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ネットの情報を拾うだけじゃダメ。これからの時代に、頭ひとつ抜けるための「聞く習慣」

「会話をするのが苦手で緊張してしまう……」
「初対面の人とうまく話せない……」

仕事をするうえで、「会話」「コミュニケーション」は切っても切り離せない要素です。しかし、会話をするのが苦手、雑談が広がらないと悩む人も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、書籍『聞く習慣』の著者で、インタビューライターのいしかわ ゆきさんにインタビュー。ビジネスパーソンがうまく会話をするコツやスキルについてお話を伺いました!

いしかわさん

いしかわ ゆき

インタビュイー

ライター・作家

早稲田大学文化構想学部 文芸・ジャーナリズム論系卒。Webメディア「新R25」編集部を経て2019年にライターとして独立。取材やコラムを中心に執筆するかたわら、声優やグラフィックレコーダーとしても活動中。ADHDとHSPを抱えながら、生きづらい世界をいい感じに泳ぐために発信している。著書『書く習慣~自分と人生が変わるいちばん大切な文章力~』は3万部超でベストセラーに。その他著書に『ポンコツなわたしで、生きていく。』『聞く習慣』など。

インタビュアー

2019年よりフリーランスライター・編集者・Webメディアディレクターとして活動。前職ではベンチャー企業のメディア事業部に在籍し、Webマガジンの副編集長としてWebメディアの運営・企画やライターマネジメントに従事。

現在は、ourly magazine編集部にてコンテンツ企画やインタビュー、ライティングを担当している。

目次

今の時代に頭ひとつ抜き出るには「聞く習慣」を駆使すべき

──『聞く習慣』では、コミュニケーションが苦手な人に向けて、さまざまなノウハウが記載されています。そもそも、いしかわさんが聞く習慣を意識しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

きっかけはインタビューライターとして働きはじめたことです。私自身、もともと人との会話が苦手なタイプで、会話力や雑談力の本を読んでいたころがありました。でも、どの本にも「まず、人に興味を持ちましょう」と書かれていることがほとんどで……。正直、私は人に興味がなかったので、結局なにも実践できずにいたんです。

ファーストキャリアは営業でしたが、人との会話が苦手だということもあり、転職をしてディレクター職に就くなど、内向的な仕事にシフトしていきました。その後、コラムなどを掲載しているメディアのライターに転職したのですが、私が入社したタイミングでメディアの方針が変更となり、インタビュー記事を出していくことになったんです。

──人との会話が苦手だと、インタビューはよりハードルが高いですよね……。

最初は本当に嫌で嫌で仕方がなくて。先輩に「ピンチになったら助けてください! 」とインタビューに同行してもらっていました(笑)。

でも、インタビューライターを続けていくなかで、次第に聞く力が身についていったみたいで、1年後にはインタビューじゃない日常生活のなかでも「聞き上手だね」と言われることが増えました。人間関係が楽になった感覚もあったので、半ば強制的(笑)にインタビューライターになったことが、聞くことを意識するきっかけになったんだと思います。

──なるほど。聞く習慣を身につけたことで、どんなメリットがありましたか?

いろいろなメリットがありますが、とくに感じているのは、聞くことによって引き出した話が、自分の日常生活で役立っていることでしょうか。インタビューをしていると相手の話を引き出す技術が身につくので、思いもよらない情報が手に入ったり、自分のためになる知識を得たりすることがあるんです。

私の場合、昔から情報をインプットをする方法は書籍、映画、アニメ、マンガなどだったのですが、インタビューライターになってから、ここに「人」が追加されました。

──聞く習慣で人から情報を得ることで、自分の知識としてインプットできている。

はい。今はインターネットやSNSから誰でもさまざまな情報が手に入る時代になりました。だからこそ、その人しか持っていない「生の情報」の価値はとても高いと思います。たとえば、私は就活に失敗しているんですが、その失敗要因の1つは人に情報を取りに行かなかったことだと思っています。

就活に成功している人って、OB訪問に行ったり、誰かにアドバイスをもらったりしているんですよね。でも、それって聞く力がないとできないわけで……。兎にも角にも、今の時代を生き抜くために、聞く習慣は必要です。みんなと同じ情報を取りに行ったんじゃ、頭ひとつ抜けることはできません。

話すための事前準備で、会話の種を探っておく

──「聞く習慣」を身につける方法を具体的に教えてください!

会話が苦手な人、緊張しがちな人は、もともとの性質もあると思いますが、準備不足だから緊張するパターンも多いと思います。プレゼンでも舞台でもそうですが、リハーサルやシュミレーションをたくさんしておけば、多少緊張しても、ある程度自信をもって本番に臨めますよね。それと同じで、話すことも事前準備やシュミレーションをしておくといいと思います。

──話すための事前準備ですか。具体的にはどんなものでしょう?

とくにおすすめなのが「相手について知っておくこと」です。実はこれ、インタビューでは当たり前のことなんです。事前に相手の情報をインターネットやSNSから集めておいて、既出の情報を改めて聞くのを避け、会話のフックとして使う。インタビューは時間が限られているので、すでに何度もされている質問を聞くよりも、それを知ったうえで踏み込んで深堀りしていくことが大事なんです。これは本来聞くべきことにしっかりと時間を割くという意味でも、相手を不快にさせないという意味でも重要なこと。

私はそれを日常の会話にも落とし込むことをおすすめしています。たとえば、初めて会う人の情報を事前にSNSから集めておいたり、社内の人であれば社内プロフィールなどを見ておいたり。まったくの初対面であれば「いつもTwitter見てます! 」という会話もできますし、SNSなどから相手が興味を持っていることをリサーチしておけば、会話の幅も広がりますよね。「そういえばさっきラーメンの投稿されてましたが、ラーメン好きなんですか?」みたいな。

──それだと共通点も見つかりそうですね!

