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【事例付き】エンゲージメントサーベイが形骸化する3つの理由とは?

髙橋 新平

公開日:

2026.07.02

更新日:

2026.07.02

エンゲージメントサーベイが形骸化する3つの理由と、成果を出す企業の特徴

エンゲージメントサーベイを導入したものの、「スコアがほとんど変わらない」「現場から『また面倒くさいのが来た』と思われている」という声を、組織開発や人事の現場でよく耳にします。

サーベイそのものに問題があるのではなく、運用の仕方に根本的な課題があることがほとんどです。本記事では、サーベイが形骸化する構造的な理由を整理し、成果を出している企業が実践している「機能するサーベイの3つの条件」を、具体的な事例とともに解説します。

この記事の要点

  • スコアが現場にフィードバックされないサーベイは、社員に「答えるメリットがない」と判断され、回答率が下がり形骸化する
  • サーベイを機能させるには「経営陣の本気度」「管理職の腹落ち」「改善優先順位の明確化」の3条件が揃う必要がある
  • リンクアンドモチベーション社の研究では、エンゲージメントスコアと売上・利益の成長率に相関が確認されている
  • 他社比較に意味はなく、自社の時系列でスコアの変化を追うことが重要
  • サーベイは手段にすぎない。データから示唆を得て、改善施策につなげるサイクルを回すことが本質
目次

「やらない方がマシなサーベイ」とはどんな状態か?

結論からいうと、「計測するだけで終わっているサーベイ」は実施しないほうがいいです。とある調査でも、フィードバックなしにサーベイを続けると社員への悪影響が出ることが示されています。

エンゲージメントサーベイは本来、組織の現状を把握し、改善のアクションにつなげるための手段です。ところが、実際の現場では、次のような運用パターンに陥っているケースが少なくありません。

① スコアが経営陣にしか開示されず、現場に何も伝わらない

一部の経営層にのみスコアが共有され、現場の社員にはスコアも改善への取り組みも一切知らされていない状態です。社員からすれば、「回答させられているのに、何も変わらない」という体験が蓄積されていきます。

② スコアを計測し続けているが、ずっと改善されない

毎回サーベイを実施しているものの、スコアが横ばい、もしくは微減が続いているケースです。計測にコストと工数がかかっている一方で、組織に変化をもたらせていない状態は、リソースの浪費といえます。

③ 情報開示への対応として実施しているが、経営も管理職も動かない

人的資本経営の情報開示が求められるようになった近年、上場企業を中心にエンゲージメントサーベイに取り組む企業が増えています。しかし、「計測した実績を開示する」ことが目的化し、経営陣も管理職も改善アクションを取らないまま形式的に継続しているケースがあります。

ある調査によると、サーベイへの回答後にフィードバックも改善策の共有もなされない状態が続くと、社員に「答えても何も変わらない」という感覚が定着し、回答率が下がっていきます。サーベイが形骸化する最大の原因は、「実施するだけ」という運用姿勢にあるのです。

エンゲージメントサーベイが形骸化するプロセスの図

サーベイを機能させる3つの条件とは?

サーベイを機能させるために外せない条件は3つある。経営陣の本気度、管理職の腹落ち、そして改善優先順位の明確化—この3つが揃わなければ、どれほど高機能なサーベイツールを導入しても成果にはつながりません。

機能するサーベイは、3つの条件が揃っている

条件1:経営陣が本気で取り組んでいる

組織改善の取り組みは、経営陣、とりわけ社長・役員がサーベイの目的と重要性を正しく理解し、組織改善のアクションに自らコミットしている状態が前提です。

大企業であれば事業部のトップ・部門長が、本気で取り組まなければ根本解決にはたどり着きません。「人事部に任せた」という姿勢で経営陣がサーベイを放置している組織では、どれだけ優れた施策を設計しても、組織の根本的な課題は改善されないままになります。

条件2:管理職が腹落ちして動いている

人事がどれだけ研修を実施しても、制度を整えても、社内コミュニケーションの施策を打っても、現場の管理職が変わらなければサーベイのスコアは上がりません。

「人事からいわれたからやっている」という状態の管理職が存在する限り、エンゲージメントは改善していかないのです。大切なのは、各部門の管理職がサーベイの結果を「自分事」として受け止め、自チームの改善アクションを主体的に取っている状態をつくること。管理職の日々のコミュニケーションや仕事のスタンスがスコアに直結しているだけに、この条件は特に重要です。

条件3:スコアを上げる要素の優先順位が決まっている

レーダーチャートのすべての項目を万遍なく上げようとする企業が多くありますが、これはリソースの観点から非現実的です。会社の事業フェーズや競争戦略によって、優先すべき領域は異なります。

たとえば、ミリ単位の精度が求められる製造業の部品メーカーと、ディレクター・デザイナー・エンジニアがクリエイティブに連携するスマホアプリ開発会社とでは、強化すべき組織の性質がまったく違います。「自社はやりがいを高めるべきか、働きやすさを高めるべきか」という判断が、事業・競争戦略と紐付いて決まっていることが重要です。

サーベイで成果を出す企業は何が違うのか?

