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大企業病とは?原因と起こる弊害、症状への対策法を分かりやすく解説

大企業病とは、組織が成熟したことで生じる形式主義などの官僚制が進み、組織の生産性が低下していることをいいます。

官僚制が進むことで、効率性が高まる一面もありますが、弊害が大きくなることも事実です。症状がひどくなると、経営が立ち行かなくなるリスクが生じることもあるため、早期の対策が必要となります。

この記事では、大企業病の内容や特徴、原因のほか、大企業病の弊害の内容、対策について解説します。

目次

大企業病とは

大企業病とは、主に大きな組織において蔓延する、形式を重視する保守的な思考や、風通しの悪い企業体質のことをさします。中小企業であっても成熟した組織であれば大企業病になることもあるでしょう。

大企業病で陥りやすいマインドとして、組織が成熟するにつれ、手段が目的になるように、形式が重視される傾向が多いです。組織の官僚制が進む前例踏襲主義の下、リスクを取らずに保守的な思考になりがちにもなります。

大きな変化やチャレンジを避け、形式やルールを重視することから意思決定が遅く、風通しの悪いことがあげられます。社内政治の下、派閥や出世を重視するあまり、環境変化に対応できず競争力が低下するケースもあります。

大企業病の症状

大企業病の特徴は、組織が成熟し、官僚制がマイナスに働いているさまざまな事象です。

ここでは、ルールや縛り、セクショナリズム意識、意思決定の遅さのほか、大企業病の特徴を説明します。

ここでは、大企業病の主な特徴について見ていきます。

ルールやマニュアルに縛られすぎている

組織が成熟すると、官僚制がマイナスに強く働き、整備された規則やルールを守ることが目的化する傾向にあります。

本来の目的を達成するための「手段」として定めた規則やルールを守ることが「目的」になり、大企業病が進展すると、結果として、規則やルール、マニュアルに縛られすぎることが起きます。なかには、重要でない細かなルールでも、守ることが目的になっていると本来の目的を見失い、合理的な意思決定ができないこともあるでしょう。

セクショナリズムの意識が強い

大企業病が進展すると、それぞれの組織が保身に走り、自己防衛意識が醸成されていきます。この自己防衛意識から、他の組織のことは二の次で、自己の組織を優先する「部分最適」のマインドが生まれ、セクショナリズムの意識が強くなります

このようなセクショナリズム意識の強さは、組織横断的な全体最適を志向するマインドの高い社員のモチベーションも、大企業病の弊害によって阻害されることもあるでしょう。

セクショナリズムについて、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

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無駄が多く意思決定に時間がかかる

縦割り組織における決裁ルートの多さや規則・ルールを重視しすぎる官僚制のマイナス機能から、無駄が多く意思決定に時間がかかることが多くあります。とくに、重要な事案であれば、ルールに沿った手続きのうえ、関係する多くの権限者を通し、開催日が限られる役員会での決裁となることが多く、非常に時間を要します。

この意思決定の遅さから、ビジネスチャンスを逃すことも往々に生じ、目まぐるしく変化するビジネススピードに対応できなくなるでしょう。

従来のやり方に固執して新しいチャレンジをしない

組織の成熟につれて官僚制のマイナス機能が働くと、前例踏襲主義が強まります。

自己保身から、前例のないものは認めない、やらないというように前例踏襲により、従来のやり方に固執して新しいチャレンジをしなくなります。チャレンジ精神旺盛な社員も、大企業病に感染している組織に属すると「出る杭は打たれる」という環境から、いずれ同化してしまうでしょう。

責任あるポストの者であるほど、自己保身から前例踏襲に固執する傾向があります。

責任の所在があいまい

会社は成長すると、人員の増加とともに役割・組織も増えていきます。多くの組織やメンバーがかかわると、大企業病にある症状として、責任の所在があいまいになる事象が生じます。

組織やメンバーが多くなるほど、どこかが責任をとるだろうとの考えから、責任の擦り付けや責任の放棄をする思考に陥りやすくなります。

大企業病によって、部門同士で責任の押し付け合いをするようなことも生じ、本来、果たすべき企業の責務や目標を達成することが困難となるでしょう。

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大企業病の原因

ここまで、大企業病にみられる主な特徴を説明してきましたが、大企業病の原因は、組織が成熟するにつれて官僚制が強まることにあります。

ここでは、具体的な大企業病の主な原因を解説していきます。

リスクをとらない風土

組織が成熟し業績が安定していると、現状維持を志向するため、リスクを取らなくなる傾向があります。大きな変革期が到来する、あるいは、将来、到来しうるリスクに直面しても、「今やることで、リスクに対する責任をとる必要はない」との自己保身から、リスクをとらない安定志向に走るのです。

