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SL理論とは?部下の成長を加速させる4つのリーダーシップスタイルを解説

髙橋 新平

公開日:

2025.10.17

更新日:

2025.10.17

SL理論について解説した記事のアイキャッチ

部下のマネジメントにおいて、「指導方法が部下に合っているのか」「チームの成果が思うように上がらない」といった悩みを抱える方は少なくないでしょう。

画一的なリーダーシップでは、多様な個性を持つ部下一人ひとりの能力を最大限に引き出すことは困難です。

そこで注目されているのが、部下の状況に応じてリーダーシップのスタイルを使い分ける「SL理論」です。本記事では、SL理論の基礎から実践のポイントまでを分かりやすく解説し、明日からのマネジメントに役立つ情報をお届けします。

目次

SL理論とは?現代のマネジメントに不可欠な理由

SL理論は、現代の多様な人材が活躍する組織において、非常に重要なマネジメント理論とされています。まずは、SL理論の基本的な概念と、なぜ今注目されているのかについて解説します。

部下の状況に対応する「状況対応型リーダーシップ」

SL理論とは「Situational Leadership」の略で、日本語では「状況対応型リーダーシップ」と訳されます。

この理論は、行動科学者のポール・ハーシーと組織心理学者のケネス・ブランチャードによって1969年に「Life Cycle Theory of Leadership」として最初に提唱され、その後1970年代中期に「Situational Leadership」に改称されました。

その最大の特徴は、「唯一絶対の優れたリーダーシップスタイルは存在しない」という考え方に基づいている点です。リーダーは、部下一人ひとりのスキルや経験、意欲といった「発達度」に合わせて、自身のリーダーシップスタイルを柔軟に変化させるべきだと提唱しています。

提唱者ポール・ハーシー、ケネス・ブランチャード
提唱年1977年
日本語訳状況対応型リーダーシップ
基本的な考え方唯一絶対のリーダーシップは存在せず、部下の状況に応じてスタイルを変えるべき

PM理論との違いは?

リーダーシップ理論には、SL理論の他に「PM理論」も存在します。PM理論は、リーダーの行動を「目標達成機能(Performance)」と「集団維持機能(Maintenance)」の2軸で評価し、その強弱によってリーダーのタイプを分類する理論です。

PM理論がリーダー自身の資質に着目するのに対し、SL理論は「部下の状況」という外部要因を重視し、それに合わせてリーダーがどう行動すべきかを示す点が大きな違いです。

つまり、PM理論はリーダー自身の特性分析、SL理論は部下への実践的な関わり方を学ぶためのフレームワークと言えるでしょう。

SL理論のフレームワークを構成する2つの軸

SL理論では、リーダーの行動を「指示的行動」と「援助的行動」という2つの軸で捉え、この2つの強弱の組み合わせによって、リーダーシップのスタイルを4つに分類します。

リーダーの行動軸1:指示的行動

指示的行動とは、リーダーが部下に対して、具体的な業務の目標設定、計画、手順の指示、進捗管理などを細かく行う行動を指します。

「何を」「いつまでに」「どのように」行うのかを明確に伝えることで、部下が迷わず業務を遂行できるよう導きます。特に、業務経験の浅い部下に対して有効な行動です。

リーダーの行動軸2:援助的行動

援助的行動とは、リーダーが部下の話に耳を傾け、賞賛や激励を通じてモチベーションを高め、良好な人間関係を築くための行動です。

部下との双方向のコミュニケーションを重視し、部下が安心して業務に取り組める心理的安全性を提供します。部下の自主性を引き出し、成長を促す上で重要な行動と言えます。

部下の発達度を測る4つのレベル

SL理論を実践する上で最も重要なのが、部下の「発達度」を正確に見極めることです。発達度は、部下の「能力(スキル・経験)」と「意欲(モチベーション)」の2つの要素から、以下の4つのレベルに分類されます。

レベル1:意欲は高いが、スキルや経験が不足している状態

新入社員や新しいプロジェクトに配属されたばかりのメンバーがこのレベルに該当します。仕事へのモチベーションは高いものの、何から手をつけて良いか分からず、具体的な指示を求めている状態です。

レベル2:スキルは身についてきたが、意欲が低下している状態

業務には慣れてきたものの、壁にぶつかったり、仕事の意義を見失ったりしてモチベーションが低下しがちな状態です。ある程度の業務はこなせますが、自信をなくしている場合もあります。

レベル3:能力は高いが、自信や意欲が不安定な状態

業務遂行能力は十分にありますが、意思決定に対する自信がなかったり、時折モチベーションが揺らいだりする状態です。リーダーからのサポートや後押しを求めています。

レベル4:意欲も能力も高く、自律的に業務を遂行できる状態

豊富な経験と高いスキルを持ち、モチベーションも安定しているため、自律的に業務を進めることができます。リーダーからの信頼と権限委譲を望んでいる状態です。

部下の発達度に応じた4つのリーダーシップスタイル

部下の4つの発達レベルに対応するため、SL理論ではリーダーシップを4つのスタイルに分類します。それぞれのスタイルの特徴と、どのようなレベルの部下に有効かを解説します。

部下の発達度リーダーシップスタイル指示的行動援助的行動
レベル1教示型
レベル2説得型
レベル3参加型
レベル4委任型

教示型リーダーシップ(指示的行動:高、援助的行動:低)

発達レベル1の部下に有効なスタイルです。リーダーが具体的な指示を出し、業務の進め方を細かく管理します。まずは仕事のやり方を覚え、成功体験を積ませることを目的とします。

