社内報×オフィス設計によるエンゲージメント向上事例【アイリスチトセ株式会社】

社員の顔と名前が一致しない──この課題を感じている企業様は多いのではないでしょうか。
全国に拠点を持つ企業や、さまざまな職種が集まる組織にとって、社員同士が互いに知り合い、一体感を育むことはエンゲージメント向上の鍵となります。そのためには、効果的な社内コミュニケーションの活性化が欠かせません。
今回は全国に30拠点を構え、10年で従業員数と売上がともに3倍増加したアイリスチトセ株式会社の崔(さい)様に、ソフト面である社内報の活用と、ハード面でのオフィス空間設計の両面から考えるエンゲージメント向上についてお伺いしました。
エンゲージメント向上や社内コミュニケーション活性化に取り組む背景
従業員の増加による組織変化への対応
2013年からの10年間で売上と従業員数ともに約3倍になりました。一方で、部署間や拠点間で接する機会が減ることで顔と名前が一致しなくなったり、組織が縦割りになり、部分最適の動きになっていました。組織拡大に伴うこのような課題を解消するべく、エンゲージメント向上のために社内コミュニケーション活性化に取り組みました。

「ブランディング」を高める
「高い営業品質」を推進するためには、社員のエンゲージメント向上が必須です。なぜなら、BtoBにおいては特に社員の営業品質や対応力が、結果として会社のイメージ=ブランディングに強く影響するからです。そのために、仕事や会社に対する社員のモチベーションやエンゲージメントが高くある必要があると考えました。
課題解決のためにおこなっている施策3選
エンゲージメント向上や社内コミュニケーション活性化のために実際におこなっている施策を3つご紹介します。
オープンチャネルの設置
アイリスグループでは ”アイラブ アイデア” というコーポレートプロミスを定めており、アイデアを愛し、アイデアに愛される会社であり続けたいという思いが込められています。この思いを体現する場として、社内で使用しているチャットツールにて「アイラブ アイデア」チャンネルを設置し、従業員が自由にアイデアを共有できるプラットフォームを提供しています。

社内報
紙媒体の社内報とweb社内報の2種類を運用しています。紙社内報はアイリスグループ全体が目指す方向性、グループ全体の帰属意識やつながりの醸成を目的として四半期に1回のペースで発行をしています。web社内報は、アイリスチトセ内での、社員同士の交流や部署間の連携、全国多拠点のつながりの向上や情報共有のために運用をおこなっています。

朝礼と朝礼集の発刊
毎週月曜朝一に、海外拠点も含めたグループ全体で朝礼をおこなっています。発信内容は、代表や経営陣からのトップメッセージによる全社の方向性や現状の共有です。また、朝礼の内容を集めた朝礼集も年に1回発刊しています。

社内報運用で工夫していること・苦労したこと
運用“前”の設計工夫 「スタートが肝心である!」
運用開始に先立ち、事前にどのようなコンテンツをどのように運営していくかという企画を10本程度考えて取り組みました。また実際に運用を開始する際には、代表からアナウンスしてもらうことで、会社全体での取り組みであるという認識を広めようと試みました。

記事の企画における工夫
企画の内容についても、部署間の関係を超えて社員同士のつながりを強めたいという目的をもって取り組みをおこないました。

気になるあの人
代表や役職者だけでなく、品質管理部などの「縁の下の力持ち」の存在である従業員にフォーカスを当てて記事作成をおこなっています。
サンクスリレー
普段はなかなか伝えることができないような「ありがとう」という気持ちを誰かに伝え、伝えられた側はまた別の誰かへと「ありがとう」を伝える「サンクスリレー」を実施しています。エリアや部署を超えたこのサンクスリレーを回すことで、より会社内のつながりの向上を実感してもらうことが目的です。
部署紹介
広報担当が部署を取材して記事を書くのではなく、その部署のメンバーに依頼をして記事を作成してもらっています。広報担当の取材ではついつい形式張ったものになってしまい、本音の良いところが隠れてしまいがちです。そのため、実際に在籍しているメンバーに取材してもらうことで、知らない部署の隠れた良いところを知れる記事の作成が可能になりました。
運用における工夫
従業員全員に対して、web社内報の利用が浸透するように、新人研修ではプロフィール入力をはじめとする社内報作成の研修を取り入れるカリキュラムを採用しています。
また、記事作成においては、閲覧率や読了率に焦点を当てるのではなく、「具体的にこの記事は誰がペルソナで、どの層の人の心をどう動かしたいか?」というテーマを掲げて書くようにしています。「育休を取得した男性社員の記事」という記事の例がこちらです。

