若いうちから多くの社内業務に精通しておくことが欠かせません。
業務の属人化の防止
ジョブローテーションは、業務の属人化を防ぐ目的で実施される場合もあります。特定の業務に一人の従業員が長く携わっていると、その業務に関して他の人材が対応できなくなる恐れがあります。業務のブラックボックス化は、企業として避けなければならないリスクです。
適度にジョブローテーションを実施することにより、各業務に対応できる人材を複数確保できます。急な退職により業務が滞ることがなくなり、安定した運用が可能になるのです。
ジョブローテーションを導入するメリット
ジョブローテーションが積極的におこなわれるのは、企業にとって多くのメリットがあるためです。具体的には、社内コミュニケーションの促進や、効率的な人材活用が可能になるなど、以下の3点が挙げられます。
- 部門間の連携がスムーズになる
- 適材適所に人材を配置しやすくなる
- 業務を標準化することで効率化が図れる
詳しくみていきましょう。
部門間の連携がスムーズになる
ジョブローテーションを実施することで、多くの従業員が複数の部門で業務を経験することになります。部門ごとの業務の関連性を理解した人材が増えるため、協力体制が構築しやすくなることがメリットです。
また、複数の部署で勤務することは、多くの人材と接点を持つことでもあります。交流が深まることで、情報共有が活発になるでしょう。その結果、部門間の連携がスムーズになることが期待できるのです。
適材適所に人材を配置しやすくなる
業績を向上させるためには、人的資源を有効活用することが欠かせません。人材が適材適所に配置され、存分に能力を発揮することが理想です。ジョブローテーションの実施は、こうした人材の適性を、実務を通して把握できることがメリットとして挙げられます。
従業員にとっても自身の適性を把握することにつながり、キャリア形成を考えるよい機会となります。企業側、従業員側、双方にとってのメリットとなるでしょう。
業務を標準化することで効率化が図れる
多くの人材が複数の業務を経験することにより、業務の属人化が防げることは前述しました。このことは、業務の標準化による効率化にもつながります。社内のあらゆる業務において、複数の人材が対応していくことにより、業務の無駄が省かれ、効率化が進みます。マニュアルなども整備されていくでしょう。
業務の標準化が進むことで急な欠員など、不測の事態にも柔軟に対応できる体制が構築されます。安定した業務運用が可能になることもメリットです。
ジョブローテーションを導入するデメリット
一方でジョブローテーションの導入により、デメリットを生じる場合もあります。業務に慣れた段階で仕事替えがおこなわれることの弊害や、専門性を追求できないといったことが考えられます。具体的なデメリットは以下の3点です。
- 異動直後の生産性低下
- スペシャリストの育成に適さない
- 指導時間が増え育成コストがかかる
詳しく解説します。
異動直後の生産性低下
ジョブローテーションにより、従業員は定期的に新たな業務に取り組むことになります。業務に慣れ、力を発揮するまでには一定の時間が必要です。また、業務に慣れた人材が抜けた部署は、一時的に生産性が低下することも考えられます。
ジョブローテーションによる異動が対象者の意に沿わないものであった場合、意欲の低下を引き起こす懸念もあります。十分なサポート体制を構築したうえで、ジョブローテーションをおこなうことが予防策となるでしょう。
スペシャリストの育成に適さない
ジョブローテーションは、さまざまな業務を広く浅く理解するには適していますが、専門性の高い業務を深く追求することには適していません。ローテーション期間が短い場合は、難易度の低い業務が与えられることが多くなりがちです。表面的な理解にとどまり、深い業務理解やスキルの向上が見込めないことも考えられます。
専門性を高めたいと考えるスペシャリスト志向の人材にとっては、不満の原因となることもあるため、注意しなくてはなりません。
指導時間が増え育成コストがかかる
ジョブローテーションにより、定期的に未経験の人材が配属されると、その都度指導が必要になってきます。指導担当者の人件費をはじめ、指導に要する時間や手間など、育成コストの増加は避けられないものです。
また、人事異動は従業員にとって負荷がかかるものです。加えてジョブローテーションによる異動が不本意なものであった場合、離職リスクとなる恐れもあります。実際に離職が起きた場合、育成コストの損失は大きな痛手となるでしょう。
ジョブローテーションの導入に向いている企業の特徴
人材交流の活性化が経営課題の改善につながる企業は、ジョブローテーションの導入が適した企業といえます。以下の特徴を持つ企業が、例として挙げられるでしょう。
- 企業理念を浸透させたい企業
- 複数部署での連携が求められる企業
詳しく解説します。
企業理念を浸透させたい企業
企業文化の浸透に課題がある企業は、ジョブローテーションの実施が効果的です。従業員数の多い大企業や、事業所が点在している企業、M&Aにより買収したグループ会社などは、時間をかけ企業理念の浸透を図る必要があります。
ジョブローテーションで人材交流の活性化を図ることにより、企業理念を伝達しやすくなります。時間をかけたコミュニケーションが、企業文化の醸成には欠かせません。
