社内広報とは?目的や役割、発信すべき内容、ツール例を解説!
「広報」といえば社外向けの情報発信・関係構築が連想されやすいですが、社内向けに行う広報「社内広報」も大切な広報活動です。
特に近年は、転職の一般化やリモートワークの普及で、情報共有の難易度・重要度が高まっています。
本記事の前半では、社内広報の目的や役割、発信したい情報の内容、実際の成功事例を解説いたします。また後半には、役職としての社内広報について、仕事内容やおすすめのツールを具体的に解説していきます。
この一冊で社内報のすべてがわかる
ノウハウや事例を一冊にまとめた、
完全ガイドブックです。
- 目的、KPI設計
- ネタ100選
- 紙からwebへの切り替え方、事例
- 書き方、インタビューのコツ
社内広報とは?
社内広報とは、社内向けの広報活動を意味します。社内情報を扱う広報活動全般を指す場合もあります。
社内広報は従業員の目線を合わせるための活動です。企業理念やMVVの浸透、従業員のモチベーション向上、コミュニケーション活性化などが目的・効果として挙げられます。
使用する媒体は、社内報や社内SNS、社内イントラなどで、紙とwebの両者を駆使して行われます。
弊メディアでは、「プロフェッショナル広報の仕事術―経営者の想いと覚悟を引き出す」著者の高場正能さんに、社内広報という仕事に関するインタビューを行っています。全文は以下の記事(4度の上場を経験した広報のプロに、広報の本質を聞いた)をご覧ください。
社内広報に力を入れるべき理由
皆さんご存知のとおり、日本では少子高齢化や終身雇用制度の崩壊が進んでいます。こうした変化は、労働市場における売り手市場化や、転職の一般化として表れています。
ここで重要となるのが、従業員の会社への定着と貢献(=従業員エンゲージメント)です。
もちろん、新しい人材をどう採用するのかを工夫することは重要です。一方、採用難の時代である今、既存社員の定着やモチベーションアップへの取り組みに力を入れる重要性が高まっています。
その1つの方法として社内広報があります。社内広報は、情報共有を通して、従業員エンゲージメントに影響を与え、会社を安定させる重要な役割として注目されているのです。
社外広報との違い
社内広報と社外広報は、情報発信の対象者、目的、手段などが大きく異なります。
社外広報は顧客やメディアなど外部ステークホルダーを対象に、認知度向上やブランドイメージ強化を目指します。
一方、社内広報は従業員やその家族など社内関係者に向けて行われ、企業理念や経営方針の浸透、情報共有、エンゲージメント向上などを目的とします。
情報発信方法も異なり、社外広報はプレスリリースやイベント、社内広報は社内報やSNSなどを活用することが多いです。
社内広報の目的
会社ごとに社内広報を行う目的はさまざまですが、ここでは主要な目的6つに絞り、それぞれ解説いたします。
それぞれの目的は、組織にもたらされるメリットとも捉えることもできるでしょう。
- 企業理念や経営方針の浸透
- 企業文化、風土の醸成
- 社内コミュニケーションの促進
- 従業員エンゲージメント向上
- 従業員の離職率低下
- 企業価値向上
(1)企業理念や経営方針の浸透
社内広報を行う主要な目的として、企業理念やMVV、経営方針の浸透があげられます。
例えば社内報を活用して、経営層から企業理念や経営方針に関連したメッセージを発信してもらいます。
これにより、経営層と接点の少ない従業員も、その会社で働く意義を再確認することができます。定期的に経営層のメッセージを届け続けることで、最終的には企業理念やMVV、経営方針の浸透を実現することができるでしょう。
※社内広報に限らず、経営理念の浸透にはさまざまな手段があります。詳しくは以下の記事をご覧ください。
(2)企業文化・風土の醸成
企業文化や風土の醸成を目的として社内広報を活用することもできます。
そもそも企業文化とは、会社の経営理念や創業者・経営者の想いから作られる価値観です。
企業文化・風土が醸成している企業は、会社全体で意思決定に統一感があり、社外からも1ブランドとして見られます。スターバックスをイメージするとわかりやすいでしょう。
醸成方法として、創業者・経営者インタビューとその発信が挙げられます。
創業の動機や創業時の社内状況、今後の事業展望、現在に通ずる確固たる想いなどを伝えてもらうことで、独自の企業文化・風土が生まれるでしょう。
企業文化・風土については、こちらの記事をご覧ください。
(3)社内コミュニケーションの促進
社内広報は、使用するツール次第で、従業員や部署間のコミュニケーションを活発にできます。
使用するツールは、社内SNSやWeb社内報がおすすめです。社内SNSであれば、気軽に双方向のコミュニケーションをとることができ、Web社内報であれば社員や他部署への理解が深められます。
