「優秀な人材が定着せず、離職率が下がらない」
「MVVを作ったものの形骸化しており、浸透させる決定打がない」
組織が急拡大し、多様なバックグラウンドを持つ人材が集まる過程で、こうした「組織の歪み」に直面し、頭を抱える経営者や人事担当者は少なくありません。
一度バラバラになった組織のベクトルをどう揃え、再び熱量あるプロフェッショナル集団へと進化させるのか。
今回は、「優秀な人材をいかに集め、働きがいを高めるか」をメインテーマに、サイバーエージェントの成長を人事の側面から支え続けてきたCHOの曽山哲人氏にお話を伺いました。
「離職率30%」という組織の危機をどう乗り越え、そして多くの企業が悩む「MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)は本当に必要なのか?」という本質的な問いに迫ります。
【対談vol.2】サイバーエージェントCHOが説く、人事制度をスベらせない”しらけのイメトレ”とは?の記事はこちらをご覧ください。

創業2年で上場、そして訪れた「離職率30%」の危機
髙橋:今や売上高8,000億円を超えるサイバーエージェントさんですが、2000年代前半には離職率が30%を超えていた時期もあったそうですね。これまでの取り組みや突破口を教えていただけますか。
曽山:当時はまさに「負の連鎖」の真っ只中でした。98年に設立し、2000年にわずか2年で上場したことで大量に資金調達を行い、その資金で一気に幹部採用を行ったことが失敗の引き金になりました。
採用したのは大企業出身の優秀な若手層でしたが、彼らにはマネジメント経験がなく、かつインターネット黎明期で知識も乏しかった。
一方で、現場にはインターネットを熟知した20代前半の若手がいた。ここで深刻な「指示のちぐはぐ」が起きました。
髙橋:現場の若手からすれば「その指示では業績が上がらない」と分かっているけれど、上司は管理しようとして怒る。そんな構図だったんですね。
曽山:そうです。指示が間違っているから言うことを聞かない。すると上司が怒り、嫌になって辞める。逆に言うことを聞けば業績が下がり、嫌になって辞める。毎年、従業員が全員入れ替わるほどの勢いで退職と入社が繰り返されていました。
採用・育成コストの流出も激しく、経営上の大きな分岐点を迎えたのが設立5年目、2003年のことでした。
離職率を改善させた、創業5年目の意思決定とMVVの最適化
髙橋:そのどん底の状況を、どうやって突破されたのでしょうか。
曽山:役員合宿を行い、改めて「ビジョンとミッション」を策定したことが最大の突破口でした。
それまでは「時価総額10兆円」と言う役員もいれば、「世界最高のマーケティング会社」と言う役員もいて、ビジョンが複数存在していたんです。これでは社員もどの役員についていけばいいか迷い、組織が縦割りになってしまいます。
そこで「21世紀を代表する会社を創る」という不変のビジョンを掲げました。これは現在も変わっていません。
髙橋:なるほど。サイバーエージェントさんは創業5年目にMVVを策定してからはずっと変えてらっしゃらないのか、それとも変えてきたのでしょうか?
曽山:はい。事業構造の転換や戦略が変わる節目で最適化しています。
例えば、パソコンからスマホに時代が切り替わった際には(ミッションステートメントに)「クリエイティブで勝負する」という言葉を入れました。
画面が小さくなる中でUIやUXにこだわり抜くために、戦略とセットでバリューを書き換えたんです。浸透して当たり前になった言葉は抜き、いま最も意識すべき軸を入れ替えていくのが我々のスタイルです。
MVVは本当に必要なのか?経営の「時短」というメリット
髙橋:経営層の中には「MVVは大事だと分かっているが、本当にパワーをかけてやるべきなのか」と疑問を持たれている方も多いです。曽山さんは、MVVの必要性をどのようにお考えでしょうか?
曽山:結論から言うと、「いらないなら、いれない」これが大前提です。
ただし、経営にとって「時間短縮(時短)」ができるという非常に重要なメリットがあります。
髙橋:それによっていわゆる意思疎通が図りやすくなるみたいなイメージですかね。
曽山:はい。目指すべき方向や大切にすべき軸がないと、一人ひとりと対話してすり合わせるために膨大な時間がかかります。
例えば、我々の「オールウェイズFRESH!」という言葉には、新しいことに挑戦するというポジティブな響きと共に、「変化を恐れる人にはうちは向きません」という裏メッセージも込められています。
合う人を惹きつけ、合わない人を遠ざけるフィルターになることで、採用や意思決定のスピードを劇的に上げることができます。経営としてスピードを上げたいなら、MVVを入れるべきです。
人事の施策に対する、現場からの抵抗感
髙橋:曽山さんが2005年に人事本部長になられてから、数々のユニークな制度を作られてきましたが、現場からの抵抗はなかったのでしょうか。
曽山:めちゃくちゃありましたよ(笑)。私が人事に就任した時期も、新規事業コンテストや公募制度を作ったものの、社員からは「そんな時間はない」「無理だ」と冷ややかな反応でした。
実は私も、良かれと思って始めた施策を「なかったことにしてください」と撤回してお詫びした経験が2、3回あります。
髙橋:曽山さんでも施策がスベることがあるんですね(笑)。ちなみに、組織を変えたい想いが空回りして施策がスベらないようにするためには、どうすればいいのでしょうか。
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