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定着率とは?計算方法・平均や低下の原因、上げる方法を紹介

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近年、働き方改革やハラスメント問題により「働く環境」が重視される世の中に変化してきています。

「働く環境」が良いものかどうかを知るために、定着率や離職率がひとつの指標として参考にされます。定着率とは、入社した社員がその後の一定期間を経て会社に在籍している割合を示すものです。つまり、定着率が高いほど、その企業は従業員に良い環境を提供しているといえるでしょう。

当記事では、その定着率の計算方法や平均、低くなる原因・高くなる要因と具体的な改善方法などを解説します。

目次

定着率とは

 「定着率」とは、ある基準時点で在籍している社員が、その後一定期間を経てその会社に在籍している割合を示す数字です。定着率によって、社員がどれだけ会社に定着しているかがわかります。一定期間の基準としては入社後3年・5年・10年が主となって定着率が計算されます。

定着率と離職率の関係

 「定着率」と似た指標として、「離職率」があげられます。「離職率」は入社した社員が、一定期間の間にその会社を離れる割合を示す数字で、「定着率」と対の関係にあります。つまり、離職率が下がると定着率は上がり、離職率が上がると定着率は下がるということです。

 式に表すと[定着率(%)= 100 − 離職率、離職率(%)= 100 − 定着率]となります。

定着率の計算方法とは?その平均はどのくらい?

定着率の計算方法

 定着率は「入社した社員が、その後一定期間を経てその会社に在籍している割合を示す数字」のため、(%)であらわされます。その計算式は

[ 定着率 = ある基準時点で在籍している社員数 ÷ 一定期間後の在籍社員数 × 100 ] です。

 また、先述した通り定着率は離職率から算出が可能です。離職率は厚生労働省の定める計算式で

[ 離職率 = 離職者数 ÷ 1月1日現在の常用労働者数 × 100 ] となっています。

定着率は離職率の対になっているため、

[ 定着率 = 100(%) − 離職率 ] の計算式となります。

例えば、

・2023年1月1日時点の社員数が100人

・3年後、2026年1月1日時点の社員数が80人

だった場合、[ 定着率 = 100 ÷ 80 × 100 = 80% ]となります。 

平均定着率、目安

 厚生労働省の調査によると、日本全体の定着率の平均は、2022年1月1日時点で85%となっています。2010年で85.5%、2015年で85%、2020年で85.8%と推移してきているため、大体85~86%くらいであることがわかりました。(厚生労働省 令和4年雇用動向調査結果 入職と離職の推移、離職率から算出)

 また、業種・業界ごとの定着率の平均は以下の通りとなっています。

厚生労働省 令和4年雇用動向調査結果 入職と離職の推移、離職率から算出し作成

 業界別の定着率では、「宿泊業・飲食サービス業」が73.2%、「生活関連サービス業・娯楽業」が81.3%、「サービス業(他に分類されないもの)」が80.6%と低い傾向にあることがわかります。また、定着率が最も高いのは93.7%の「鉱業・採石業・砂利採取業」であり、ついで「金融業・保険業」が91.7%を記録しました。

 定着率は業界によって10%以上の差が生まれてくる場合もあるようです。よって、定着率は約80%〜90%が目安になると考えられます。

 コロナ禍による変化

 2020年から発生した新型コロナウイルスにより、感染予防の観点からあらゆる面で行動が制限され、仕事の仕方もリモートワークに変化した会社が多く存在しました。働き方が大きく変わることになりましたが定着率に変化があったかというと、実はあまり大きな変化はありませんでした。これもまた厚生労働省の調査によりますが、2020年では入職率・離職率ともに低下し、入職率が離職率を下回りました。そして2022年には再び入職率が上回り、離職率とともに以前の数値にもどりました。数字は大きく変わらなかったものの、コロナによる影響が入職・離職に及んだと考えられます。

定着率が及ぼすメリット・デメリット

採用・教育にかかるコストが変わる

 社員を採用する際には、必ず採用コスト・教育コストがかかります。その数が増えれば増えるほど、そのコストも当然大きくなっていきます。コストをかけて採用・教育をした社員が離職してしまうと、企業は新たな人材を再び採用し、教育しなくてはなりません。定着率が低く、離職者が多くいるということはそのコストを重ねる必要があります。

 しかし定着率が高く離職者が少ない場合には、そのコストを削減できる大きなメリットがあるといえます。また、定着率が高いことにより教育に割く時間や社員が仕事を覚える時間を省略できるため、業務効率をあげることにもつながるというメリットも考えられます。

