フィードバックとは?意味や目的、効率的な5つの方法と9つの注意点を解説
フィードバックとは、意見や評価を含む何かしらに対する口頭や文章による「反応」を指します。
具体的には、社内で上司から部下に対する改善や誉め言葉などが挙げられます。フィードバックを効果的に行うには、その種類と方法を理解する必要があります。
また、方法論だけでなく、フィードバックをする人される人同士の心理的安全性も考慮しないといけません。
本記事ではフィードバックの2種類と効果的だと言われている方法及び9つの注意点を紹介します。
フィードバックとは?
フィードバックとは「反応」を示す言葉で、「評価」や「意見」というニュアンスで用いられることもあります。
ビジネスシーンで使われる際には、主に部下の行動(仕事)に対して上司の側から、なんらかの改善点や評価を伝え、必要な軌道修正をおこなうことを指します。
具体的にフィードバックがおこなわれる場面は、人事評価の結果を受けた面談や、日常的な1on1ミーティングなどが多いでしょう。
そこで話される内容は、人事評価の根拠や理由、目標に対する進捗や結果の相互確認、仕事の進め方に対する意見やアドバイスが主なものになります。
フィードバックする意味・目的
フィードバックの目的は、ひとまず「正すこと」「軌道修正」にあるといえます。
部下の行動や仕事への姿勢、担当業務の成果などについて、上司の視点で課題や改善点を伝えます。
上司による客観的な指摘は、部下本人も自覚していない課題や改善点の「気づき」を与えることになるでしょう。
信頼関係に基づくフィードバックがなされる場合、部下の多くは上司からのフィードバックを参考に、自身の仕事に修正や微調整を繰り返すようになります。
そうすることで、部下のパフォーマンスは向上し、高い成果を生み出す人材へと成長していくのです。フィードバックの本当の目的は「部下の成長を促すこと」にあるといえるでしょう。
フィードバックの効果
フィードバックの目的は部下に気づきを与え、成長を促すことにあります。
信頼関係に基づいた適切なフィードバックは、部下の成長にどのような効果をもたらすのでしょうか。
具体的には以下の4点が挙げられます。
目標達成に繋がる
フィードバックには、部下の仕事の精度を向上させる効果があります。
成長を促すような難易度の高い目標を設定した場合、部下の多くは試行錯誤を繰り返し、さまざまな工夫を凝らして仕事を進めるでしょう。
しかし、ときには間違った方向に進むことも考えられます。
そのようなときに、上司が客観的な視点でフィードバックすれば、部下は無駄な回り道をせずに済みます。
その結果、目標達成の確率とスピードは格段に上がるでしょう。
仕事のパフォーマンスが向上し、組織全体の生産性向上に貢献するようになるのです。
モチベーション高まる
フィードバックは、部下のモチベーション向上にも効果を発揮します。
上司からタイムリーなフィードバックがあると、部下は「この上司は自分の仕事ぶりをいつも見てくれている」と感じ、エンゲージメントを向上させます。
こうした良好な関係性のもとでは、部下はより難易度の高い目標にも臆することなくチャレンジするでしょう。
高い目標をクリアし成功体験を重ねることで、部下は自己効力感を高めていきます。
自身の成長を実感し、仕事に対するモチベーションを高め続ける良い循環が生まれるのです。
人材の育成になる
人材育成の観点から見たフィードバックの効果は、部下自身に「内省」の習慣が身につくことが挙げられるでしょう。
「内省」とは「リフレクション」とも呼ばれ、自身の行動や状態を客観的に振り返ることを指します。
フィードバックを重ねることで、部下のなかに「今の自分をあの人(上司)はどう思うか」という視点が形成され、常に自身を客観視する習慣が身につきます。
内省は、客観性に基づいた自分なりの判断スキルを形成し、自律性を高めることにつながるのです。
信頼関係が高まる
1on1ミーティングなどで定期的なフィードバックをおこなうことにより、コミュニケーションの総量が増加します。
濃密なコミュニケーションは上司と部下の関係性を向上させ、信頼関係を高めることにつながります。
こうした環境は、従業員同士の関係性の向上にも波及し、会社全体の雰囲気を温かみのあるものにしてくれるのではないでしょうか。
信頼関係が高まることは従業員のエンゲージメントを高め、より良い企業風土を醸成する大切な要素となるでしょう。
「言わぬが花」ではいけない。コンカー代表が語るフィードバックの重要性と可能性
ourly Mag.では『みんなのフィードバック大全』(光文社)の著者であり、株式会社コンカー 代表取締役社長の三村 真宗(みむら まさむね)さんにインタビュー。フィードバックの重要性や、社内でフィードバック文化を醸成するための取り組みについてお話しを伺いました。
ぜひご覧ください。
フィードバックの2種類
フィードバックには、大別して「ポジティブフィードバック」と「ネガティブフィードバック」という2つの方向性があります。
切り口は真逆の手法ですが、次のステップへ導き、本人の成長を促す点は共通しています。
相手や状況によって使い分けることが望ましいようです。
ポジティブフィードバック
ポジティブフィードバックは、相手を肯定し前向きな表現を用いておこなうフィードバックの手法です。