どちらのツールにおいても、社内広報が起点となって、コミュニケーションを活性化させることができるのです。
(4)従業員エンゲージメント向上
従業員エンゲージメント向上を目的として社内広報を活用するパターンもあります。
例えば、企業理念や企業文化を浸透・醸成させることで、従業員は会社に対して、信頼感や安心感、やりがいを感じやすくなります。また、ツールを用いた社内コミュニケーションの活性化は、働きやすい社内環境の形成につながります。
このように、ここまで解説してきた目的・メリットが、副次的に従業員のエンゲージメント向上に作用するのです。
従業員エンゲージメントについての詳細はこちらをご覧ください。
(5)従業員の離職率低下
日本の離職理由の上位に「会社の将来に不安を感じた」があります。こうした不安は経営者との距離感の遠さや、経営理念の共有が充分でないことが原因として考えられます。
また、若手社員は慣れない仕事への不安から、社内環境にストレスを感じることも多いでしょう。
社内広報には、社内の風通しを改善し、働きやすい環境を作る効果があります。社員が少しでもその会社にいたいと思えるような環境作りを、社内広報で実践できます。
(6)企業価値向上
⑴〜⑸の実現は同時に、従業員の愛社精神につながります。
愛社精神は、会社の業績向上や、従業員による自主的な企業情報の発信などを通して、企業価値に好影響を与えるでしょう。
つまり社内向けに行う情報発信の活動であった「社内広報」が社外に対しても良い影響を与えるという、正の連鎖を生み出すことができます。
社内広報の目標設定のポイント
社内広報の役割は、情報共有を通して、従業員エンゲージメントに影響を与えることです。これは、会社の情報開示によって、従業員との結びつきを強めることとも言い換えられるでしょう。
このような重要な役割を果たしているにも関わらず、社内広報の成果は分かりづらいため優先順位を後回しにしている企業は少なくありません。
つまり、社内広報の運用を有用なものにするだけでなく、モチベーションを継続するためにも目標設定は非常に重要なカギを握ります。
目標設定をする際のポイントを2つ紹介します。
Goalから逆算してKPIを設定する
目標設定と聞くと、「まずKPIを設定し、数値管理できるようにしなければ」と考える方もいるかもしれません。
KPIの設定はもちろん大切ですが、そのKPIが機能していなければ自己満足に終わってしまいます。適切なKPIを設定するため、社内広報で達成したい最終目標を決める必要があります。
最終目標が決まったら、それを達成できる指標を決め、KGI(数値目標)を設定します。KGIを決めたら、KGIと現状のギャップの原因を分析し、KPI(数値目標)を設定する、という順番です。
「最終的に達成したゴール」を設定し、逆算して数値目標を設定することが重要です。
目標をコントロールできる数値にする
数値目標を設定する際、自社だけでコントロールできる指標にすることが重要です。自社だけでコントロールできないもの(景気動向や政治的な動向など)を指標にすると、目標の達成または未達成の原因が外的環境に大きく左右されます。したがって、社内広報の運用がうまくいかず、最終目標を達成できないということになります。
そのため、自社でコントロールできる数値を目標に設定する必要があります。
社内広報で発信するべき内容
社内SNSや社内報を使って、とにかく社内の情報を収集します。
また、時には、社外の情報を収集することも必要です。競合相手の動向や、はたまた会社が取材を受けたことなど、必要に応じて情報を収集します。
ここからは、社内広報で実際に発信したい情報を紹介します。
各部署の日報・月報の情報
日報や月報を見ることで各部署がどんな仕事を、どれくらいしているのかが分かります。
数字で成果を把握し、気になる部署を見つけましょう。また、成果の出ている部署を公開し称賛して、従業員のやる気を刺激することもできます。
各部署の紹介・取材
部署間のコミュニケーション活性化はなかなか難しいとされるのは、他部署の仕事内容や人となりを知らないからです。
成果を上げている部署や、目立たない部署などを取材して、インナーコミュニケーションの活性化を図りましょう。
部署間連携に関してはこちらの記事でも紹介しています。
管理職・リーダーへのインタビュー
管理職と部下とでは、どうしても距離感が離れていたり、コミュニケーションの機会が少なかったりします。
そこで管理職の方だからわかる視点や考え方を取材し、共有しましょう。たとえ部署が違っていたり、役職が違おうと、仕事を行う上で普遍的な学びを得られる貴重な情報となるはずです。
社内イベントの開催レポート
イベントの様子を写真や動画とともに社内に発信しましょう。参加できなかった社員も、イベントの話をしやすくなったり、次回の参加率が高まるなどの効果があるでしょう。
また、社内イベントでコミュニケーションを積極的にとり、様々な情報を集めましょう。
