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社内公募制度とは?メリット・デメリットと導入する際に気を付けることを解説

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社内公募制度とは、特定の部署への異動希望を社内で募集し、実際の配置へとつなげる人事異動制度の一つです。キャリアアップに積極的な人材の希望を尊重することで、社員のモチベーション向上や離職防止が期待できると言われています。

新たな採用コストをかけず、既存の人的資源を活用できる社内公募制度ですが、実施にはいくつかの注意点があります。誤った方法で進めてしまうと、社内における全体的な異動計画や人間関係に悪影響を及ぼしかねません。

そこで本記事では、社内公募制度のメリットやデメリット、導入の際に気を付けることを解説した上で、実際に取り組んでいる企業の事例を紹介します。ぜひ、異動制度の設計にお役立てください。

目次

社内公募制度とは

社内公募制度とは、人材を必要とする部署が社内に希望者を募り、選考のうえ人事異動で迎え入れる制度です。通常の人事異動との違いは、社員の希望を反映できる点にあります。希望する部署やプロジェクトに自由意思で応募ができるため、キャリアチェンジやスキルアップに意識の高い人材にとっては、チャンスをつかみやすい制度です。

企業によっては勤続年数や保有資格などの条件を設けているところもあります。また、書類や面接により選考も生じるため、すべての社員の希望がかなうわけでもありません。モチベーション向上や定着率のアップに有効な施策である反面、誤った運用をおこなうと、さまざまなトラブルの原因となるため導入には一定の注意が必要です。

社内公募制度の導入率

リクルートマネジメントソリューションズが2022年に実施した「個人選択型HRMに関する実態調査」によると、調査対象となった296社において、42.9%の企業が社内公募制度を導入済み、17.2%が導入を検討しているという結果でした。

さらに事業規模・産業別に分類すると以下の通りになります。

1000名以上製造業(81社)1000名以上非製造業(80社)1000名以下製造業(44社)1000名以下非製造業(91社)
導入しており活用されている37.0%38.8%13.6%12.1%
導入しているが活用が進んでいない22.2%13.8%2.3%14.3%
導入を検討中19.8%10.0%25.0%18.7%

従業員規模1000名以上の企業においては5割以上、1000名以下の企業であっても1割〜2割ほど導入が進んでいる状況です。導入を検討している企業まで含めると、調査対象全体で6割以上にのぼり、多くの企業が社内公募制度に関心を寄せていることがわかります。

(参照:,「個人選択型HRMに関する実態調査」,<https://www.recruit-ms.co.jp/research/inquiry/pdf/rms_research_2022_report.pdf>, 2023年1月閲覧)

社内公募制度と社内FA制度との違い

社内公募制度と類似し、混同されやすい制度に社内FA制度があります。社内公募制度は、人材が必要な部署が要件を設定し、社内に「求人」をかけるイメージです。これに対して、社内FA制度は、社員が希望する部署に「売り込み」をかけることで、人事異動を実現させます。

社内公募は「求人」が発生しなければ、人事異動も発生しません。社内FA制度はスキルや資格を希望部署に「売り込む」ことにより異動が実現するので、より社員の主体性が活かされる制度といえるでしょう。

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社内公募制度のメリット

人事異動に社員の希望を反映させる余地を設けることにより、さまざまなメリットが生じます。主なメリットは、以下の3つです

  • 従業員のモチベーションが上がる
  • 人材の流出を防げる
  • 管理職の意識が高まる

詳しく解説します。

従業員のモチベーションが上がる

自身のキャリアプランがかないやすくなる点は、社員にとってモチベーションの源泉になるでしょう。希望するポジションで働けることにより、日々の業務に意欲的に取り組むようになります。また、自身で希望して選択したという意識は、責任感にもつながるでしょう。

当然、興味の深い分野の業務であるため、業務知識の習得やスキルアップにも熱心に取り組むようになります。好きな分野で活き活きと働けることで、常に高いモチベーションを保てるのです。