相手の行動や仕事内容の良い点を挙げ、肯定的かつ前向きな表現を用いて評価・賞賛します。「褒めて伸ばす」手法ともいえるでしょう。
相手は褒められることにより、前向きなモチベーションで次の仕事に臨むようになります。
承認欲求が満たされ自己肯定感が高まるため、自信をつけさせたいときに用いると良い手法です。
しかし、現状に満足し努力を止めてしまうことがないように、気をつけなくてはなりません。褒めながらも改善点や次につながるアドバイスは、課題として伝える必要があります。
ネガディブフィードバック
ネガティブフィードバックは、あえて厳しいことを伝える手法です。
相手の問題点や改善すべき点を、多少厳しい表現を用いてでも明確に伝え、成長を促します。
相手が現状維持に甘んじている場合や、能力の高い部下が力を発揮しきれていないときにとられることが多い手法です。
相手によっては精神的ダメージを受ける場合もあるので、語気や伝え方などは十分に注意する必要があります。
感情的にならず、あくまで冷静に「あなたのためを思って厳しいことを言っている」という姿勢が伝わらなくてはなりません。十分な信頼関係が構築された状態で、用いることが望ましい手法といえるでしょう。
フィードバックを効果的に行う5つの方法
フィードバックには理論に基づいた、いくつかの型が存在します。
部下をもつ立場になった場合、これらの方法を理解し身につけておくことで、効果的なフィードバックがおこなえるでしょう。
ここでは代表的な5つの方法を紹介します。
SBI型
SBI型は、3つの単語の頭文字をとったフィードバック方法です。
- Situation(状況)
- Behavior(行動)
- Impact(影響)
この「SBI」の順番でフィードバックをおこなうと、相手に理解してもらいやすくなるというものです。
そのときの「状況」を頭に思い浮かべてもらい、対象者がとった「行動」を事実として伝えます。
そしてその行動が、自分や周囲にどのような「影響」をもたらしたのかを説明します。
順序だてた説明となるため対象者の理解を得やすく、次に類似した状況になった際に適切な行動がとれるようになるでしょう。
FEED型
FEED型も単語の頭文字をとったフィードバック方法で、基本的なフレームワークとして知られています。
- Fact(相手のとった行動)
- Example(その行動を指摘する理由)
- Effect(その行動による影響)
- Different(代替案や改善策)
対象者がとった行動を事実として指摘し、指摘する理由とその行動による影響、次はどのように行動すれば良いか、順序立てて説明します。
フィードバック内容が、一連の流れで詳しく説明できる点が特徴です
どのように行動して欲しいかまで具体的に伝えるため、対象者の行動変容を促せる利点があります。
KPT型
KPT型は「振り返り」によりおこなうフィードバックで、次に挙げる3つの単語の順番で対象者に改善点を伝える手法です。
- Keep(今後も続けるべき良い点)
- Problem(抱えている問題点や課題)
- Try(改善すべきこと)
会話によるコミュニケーションのなかで、これまでの業務行動を振り返りながら、上記項目の要素を対象者に考えてもらいます。
それぞれの項目において、対象者が言葉にすることで頭のなかが整理され、最後の「Try」が導き出されます。自発的な行動変容につながる点が特徴です。
ペンドルトンルール型
ペンドルトンルール型は、心理学者のペンドルトン氏が考案した手法でKPT型と同様、会話により対象者自身に解決策を導き出してもらう手法です。
まず、何について話すのかお互いの認識を確認し、良かった点を伝えます。「さらに良くするためにはどうすれば良かったか?」といった問いかけをして、対象者自身が改善策に気づくように促していきます。
一方的に伝えられるのではなく、自身の内省から改善策を導き出すため、高い納得度が得られる点が特徴です。
モチベーション向上にも作用し、対象者の主体性を引き出す手法といえます。
サンドイッチ型
サンドイッチ型とは、ポジティブフィードバックの間にネガティブフィードバックを挟んで伝える手法です。
「褒める」→「改善点を指摘する」→「褒める」といった具合に交互に伝えます。
改善点を指摘された対象者の気持ちをネガティブにせず、モチベーションの低下を最小限に食い止めることに配慮したテクニックです。
構造がシンプルなため実践しやすく、コミュニケーションの質を向上させるのに役立ちます。一度身につけてしまえば部下指導だけでなく、日常生活のあらゆる場面で使える手法です。
フィードバックを効果的に行う9つの注意点
ここではフィードバックを効果的におこなうための注意点を解説します。
フィードバックは、対象者の成長を願う姿勢が前提になければ効果を発揮しないばかりか、信頼関係にも悪い影響を及ぼします。
以下、9つの注意点を意識すると良いでしょう
具体的に話す
フィードバックの内容は可能な限り「曖昧さ」を排除し、具体性を意識する必要があります。
例えば「あなたの仕事の進め方は効率が悪いように感じる」というように、話す内容が抽象的であった場合、対象者は改善策を具体的にイメージできません。
「昨日の〇〇作業、時間がかかっていたようですが、今の半分の時間で仕上げてくれると助かる」と具体的に話すようにします。
