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組織活性化のカギは労働時間の20%にあった!働きがいのある会社のつくり方

大人気クラフトビール「よなよなエール」を製造・販売する株式会社ヤッホーブルーイングは、働きがいのある会社としても知られています。GPTWジャパンが発表した2024年版日本における「働きがいのある会社ランキング」の中規模部門(従業員数100〜999人)で9位にランクイン。2017年から8年連続でベストカンパニーに選出されました。

今回はヤッホーブルーイング人事総務部・ユニットディレクターの長岡 知之様に、働きがいのある会社をつくるための取り組みについてお話を伺いました。

※日本における「働きがいのある会社」ランキング…Great Place to Work® Institute Japanが発表しているランキング制度。同社では働きがいに関する調査の結果が一定水準を超えた企業を「働きがい認定企業」、さらにその上位企業を「働きがいのある会社」ランキングとして発表しています。2024年版は653社が参加しています。

長岡 知之さん

長岡 知之
(ながおか ともゆき)

インタビュイー

株式会社ヤッホーブルーイング
人事総務部 ユニットディレクター

長野県出身。日本大学生物資源化科学部を卒業後、星野リゾートに入社。人事総務を経験後、2009年にヤッホーブルーイングへ入社。ファンイベントの企画開発、営業事務、物流に従事し2016年より現職。人事労務総務全般を中心としたバックオフィス業務を行い、チームビルディングや働きがいのある会社づくりに注力している。キャリアコンサルタントの資格も持つ。プライベートでは2児の父で、趣味はゴルフ。

インタビュアー

2019年よりフリーランスライター・編集者・Webメディアディレクターとして活動。前職ではベンチャー企業のメディア事業部に在籍し、Webマガジンの副編集長としてWebメディアの運営・企画やライターマネジメントに従事。

現在は、ourly magazine編集部にてコンテンツ企画やインタビュー、ライティングを担当している。

目次

15年前は活気がなく「お通夜」のような雰囲気だった

──ヤッホーブルーイングは働きがいのある会社をつくるために、さまざまな取り組みを実施していると聞いています。まずは、会社として働きがいを高めることに注力した背景を教えてください。

最近はありがたいことに、働きがいがあって活気があふれている会社として評価いただくことが多くなりましたが、もともとは今とは全く逆の雰囲気の会社でした。私が入社した15年前は「朝礼がお通夜みたいですね」と言われるほど、活気がなかったんです。

私たちが商材としているビールは、人を幸せにする飲み物だと思っています。しかし、そもそも自分たちが楽しく仕事をしていなければ、お客様に幸せをお届けできるはずがありません。なので、仕事を楽しくできるような働きがいのある会社をつくることが大切だと考えました。

──働きがいのある会社にするために、どのような取り組みを行ったのでしょうか?

まず、大きな方針としては2つあります。1つ目が経営理念の浸透です。社員全員が経営理念を自分ごととして捉えられるように、経営理念の定着に努めました。今では、仕事をするなかで迷ったときには、経営理念が判断の軸になっています。

2つ目がチームビルディング研修の実施です。一人のスタープレーヤーに依存するのではなく、チームで成果を最大化させることに注力しようと決めました。それぞれのよさを引き出しながら、足りないところは補完し合う。そんなチームにするために、チームビルディング研修を行いました。

経営理念の理解と実践を愚直に進めることが重要

──経営理念の浸透について詳しく聞かせてください。経営理念自体は以前からあったのですか?

経営理念はあってないようなものでした。額縁に入れて壁に飾ってあるだけの状態というか。

経営理念は壁に飾ってあるだけでは浸透しません。社員全員の共通の価値基準にするために、社長の井手が耳にタコができるほどしつこく伝え続けてきました。

具体的には、各自の業務開始前に行っている朝会の時間の大半を使って、井手が経営理念に関する説明を繰り返し行ったんです。単に文言を覚えてもらうだけでなく、どのような背景で経営理念が生まれたのかといった深いところまで理解してもらえるように何度も何度も説明しました。もうこれは気合と根性の世界です(笑)。

また、浸透というと「浸透圧」に連想される圧力を感じてしまうと思うので、私たちは経営理念の浸透ではなく「理解と実践」と表現しています。

──社長が根気強く説明することで、経営理念の理解と実践は進んだのでしょうか?