複数部署での連携が求められる企業
業務プロセスが複数の部署にまたがる企業も、ジョブローテーションの導入に向いている企業です。こうした企業がスムーズに事業運営をおこなうには、部署間の連携が欠かせません。
ジョブローテーションにより、複数の部署を経験した従業員が多ければ、部門間の垣根を越えたコミュニケーションがとりやすくなります。自部門の利益を優先するセクショナリズムの防止にもつながり、スムーズな事業運営が可能になるのです。
ジョブローテーションの導入に向いていない企業の特徴
高度な専門性が求められる業務が多い企業や、イレギュラー対応が多くマニュアル化が難しい業務がある企業は、ジョブローテーションの導入には向いていません。以下の特徴を持つ企業が、例として挙げられます。
- 職種によって給与体系が異なる企業
- 熟練の専門的なスキルが求められる企業
解説します。
職種によって給与体系が異なる企業
職種や部署によって給与体系や勤務形態など処遇の差が大きい企業は、ジョブローテーションの導入に不向きです。ジョブローテーションにより給与が下がるなどした場合、不満の原因になるためです。
労働条件の不利益変更にあたる恐れもあり、法的なリスクもあるため、導入の難易度は高いといわざるを得ません。ジョブローテーションを導入する場合は、給与体系の整備など人事制度の再構築が必要になるでしょう。
熟練の専門的なスキルが求められる企業
高い専門性や熟練した技術が求められる業務をおこなう企業も、ジョブローテーションの導入には不向きです。専門性や熟練した技術は習得までにかなりの時間が必要です。ジョブローテーションにより、頻繁に業務内容が変わればこうしたスキルの習得を阻害してしまいます。
高度な専門性を要する業務は、マニュアル化が困難で細かな指導が必要となることがほとんどです。異動が発生した場合、著しく生産性を低下させてしまうでしょう。
ジョブローテーションを成功させるポイント
ジョブローテーションを成功させるには、実施の理由や意義を十分に理解してもらうことが必要です。多くの経験を積むことで、従業員自身に得られるメリットを説明すると、理解を得やすくなります。以下のポイントを押さえたうえで実施するとよいでしょう。
- 活躍する従業員の異動パターンを分析して参考にする
- ジョブローテーションの目的を明確にする
- 従業員の能力や意向と会社の目的をすり合わせる
詳しくみていきます。
活躍する従業員の異動パターンを分析して参考にする
ジョブローテーションにより、幅広いスキルと知見を身に着け活躍している人材が、どのような部署を経験したのか、異動パターンを分析することが効果的です。
「営業と事務」「本部と現場」のように、まったく違った業務を経験すれば、それぞれの考えを理解でき、バランスのとれた業務行動がとれるようになります。また、まったくの畑違いの異動を経験した人材は、対応力が磨かれ、広い視野を身に着けています。こうした実例があれば、ジョブローテーションの異動パターンとして定型化するのも一つの方法です。
ジョブローテーションの目的を明確にする
ジョブローテーションを成功させるには、実施の目的を明確に説明して、対象者に納得してもらうことが必要です。ジョブローテーションの実施目的が曖昧な場合、対象者に異動の意義や本人のキャリア形成に作用するメリットを説明できません。
専門性を求める人材は、ジョブローテーションによる業務変更を回り道と捉え、意欲を低下させがちです。
従業員の能力や意向と会社の目的をすり合わせる
ジョブローテーションを、会社の都合や思惑で一方的に実施することは危険です。もっとも避けなくてはならないのは、異動により従業員の意欲を削いでしまうことです。適切なタイミングで面談を実施し、本人の希望を確認するプロセスは設けたほうがよいでしょう。
対象者のキャリアに対する考えを把握し、可能な限り希望に沿う形でローテーションがなされることが理想です。会社の意向や目的と十分にすり合わせることが求められるのです。
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ジョブローテーション実施の流れ
ここではジョブローテーションの実施の流れを確認します。ジョブローテーションは、以下の6ステップで実施することが一般的です。
- 対象者の決定
- 配属先の選定
- 目標や実施期間の設定
- 対象者への説明
- 異動の実施とサポート
- 次の部署へ異動
順を追ってみていきます。
対象者の決定
対象者を選抜するステップです。まず、ジョブローテーションにより効果を得られそうな人材の持つ特性を検討します。過去の異動データを参照し、ジョブローテーションにより成長がみられ、活躍している人材をモデルにするとよいでしょう。
次に、その特性に該当する従業員を、年齢や社歴も参考にしながらピックアップしていきます。あわせて、候補者となった人材の職務履歴やキャリア志向を確認していきます。不本意な異動となり、意欲を低下させないために必要なプロセスです。
配属先の選定
ジョブローテーションが効果を発揮するためには、対象者のモチベーション維持が課題です。そのため、配属先の選定は慎重におこなう必要があります。本人のキャリアプランと照らしあわせ、希望に沿う形で実行できることが理想です。