外部からの評価が変わる

 記事冒頭で述べた通り、「定着率」は外部の人間が会社の労働環境を知るひとつの材料として参考にされることがあります。定着率が低く離職者が多くいる・社内の人間の入れ替わりが激しいといったことは就職を考えている人や一緒に仕事する相手企業からあまりよくない印象を持たれる原因になりかねません。

 新しく人材を集める・仕事の相手企業を探す際は、外部からいい印象を持っている会社の方が人が集まりやすく、相手企業も見つかりやすいと考えられます。定着率が高く、離職率が低いということは、良い労働環境を社員に提供している会社であるといえるでしょう。定着率が高い、労働環境が良いということは外部へのアピールポイントになるというメリットにつながります。

定着率低下の原因

仕事内容のミスマッチがある

 入社した社員が離職してしまう原因のひとつとして、「入社した会社の環境や仕事内容が自分の思っていたものと違った」という入社前後のGAPが存在することがあげられます。採用の段階で会社の外面・内面の見え方、就職者からのイメージ・実状に違いがあると、働きづらさややりたいことができないといった不満が発生しかねません。そこに視点をおかずに採用広告や説明会がおこなわれるとGAPが生じてしまいます。そういった採用の際の企業・社員の間のミスマッチは、定着率低下の原因のひとつです。

労働環境が悪い

 離職の原因を考えるとき、よく思いつくのは「労働環境が悪い」ことなのではないでしょうか。過剰な労働を強いられる、ハラスメントの被害がある、衛生的に管理されていないなど、人が働きづらいと感じる職場環境では、当然離職者は増え定着率は低くなってしまいます。有給や育児休暇などの休みが取りづらいことや、福利厚生が不十分だったり、ストレスが溜まりやすい業務ばかりだったりすることも働きづらさの要因であると考えられます。

人事評価が適切に行われていない

 離職ではなく、定着に焦点を当てたとき、長く働いている人にはその仕事に定着する何らかの要因があるはずです。ひとつあげられるのが、「働くモチベーション」です。仕事を頑張りたいと思える理由は人それぞれですが、結果を残せる・評価されることは間違いなくモチベーションを保つ要因になります。それらを目に見えて実感することができる「人事評価」が適切でない場合、仕事を頑張る理由が減ってしまいます。仕事を続けられる要因が少ないことは離職の理由になりかねないため、定着率が低くなる原因であると考えられるのです。

人間関係がうまくいっていない

 本記事ではこれまで、「働きづらい環境」が離職につながってしまうとしてきました。では、本記事で紹介する「働きやすい環境」に必要とする要素は、「良好な人間関係」です。その理由として、厚生労働省の「令和3年雇用動向調査結果の概況」調査によると、離職した人の個人的離職理由として「職場の人間関係がよくない」が男性は8.1%で1番・女性は9.6%で2番目に多い割合を占めているためです。令和2年度の調査では男性は8.8%で2番・女性は13.3%で1番目とこちらも多くの割合を占めています。この調査結果からわかるように、「人間関係」は働きやすさにおいて重要であるといえます。良い人間関係は定着率を上げるともいえるでしょう。

定着率を上げる方法

採用のミスマッチをなくす

 入社後の離職の原因として紹介したようなミスマッチをなくすことができれば、一定期間を経ても会社に在籍している人が増え、定着率を上げることができます。では、どのようにミスマッチをなくせば入社前後のGAPを感じる社員を減らせるのでしょうか。

 そのヒントは採用にあります。GAPをなくすには新入社員のイメージを実際の会社の業務・環境と一致させる必要があります。将来の社員になり得る人に対してうまく情報を開示し、会社についてよく知ってもらう採用が重要です。採用動画や広報によって会社のネガティブな一面とポジティブな一面どちらも開示して、会社について理解を深めてもらいましょう。そうすることで、入社後に感じる「悪い意味でイメージと違う」というミスマッチを減らし、定着率を上げることができます。

労働環境を整える

 「悪い労働環境」には様々な要因があります。会社の労働環境に悪いところがないか、様々な面から見直し、整えることで環境の改善が可能となります。

 良い労働環境の条件として本記事で参考にするのが、「ハーズバーグの二要因理論」です。

 「ハーズバーグの二要因理論」とは、職務満足・不満足を引き起こす要因に関する理論です。それによると、良い労働環境の条件は、「衛生要因」と「動機付け要因」の2つに分けられています。2つの内、労働環境は「衛生要因」に当てはまります。作業する環境が良いこと・会社の管理システムや状態が良いこと・給与制度が適切であることなどが良い労働環境の条件であると考えられ、これらは社員の満足を促すものではなく不満足を防止するものとされています。

