組織開発とは?フレームワークやプロセス・企業成功事例を解説
組織開発とは、人と人との関係性や相互作用へ働きかけて、一人ひとりの能力を引き出し、組織を活性化させて、組織全体のパフォーマンスを向上させる取り組みのことです。
組織開発では、組織の目標や課題を明確化し、それに対して試験的アプローチをした後、効果検証とフィードバックで精度を高め、組織全体に展開するというプロセスをとります。
この記事では、組織開発のフレームワーク、プロセスや成功事例について解説していきます。
組織開発とは
組織開発とは、人と人との関係性や相互作用へ働きかけてひとりひとりの能力を引き出し、組織全体のパフォーマンスを向上させる取り組みのことです。
「Organization Development」の頭文字から「OD」と表現されることもあり、組織の主体性を引き出すための手法として確立しました。
組織開発が注目される背景
組織開発が注目されるようになった背景には、成果主義の台頭や社員の多様化が挙げられます。
成果主義が強い会社は若手であっても成果次第ではどんどん昇給できることからモチベーションを喚起しやすいとされていますが、個人プレーに陥りやすく社員同士のミスコミュニケーションが原因のトラブルが増えやすいことがデメリットです。
また、社員の多様化によりテレワーク勤務やフレックス勤務のニーズが高まり、社内コミュニケーションが取りづらくなっている会社が増えています。
こうしたデメリットをカバーするための施策として、組織開発が注目を浴びるようになりました。
人と人との関係性や相互作用に着目して社内コミュニケーションを活性化させることで防げるミスは多く、またパフォーマンスも向上しやすいことから多くの企業が組織開発に着手しています。
組織開発の目的
組織開発の目的は、組織全体が環境に対して柔軟に変化していくことにあります。
社員の能力を引き出すことができれば組織全体のパフォーマンスが上がり、今の経営課題を解決することにつながるでしょう。
シームレスで格差のない情報共有や社内コミュニケーションができれば意思疎通が図りやすく、時代のニーズに対応するスピードも上がります。
ニーズやトレンドを敏感に察知しながら変化していくことが求められている昨今、組織開発はどの企業にとっても急務だと言えます。
組織開発と人材開発の違い
組織開発と似た言葉として、「人材開発」が挙げられます。
人材開発は、社員ひとりひとりが持つ知識・スキル・技術を磨くことで組織全体のパフォーマンス向上を狙う取り組みです。
一方の組織開発では、人と人との交流やチーム全体の関係性を向上させることで組織のパフォーマンス向上を狙います。
組織全体に課題意識を持つか、組織を構成する社員個人に課題意識を持つかの違いだと理解するとわかりやすいでしょう。
【資料】縦割り組織・離職率の改善ノウハウ – 組織開発ガイド –
近年「組織開発」と頻繁に聞くようになりました。その一方で、言葉の意味合いは曖昧で、正確に理解し組織に落とし込めている企業は少ないかもしれません。
そこで弊メディアでは、「組織開発とはそもそも何か」や「組織開発の進め方」、「組織開発の豆知識」などをまとめた資料を作成しました。
組織開発に興味がある方や、これから組織開発に取り組まれる方は是非ご覧ください。
組織開発における6つのフレームワーク
組織開発のために効果的な手法として、下記6つのフレームワークが挙げられます。
ひとつずつ特徴を紹介していくため、参考にしてみましょう。
コーチング
コーチングとは、社員自ら新たな発見を得られるよう方向性をサポートしていく手法です。
答えとなる正解を直接教える「ティーチング」ではなく、正解に向けて誘導していく「コーチング」であることを意識するとよいでしょう。
視点を広くして物事を分析する力を養ったり、自分の意見だけでなく人の意見にも耳を貸しながら判断していくスキルを身につけたりするシーンに役立ちます。
組織開発だけでなく人材開発に役立つ手法でもあり、社員教育の一環として取り入れている企業も多いです。
フューチャーサーチ
フューチャーサーチとは、「過去」「現在」「未来」を意識しながら複数人でアイディアを出し合い、意思決定をする手法です。
『フューチャーサーチ』の著者であるマーヴィン・ワイスボード氏とサンドラ・ジャノフ氏によって提唱されたミーティングスタイルの一種であり、会社の経営を自分事として捉えることに役立ちます。
ミーティングに参加するのは社員だけとは限らず、株主・顧客・取引業者・地元の人が参画することもあります。
民主的な合意をするための場として活用しやすく、将来のビジョン実現について考える組織を育成できることがポイントです。
ワールドカフェ
ワールドカフェとは、カフェのようにリラックスした空間で自由きままに意見交換するミーティングスタイルです。
上下関係のないフラットな雰囲気を演出しやすく、部署・年齢・役職・勤続年数の壁を取り払ってコミュニケーションできます。
