コーピングとは?企業にもたらす効果や具体的な6つの施策を解説
コーピングとは、ストレスコーピングとも呼び、ストレスにうまく対処する方法を指します。
厚生労働省の調査では半数以上の人が仕事や職場を原因としたストレスを抱えていることが分かっており、企業による従業員のストレスマネジメントが求められています。
従業員にコーピングの手法を伝えることでストレス軽減に役立ててもらうだけでなく、企業がコーピングの施策を取り入れることも重要だと言えます。
そこで本記事では、コーピングが注目される背景やストレスのメカニズム、コーピングの種類、コーピングが企業にもたらす効果と具体的な6つの施策について詳しく解説します。
コーピングとは?
コーピング(またはストレスコーピング)とは、ストレスにうまく対処する方法のことを指します。
日々のストレスとうまく付き合うことが健康の秘訣であるという考えが広がり、特に要因として多く挙げられる「職場のストレス」との付き合い方が課題視されるようになりました。実際に厚生労働省の調査では働く人の約半数が職場のストレスを抱えているという結果が出ており、個人のみならず会社によるストレスマネジメントも期待されています。(※)
(※)参考:12 【個人調査】 1 仕事や職業生活における不安やストレスに関する事項
コーピングが注目される背景
コーピングが注目されるようになった背景として、ストレスチェックの義務化が挙げられます。
2015年から始まったストレスチェックは対象範囲を拡大しており、現在では労働者が50人以上在籍している事業者に実施義務が課せられるようになりました。自分のストレスに気づく従業員が増えたり、従業員のストレス状態に気を配る会社が増えたりしたことで、コーピングのニーズが高まっています。
また、前項でもお伝えした「働く人の過半数が職場でのストレスを抱えている」という現状も、コーピングニーズの高まりに寄与しています。健康的かつモチベーション高く働くため、ストレスとの付き合い方が問われているのです。
コーピングが企業にもたらす効果
では、コーピングは企業にどのような効果をもたらすのでしょうか。下記で代表的な効果を解説するので、いまいちコーピングのメリットがイメージできていない方はぜひチェックしてみましょう。
休職や離職の防止
職場でのストレスが高まりすぎると、休職・離職が起こります。
例えば、ある日突然従業員がうつ状態になり、出勤できなくなることも少なくありません。周りにとっては突然の出来事でも、本人にとってはストレスが少しずつ蓄積した結果であり、なかなか理解を得られにくいのが現状です。
また、休職とまでいかずとも、遅刻・早退・欠勤など業務に支障が出る「アブセンティーズム」が起こる可能性もあります。当然ながら休職が続くと復職が難しくなり、そのまま退職せざるを得ないケースもあるので注意しましょう。
ハラスメントの防止
部下がどんなことにストレスを抱えているか知ることにより、ハラスメントの予防効果が期待できます。「自分は指導だと思っていたことが大きなストレスになっていたなんて…」という気づきを与えることができ、職場環境が少しずつ変化するかもしれません。
また、コーピングをきっかけにハラスメント予防研修に参画する企業も多く、管理職やマネージャーの意識改革につながっています。わかっているつもりでなかなか行動を変えられない分野だからこそ、学びの場を提供するのもひとつの施策として有効です。
従業員のモチベーション向上
ストレスフリーな職場であることは、それだけで従業員のモチベーション向上に貢献します。「快適な環境で働けている」「上司や同僚がおおむね協力的である」というポジティブなイメージを持つことができ、エンゲージメントも高まります。
また、組織に対する心理的安全性が向上するので意見やアイディアを発信しやすくなり、思わぬイノベーションが起きるかもしれません。モチベーションだけでなく生産性が上がることも多いので、コーピングが有効だとわかります。
組織のパフォーマンス低下の防止
慢性的なストレスが蓄積していると、遅刻・早退・欠勤などの「アブセンティーズム」の一歩手前である「プレゼンティーズム」が起きるかもしれません。
プレゼンティーズムとは、慢性的な体調不良を抱えている状態のことを指します。頭痛・肩こり・腰痛・寝不足など慢性的な症状から、二日酔い・発熱・花粉症による鼻詰まりなど一過性もしくは季節性の症状までさまざまです。
