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人から逃げない。カルチャーデザインの手綱を経営陣が握るべき理由

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近年、組織づくりの一環としてミッション・ビジョン・バリューなどカルチャーの言語化、浸透に力を入れる企業が増えています。しかしカルチャーの定義は曖昧なもので、組織によっても色が異なります。

そこで今回は『企業文化をデザインする』の著者であり、株式会社ラントリップ 取締役の冨田 憲二(とみた けんじ)さんにインタビュー。企業カルチャーの定義や、カルチャーデザイン・浸透を目指すうえで重要な考え方についてお話しを伺いしました。

冨田さん

冨田 憲二
(とみた けんじ)

インタビュイー

株式会社ラントリップ 取締役

2006年、東京農工大学 機械システム工学部卒業。新卒でUSENへ入社し、モバイル系コンテンツ事業に携わったのちVOYAGE GROUP(旧ECナビ)にてgenesixを創業。多数のスマートフォンアプリを手がける。その後、創業期のスマートニュースに8番目の社員としてジョインし、グロース、マーケティング、セールスを中心として立ち上げたのち、同社初の専任の人事として組織を国内外に200名まで成長させる。現在は、株式会社ラントリップの取締役としてサービスのグロースとカルチャーの普及に取り組みつつ、複数社のスタートアップで人事・カルチャーのアドバイザーにも従事している。

インタビュアー

2019年よりフリーランスライター・編集者・Webメディアディレクターとして活動。前職ではベンチャー企業のメディア事業部に在籍し、Webマガジンの副編集長としてWebメディアの運営・企画やライターマネジメントに従事。

現在は、ourly magazine編集部にてコンテンツ企画やインタビュー、ライティングを担当している。

目次

その会社の生き方、生き様こそがカルチャーである

──今回出版された『企業文化をデザインする』では、「企業カルチャーは経営戦略に並ぶほど重要だ」と言及されています。また、ご自身のnoteなどで、日ごろからカルチャーデザインや浸透の重要性を発信されていますが、これからの時代にカルチャーデザインが必要だと考える理由を教えてください。

これまでの日本社会では、「数字を上げて結果を出せば売り上げが伸びる。会社の業績がよければ給与が増える。お金をたくさん持っていると幸せである」という、金融資本主義に基づく価値観を持つ人が多かったと思います。

しかしいまの日本において、この考え方はだんだんと変化しています。環境問題や働く人のモチベーションなど、時代背景の変化にともなって金融資本主義の考え方、価値観をもつビジネスパーソンは少なくなってきました。現代のビジネスパーソンが大切にしているのは、「自分自身の生き方・生き様」です。

──自分自身の生き方、生き様。

100人に「自分の生き方・生き様は大切ですか? 」と聞けば、きっと99人が「大切です」と答えると思います。結局のところ会社は人で成り立っていますから、現代のビジネスパーソンが大切にする生き方・生き様にマッチしていない企業は選ばれない。つまり個人が生き方・生き様を大切にする時代ならば、会社も生き方・生き様を大切にしていく必要があります。

そして私は、その会社の生き方・生き様こそがカルチャーだと定義しています。

個人としての生き方・生き様と、会社としての生き方・生き様がマッチしていると、カルチャーフィットが生まれ、お互いに幸せに、成長できる組織が生まれる。このような理由から私はいまの時代こそ、カルチャーデザインが重要だと考えています。

カルチャーに正解はない。大切なのは内省すること

──シンプルな質問になってしまいますが、そもそも良いカルチャー、悪いカルチャーの定義って何なのでしょうか?

カルチャーの良し悪しの定義には、いろんな視点があります。「共通の視点で、良いカルチャー、悪いカルチャーを定義することは不可能」というのが、1つの重要な解です。それは時と場合、コンテクストによって異なるためです。

「企業文化と事業戦略との整合性」という視点であれば、書籍にも出てくるサイバーエージェントの例がわかりやすいと思います。サイバーエージェントの事業戦略は、簡単にいうと「成長産業で打席に立ち続けること」です。成長産業のなかで、9回空振りでも1回ホームランを当てれば事業が大きく成長できる。そのために彼らは、若くて素直で優秀な新卒採用に力を入れています。そして、若くて優秀な人たちがモチベーション高く働くためのカルチャーを、意図的に作っているんです。

勝ち続けるという視点での良いカルチャーとは、「事業戦略との整合性があるカルチャー」なんですね。成長産業で打席に立ち続けるという事業戦略に対して、石橋を叩いて渡るカルチャーでは、勝ち続けることは不可能ですから。

──たしかに、そうですよね! 

でも個々人にとっての良いカルチャー、悪いカルチャーはまた視点が違います。例えば、ドライでもいいから組織の人全員が優秀で、成果主義で、ハイプレッシャーな組織のほうが成長できるという人にとっては、その性質にマッチした企業カルチャーが良いカルチャーになるわけです。対して、チームで助け合い、支え合いながら働きたい人からすれば、ドライな組織は悪いカルチャーになる。

人にも会社にも、それぞれ価値観があり、ものさしがある。組織の成長もそれぞれ定義が異なるので、結局どのようなものさしを当てるかによって、カルチャーの良し悪しは変わってくるというのが答えです。

大切なのは内省すること。我々はどう生きたいのか、どこに向かいたいのかを内省し、考え続けることが、カルチャーデザインの第一歩です。

カルチャーは作るものではなく、すでにそこにあるもの

──今までのお話しを伺っていると、カルチャーは一朝一夕でできるものではなく、時間をかけて作っていくべきものなんだと感じました。

実は違うんです。みなさん誤解しがちですが、カルチャーはゼロイチで作るものではありません。人が2人以上集まれば、その組織、チームとしてのカルチャーはもうそこにあります。月日が経って、さまざまな失敗・成功を繰り返し、組織が学習しながら、すでにあるカルチャーがだんだんとアップデートされていく。目に見えないカルチャーが、たしかにそこにあるんです。

その目に見えないカルチャーをどう目に見えるものにするかというアプローチが、最近着目されているミッション・ビジョン・バリューの明文化です。

──イチから作るのではなく、目に見えないカルチャーを可視化することからはじまるんですね!