人材の流出を防げる

自身のキャリアプランに沿わない業務の担当となった場合、モチベーションの向上は難しいでしょう。社外に活躍の場を求め、転職する人材が出てくるかもしれません。社内公募によりポジションを選択できることで、社内にキャリアアップの機会を見出せるようになります。

転職することなくキャリアチェンジが可能になることは、人材の流出防止につながります。結果的に退職による欠員の補充が必要なくなり、採用コストも抑制されるでしょう。

管理職の意識が高まる

人事異動に社員の意思が反映されることは、部署を統括する管理職の手腕が問われることにもつながります。人材を迎える側・送り出す側の管理職は、いずれも優秀な人材を確保して手放したくないと考えるものです。


自身のマネジメントスキルの不足により、エース社員が他部署に応募することは避けたいと考えるでしょう。一方、公募する部署の管理職は、自身の不人気により応募者が少なくなることは避けたいと考えます。双方の管理職にとって、マネジメントに緊張感を持たせる刺激となる効果も期待できるのです。

社内公募制度のデメリット

社内公募制は誤った運用をした場合、効果を発揮しないばかりか、社内にトラブルを生む原因となることは前述した通りです。具体的には、以下に挙げるデメリットを生じさせるリスクがあります。

  • 全体の異動バランスが悪くなる可能性がある
  • 人事担当部門の負担が大きくなる
  • 選ばれなかった社員のモチベーションが低下する

詳しくみていきましょう。

全体の異動バランスが悪くなる可能性がある

社員の希望を反映させすぎることにより、会社全体の人員バランスが崩壊することも考えられます。会社主体の人事異動では、今後の事業展開を見越したうえで社員一人ひとりの適性を考慮し、異動を決定します。そのため、人材配置に偏りが生じることはありません。

また、社員の希望と適性が合致しないケースが、発生するかもしれません。こうした異動が頻発すると、適正な人員配置が崩れ、事業運営に支障をきたす恐れがあります。

人事担当部門の負担が大きくなる

社内公募を大々的に実施した場合、制度を所管する人事部門の負担が増大することは避けられません。応募者の要件設定や、応募受付から選考まで、該当部署との頻繁な調整業務が発生するためです。

また、異動により不足した人員の補充にも対応しなくてはなりません。新規に募集する場合は、採用業務が発生するでしょう。他部署からの異動でまかなう場合は、玉突き的に人事異動が発生し、対応に追われることになります。

選ばれなかった社員のモチベーションが低下する

公募である以上、選考により対象者を絞り込むことは避けられません。選考に漏れた社員は自信を喪失し、大きくモチベーションを低下させることが考えられます。

また、所属部署の上司や同僚との関係が悪化する恐れもあります。応募した社員にとっては前向きなチャレンジであったとしても、上司や同僚はよく思わないケースもあるためです。気まずい雰囲気のなかで業務を続けることになれば、モチベーションを再構築することは難しくなります。

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社内公募制度を導入する際に気を付けること

社内公募制度は、人事異動に個人の希望を反映させ、人材活用を活性化する効果が見込める反面、副作用が生じる恐れもあります。導入にあたっては、以下の点に注意するとよいでしょう。

  • 社内公募制度のルールを明確にする
  • 社内への周知や説明を徹底する
  • 応募した社員の情報を適切に扱う
  • 異動後もフォローアップする

詳しく解説します。

社内公募制度のルールを明確にする

社内公募制度を導入する際には、明確なルール設定をおこなう必要があります。曖昧なまま運用することにより不公平感が出てしまうと、人事制度への不信感につながる恐れがあるためです。

とくに応募条件などは、社内公募制度の目的であるキャリアアップや組織活性化につながるよう、適切な難易度で厳密に定める必要があります。基本方針と運用ルールは、明確かつ誰にでもわかりやすくしておくことにより、想定外のトラブルにも対処できるでしょう。

