MENU

人的資本経営が注目される時代の人事の役割とは

本記事は、株式会社NEWONE代表取締役社長の上林様より寄稿いただいています。

2022年初頭に、岸田首相も触れた人的資本。
2023年には人的資本情報の開示が上場企業を中心に義務化されます。

急速に進んでいく人的資本経営。
そのような状況で、人事の役割はどうなっていくのか。

“開示”という業務に加えて、何が大事になってくるかについてまとめてみたいと思います。

株式会社NEWONE 上林さん

株式会社NEWONE
代表取締役社長

上林 周平

この記事を書いた人


大阪大学人間科学部卒業。アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に入社。官公庁向けのBPRコンサルティング、独立行政法人の民営化戦略立案、大規模システム開発・導入プロジェクトなどに従事。
2002年、株式会社シェイク入社。企業研修事業の立ち上げを実施。その後、商品開発責任者として、新入社員から管理職までの研修プログラム開発に従事。
2003年より、新入社員から経営層に対するファシリテーターや人事・組織面のコンサルティングを実施。
2015年より、株式会社シェイク代表取締役に就任。
2017年9月、これからの働き方をリードすることを目的に、エンゲージメントを高める支援を行う株式会社NEWONEを設立。
米国CCE.Inc.認定 キャリアカウンセラー
著書に「人的資本の活かしかた 組織を変えるリーダーの教科書

人的資本とは何か

経済産業省の言葉では、

人的資本経営とは、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、
中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方です。

と定義されています。
言葉としては理解できたとしても、今までと何が違うのかでしょうか。

まず、人的資本を説明するにあたり、よく使われてきた人的資源と対比して説明したいと思います。

人的資源は、英語ではリソースであり、人自体を中心に今あるものを消費する考え方が強いですが、人的資本は、英語でいうとキャピタルであり、人に加えて、保有しているスキル・知識・経験にフォーカスし、レバレッジが効くものというニュアンスが強いです。

加えて、人的資本という言葉を、”人が資本”と捉えがちですが、もちろんそのニュアンスもあっているのですが、それ以上に、”人の資本”と捉えた方が、より今の時代にマッチしていると思います。

また、以前からある「人を大切にする経営」と何が違うのかというと、以前は、終身雇用を前提としてずっと一緒にいるという感覚から家族的に囲い込んで大切にするというニュアンスが強い言葉だったと思います。

「人的資本経営」は、人を大切にしないわけでは決してないです。

今は、一つの会社にいるとは限らないような人材流動化が激しい時代で、かつキャリアの主体が個人にゆだねられる時代です。そのような時代では、一人ひとりが保有している能力を発揮して貢献実感を得られたり、その能力をさらに高める機会を提供したりすることが、社員一人ひとりが望んでいることであり、それに応えていくことが、今の時代の人を大切にするということなのです。

人的資本を別で例えていきましょう。
以前、アメリカ大リーグのアスレチックスという野球球団をベースにした「マネーボール」という映画がありました。

人的資本から見たその映画のポイントは、

  • お金があまり無い球団だったアスレチックスは、速い球を投げたり、ホームランやヒットを多く打ったりするような皆が知っているエースクラスの人材は、年俸が高くて獲得できない状況でした。
  • そこで、野球において重要な”勝つ”ことに対して何が大切かを分析していくと、ホームランやヒットも大事なのですが、ヒットではなくても塁にでる確率である「出塁率」という指標が意外と勝利に貢献していることを見つけ出しました。
  • その結果、「出塁率」は高いけど年俸が安く目立っていない選手を獲得していき、アスレチックスは強い球団にかわっていったという話です。

今人材市場でも、エースで4番のような人材を獲得していくことは困難です。

だからこそ、自社にとって必要な能力は何かを捉え、その能力をベースに人材を獲得したり、育成をしたりすることが大事になってきています。

人的資本経営になると人事において何が大切になってくるのか

人的資本が大事な時代に、人事は何が大切になってくるかをマネーボールに置き換えて考えていきましょう。
まずは、マネーボールの場合、”勝つ”というわかりやすいものに対して分析して要因を見つけていきました。

人事において、自社が事業で勝っていくとはどういう状態(売上向上、シェア拡大、利益額増加など)であるかを理解し、その勝つために必要なような要素は何かを具体化していくことが大事です。

マネーボールでは、一つの例で「出塁率」というものを大事にしましたが、自社が勝っていくためには、例えば、顧客に高付加価値提案し受注することが何よりも大事、そのためには、デジタルの知識があり、企画提案できる人材を増やしていくことが重要である、というようなイメージです。

先ほどの「出塁率」が「デジタルの知識があり、企画提案できる」となります。
このように事業を理解し、その事業が成功していくために必要な要素は何かを明らかにしていくことが人事として大切になってきます。

その後、マネーボールでは、「出塁率」が高い人材を獲得し、そして活躍できるように支援していきましたが、ビジネスにおいては、「デジタルの知識があり、企画提案できる」を増やすために、

  • 「デジタルの知識があり、企画提案できる」人材を直接採用する
  • 企画提案できる人を採用して、デジタルの知識を育成する
  • 社内のデジタルに詳しい人を異動して、企画提案力の育成をする

というようなアプローチで、活躍できる人材を増やし、それに加えて、それらの人材が活躍しやすいように、風土や人間関係を整えるような支援をすることです。

人的資本を最大化するための人事の機能としては、「採用」「配置・異動」「人材育成」「組織開発」「評価」「制度・ルール」などがありますが、それらを連動させて、”勝つ”に影響する活動を行うことが人事の役割として大事になっています。

しかも、人・組織はすぐに効果が出るものではないため、長期的な視点をもって推進する力が大事になります。

人的資本を最大化するために、まず行っていくべきことは

先ほど、マネーボールを例にビジネスにおける人的資本の活用について述べた通り、これからの人事は、

  • 経営戦略と人材戦略の紐づけること
  • 人・組織面の強化するポイントを明らかにすること
  • 各人事機能の理解と補完しあう状態をつくること
  • 各機能でより良い施策を行うこと
  • 現場を巻き込み、信頼関係を築くこと
  • 重要な人的資本が活躍できるような環境を作ること

が大事になってきます。

それはすなわち、過去の人事以上に、

  • 人事単独の視点 → 事業成功の視点
  • 今現在の短期の視点 → 中長期の視点
  • 企画のみの視点 → 実行推進の視点

という視点の変更が大事です。

まずやるべきことは、この視点の変更を意識し、少しでも行動して体感することが一歩目になると思います。

弊社NEWONEでは、上記のような視点の変更を体験し、より人的資本を活かす人事になっていただくために、人事向けのスクールを展開しております。

自社の施策を考えながら意見交換をするスタイルであり、参加の皆さまには非常に好評をいただいております。ご興味ある方はご参加ください。

https://new-one.co.jp/seminar/newone-academy/

また、この人的資本の最大化するためには、という点に関しては、書籍「人的資本の活かしかた 組織を変えるリーダーの教科書」にまとめておりますので、ご覧くださいませ。

出典:Amazon.co.jp より

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!