カルチャーを可視化すれば、手触りを感じられ、評価とも紐づけられますし、ポータブルになります。でも注意すべきは、ミッション・ビジョン・バリューなどで明文化されたカルチャーが、すべてではないということです。あくまでも表層部分、氷山の一角であり、目に見えないカルチャーはその下にも深く広がっています。

またカルチャーは動的なので、いま制定したカルチャーが1年後もまったく同じかと言われるとそうではありません。もちろん制定したミッション・ビジョン・バリューを日々体現して、組織全体がブレないようにすることは重要ですが、時代背景や会社の戦略が変化すれば、カルチャーも変化していくのは当たり前のこと。会社の状況に応じて、日々アップデートしていくことも重要なんです。

アップデートを怠り、可視化されたカルチャーと、目に見えない実際のカルチャーにずれが生じれば、組織はたちまちダメになっていきます。

──なぜ、ダメになっていくのでしょうか?

人のやる気がなくなってしまうからです。今回の書籍では「やる気」の話もたくさん盛り込んでいますが、結局組織のエネルギーって人のやる気なんですよね。そして組織において人のやる気を左右するのは、エンプロイーエクスペリエンスといわれる従業員の体験。その従業員の体験を決めるのが「期待値」です。

ここでいう期待値とは2つの意味を持ちます。「私はこういう業務で会社に貢献したい」「この会社を通じて、こういうふうに成長したい」という従業員からの会社に対する期待値と、「この会社でこういうふうに活躍してほしい」「こういった成果を残してほしい」という会社からの従業員に対する期待値です。

この期待値がお互いにすりあっていると、従業員の体験が向上し、やる気が出る。この期待値はカルチャーに紐付くものなので、ここがずれていってしまうと、組織はダメになってしまうわけです。

──具体的な事例はありますか?

創業期のメンバーが、組織の成長後にいわゆる古株となって、新しく入った社員とギスギスしてしまうケースがありますよね。それは結局、創業期からいるメンバーの期待値が昔のカルチャーのままになってしまっていることが原因です。会社の期待値と、創業期からいるメンバーの期待値がズレてしまっている。

変わること自体が悪いのではなく、「うちのカルチャーは変わったよ」と言えていないことが、この問題を引き起こしてしまう要因です。

──変わったことを、きちんと会社から伝えていかなければいけないんですね。

そうですね。人って単純ではないので、時間をかけて、丁寧に言葉を交わす。対話をしていくことが非常に重要です。コミュニケーションはコストと言われますが、コミュニケーションは投資なんです 。

人と人のコミュニケーションが重要だということは誰もが理解している。だったら、会社と人とのコミュニケーションもないがしろにされてはいけないのは当たり前です。コミュニケーションは、労力がかかっても、面倒くさくても、地道にやっていかなければいけないポイントだと思いますね。

経営陣がコアにならなければカルチャーデザインは失敗する

──すべての組織に共通して、カルチャーデザイン・浸透するうえで意識すべきことはあるのでしょうか。

上位レイヤーのメンバーが、自社のカルチャーを体現し続けることですね。カルチャーを幹部とコアメンバー日々体現していれば、おのずとボトムはついてきます。

──たしかに、経営陣などがカルチャーを1ミリも体現していなければ、それを見ている従業員も体現しようとは思わないですね。

そうなんです。つまり経営戦略と並ぶほど重要なカルチャーデザインに取り組むのであれば、コアになるべき人はもう決まっているんですよね。また、会社のなかにはカルチャーを体現しながら働いている従業員が必ず何人かいるはずです。そういった人たちを巻き込んでいくことも重要ですね。

経営陣がコアになって取り組んでいかなければ、カルチャーデザインは99%失敗します。

──最後に、カルチャーデザインに力を入れたいと考えているビジネスパーソンへメッセージをお願いします!

人から逃げないことが、カルチャーデザインにおける最重要事項です。

組織づくりやカルチャーデザインって、本当に難易度が高いものなんです。同じことの繰り返しになりますが、人には自分のものさしがあり、自分のものさしで他人は測れません。そんな多種多様な人たちが集まって組織がつくられるわけですから、理解できない側面がたくさんあるのは当然で、上手くいかないのは当たり前なんです。

だからこそ、人から逃げない。組織を作り上げている人にしっかりと目を向けて、必要なこと、すべきことを考え続けることを忘れないでください。

今回のインタビューでハッとさせられたのは「カルチャーはゼロから作るものではない。そこにあるものだ」という言葉です。どのような組織にもたしかにカルチャーはそこにあって、その場にいる人たちに認識されている。そのカルチャーを可視化し、言語化し、浸透させていくこと、そして変わりゆく時代、組織に応じてアップデートが必要なことに気付かされた方は多いのではないでしょうか。私自身もourlyという組織で、人から逃げず、向き合い、カルチャーを体現していきたいと感じました。

企業文化をデザインする』のなかには、有名企業のカルチャーデザイン事例も多く掲載されています。気になる方は、ぜひ読んでみてください。(ライター・加賀山)

Interview / Write / Design:Sachi Kagayama
Edit:Nozomu Iino

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