組織開発施策のメリットは、企業/従業員側の両面から考える-後編
こんにちは。ourly株式会社の組織開発(OD)チームの戸上です。
今回は、組織開発施策を検討する上で多くの方が陥りがちな罠と、そこに関する懸念をテーマとした記事後編です。
前回記事はこちら
<前編のポイント>
- 「組織開発」のステークホルダー・主体は複数いる
- なぜこの2者か
- 意外にも見落とされがち(と感じる)観点
対して、今回後編で語るのは
- どのように施策検討・設計は進められるべきか?そのコツは?
です。
以下のような流れで説明します。
Step1-まずは従業員向けのメリット(何のために協力してほしいのか)を明文化
巻き込みを行う上では、まず従業員向けのメリットを理解し、明文化してておくことが議論を発散させないために重要なステップになります。
「従業員のエンゲージメントを上げたいです」
『対象は誰でしょうか?』
「全社員です」
『優先的に着手したい対象や属性はありますか?理想の流れまたは難易度の高低どちらの観点からでも構いません』
「全社員です」
『これから全社を巻き込む施策を通して、会社の理想像に向かうためのアクションを検討するわけですが、その施策がうまくいった状態をイメージした時、どの層が鍵になりそうでしょうか?』
「特に思い当たりません」
こうした会話は、特に導入初期の会話においてままあることです。
ですが、このまま設計を開始してしまうと、実際に施策が走り出した際、受け手である従業員には当然施策の目的は伝わりづらく、発信を受け取る・リアクションするという“作業”のみが発生することになるので、まずは従業員向けのメリット、つまり“何のために協力してほしいのか”を明文化し、さらにそれを伝えることまでが最初のステップとして重要になります。
※この先は長くなってしまうので、詳細は別記事で語るとして、今回は先に進めます。
Step2-「巻き込みを段階的に行うこと」を検討の前提とする
目的の整理、従業員側のメリットの理解を経て、発信を正しく受け取ってもらえた際に与えられるメリットが明示できたとして、次に考えなければいけないのがこちらです。
最も大きな理由は、従業員の抱える業務内容や過去の経験・今の環境や状況・考えは様々で、同じ情報を同じように受け取るわけではないためです。
同じ発信をしても思った通り伝わる方とそうでない方がいるのはもちろん、伝わり方も皆異なるという前提を無視して、情報を受け取ってくれた方は皆理解・共感をしてくれたと判断するのはかなり乱暴な考えになってしまいます。
ただ、これに対する“絶対的な正解”、さらに言えば個別の企業に当てはまる“絶対的な正解”と言える指標は世の中にない以上、段階的に目的を設計して一つづつステップを登っていくような進め方がもっとも正解に近いといえるのではないでしょうか。
つまり、前述の
『優先的に着手したい対象や属性はありますか?理想の流れまたは難易度の高低どちらの観点からでも構いません』
「全社員です」
この考え方で検討を始めることだけは、まずは避けるべきでしょう。
あくまでも一例ではありますが、先に巻き込んでおくべきは以下のような属性となります。
- 企業文化に触れて日が浅く、既存社員と比較して知らない情報の多い中途入社者や若手層
- 社長や役員と比較して、日々多くの従業員と接することが多く、施策に対する姿勢がメンバーに影響を与えやすいリーダー層
Step3-巻き込みのサポートとして、企業側の「姿勢」を示す
本ステップの中で、組織開発施策の成功確率を上げるために最も重要と考えているのがこちらです。
前提として、会社からの発信や、その浸透のためのこうした取り組みは当然短期施策ではありませんし、半永久的に必要とも言えるでしょう。
その施策に対する従業員のモチベーションを向上させたいと考えるのであれば、忘れてはいけない重要なことはこの施策を企業として
- 重要と捉えている
- (半永久的に)やり切る意思がある
ということを示すことです。
具体的には、先ほどは”従業員側”メリット明文化の必要性について述べましたが、今度は”企業向け”メリットの面も開示した上で、それを承認/推奨/賞賛する意思を(できれば具体的に)表現することです。
この実例としては、
- 社長や役員、マネジメント層からの施策の背景や思いについての発信
- 表彰制度の活用
- 継続的な発信
- 発信された事柄への特にマネジメント層のリアクションや体現
- 過去に発信した内容の取り上げ
などが挙げられます。
それでも巻き込みが難しい場合には・・・
ここまで、どのように施策「検討・設計」は進められるべきか。そして最後はそこから進んで「推進」に関して書いてきましたが、様々な企業を支援している中で、これだけ大掛かりな施策ですので、種々の事情で想定通りに進まないこともあります。
例えば、業務の忙しさやその他心理的ハードル要因で、関心はあるが参加できないと考える従業員もいらっしゃいます。
もし、この期待するアクションが非常に積極的な参加という意味での「巻き込み」だとすれば、うまくいかない場合にはこのハードルを一段下げてみて「参画」を促すことをお勧めします。
- 施策意図の認知や効果についてのアンケート回答
- 施策へのリクエスト(意見/アイディア)
- インタビューを受けていただく
アンケートに関しては、施策やそれに関わる発信が始まる前や始まった直後の段階で、取得することもお勧めです。
「参画」をいただいた場合にも、それに対する承認・推奨の姿勢を示すことが重要であるため、いただいた意見を実際の企画に活かしたり、場合によっては意見・質問に対する回答を行うなどで具体的なリアクションとしてその姿勢を示すことができますし、また、複数回同種のアンケートを取得していけるようであれば、前回結果との差分から施策成果の判別にも利用ができます。
難しい課題だからこそ、施策の難しいポイントとコツの理解こそが重要です
ここまでの話を総合すると以下のようになります。
どんな企業にもこれまで時間をかけて培われてきたルールや文化が存在し、組織をより良いものにしていくための施策目的や理想とする状態は異なるため、こうした設計・推進の難易度は非常に高いものです。
だからこそ、それを支える設計の根底にはこうした難しさやコツがあるという理解が重要ではないでしょうか。
この記事がそんな気づきのきっかけとなり、そこから施策を一歩進めることに役立つことができれば幸いです。