 不満足の防止は離職の防止になり得るため、不満足のない労働環境を整えることが、定着率上昇の要因となります。

人事評価制度を見直す

 この記事では先ほど、「働くモチベーション」が仕事が続く要因のひとつであると紹介しました。このモチベーションも、「ハーズバーグの二要因理論」によって説明されます。

 先ほど労働環境の条件で紹介した「衛生要因」とは別で、「動機付け要因」というものがあります。それは達成する・承認される・仕事・責任・昇進・などを条件にして社員の満足を促すものとされます。それらを社員が実感できるものとして、どの会社でもおこなわれるのが人事評価です。そしてそれは、社員が満足して仕事ができる「動機付け要因」である必要があります。

 人事評価制度が適切におこなわれているか、現在の評価に社員が納得しているかを的確に調査し、改善することでモチベーションを確保することも定着率を上げる方法の一つです。

社内コミュニケーションを活性化する

 前項目「定着率低下の原因」で、離職の理由として「人間関係がよくない」が大きな割合を占めているとわかりました。よくない人間関係の例として、上司とうまくいかない・ハラスメントがある・風通しが悪いなどが考えられます。それらは個人的な相性もあるかもしれませんが、コミュニケーション不足が原因で発生することがあります。

 新型コロナウイルスの感染予防によって、リモートワークなど世の中の働き方は大きく変わり、コミュニケーションのとり方も変わりました。容易ではなくなったコミュニケーションを活性化させるには様々な施策をおこなうのが効果的です。

 コミュニケーション活性化施策は会社として取り組みやすく、社内報・フリーアドレス制度・1on1面談などが例としてあげられます。それらを積極的に導入することで、離職を防ぎ定着率を上げることができます。

現状把握から定着率向上までの流れ

現状を把握し、原因を突き止める

 自分の会社の現在の定着率と離職率を計算して、その原因を分析することで、的確な改善が可能になります。今社員が抱えている不満は何なのか、労働環境・人間関係など注視して見直しをしたり、実際に調査をしたりすることで現状を把握し、現在の定着率の原因を突き止めることができます。社員の労働に関する情報をたくさん集めるには在籍している社員だけでなく、離職した元社員の人にも離職理由をアンケートすることでより効果的な情報を収集することが可能です。

原因に対処し、改善する

 現状把握から突き止めた原因をもとに、解決するための施策をおこない改善していきます。原因は様々であるため、とりあえず効果があるといったような定番の改善策がないのが難点です。

 原因によってそれが「衛生要因」から発生しているのか、「動機付け要因」から発生しているのかを分類し、それによって改善するポイントが変わります。見直すべきところが会社の制度面なのか、環境面なのかを見極め、それに応じた施策を講じる必要があります。過去に同じ課題を抱えていた企業の事例やその原因について研究した学説などを元に解決策を考え、改善しましょう。

改善されたかを調査する

 解決・改善の施策をおこなった直後は定着率に変化はありません。定着率は3年、5年単位で計算されることが多いからです。そのため、施策の効果を知るためには施策直後実際に働いている社員を対象に調査をおこなうことが必要となります。働く環境に変化はあったか、施策に対してどう感じたかなどのアンケートをとるなどして、施策に効果があったかを確かめましょう。効果がなかったと判断できる場合は、原因の分析からやり直し、新たに改善策を練っていく必要がありますが、繰り返すうちに効果は出てくるはずです。

振り返る

 現状の把握から改善、結果の調査までをおこなった後は、振り返りをすることをおすすめします。何が原因となって社員がどのような不満を持ち、それはどのようにして改善されたのかを振り返って再認識することで、新たな不満の発生、すなわち離職率の上昇を予防することができます。新型コロナウイルスパンデミックのような、働き方が大きく変わってしまう出来事があった際でも、新たに発生する問題の予測につながるヒントを得られるかもしれません。

会社の環境は定着率にあらわれる

 冒頭に述べた通り、定着率は「入社した社員が、その後一定期間を経てその会社に在籍している割合を示す数字」です。社内の環境・制度が整っており、社員の満足度が高いと、離職者が減少し定着率も高くなります。「この会社で働いていたい」と社員が思うような環境が望ましいです。採用においても、今働いている社員の満足度が高いという点はかなりのアピールポイントになるうえ、採用した社員が定着することでさらに定着率も上がっていきます。

 自社を分析し、離職につながる要因は何なのかを突き止め、施策をもって改善する。この繰り返しによって離職者を減らし、定着率を上昇させることで会社のイメージアップだけでなく、企業としての価値を高めることが可能になるでしょう。

 社内環境の分析方法、課題改善の施策をどのようにおこなうのが効果的なのか?今回紹介したプロセスや施策をぜひ参考にしてみてください。

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