しかし、「リスクを取らないことは最大のリスク」というように、リスク(=不確実性)を取らないと不確実な経営環境に対応できず、企業として生き残れない可能性があります

チャレンジを奨励する制度がない

「出る杭は打たれる」「前例踏襲主義」などの大企業病の症状が出ている場合、チャレンジを奨励する制度がないと、意欲ある社員は余計にチャレンジ精神が阻害されます。

チャレンジ精神旺盛な社員も、いずれ周囲の前例踏襲主義に感化され、成長の芽を摘まれてしまうでしょう。

前例踏襲主義が強く出ている企業で、チャレンジを推奨する制度がない環境では、組織成長を一切阻害されてしまう恐れがあります

オープンに意見を言えない雰囲気

オープンに意見を言えない雰囲気があるなど、風通しが悪い組織では、必要な情報が伝わりにくいなど意思決定にも悪影響があります。

問題が起きても報告が上がらない、事業環境に変化が生じても対処が遅くなり、他社に太刀打ちできないなど、経営に大きな影響を与えることもあるでしょう。

オープンに意見を言えるような環境がなければ、必要な情報が集まらず、経営環境の変化に応じた適切な意思決定ができないリスクが高まるといえます。

理念やビジョンが浸透していない

組織が小さいうちは、トップマネジメントとの距離も近く、理念やビジョンは十分に伝わりやすいといえます。しかし、組織が拡大すると、トップマネジメントとの距離が遠くなり、理念やビジョンが浸透しづらくなります。

理念やビジョンが浸透していないと、社員は経営の拠り所が不明確になり、「社員が企業理念を逸脱した行動を起こす」「事業戦略の遂行が経営方針とブレる」など、経営を揺るがす事態になりかねません

大企業病の弊害

大企業病の弊害は、経営や事業戦略に大きな悪影響をもたらすこともあります。

ここでは、大企業病がもたらす弊害である、生産性の低下や優秀人材の離職、新規事業の乗り遅れについて説明します。

生産性や意思決定スピードが低下する

大企業病の大きな弊害として、生産性や意思決定のスピードが低下することがあげられます。

手段である規則やルールを守ることが重視されることから、無駄な手続きが多くなり、生産性が低下します。縦割り組織における稟議手続きの下、多段階の承認手続きを経る必要があり、重要な案件については役員会での決定を要するなど意思決定のスピードが低下する弊害が生じます。

第四次産業革命を迎え、産業構造の変化が著しく変化している昨今、生産性や意思決定のスピード低下は、企業の存続危機をもたらす可能性が高いといえます。

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優秀な人材が離職する

意欲ある優秀な人材が離職することも、大企業病の大きな弊害の1つです。

前例踏襲主義で、新しいチャレンジを受け入れない、チャレンジをする環境も整備されていないという環境で周囲の社員も同化していれば、意欲ある優秀な社員はモチベーションを失います。出る杭は打たれ、オープンに意見をいえる環境もなく、優秀な社員は離職するほかない状況に立たされるでしょう。

結果として、自主性のない前例踏襲主義一辺倒の保守的な社員しか残らず、他社との競争に太刀打ちできない経営リスクが生じることが考えられます。

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新規事業に乗り遅れる

リスクを取らずチャレンジする風土がないことから、新規事業に乗り遅れる可能性が高まります。

大企業病に感染している企業は、過去の成功体験から抜け出せず、今までのやり方に固執し、保守的な組織文化が定着しているため、リスクを取って新規事業に乗り出すことを志向しません。産業構造の変化が著しい昨今、経営環境の不確実性に対応していくため、リスクを取る組織風土が醸成されていないと、新規事業に乗り遅れ、経営環境の変化に対応できない致命的なリスクが生じるでしょう。

大企業病の予防・対策方法

ここまで、大企業病の原因や生じうる弊害を見てきましたが、大企業病は経営を揺るがすリスクが生じる恐れがあります。

ここでは、大企業病を克服するための対策方法・改善策として、社内コミュニケーションの活性化、企業理念・ビジョンの浸透、意思決定のスピード化のほか、整備すべき組織制度等について解説します。

社内コミュニケーションを活性化させる

大企業病により、必要な情報が上がってこない、組織が活発でなく社員の意欲がないといった場合は、社内コミュニケーションを活発化させることが有効です。

社内コミュニケーションを活発化させることで、現場で起きている問題点や改善要望、顧客ニーズの収集などが迅速に把握することが可能です。社員同士の人間関係も向上し、仕事のやりがいや会社ヘの帰属意識も高まる効果もあるでしょう。