この段階では、過度な援助よりも、明確な指示が部下の安心につながります。

説得型リーダーシップ(指示的行動:高、援助的行動:高)

発達レベル2の部下に適したスタイルです。具体的な指示を与えつつ、業務の目的や背景を丁寧に説明し、部下の意見にも耳を傾ける双方向のコミュニケーションを取ります。

部下の納得感を醸成し、低下したモチベーションを引き上げることを目指します。

参加型リーダーシップ(指示的行動:低、援助的行動:高)

発達レベル3の部下に対して効果的です。業務の進め方に関する意思決定を部下に促し、リーダーはそれをサポートする役割に徹します。

部下のアイデアや意見を積極的に取り入れ、自信を持って業務に取り組めるよう支援します。

委任型リーダーシップ(指示的行動:低、援助的行動:低)

発達レベル4の部下に最適なスタイルです。業務に関する意思決定や遂行を大幅に部下に任せます。リーダーは進捗を見守り、必要最低限の関与に留めることで、部下の更なる成長と自律性を促進します。

SL理論を組織で活用する3つのメリット

SL理論を導入することは、部下だけでなく組織全体に多くのメリットをもたらします。ここでは、代表的な3つのメリットをご紹介します。

メリット1:部下の成長を最大化できる

SL理論の最大のメリットは、部下一人ひとりの発達度に合わせた最適な指導ができる点です。

新人には手厚い指示を、中堅社員にはサポートを、ベテランには権限委譲を、といったように適切なアプローチを行うことで、部下は効果的にスキルを習得し、モチベーションを維持しながら成長できます。

メリット2:組織の生産性が向上する

部下がそれぞれの能力を最大限に発揮できるようになることで、チーム全体のパフォーマンスが向上します。

リーダーは、マイクロマネジメントが必要な部下と、自律的に動ける部下を見極めることで、自身の時間と労力を効率的に配分でき、より重要な戦略的意思決定に集中できるようになります。

メリット3:従業員の定着率向上につながる

部下は、自分の状況を理解し、適切に導いてくれるリーダーに対して信頼を寄せます。自分の成長を実感し、組織への貢献意欲が高まることで、エンゲージメントが向上し、結果的に離職率の低下につながります。

SL理論を実践する上での注意点

SL理論は非常に有効なフレームワークですが、実践する際にはいくつかの注意点があります。誤った運用は、かえって部下の不信感を招くことになりかねません。

部下の発達度を正しく見極める必要がある

SL理論の成否は、部下の発達度をいかに正確に評価できるかにかかっています。評価を誤ると、適切なリーダーシップスタイルを選択できず、部下の成長を阻害したり、モチベーションを低下させたりする原因となります。

日頃からのコミュニケーションを通じて、部下の能力や意欲の変化を注意深く観察することが重要です。

公平性を欠くと部下の不満につながる可能性がある

部下によって接し方を変えるSL理論は、他の部下から見ると「えこひいき」と映る可能性があります。なぜリーダーがそのような関わり方をするのか、その理由や目的をチーム全体に説明し、透明性を確保することが求められます。

部下一人ひとりの成長を願う公平な姿勢を示すことが、チームの信頼関係を維持する鍵となります。

SL理論を効果的に実践するためのポイント

SL理論を組織に根付かせ、その効果を最大限に引き出すためには、具体的な取り組みが必要です。ここでは、特に有効な2つのポイントを紹介します。

定期的な1on1ミーティングの実施

部下の発達度を正確に把握するためには、定期的な1on1ミーティングが非常に有効です。

業務の進捗確認だけでなく、部下が感じている課題やキャリアに対する考えなどをヒアリングする場を設けることで、能力や意欲の変化をタイムリーに捉えることができます。リーダーからのフィードバックや期待を伝える良い機会にもなります。

組織サーベイの活用

個別の面談に加え、組織サーベイのような客観的なツールを活用することも有効な手段です。

従業員エンゲージメントや仕事への満足度などを定期的に測定することで、個々の部下だけでなく、チームや組織全体の状況をデータに基づいて把握できます。これにより、より的確なマネジメント施策を立案することが可能になります。

チーム状態を可視化し、行動につなげるサーベイツール「ourly survey」

ourly surveyは、部下やチーム全体の状況を的確に把握して、改善施策の立案・実行までを支援する“測って終わり”にさせないサーベイです。

ourly survey紹介アイキャッチ

細かい分析機能でチーム課題を可視化

「所属/部署」「役職」「職種」「拠点」などのユーザー属性で回答結果を分析することが可能です。仕事への満足度やエンゲージメントが低い層などを可視化できます。

チーム課題に応じた自由な設問

従業員エンゲージメントの向上やマネジメント施策の成果測定、ビジョンの浸透度合いの計測など、手に入れたいチームの状態から逆算した自由な設問設計が可能です。

行動データを組み合わせた分析

弊社が提供するweb社内報「ourly」の閲覧行動とサーベイで集計した結果をクロス分析することで、チーム改善のサイクルを加速させます。

一気通貫した改善支援

弊社の組織開発コンサルタントが、サーベイで集計した結果をもとにチーム課題の特定や改善施策の提案、実行を支援します。

以下の資料では、ourly surveyの具体的な特徴や機能を紹介しています。サービスの比較や導入のご検討などに、ご活用ください。

まとめ

SL理論は、部下一人ひとりの発達度に合わせてリーダーシップを変える、実践的なマネジメント手法です。この理論を活用することで、部下の能力を最大限に引き出し、組織全体の生産性を向上させることができます。

まずは部下の状況をよく観察し、最適なリーダーシップスタイルは何かを考えることから始めてみましょう。