育休取得に関するポジティブなアウトプットをおこなうことで、他の従業員に対して「育休を取得しやすい環境を整えなければ」というポジティブなマインドを誘発することを狙いとしました。加えて、記事内で登場した社員のプロフィールリンクを記載し、その社員のプロフィールをすぐ参照できるようにしています。
社内報運用で苦労したこと

まず、それぞれ業務が忙しい中での執筆になるので、納期のコントロールという問題がありました。例えば、部署紹介の記事を作成してもらう際、1周目ではフォーマルな内容で作成してもらっていましたが、2周目ではカジュアルに好きなことについて作成してもらうようにしました。その結果、楽しく能動的に記事作成をおこなう空気が生まれ、施策前よりも納期のコントロールがしやすくなりました。

また、記事のクオリティの担保も課題でした。施策としては、執筆者の指名によって改善を図りました。例えば2年目の社員の記事が良かった場合、あえて他部署の2年目を指名して書かせることでより良い記事を書こうと切磋琢磨し、結果的に記事のクオリティが向上した、という事例もあります。
最後に、そもそも社内報を見ない層もいるため、社内報に関するアンケートを定期的に実施しました。どんな記事があれば社内報を見たいと思うかなどの企画案を募り、実際にその企画を記事化することで、社内報に興味を持ってもらえるようにしました。
社内コミュニケーション活性化におけるオフィス設計の考え方
社内コミュニケーションの活性化には空間づくりの観点も大事だと考えています。特に、エンゲージメント向上や社内コミュニケーション活性化に効果的な空間づくりのポイントとして、「質×量」「空間の可視化」「マス目」の3つが重要です。
質×量
コミュニケーションと一口に言っても、同僚との雑談、上司への報・連・相、新卒へのOJTなど、多岐にわたります。それぞれのコミュニケーションを性質ごとに分類し、社内においてどの性質のコミュニケーションがどのくらいの量でおこなわれるのかを想定します。目的に応じてコミュニケーションがおこなえる場を最適なバランスで空間に散りばめることを意識しています。

空間の可視化
閉鎖的な空間は心理的安全性の低下に繋がります。会議室の中で何が起きているのかがわからない空間だと、最悪の場合ハラスメントが表面化しなくなってしまうことも考えられます。どこで誰がなにをしているのかがわかりやすい空間設計は、従業員の心理的安全性を高め、健全なコミュニケーションの活性化に貢献します。

マス目
マス目設計にすることで、組織変更や人数の増減などでレイアウト変更が発生した際も、配線や照明、空調などの工事の発生がなくなるため、柔軟なレイアウト変更が可能になります。ぜひマス目も意識してみてください。

これらの施策を通じて得られたポジティブな組織の変化
web社内報の活用や空間設計を通じて、大きく5つのポジティブな変化が社内に起こりました。

社員同士の認知率がアップ
web社内報の運用開始直後と、直近でのエンゲージメントサーベイ結果を比較したところ、社員同士の認知率に関する項目が10ポイント上昇しました。開始直後は最も低い項目でありましたが、直近の調査では平均以上になっています。
ある地方の事務員の方からは「10年以上やり取りをしていた購買の人の顔を初めて見た」という話があったほどです。今では、web社内報におけるプロフィールの影響力を実感しています。
コミュニケーション量がアップ
知らない部署や知らない社員に連絡を取る際に、まず社内報のプロフィールを参照して顔や出身地などのパーソナルな情報を見てから連絡を取ることが増えています。
組織の一体感の醸成
全国に拠点があるため、営業所ごとに孤立感が見受けられていましたが、web社内報の活用により各営業所とのつながりが増え、組織として一体感が生まれました。エンゲージメントサーベイでもそのような結果が反映されています。
大型プロジェクトがスムーズに遂行
実際に営業と品質管理など、他部署間の連携度合いは他の施策も相まって深まったことで、部署横断的な知識の共有が進み、大型プロジェクトでもスムーズに遂行できたりするなど効果も実感しています。
オフィスが明るく、生産性が向上
普段は交わらない部署間において、web社内報のプロフィールをアイスブレイクにしてコミュニケーションが促進され、オフィスの雰囲気が明るくなっただけでなく、生産性の向上にもつながっていると感じます。
今後の展望や組織として目指していきたいこと
アイリスグループの企業理念として「働く社員にとってよい会社を目指す」というものがあります。会社がよくなると社員がよくなり、社員がよくなると会社がよくなるという考え方のもと、社員が「仕事に誇りをもっていただく」こと、「楽しく仕事ができる、やりがいを感じる職場づくり」を目指しています。
今後取り組んでいきたい施策は、クライアントに対する、社内向けの「ぶっちゃけトーク」インタビューです。例えば、「実際に弊社の営業担当はどうでしたか?」「弊社の取り組みはどうでしたか?」というような内容を基に社内報の記事を作成し掲載することで、仕事への誇りや、やりがいの醸成に繋げたいと考えています。