社内コミュニケーションを活発化させるには、勉強会などの非公式組織を形成するほか、組織横断的なプロジェクトの立ち上げなどが考えられます。近年では、ビジネスチャットやWeb会議などITツールの活用が活発化しています。

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企業の理念やビジョンを明確化し発信する

企業理念やビジョンを明確化し発信することで、社員による経営の拠り所が明確化し、企業全体で、経営目標に一枚岩で向かうことができます。

社員は、日頃の事業活動や業務においても目的意識を持つことができ、やらされ感なく、能動的に仕事に取り組むことができるでしょう。経営理念やビジョンを十分に浸透させることで、社員は自ら考え、企業の向かうべき方向に行動させる体制が実現できます

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業務改革で意思決定のスピードをあげる

規則やルールを守ることを重視していることで無駄な作業が多い、あるいは多段階の稟議承認手続きや役員会決裁により、意思決定のスピードが低下している場合、業務改革で意思決定のスピードを上げることが効果的です。

無駄な申請書や報告、各種手続きを見直すよう業務改革をすることで、意思決定のスピードは、各段に早まることが期待できます。近年では、ワークフローや意思決定支援システムなどのITツールなどによって業務改革する企業も多いでしょう。

また、縦割りライン組織をフラット組織にするなど、組織形態を変化させることで意思決定の迅速化を図ることも重要です

多様性のある組織を目指す

前例踏襲主義などの大企業病がまん延している組織では、社員が保守的に同質化しているため、イノベーションが起こりづらい環境となっています。

多様な価値観を醸成するためには、自社のダイバーシティを加速化させ、多様な人材を取り入れることが必要です。ただし、多様な人材を取り入れても、新たな価値観を受け入れない大企業病の症状を治していないと、取り入れた人材は離れます。

ダイバーシティを推進するにあたり、多様性の理解を十分に浸透させたうえで、多様な人材を取り入れることが肝要です

チャレンジを奨励する制度を整える

前例踏襲主義の傾向が強い、チャレンジングなマインドが醸成されていないといった場合は、チャレンジを推奨する制度を整えるよう人事制度の改善が必要です。

チャレンジングな目標を組み込み評価対象とするように、「目標管理制度の改善をする」「新規事業部門などの評価は、成果評価よりプロセス評価の比重を高くする」など人事制度を改善します

新規事業提案制度などを取り入れ、採用された場合は提案者をプロジェクトの責任者に任命するなど権限を与えることも効果的です。

人事評価制度や採用基準を再確認する

セクショナリズムの意識が強い、前例踏襲の志向が強いなどの大企業病の症状がある企業は、人事評価制度や採用基準を再確認し、改善をすることが必要です。

組織横断的な視野を持ち行動する者や、前例に囚われることなく新たなチャレンジをする者を評価するよう人事評価基準を改めるよう人事評価制度を改善します。また、大企業病が浸透している価値観を刷新するため、採用基準を刷新し、多様な価値観を持つ人材を採用することも有効でしょう。

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管理職の再選抜や育成をする

組織が大きくなるほど、トップマネジメントと社員の距離は遠くなり、トップマネジメントと社員を繋ぐ管理職の果たす役割は大きくなります。

経営理念やビジョンは、縦割り組織において「トップマネジメント」から「ミドルマネジメント(管理職)」を介して「ロワーマネジメント(社員)」に伝わります。管理職が「連結ピン」として、経営理念やビジョンを浸透させるために理解できるよう落とし込み、社員に腹落ちさせる役割を担います。

そのためには、マインドの高い若手層を管理職として選抜する制度を導入するとともに、連結ピンとして機能するようマインドセットにより育成することが重要です。

セクショナリズムを解消し顧客ニーズを優先する

セクショナリズムが強く、前例踏襲になりやすいケースでは、顧客ニーズがないがしろにされていることが多くあります。

過去のやり方や社内政治を重視するがゆえ、顧客ニーズに応えられない環境を改善するため、幅広い視野を持てるようジョブローテーションを定期的に行うなど、セクショナリズムを解消することが肝要です。

組織の土台を整えたうえで顧客ニーズに応えられるよう、顧客満足度調査を実施し施策を講じるなど、顧客満足度向上施策を講じましょう。

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この記事を書いた人

ourly株式会社組織開発チーム所属。前職はourlyの親会社ビットエーでSEとしてデータエンジニアリングに従事。エンジニアチームのマネジメントや社内イベント企画運営の経験から組織開発に興味を持ちourlyへ。
副業としてコーチングやインタビューライティングを行う。
趣味はスノーボードとスキューバダイビング。

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