成果を出している企業は、上記3つの条件を満たしたうえで、具体的な実践においても明確な違いがある。以下に3点に整理します。

経営者が離職コストを自分事として計算している

エンゲージメントサーベイを経営課題として捉えている経営者は、社員が1名離職するたびに生じるコストを具体的に試算しています。採用コスト・育成コスト・離職後の穴埋めコスト、さらには周囲の社員への影響といった定性的なコストも含めて、「組織の健全性が損なわれることのリスク」を数字と感覚の両面で自分事化しています。

また、日本の労働人口が減少局面に入っている現在、エンゲージメントが低い状態が続いた場合の中長期的なリスクを経営者が独自に試算・分析し、それを意思決定に反映できているかどうかが、サーベイを経営インフラとして機能させられるかの分水嶺です。

管理職がエンゲージメント向上のメリットを論理的に理解している

サーベイが機能している企業では、管理職がエンゲージメントを上げることによる自分自身へのメリットを、論理的にも感情的にも腹落ちしています。具体的には、「部下のエンゲージメントが上がれば自律的に動くようになる→自部署の成績が上がる→自分の評価も上がる」という一連の因果関係を、管理職が実感として持っていることが重要です。

データの裏付けとして、リンクアンドモチベーショングループの研究では、エンゲージメントスコアと売上の成長率・利益の成長率に相関が確認されています。また、エンゲージメントスコアの上昇と離職率の低下にも相関があることは複数の研究で示されており、これらのデータを活用して管理職を動機づけることが、実務上の重要なポイントになります。

従業員エンゲージメントと営業利益の相関

「何を改善すべきか」の判断基準が明確にある

サーベイで成果を出している企業は、「スコアが低い領域をすべて上げる」のではなく、「自社に本質的な競争優位をもたらす領域を優先して上げる」という考え方を持っています。

たとえば、給与・福利厚生への不満は8〜9割の企業でスコア上位に出てきます。しかし、この不満を解消しただけでは本質的なエンゲージメントは上がりません。さらに、給与・福利厚生の引き上げは直接的なコスト増加を意味するため、会社の収益構造にも影響します。

「働きがいが低い原因は、理念への共感不足なのか、現場のコミュニケーションの問題なのか、それとも社員自身がスキルへの自信を持てていないからなのか」——この原因を特定し、自社の事業戦略と照らし合わせて「この半期はこの領域のスコアを上げに行く」という優先順位を、人事・経営・現場の管理職で合意できていることが、成果への近道です。

スクロールできます
比較軸成果が出ていない企業成果を出している企業
経営陣の関与人事に丸投げ自らコミットし意思決定に反映
管理職の姿勢人事に言われたから対応自分事として自チームを改善
改善の優先順位スコアが低い箇所を全部上げようとする事業戦略から逆算して優先領域を決める
フィードバックスコアを開示するのみ改善施策・進捗を現場に共有

「他社比較」より「自社の時系列比較」が重要な理由

エンゲージメントスコアの他社比較に意味はない。重要なのは、施策を打った後に自社のスコアが改善されているかを時系列で追うことです。

製造業の部品メーカーと、スマホゲームを開発するIT企業とでは、組織に求められる性質がまったく異なります。「うちの方がスコアが高い」「うちの方が低い」という他社比較は、事業モデルや組織構造の違いを無視した比較であり、改善の示唆をほとんど与えてくれません。

製造業メーカーとアプリ開発の違い

大切なのは、「自社が今期打った施策が、狙っていた領域のスコアを改善させているか」を時系列で確認すること。他社ではなく自社の変化を追うことが、サーベイを経営インフラとして機能させる根本的な考え方です。

ourlyの支援事例|岡山イーグル株式会社様

理論を実践に落とし込んだ事例として、ourlyが支援した岡山イーグル(地方製造業)の取り組みを紹介します。

ourlyの支援事例|岡山イーグル株式会社様

同社では、サーベイ取得の前段階として、社長と総務部長それぞれに「肌感でのスコア予測値」を記入してもらいました。実際の結果が出た後、自分たちの感覚値と実際のスコアがどれほどずれていたかを最初に認識していただくことで、「自分たちが思っている以上に現場の実態は違う」という気づきを経営層に持ってもらうことができました。