時間はかかりましたが、経営理念の理解と実践は着実に進んでいると感じています。他の人に説明できるレベルまで経営理念を深く理解する社員が増えたことで、先輩社員が新入社員に教える流れもできていきました。

経営理念の理解と実践が進んでいることを示す象徴的な出来事がありました。入社2年目の社員たちが「経営理念が生まれた背景を寸劇にしていいですか?」と提案してくれたんです。彼らは自分たちでポスターをつくって、朝会で15分の寸劇を披露してくれました。

このように、トップダウンで経営理念を発信するだけでなく、ボトムアップの動きが出てきたのはうれしかったですね。経営理念をみんなで理解して実践していこうという空気が生まれてきています。

──チームビルディング研修は具体的にどのような内容なのか、教えてください。

「チームビルディングとは、こういうものだ」ということを体感してもらう研修になっています。体感型なので一言では説明しにくいのですが、みんなで共通の目標を持って取り組むと、大きな力が出ることが実感できるプログラムです。

研修は1年に1回実施され、参加志望者が参加する形式です。10人以内の少人数でじっくりとチームづくりに励んでもらいます。

私自身、入社直後に1期生としてチームビルディング研修に参加したのですが、研修開始から3年ほどで社内の雰囲気の変化を感じました。研修を受けた社員たちがそれぞれの現場で目の色を変えて働くようになり、成果を出す。その様子を見て、多くの社員がチームビルディングの重要性を認識していったんです。

部門横断型プロジェクトで組織を活性化

──働きがいのある会社をつくるために「経営理念の浸透」と「チームビルディング研修の実施」の2つの方針を掲げたというお話を伺いました。そのほかに取り組んだ具体的な施策はありますか?

代表的な取り組みの1つが、長野県佐久市にあるヤッホーブルーイングの醸造所で行われる「よなよなエール 大人の醸造所見学ツアー」です。参加者のみなさんに、普段ブルワー(醸造士)が働いている生の現場に潜入していただくプログラムです。

出典:大人の醸造所見学ツアー2023 | よなよなエール公式ウェブサイト「よなよなの里」

クラフトビールの原材料について説明を受けたり、実際にビールを製造する様子を見学したり、クラフトビールをテイスティングしたりしていただきます。コロナ禍でしばらく中断されていたのですが2023年夏、4年ぶりに再開しました。

ありがたいことに「よなよなエール」にはたくさんのファンの方々がついてくださっています。ですので、当初はファンのみなさんに喜んでいただくためのファンイベントとして企画したものだったんです。しかし実際にイベントを開催してみると、ファンのみなさんが喜ぶ様子を見ることができ、むしろ私たちがエネルギーをもらう場であることに気付いたんです。

ヤッホーブルーイングのミッション「ビールに味を!人生に幸せを!」を体現するイベントで、私たち自身が働く意義を感じられる機会になっています。

──「よなよなエール 大人の醸造所見学ツアー」が社員のみなさんにとって、働きがいを感じられる場になっているのですね。

そうなんです。1つ付け加えると、普段の業務とは別の「プロジェクト」として実施していることも大きなポイントだと思っています。

所属部門に関係なく、希望者が見学ツアーのスタッフをしているんです。スタッフ全員が自ら「やりたい!」と手を挙げたメンバーなので、モチベーションが高い人が集まるわけです。

──なるほど。部門横断型のプロジェクトであることがポイントなのですね。

おっしゃる通りです。普段と違う仕事をすることで、スキルアップのチャンスにもなりますし、普段と違う人とコミュニケーションを取ることで、チームビルディングが加速します。

ヤッホーブルーイングでは、労働時間の2割をプロジェクトに割くことを奨励しています。2024年5月下旬に5年ぶりの開催となる「よなよなエールの超宴」も部門横断のプロジェクトなので、社員がどのように成長するのか楽しみですね。

「働きがい」を会社の競争力に

──最後に、これからの課題を教えてください。

おかげさまで「働きがいのある会社ランキング」でベストカンパニーに選出いただきましたが、まだまだ現状には満足していません。自己主張がうまくできていないといった課題もあると認識しています。

課題解決に向けては、大きな打ち手を講じるよりも、今の取り組みを愚直に続けることが重要だと思っています。現在、社員は226名ですが、これからさらに会社が大きくなるにつれて、チームビルディングの難易度はどんどん上がっていくでしょう。

一つひとつの施策の質を高めていき「働きがい」を会社の競争力にしていけるように頑張っていきたいです。

interview / Design:Sachi Kagayama
Write:Koji Okamura
Photo:株式会社ヤッホーブルーイング

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