また、自分の意見を発信することだけでなく相手の意見に耳を傾けることが前提となるスタイルであるため、新たな意見を取り入れたいときに便利でしょう。
フレキシブルなアイディアを出してほしいときにも、ワールドカフェが有効です。
AI(Appreciative Inquiry)
AI(Appreciative Inquiry)とは、探求による価値の認識・価値の自覚をしていく手法です。
具体的には、社員への質問を通して自分の強み・情熱・夢などを引き出したり、ポテンシャルを発見したりします。
社員の視点を広げて自分の可能性に気づかせる手法として確立しており、能力を再発見するためのフレームワークとして有名になりました。
自分が将来会社で活躍している姿をイメージするきっかけにもなるため、今必要な努力の方針を定めたいときにも便利です。
ミッション・ビジョン・バリュー
ミッション・ビジョン・バリューは、「組織の存在意義(ミッション)」「組織が目指巣姿(ビジョン)」「価値観・行動指針(バリュー)」を広く社員に周知する手法です。
会社がどんなことを目標にしていて、今後どんな成長を遂げたいと考えているか知らせることで目的意識の共有ができるようになるでしょう。
社員も会社のミッション・ビジョン・バリューに沿った行動がしやすくなり、意思決定のタイムラグを短縮できます。
帰属意識やエンゲージメントを高める手法としても有効です。
OKR(Objectives and Key Results)
OKR(=Objectives and Key Results)とは、確実に実現できそうな目標よりひとつ上のレベル(ストレッチゴール)を目標に据えていく目標管理手法です。
挑戦心を忘れない組織として成長できるほか、企業・チーム・個人の目標をリンクさせることで高いパフォーマンスを得ることができます。
会社と社員のベクトルを一致させたいときや、取り組むべき課題を可視化してパフォーマンス向上を狙いたいときに有効です。
“人”から始める組織開発 ourly profile
ourly profile(アワリープロフィール)は、個人のプロフィール機能や組織図機能などにより、組織のサイロ化を解消する社内コラボレーション創出ツールです。
3つの大きな特徴により、働き方が多様化した現代・VUCA時代の、強い組織作りに好影響を与えます。
- 人となりが一目でわかる自己紹介画面
- 独自の探索機能により、思いがけない出会いを創出
- 組織図により、チーム・部署を超えて組織を理解できる
顔写真や部署、役職などの基本的な項目以外に、強みや趣味、スキルなどが一目でわかり、コミュニケーションのきっかけが生まれます。
また、全メンバーに共通のQ&Aを設定することができるので、部署・拠点・役職を超えたメンバー同士の相互理解促進にも役立ちます。
組織開発における5つのプロセス
下記では、組織開発におけるプロセスを5つに細分化して解説します。
どんなステップを踏んで組織開発を進めるべきか、具体的なイメージを持っておきましょう。
組織の目標を明確にする
まずは、組織の目標を明確にすることが重要です。
組織開発は自社が抱えている課題を解決するための手段であり、組織開発をすること自体が目的ではありません。
まずは組織として目指すべき方向性やゴールを可視化し、下記のプロセスを踏む段階で見失わないようにしておくことが重要です。
既に策定している企業理念やミッション・ビジョン・バリューと照らし合わせながら、「どのような組織を目指すのか」を意識していきましょう。
現状と課題を把握する
前項で定めた目標に対し、自組織に何が欠けているかを把握します。
「社内コミュニケーションが疎かになっている」などぼんやりとした課題意識になってしまうことも多いですが、具体的にどれくらいのコミュニケーションがおこなわれているのか、どの時期と比べてどのくらい減ったのかを数値化していきましょう。
また、組織サーベイや聞き取り調査をしながら社員の本音をリサーチしていくことも大切です。
経営層と現場社員の課題意識が異なることも多いため、特に注意しながら把握に努めましょう。
試験的アプローチで施策(フレームワーク)を講じる
課題が判明し次第、試験的なアプローチをして施策(フレームワーク)を講じます。
組織開発は中・長期的な施策として実施することが多いですが、最初のうちはスモールステップで導入し、効果が確認できてから対象範囲を広げていくことも重要です。
スモールステップで導入した方が効果の有無を測定しやすくなり、PDCAサイクルに活かしやすくなります。
また、施策(フレームワーク)成功において重要なポジションを担うキーパーソンには組織開発の意図・目的・方法を詳しく共有し、同意を得ておくと成功しやすくなるでしょう。
効果検証とフィードバックで精度を高める
前項で導入した施策(フレームワーク)の効果検証をおこない、フィードバックを進めます。
問題なく期待していた通りの効果が現れれば施策の範囲を広げ、期待とズレが生じるようであれば改善しながら再度スモールステップでの実施を進めます。