そうですね。あとは、たとえ共通点がなかったとしても、「誰かが知りたそうな情報」をイメージすると、質問が浮かんできやすくなります! これもインタビューで培ったテクニックですね。インタビューは「自分が知りたい人を聞く」というよりも、「読者が知りたそうなことを聞く」ので、自分を切り離して質問することもあるんです。 

たとえば、不動産屋で働いている人と会話をしていて、自分はまったく不動産業界に興味がなかったとします。でも、家族や友達、SNSなどを見ていると、「不動産業界で働いてみたい」「引っ越すので物件を探している」みたいな人ってたくさんいますよね。そういう人たちなら何を知りたいのかな? と考えて、「実は友達が不動産業界で働いてみたいと言っているんですが……」と話題を出す方法もあります。

もちろん、架空の人物でも大丈夫です。自分自身がその話題に興味を持てなかったとしても、興味を持っている人なら何を知りたいだろう? とイメージできると、話題に困ることは少なくなります。これは他人に興味がない私が見い出した、究極の聞く技術です(笑)。

「自分本位」の目的を持っていれば会話が苦痛にならない

──嫌な人、苦手な人と話すときは、どうしても会話が苦痛になってしまいがちですよね。そういうときに取り入れている対策はありますか?

たしかに嫌な人、苦手な人と話すときって会話が苦痛になってしまいますが、仕事上の関係だと避けようにも避けられない部分がありますよね。そういうときは、最終的には「自分のためにする」という目的を持って会話するのがおすすめです。

たとえば、無愛想で嫌味なことばかり言ってくるけれど、めちゃくちゃ仕事ができる上司と話すときは、「この人の仕事術を根こそぎ盗んでやる! 」という目的をもって会話するイメージです(笑)。自分のためになると思うと、苦痛も少し和らぎますよね。

私もときどき、無愛想で怒っているように感じる方にインタビューすることがありますが、インタビューをする目的って良質な記事を出すことなんです。良質な記事を出して、たくさんの人から反響をもらいたい、評価されたいという自分本位の目的があるので、相手がどんな人であろうと「いい話を根こそぎ引き出してやる! 」くらいのマインドでいます(笑)。

苦痛な会話はどこにでもあると思いますが、その会話を最大限気楽に臨めるように、自分本位の目的を探してみてください。私利私欲にまみれた目的でもいいんです。何かしら自分のためになると思えば、苦痛にならずに話を聞けると思います。

「聞くこと」と「書くこと」をセットで身につける

──書籍のなかでとくに気になったのが、“「書く」ことで「聞く」が習慣になる”という章でした。書籍を読んでいない読者の方に向けて、具体的に解説いただけるとうれしいです。

私は、「書くこと」と「聞くこと」はセットだと思っています。たとえば私は、学生時代から友達と話したいことをメモに書いていったり、聞いた話を忘れないようにメモをとったりしていました。頭のなかに留めておいてもいつか必ず忘れてしまいますし、せっかく会話して知った情報をこぼしてしまうのはもったいないからです。

インタビューライターの場合は、「原稿」という場で聞いた話をまとめることができます。これと同じように、日常の会話で知った情報をどこかに書いておくと、頭を整理したり、改めて自分の記憶に落とし込んだりすることができるのでおすすめです。ビジネスパーソンは、日報を書く習慣がある人も多いと思うので、日常でも日報を書く気持ちで習慣化するとよいと思います。

──いしかわさんは誰かから聞いた話や情報をSNSやnoteなどに書いていることが多いですよね!

そうですね。そうやって書くことで、コミュニケーションを補えるのも大きいですね。

たとえば、誰かとの会話がすごく歯切れ悪く終わってしまった場合でも、「今日はありがとうございました。〇〇についてのお話がすごく興味深くて……」と連絡をするだけで、相手から見た最後の印象もよくなります。私の場合は、プライベートでもお話を聞いて感じたことなどをnoteに書いて、相手に「今日の会話のなかで、感じたことを書いてみました」と送ったりすることもあります。

これってアポの後にお礼メールを送るのと同じなので、ビジネスパーソンなら馴染みのある行動だと思います。ぜひ日常のコミュニケーションに落とし込んでみてください。先輩でも後輩でも友達でも、「今日はすごく楽しかった! この話がきけてよかった! 」とメッセージをすればきっと相手も喜びますし、会話に失敗したのならそれを補完できると思います。

──ありがとうございます。最後に、聞くことや会話が苦手で、人間関係の構築に悩んでいる人に向けてメッセージをお願いします。

「人間関係を構築しなきゃ」「仕事を円滑に進めるためにも、話さなきゃ」と力む必要はないと思います。たとえ何も得られなくても、話せたからOK! 聞けたからOK! というマインドを持っておくことが大切です。面白い話をする必要も、場を盛り上げる必要もありません。まずは相手の話を聞くことに意識を向けてみてください。

先ほどもお話ししましたが、あくまでも自分本位の目的を持っていれば、がんばって会話をした内容は自分の血肉になっていきます! まずは少しずつ、会話をすることから始めてみてくださいね。

インタビューのなかで、「もともとはコミュ障で、雑談なんてもってのほか。本当に話すことが苦手だったんです」と話すいしかわさん。インタビューライターとして多方面で活躍されている姿からは、到底イメージできませんでしたが、同時に話すことが苦手でもいしかわさんのように「聞く習慣」を駆使すれば、“話せる人”だと感じてもらうことができるのだと勇気をもらいました。話すことが苦手な人は、ぜひ参考にしてみてください。(ライター・加賀山)

Interview / Write / Design:Sachi Kagayama
Edit:Nozomu Iino

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