体調不良が起きていると、頭がぼーっとして業務に集中できないことも多いでしょう。原因がストレスであることも多く、パフォーマンスが低下することもあります。コーピングは、プレゼンティーズムから脱却しパフォーマンスを発揮するための施策にもなるのです。
ストレスのメカニズム
ここでは、ストレスのメカニズムを解説します。ストレスを受けてからの要素ごとに細分化しながら紹介するので、重篤な症状が出ないうちに対処しましょう。
ストレッサー
ストレッサーとは「ストレスの原因」を指す言葉であり、主に下記3つに分かれます。
- 生理的ストレッサー(睡眠不足・空腹・慢性的な頭痛など)
- 物理・化学的ストレッサー(猛暑の屋外での業務・エアコンの温度など)
- 心理・社会的ストレッサー(職場いじめ・ハラスメントなど)
「職場のストレス」と言われて最もイメージしやすいのは、「心理・社会的ストレッサー」ではないでしょうか。職場いじめやハラスメント以外にも、悪口・陰口・営業成績など過度な成果争い・出世争い・社内派閥などさまざまな要因が挙げられます。
認知
認知とは、その名の通りストレスの原因に本人が気づくことを指します。ストレスをストレスとして認知することでより嫌な気持ちが膨れ上がったり、逃避したくなったりすることもあります。
また、気づかないうちにストレスが溜まってしまうこともあるので要注意です。寝つきが悪い・食欲が出ない・湿疹が出る、などいつの間にか症状が出ていることもあります。
ストレス反応
ストレス反応とは、ストレスが原因で生じる諸症状のことです。前述したような、寝つきが悪い・食欲が出ない・湿疹が出るということもストレス反応のひとつです。
他にも、心理的な反応として慢性的な不安感・焦燥感に襲われることもあります。反対に怒りっぽく暴力的な性格になったり、かと思えば布団から出れなくなって涙が止まらなくなったりするケースも確認されています。
症状は人により千差万別であり、「ストレスが加わると必ずこの症状が出る」と言い切れないのがストレス反応の難しいポイントでもあります。
コーピングの種類
ここでは、職場のストレスに対して実行できるコーピングを紹介します。個人でできることもあれば会社全体でできることもあるので、「何から手をつけるべきかわからない」という方は参考にしてみましょう。
問題焦点型コーピング|ストレッサーの対処法
問題焦点型コーピングは、ストレッサーへの対処法として有効です。ストレスの原因をシャットダウンする方法なので、根本的な解決ができます。
例えば、ハラスメント当事者を異動させて環境を変え、職場での人間関係を改善する方法が挙げられます。また、人員を増やして過度な残業・休日出勤を抑制したり、DX化を進めて無駄な残業をカットしたりするのも効果的です。
他に、「社会的探索支援型コーピング」も問題焦点型コーピングに含まれます。根本解決はひとりでできないことも多いので、上司や先輩社員など周りに相談し、支援を求める方法です。
情動焦点型コーピング|認知へのアプローチ
情動焦点型コーピングは、認知へのアプローチとして効果的です。ストレスの受け止め方を変える方法であり、見方次第ではストレスをストレスとして認知しなくて済むようになります。
例えば、厳しいノルマや責任の重い仕事を任されたとき、「プレッシャーに感じる」「失敗したらどうしよう」と心配してしまうとストレスを実感します。一方、「会社から期待されている」「この壁を乗り越えたら給料が上がるかも」とポジティブな受け取り方ができれば、ストレスを良い緊張感に変えることができるでしょう。
人にストレスを吐き出してすっきりしたり、紙に書き出して思考を整理したりするのも情動焦点型コーピングのひとつです。
ストレス解消型コーピング|ストレス反応の対処法
ストレス解消型コーピングは、ストレス反応への対処法として効果的です。ストレスはストレスとして受け止めつつ、上手く解消することでストレスとの付き合い方を模索します。
例えば、会社でのストレスをプライベートの趣味で発散したり、残業による寝不足が起きたときに翌日9時間寝たり、といった方法が挙げられます。ストレスの原因を根本的に解消するのは難しいものの、ひとりでできるコーピングでもあり、導入までの障壁が低めです。