ここで1つ注意点として、社内広報を行う目的を忘れないことが大切です。どんな目的のために、どんな情報が必要なのかを明確にしてからイベントに参加しましょう。プライベートの話だけで終わってはもったいないですよね。
社内広報の事例
最後に社内広報の成功事例を6社紹介します。特に、社内報やイントラネット、メールマガジンの導入にクローズアップしました。
また、弊メディア「ourly mag.」では、インナーコミュニケーションの成功企業にインタビューを行なってきました。社内広報が組織改善に寄与した企業事例も紹介しています。ここでは3人の広報担当者へのインタビューをピックアップしました。ぜひこちらもご覧ください。
カルビー株式会社
カルビーは、紙の社内報とweb社内報(イントラネット版)を導入しています。社内報企画コンクール「社内報アワード」の受賞歴もあり、社内広報のお手本となる企業でしょう。
ここで注目したいポイントは、2種類の社内広報の強みを、上手に活かしている点です。紙の社内報は、紙面でしっかりと読ませ、社内コミュニケーションを活性化させています。一方でwebは、速報性を重視した情報の発信を行っています。
(引用:Calbee,「創刊45年の社内報が全国コンペティションで5部門の賞を受賞 情報共有や、ナレッジマネジメント、モチベーション向上などの広報施策に 速報性や検索性で冊子とイントラネットを使い分け活用」,<https://www.calbee.co.jp/newsrelease/151002.php>,2022年10月閲覧)
サントリーグループ
サントリーグループでは、環境意識向上のための環境教育を行うために、社内イントラネットや社内報、eラーニングを活用しています。
社内イントラネットでは、環境に関する基礎知識や事業に関わる環境関連法規、社内ガイドラインなどを共有したり、社内報では、サントリーグループの最新の環境活動や情報を紹介し、従業員だけでなく、その家族への啓発にも役立てているそうです。
(引用:SUNTORY,「従業員への環境教育」,〈https://www.suntory.co.jp/company/csr/activity/environment/management/education/〉,2022年1月閲覧)
株式会社リクルートライフスタイル
リクルートライフスタイルは、メールマガジン型の社内報を導入しています。2017年にはweb社内報アワードの受賞歴があります。
特徴として、頻度の高いメール配信と具体的なKPIの設定が挙げられます。KPIについては、メールマガジンのため第1にメールの開封率、第2に【6つの指標】の達成度合いを設定しています。【6つの指標】には社内広報を行う目的が挙げられています。こうした目的の明確化によって、社内広報を成功させることができるのでしょう。
(引用:社内報ナビ, 事例紹介,〈https://shanaiho-navi.jp/archives/3866/〉,2022年1月閲覧)
社内広報の具体的な仕事内容
ここからは、社内広報の具体的な仕事内容を紹介します。本記事では以下6つの仕事に分けて、それぞれ詳しく解説いたします。
- 社内報の運用
- 社内SNSでの情報共有
- イントラネットでの情報共有
- メルマガの配信
- 取材の対応
社内報・社内メディアの運用
1つ目の広報活動は、社内報・社内メディアの運用です。
社内報は社内広報における最も有効な手段であり、上記で紹介した目的の全てに影響を与えます。その中でも特に社内報が効果を発揮するのは、企業理念やビジョンの共有・浸透と企業文化・風土の醸成、コミュニケーションの促進です。
経営層に企業理念や経営理念、自身のイメージしているビジョンに関連したメッセージを掲載してもらうことで理念浸透、文化醸成は進みます。また、従業員が面白がれるコンテンツを用意することで、社員間のコミュニケーションを活性化させることもできるでしょう。
制作や運用の方法など、社内報に関して網羅的にこちらの記事で解説しています。
社内SNSでの情報共有
社内SNSは、日々会社で共有されている多種多様な情報を共有するツールとして用いられることが増えています。SlackやChatwork、Line Worksなどが代表的です。
社内SNSを運用することも、社内広報担当の役割のひとつです。運用と言っても、メインは社内広報独自の情報を共有する仕事になります。
伝えるべき情報を端的にタイムリーに共有していきます。社内広報は、事業部が複数あったり、従業員数の多い会社において特に、全社的な情報の共有を通じた組織の目線合わせの役割を担うこととなるでしょう。
イントラネットでの情報共有
3つ目の広報活動は、イントラネットを用いた情報共有です。
イントラネットとは、企業など1つの組織内のみで使われるネットワークのことです。電子掲示板と呼ばれたりしています。インターネットと同じく、情報の蓄積や共有に便利です。