その後、ourlyのコンサルタントが各領域のスコアを分解して、「ここの問題は明確に社長起因」「ここはバックオフィスの課題」「ここは事業部の管理職も巻き込んで改善する必要がある」という形で、課題の帰属先を明確にしたフィードバックを実施。管理職層へのフィードバックも合わせて行い、組織全体での改善プロジェクトが動き出しています。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

まとめ|サーベイは手段、大事なのはその先の行動

サーベイは、組織の課題を数値として可視化するための手段にすぎません。それ自体で組織は変わりません。

健康診断を毎年受けても、その結果に基づいた行動変容がなければ健康は改善されないように、エンゲージメントサーベイも「実施して終わり」では意味がない。データから示唆を得て、経営・管理職・人事が連携して改善施策を実行し、次のサーベイで成果を確認する——このサイクルを回し続けることが、サーベイを本当の経営インフラにする唯一の方法です。

サーベイを機能させる3条件

  • 経営陣がサーベイの目的と重要性を理解し、組織改善のアクションに自らコミットしている
  • 管理職がスコアを自分事として受け止め、チームの改善アクションを主体的に取っている
  • 事業戦略から逆算して、この半期・この1年で上げるべき領域の優先順位が決まっている

「サーベイのやり方を変えると、組織は変えられる」——その確信を持ったうえで、まずは自社の運用を見直すことから始めてみてください。

よくある質問(FAQ)

Q1. エンゲージメントサーベイを実施する頻度はどのくらいが適切ですか?

A. 一般的には半年〜1年に1回が標準ですが、それよりも「結果をどう使うか」の設計の方が重要です。頻度を上げても、フィードバックと改善アクションが伴わなければ社員の疲弊につながります。まずは1回のサーベイから示唆を得て施策を打ち、次のサーベイでその成果を確認するサイクルを確立することを優先してください。

Q2. 管理職が「また人事から面倒なものが来た」と感じてしまう場合、どう対処すればいいですか?

A. 管理職がサーベイを「人事のための作業」と感じているうちは、スコアは改善しません。有効なアプローチは2つあります。①エンゲージメントの向上が管理職自身の評価・チームの業績に直結することを、データを用いて論理的に伝えること。②サーベイ結果のフィードバックを、管理職が自分事として受け止めやすい形式(部署別スコア、前回比較など)で届けることです。

Q3. 給与・福利厚生のスコアが低い場合、そこから手をつけるべきですか?

A. 必ずしもそうではありません。給与・福利厚生への不満は8〜9割の企業でスコア上位に出てくる項目ですが、この不満を解消しても本質的なエンゲージメントは上がらないことがわかっています。自社の競争戦略と照らし合わせて「何を上げると組織の実行力が高まるか」を先に決め、その領域に優先的にリソースを投下することが重要です。

Q4. エンゲージメントのスコアは他社と比較した方がいいですか?

A. 比較しても意味はほとんどありません。事業モデルや組織構造が異なる他社との比較は、自社の改善施策の示唆を何も与えてくれないからです。重要なのは、施策を打った後に自社のスコアが意図した方向に動いているかを、自社の時系列で確認することです。

Q5. 人事部だけでサーベイを運用しているが、どうすれば経営者を巻き込めますか?

A. 経営者に最も響くのは「コスト」と「リスク」の言語です。「離職が1名発生するたびにかかる採用・育成・穴埋めコスト」「労働人口が減少するなかでエンゲージメントが低い組織が直面するリスク」を具体的な数字で示すことが、経営者を動かす入り口になります。また、サーベイのフィードバック会議に外部の専門家(コンサルタント)を同席させることで、経営者が結果を客観的に受け止めやすい場をつくることも有効な手法の一つです。

Q6. サーベイの設問は、どの企業でも同じものを使うべきですか?

A. 業種・事業フェーズ・組織の歴史によって、設問は変えるべきです。都心のITベンチャーと地方の製造業とでは、組織が抱える課題も、強化すべき文化も異なります。汎用的な設問セットをそのまま使うと、自社に固有の課題が見えにくくなります。事業の置かれている状況や目指す姿に合わせて、設問をカスタマイズすることが推奨されます。