社内で人員を必要としている部署が、本人の希望と合致するとは限りません。しかし、会社の都合を優先した異動は、対象者のモチベーションを下げ、離職リスクを高めます。可能な限り配慮したうえで、配属先を選定することが望ましいでしょう。
目標や実施期間の設定
ジョブローテーションによる達成目標や、実施期間を設定するステップです。対象者に配属先で習得してもらいたいスキルや、実践してほしい業務など、異動の目的・目標を具体的に設定します。そのうえで、目的を達成するまでの実施期間も明確に定めるとよいでしょう。
目標や実施期間の設定は、異動先となる部署と綿密な打ち合わせのうえ、決定しなくてはなりません。ジョブローテーションの運営側と、受け入れ部署の認識を揃えておかなくては、異動後に対象者が混乱する恐れがあるためです。
対象者への説明
ジョブローテーションの対象者に、異動の内容を説明するステップです。異動の理由や、会社が期待していることなど、ジョブローテーションの目的を丁寧に説明します。不安や疑問をできる限り解消し、モチベーションを下げないために、十分に説明し納得してもらわなくてはなりません。
また、ジョブローテーションの実施期間は、明確に伝えることが望ましいといえます。実施目標の達成期限が明確になるためです。
異動の実施とサポート
対象者が異動を了承し、配属先の受け入れ態勢が整った時点で異動を実施します。異動後は、定期的なフォローを欠かさないことが大切です。異動先の業務にスムーズに対応できているか、目的としたスキルの習得は順調に進んでいるか、定期的な面談により確認するとよいでしょう。
とくに異動直後は環境に慣れておらず、本人が問題を抱えても周囲に相談しにくいものです。ジョブローテーションが対象者のキャリアの「つまずき」になっては本末転倒です。手厚くフォローし、パフォーマンスを発揮できるよう十分な配慮が必要になります。
次の部署へ異動
実施期間が終了し、次の部署へ異動するステップです。前部署での実績やスキルの習得状況など、ジョブローテーションの効果を検証しながら、次の異動先を選定します。もちろん、対象者の年齢や役職、キャリアプランも考慮する必要があります。
対象者の多くが、前回の異動によりジョブローテーションの意義を理解していることでしょう。さらなるスキルアップにつながるよう、対象者のキャリアプランに沿った異動先を用意することが理想的です。
ジョブローテーションを導入する企業の成功事例
ここでは、ジョブローテーションを積極的に導入している企業の事例を紹介します。いずれの企業も新入社員育成の手法として活用しており、若いうちにさまざまな経験を積ませることで、後のキャリアによい影響を及ぼすことに成功しています。
- 富士フイルムホールディングス
- 三井ホーム
- ヤマト運輸
3社の事例を紹介します。
富士フイルムホールディングス|自発性を磨く
富士フイルムホールディングスでは、入社後の3年間は「自発性」を磨くことを第一の目的として、すべての新入社員にジョブローテーションを実施しています。この3年間は、ビジネスマナーの習得のほか、基礎的な業務知識から専門分野の技術を追求する姿勢など、同社が求める人材としてのスタンスを習得する期間と位置づけられているそうです。
多くの人材は、さまざまな業務を実践したことで対応力が強化されています。どの部署に配属されても、自身の仕事に真摯に取り組む姿勢が身についているとのことです。
三井ホーム|工事や営業が分かる設計士
三井ホームは、ジョブローテーションに積極的に取り組んでいる企業です。総合職は原則ジョブローテーションの対象であり、「工事」「営業」「設計」とさまざまな職種を横断的に経験します。
同社のようなハウスメーカーは、部門間の連携がスムーズなプロジェクト運営に欠かせません。たとえば、設計士が営業と工事の現場を経験したことにより、連携がスムーズになり設計に活かせるといったメリットが実感できているようです。
ヤマト運輸|現場の感動を知る
ヤマト運輸では、新入社員教育を目的にジョブローテーションを導入しています。入社後の2年間は、集配業務や配送サポート、営業といった現場の業務を経験します。 同社は「全員経営」「全員が幹部候補」という理念を掲げており、将来経営を担う人材は、現場を理解しておかなければならないという姿勢を大切にしてるためです。
入社後間もない時期に、「現場の感動を知る」ことがモチベーションを引き出し、キャリアの土台を固めます。多くの人材は「仕事のつながり」を理解し、後のキャリアに活かしているようです。
ジョブローテーションを導入して自社の理解促進や企業理念の浸透を
ジョブローテーションは、自社の業務理解や企業理念の浸透を図れる点がメリットです。一方でスペシャリストの育成を阻害するというデメリットもあります。しかし、幹部候補となる人材には、自社の業務を幅広く知る「ゼネラリスト」の資質が必要です。新入社員の育成に、ジョブローテーションを導入している企業が多い理由といえるでしょう。
ジョブローテーションは、実施目的を従業員に理解してもらうことが、効果を発揮するポイントです。Web社内報など社内広報の取り組みで、定期的な発信により浸透を図ることが望ましいでしょう。