適度な運動・アロマ・マッサージ・ヨガなどリラックスできる環境に身を置くことも、ストレス解消型コーピングとして有効です。
企業にコーピングを取り入れる際の6つの施策
コーピングは個人だけが実施するものではなく、企業によるサポートも推奨されています。福利厚生やセルフケア支援の一環として導入している企業も増えているので、具体的な施策例を探っていきましょう。
1. コーピングリストの作成
コーピングリストとは、ストレスの軽減・解消に有効な手法をまとめたリストです。ストレスの原因に応じて対処法がわかるので、「どうすればいいかわからない」と悩む従業員を支援できます。
可能な限り、コーピングリストは自社文化にマッチするようアレンジしながら作成しましょう。例えば「休日が少ない」というストレスに対し、人事部・労務管理部の連絡先や有給届へのリンクを付与しておくことで、気軽に相談・申請できる環境が整います。
オンライン上でのコーピングリストであればリンク付与やワンクリックでのメール送信などの機能を追加できるので、検討してみましょう。
2. メンター制度を導入する
メンター制度とは、先輩社員と後輩社員とでペアを組み、業務内外のさまざまな困りごとをフォローアップする制度のことです。主に新入社員や若手社員のサポートに特化した制度であり、先輩社員は後輩社員のモチベーション向上・ストレス軽減などを目的に相談に当たります。
メンターとなるのは、後輩社員から見て年が近い・地元や出身校が同じ・プライベートの過ごし方や趣味が一緒、など何かしら共通点のある人が望ましいでしょう。何気ない愚痴もこぼしやすくなり、心理的安全性が高まります。
3. 1on1を定期的に行う
1on1とは、上司と部下が短時間かつ高頻度に実施する個人面談のことです。日々の業務における悩み・相談を受け付けることはもちろん、ストレスへの対処法などを個別に指導できます。
1on1の場で話すことは人により自由に変えられるので、場合によってはキャリア相談や営業成績に関する話題になることもあるでしょう。一方で、業務の話をほとんどせずプライベートの話のみに終始することもあり、時間の使い方は自由です。
4. オフィスの環境を整える
オフィスの環境を整えて、身体的・精神的な負担を和らげる方法です。
例えば、エアコンの点検をして快適な温度環境のなかで働けるようにしたり、定期的な掃除をして埃や汚れが舞わないよう配慮したりする方法があります。机と机の間隔を開けて通行しやすくする、音を遮断できる集中スペースを用意する、などの方法もよいでしょう。
なかには社食を用意して気軽に食事できるようにするなど、福利厚生の一環としている会社もあります。オリジナリティのある施策にすれば、従業員からの注目も集まりそうです。
5. 講座や研修を開く
コーピングやストレスマネジメントに関する講座・研修を開催し、まずは基本知識を学ぶことも大切です。場合によっては専門家や外部講師を招いて講演してもらうなど、プロの力を頼ってもよいでしょう。
目から鱗なストレス対処法がわかれば、「今日からやってみよう」と前向きな気持ちを呼び起こせるかもしれません。また、自覚のないハラスメントに気づかせるなど、新たな発見を与える場としても有効です。
6. 専門家による心理カウンセリングを実施する
専門家による心理カウンセリングを実施し、社内の人には相談しづらいことを相談したり専門的な知見からアドバイスをもらったりする方法もあります。ストレスチェック後の産業医面談だけでなく、任意のタイミングでいつでも気軽に受けられるカウンセリングを提供してもよいでしょう。
近年は健康経営施策の一環として、福利厚生に心理カウンセリングを追加している企業が増えています。スマホから予約できるサービスなども始まっているので、検討してみてはいかがでしょうか。
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コーピングを取り入れて従業員のパフォーマンス向上を
職場での重篤なストレスは、休職・離職・パフォーマンスの低下・モチベーションの低下などさまざまなデメリットを引き起こします。個人のセルフケアに頼るだけでなく、会社からも積極的にコーピングを推奨していきましょう。
自社の取り組み内容が決まったら、社内報で広く通達するのがおすすめです。対象の従業員・利用方法・申請の有無などをしっかり伝え、社内文化として根付かせることが大切です。