また、期待通りの効果が得られたかだけでなく「どのような効果が得られたか」「今後対象を広げるに当たりネックとなるポイントがあるか」を探っていくことも重要です。
PDCAサイクルを回しながら効果的な組織開発となるようアレンジを繰り返していきましょう。
組織全体に展開する
最も効果的だと思える手法が見つかり次第、組織全体に展開します。
成功した理由や特に効果があった取り組みをピックアップし、全体への周知も進めていきましょう。
「何かまた新しいことが始まった」と社員に不安感を与えないためにも、組織開発の狙い・目的・経緯も含めて伝えていくことが大切です。
効果的な組織開発ができればさらなるパフォーマンス向上やモチベーションアップが期待できるため、随時フィードバックをしながら目的意識を共有していくことが重要です。
組織開発に役立つweb社内報 ourly
ourlyは、組織改善に特化した全く新しいweb社内報サービスです。
web知識が一切不要で、誰でも簡単に投稿できるだけでなく、閲覧率や読了率(記事がどこまで読まれているか)などの豊富な分析機能が特徴的です。
また社内報運用を成功に導くための豊富な伴走支援に強みがあり、web社内報としてだけでなく組織課題を可視化するツールとしても魅力的なツールとなっています。
ourlyの特徴
- SNSのように気軽にコメントできる仕様で、社内のコミュニケーション活性化を実現
- web知識が一切不要で簡単に投稿できる
- 豊富な支援体制で社内報の運用工数を削減できる
- 分析機能に特化しており、属性・グループごとにメッセージの浸透度がわかる
- 組織課題や情報発信後の改善度合いを可視化することができる
「離職率が高い」「部署間・役職間に隔たりがある」といった悩みを抱える方におすすめのweb社内報ツールです。
組織開発の企業成功事例
最後に、組織開発に成功した企業に事例を紹介します。
組織開発としてどんな手法を取るかは、企業ごとの社風や課題感によりさまざまです。下記を参考に、自社に最適な組織開発手法を検討していきましょう。
ヤフー|コーチングの「1on1ミーティング」を実施
ヤフーでは、ティーチングとコーチングを使い分けた1on1ミーティングを開催しています。
「週に1度30分間、場所を確保し、部下の話を聞く」ことを取り組みとして課すと同時に、「経験学習」というスキームを導入するようになりました。
特にコーチングに主体を置き、部下が自ら考え自発的に行動できる力を養う組織開発をしています。
育った時代・やりたいこと・特徴が異なる社員でも最大限のぱパフォーマンスを発揮できるよう、ヤフー独自の工夫がされていることが分かります。
URL:https://about.yahoo.co.jp/info/blog/20181011/1on1.html
パーソルキャリア|新たなミッション・バリューを制定
パーソルキャリアでは、2019年10月1日から新たなミッション・バリューを制定しています。
働き方に対する多様なニーズが出ていることをきっかけに、『人々に「はたらく」を自分のものにする力を』をミッションとして制定することでキャリアの選択肢や可能性を広げる取り組みをするよう意識しなおしています。
また、ミッションの制定に伴ってバリュー(行動指針)を示し、社員ひとりひとりが課題解決に向けて動くことを求めています。
全社的に舵取りを仕切りなおす組織開発手法であり、新たな価値観として一新することができた事例です。
URL:https://www.persol-career.co.jp/pressroom/news/corporate/2019/20191001_01/
メルカリ|ミッション・バリューを体現するためOKRを導入
メルカリでは、自社のミッション・バリューを体現するためにOKR導入に踏み切っています。
「Go Bold(大胆にやろう)」「All for One(全ては成功のために)」「Be a Pro(プロフェッショナルであれ)」という3つのバリューのなかでも、特に「All for One(全ては成功のために)」に視点を当てた施策となりました。
成功を貪欲に追及するハングリー精神を忘れないよう、常に高めの目標を意識してフィードバックをおこなっています。
創業10年に満たない会社でありながら、誰もが知るサービスを展開できているのはOKRによる目標管理が影響しているとされています。
URL:https://get.wevox.io/media/mercari-story
組織開発で組織を強くしよう
組織開発に成功すれば、組織全体のパフォーマンスを向上することが可能です。
自社に合った組織開発手法を身につけ、「自社にとって足りない要素は何か」を社員と共有していきましょう。
組織開発手法の周知・目的意識の共有には、社内報が便利です。
社内全体に情報を伝達しやすく、トップメッセージや課題感の共有にも役立つため、組織開発前にぜひ検討してみましょう。