社内SNSで共有するべき情報と比較すると、イントラネットでは、中長期的に重要度の高い情報を掲載します。具体的には、会社の規則や組織図、社内報の蓄積などです。
社内向けメルマガの配信
4つ目の広報活動は、社内に流すメールマガジンです。
社内向けメルマガは、配信するコンテンツの内容に合わせた部署のアサインで、簡単に運用できます。
また配信の簡易性から、例えば社内イベントの告知や、オフィスの工事予定などの全社連絡も、メルマガを通して速やかに行うことができます。
ただ、発信する情報の種類が社内SNSと近くなりがちなため注意が必要です。初めから、活用方法のすみ分けをはっきりと定めておくか、どちらか一方のツールを使うと効率的でしょう。
社内イベントの開催・運営
5つ目の広報活動は、社内イベントです。
そもそも社内イベントは、単に従業員同士の交流を図るラフなイベントから、社内の従業員に対して何か企業情報を周知させたり、理念やビジョンの共有するような広報色の強いイベントまで多様です。
社内広報担当は、特に後者のイベント開催時に、主催者と協力して社内イベントを行うことが必要です。
これはアドバイスですが、社内イベント当日の様子を忘れずに記録しましょう。イベント後に社内報を通してその様子を発信することで、新たな社内コミュニケーションのネタとして提示することができます。
社内広報におすすめのツール・サービス5選
社内広報の実施と継続をサポートしてくれる、頼もしいサービスを5つ紹介します。
サービスの種類としては、web社内報、紙社内報、社内イントラ、社内メルマガの4種類です。
ourly(アワリー)
ourlyは株式会社ビットエーが提供する、組織改善に特化した全く新しいweb社内報サービスです。
web知識が一切不要で、誰でも簡単に投稿できるだけでなく、他のweb社内報よりも豊富な分析機能が特徴的です。
またourlyは、web社内報としてだけでなく組織課題を可視化するツールとして活用できることが魅力的なツールとなっています。
ourlyの特徴
- SNSのように気軽にコメントできる仕様で、社内のコミュニケーション活性化を実現
- web知識が一切不要で簡単に投稿できる
- 豊富な支援体制で社内報の運用工数を削減できる
- 分析機能に特化しており、属性・グループごとにメッセージの浸透度がわかる
- 組織課題や情報発信後の改善度合いを可視化することができる
とった特徴があるため、「従業員にメッセージが伝わっているかわからない」や「web社内報を活用して組織改善したい」という方におすすめのweb社内報ツールです。
SITE PUBLIS
SITE PUBLISでは、社内報クラウドサービスTSUTAERUを提供しています。
Web社内報の運用に特化したサービスで、高いコストパフォーマンスや充実した機能が特徴的です。
詳しく知りたい方は公式Webページをご覧ください。
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その他web社内報サービスを比較・検討したい方は、こちらのサービス比較記事をご覧ください。
ヤマノ印刷
ヤマノ印刷では紙社内報の企画や発行を行うサービスを提供しています。
コンテンツの企画立案や取材、写真撮影など発行までに必要な仕事をになってくれるサポート体制が魅力的です。
詳しく知りたい方は公式Webページをご覧ください。
https://www.yamano-prt.jp/item/public.html
lumapps
lumappsは社内イントラネットを提供するサービスです。
Gsuiteやslackなどと連携可能で、モバイル版もあることから汎用性の高いイントラネットになっています。
詳しく知りたい方は公式Webページをご覧ください。
https://www.lumapps.com/ja/connect-your-organization-empower-your-employees/
blastmail
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さまざまな業種への導入実績をもち、配信だけでなく効果測定のツールも搭載されています。
詳しく知りたい方は公式Webページをご覧ください。
https://blastmail.jp/
社内広報は重要な経営課題
これから社会は人材がより流動的になり、従業員エンゲージメントへの注目がさらに高まります。社内広報は、そうした社会の変化に対して有効に働く可能性を持っています。
社内広報には6つものメリットがあります。成功のポイントは、根気強くPDCAを回し続けることです。
社内広報で従業員エンゲージメント向上を実現しましょう。
閲覧ありがとうございました。この記事が会社経営の手助けになれば幸いです。