社内への周知や説明を徹底する

社員の多くが理解不足や誤った認識を持ったままの場合、制度が本来の目的を果たさなくなる恐れがあります。社内公募制度は、社員の能力を伸ばすことが目的であることを、十分に理解してもらわなくてはなりません。

導入時には、全社員を対象にした説明会を開催するなど情報の周知を図ることが必要です。社内報などによる情報発信も有効でしょう。社内公募制度の目的や趣旨、応募資格、必要な手続きなどの詳細を周知します。

応募した社員の情報を適切に扱う

応募者情報は、人事部門において適切に管理しなくてはなりません。原則として、非公開とすることが望ましいでしょう。人間関係の悪化を招く恐れがあるためです。

メンバーが他部署に応募していることは、同僚や上司にとっては気持ちの良い話ではないことが多いものです。また、応募者は、選考に漏れれば、現在の部署で働き続けることになります。人間関係が気まずくなり離職の原因になるなど、本末転倒の結果を生むことにもなりかねません。

異動後もフォローアップする

社内公募制度は、異動が実現すればそれで終了というものではありません。むしろ異動後のフォローが、制度の目的を達成するうえで大切です。異動した社員が、異動先の環境に馴染んでいるか、活躍できているかを確認します。つまずきが生じていれば、適度に介入し問題解決を図らなくてはなりません。

また、異動元の部署に対しても、欠員が生じたことによって業務に支障をきたしていないか、確認しフォローする必要があります。

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社内公募制度を導入した企業の事例

ここでは、社内公募制度を導入し、人材と組織の活性化に成功している企業の事例を紹介します。いずれの企業も、社員のチャレンジ精神を尊重している点が特徴的です。

詳しくみていきましょう。

1. ソニー|累計7千人以上が利用

ソニーの社内公募制度は、「現所属部署に2年以上在籍」という条件をクリアすれば、誰でも応募できる点が特徴です。上司の許可は必要とせず、社内転職のようなイメージでスキルアップにチャレンジできます。

重要度の高い事業は随時募集しており、優秀な人材を集中させることに成功しています。また、そのほかの部署は年2回の定期募集により、人材と組織の活性化につなげているようです。同社の公募制度は、50年間で延べ7000人が利用しており、チャレンジを歓迎する組織風土の醸成に成功しています。

 2. 積水ハウス|プロジェクトごとに不定期募集

積水ハウスは、2004年に「人材公募制度」を導入しました。「意欲ある人材に挑戦機会を与えること」「適材適所の人員配置」を制度の目的としました。

重要プロジェクトなど、公募案件が発生した際に募集をかけ、社員が自由に応募できる形式をとっています。ホームページや社内通達で公募案件を周知し、人事部が窓口となり選考をおこない、結果を直接応募者に通知します。不定期の実施ながら、社内公募制度のオーソドックスな運用例といえるでしょう。

社内公募制度は社員自らの意思を尊重する一つの手段

社内公募制度は、人事異動に社員自らの意思を反映させる一つの手段です。適切に運用することで、社員のモチベーションに作用し、人材と組織の活性化が期待できます。


そのためには、制度の趣旨・目的に対する十分な理解を社員に促す必要があります。また公募の情報は、対象者となる社員に漏れなく伝達されなくてはなりません。社内通達によるアナウンスだけでなく、Web社内報を活用するなど、こまやかな情報提供が必要となるでしょう。

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この記事を書いた人

masayuki yamamotoのアバター masayuki yamamoto ライター

ライター。大手小売チェーンにて、店舗マネジメントを経て人事部門を経験。新卒・中途採用では年間1000人以上の応募者に対応。
そのほか教育研修や労務管理、人事制度構築や労務トラブル解決など、人事全般のさまざまな業務経験あり。
豊富な実務経験をもとに人事系の記事を中心に執筆活動をおこなう。

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