自身の問題点を明確に把握できるため、対象者は改善策を実行しやすくなるでしょう。
客観的な判断に基づいて行なう
フィードバックでは、客観的な事実に基づいた判断を伝える必要があります。
客観性を欠いた判断によるフィードバックは、内容が曖昧になり、目的とのズレが生じやすくなります。
また感情が先行したフィードバックは、ときに対象者の人格を否定するような表現になりがちです。
フィードバックが受け入れられないばかりか、信頼関係にまで悪影響を及ぼすでしょう。特に、対象者にとって耳の痛い指摘をしなくてはならない場面で注意が必要です。
目標と関連づける
フィードバックは、目標との関連づけを意識しておこないます。
目標達成した状態を「あるべき姿」とした場合、「あるべき姿」と「現状」のギャップを確認してもらいます。そして、そのギャップを埋めるために「何をすべきか」改善策を考えてもらうと良いでしょう。
目標との関連づけはフィードバックの基本です。曖昧さを排除するために注意したいポイントです。
タイムリーを意識する
行動から時間がたっておこなわれたフィードバックには、効果が期待できません。
記憶が曖昧になっていることも多く、対象者も指摘に対する実感が伴わないフィードバックになってしまいます。場合によっては「そう思っていたなら、なぜそのとき言ってくれなかったのか」、といった反発につながる恐れもあります。
フィードバックは、可能な限りタイムリーさを意識しておこないましょう。普段のコミュニケーションのなかで、その都度実施できると理想的です。
行動にフィードバックする
フィードバックにおいて避けなくてはならない失敗に、対象者の「人格」や「性格」に言及してしまうことが挙げられます。
人格や性格は簡単に変えられるものではなく、対象者は自分という存在そのものを否定された気持ちになってしまいます。
フィードバックの対象は、あくまで「相手の行動」に限定しなくてはなりません。性格や人格は簡単には変えられませんが、行動なら意識すれば変えられます。
フィードバックに納得することで意識が変わり、行動も改善していくのではないでしょうか。
実現可能なフィードバックをする
フィードバックの内容が、机上の空論や極端な理想論に終始した場合、対象者に改善の意欲が沸かないばかりか、反発を招く恐れもあります。
「現実が見えていない人だ」と対象者に感じさせてしまうと、その後のフィードバックにも説得力を失うでしょう。
フィードバックは、対象者が今よりも努力をすることで実現できる内容にしなければ、具体的な改善行動にはつながりません。
また、相手によって実現可能なレベルが違うことも、理解しておく必要があります。
本人が理解・納得してるか確認する
一方的に考えを押し付けられた場合、多くの人は不満や反発心を募らせます。
フィードバックでは、必ず相手が話の内容を理解し、納得したかを確認するプロセスを設けましょう。もし相手が納得していなければ、質問や反論があるはずです。
そこでの対話で相手の気持ちを汲み取り、どのような解決策がベストか考えてもらうと良いでしょう。自身が選択した解決策は実施の意欲も高くなります。
フィードバックに必要なのは一方的な押し付けではなく、コミュニケーションにより相互の納得を引き出すことではないでしょうか。
場面や伝え方に気をつける
フィードバックは、少なからず対象者に緊張感を与えてしまうため、実施する場面や伝え方には一定の配慮が必要です。
特にネガティブフィードバックをする場面では、相手は「叱られている」と感じ、萎縮してしまうことも考えられます。高圧的な伝え方は止め、サンドイッチ型を用いるなど、相手の負荷を軽減することも必要です。
また、フィードバックをおこなう場所にも配慮が必要です。他者の目がない一対一になれる場所が望ましく、相手が話しやすいような座席配置の工夫があると良いでしょう。
心理的に安全な関係性を築く
効果的なフィードバックに欠かせないのが、心理的に安全な関係性です。
心理的安全性が確保されていることで、対象者は過度なストレスを感じることなくフィードバックを受け入れます。
そのためには、対象者と普段からのコミュニケーションで、信頼関係を築いておかなくてはなりません。人は信頼している人の話は素直に聞くものです。
信頼関係を前提にした心理的安全性は、成長を促すフィードバックに欠かせない要素であるといえます。
フィードバックを行いやすい関係をつくる ourly profile
ourly profile(アワリープロフィール)は、個人のプロフィール機能や組織図機能などにより、組織のサイロ化を解消する社内コラボレーション創出ツールです。
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フィードバックは効果的に
フィードバックの目的は、対象者の成長を促すことにあります。
効果的な実施には、相手に対する配慮を忘れず、正しい手法を用いることが不可欠です。
そして、フィードバックにもっとも大切なことは「普段のコミュニケーションで培われた信頼関係」であることを忘れてはいけません。
フィードバックをおこなう立場の管理職には、こうした点を十分に理解してもらう必要があります。
社内研修や社内報による啓蒙は、多くの企業が取り組むべき課題といえるでしょう。