組織づくりに正解はない。コンサル企業が取り組む、現場で伝わり共鳴するインナーコミュニケーション
ドライなイメージがあるコンサルティング企業。そんなイメージとは裏腹に、“おせっかい文化”が根づき、ウェットで泥臭い組織づくりに取り組む株式会社リブ・コンサルティング。「“100年後の世界を良くする会社”を増やす」ことをミッションに掲げ、11ある「LiB Mind」をバリューに据えています。
今回は、CHROの武山 慎吾さんに、ミッション・ビジョン・バリューの浸透施策と、その根底にある考えを熱く語っていただきました。
バリュー体現者を「マインドマイスター」に。社員がバリューを伝える場をつくる
──バリュー「LiB Mind」は11個あります。それだけあると、浸透させるのが大変だと思いますが、どのような施策をされているのですか。
制度面では半年に一度、11個のLiB Mindに基づいてコンサルティングを実践できているか評価しています。
評価するということは、できている点・できていない点に対して、上司や周囲からフィードバックをもらえるということ。つまり、できていない部分が可視化されるので、次の半期にできていない部分を埋めるためすべきことを、次の半期目標として考えるサイクルが生まれます。この仕組みが、バリュー浸透の大きな助けになっていると思います。
それに加えて、表彰制度ですね。当社のコンサルティングはメンバーを年次等に応じて複数カテゴリーに分けていて、月に1度、カテゴリーごとにチームやコンサルタントを表彰しています。
表彰の基準はもちろん業績が土台になりますが、当社のバリューをどれだけ体現できているかも含めて評価し選出しています。表彰チームや表彰者を見れば、「確かに日頃からバリューのこの部分に強いよね」「この部分を大事にしているよね」と分かりますし、表彰スピーチからは、バリューを大事にして仕事をしているからこそ成果を出せることが、自然と伝わってくるんです。
バリューに基づいた評価と、それを伝える場があることが非常に重要だと思っています。
──しっかりとバリューに基づいた評価をされているんですね。その他にバリューを浸透させるための施策はありますか。
あとは「マインドプロジェクト」というものがあります。
もともとは価値基準を可視化し、11個のLiB Mindにまとめ上げるためのプロジェクトとして、創業数年経ったタイミングで立ち上がりました。LiB Mindをまとめて、行動に落とし込んでいくための施策を色々と行ってきたのですが、コロナ禍でリモートワークになるなど環境の変化もあり、2年ほど止まっていました。
そんななかでも新入社員は増え、LiB Mindの真の意図への理解が浅くなっている感覚があったんです。そこで、2023年6月からLiB Mind浸透のテコ入れをするべく、マインドプロジェクトを再開しました。入社1〜3年目の若手社員100名ほどを対象に、月に1度、LiB Mindを1つずつ取り上げて勉強及び実践をしていきます。
当社では、各マインドを深く理解し実践している、まさにロールモデルとなる社員を「マインドマイスター」に認定しています。毎月、彼らの講話と質疑応答で各マインドの理解を深めたうえで、そのマインドに関連する目標を自ら立てて実践する。そしてトレーナーや上司とともにPDCAを回していきます。
同時に、若手社員5〜6名でチームを作っているので、そこで目標や実践を通しての学びを共有します。チームメンバーへの共有は、習慣化のペースメーカーのようになっていますね。
──ロールモデルとなる社員をマインドマイスターに認定しているのは、とても面白い取り組みですね!
マイスターは、マインドごとに1〜2名程度。経営陣も含めて多角的に評価し、「この人こそふさわしい!」という社員が選ばれています。実はLiB Mindの11個目に「5つの成果」という項目があるんです。ある意味、10個の集大成でもあり、これを実践するのは最も難しく、この項目のマインドマイスターはいまだに欠番なんです。
成し遂げたいことを熱く語り合う「産業課題解決セッション」
──ここまでバリューであるLiB Mindの浸透についてお話いただきました。ミッションやビジョンの浸透のために取り組まれていることがあれば、教えていただけますか。
社内でも比較的大きい住宅・不動産業界に特化したコンサルティンググループでは、「産業課題解決セッション」というものを行っています。
日々のクライアントワークでも、その産業や世の中の課題を解決するための方法を考えていますが、どうしても限界や制約がありますよね。それらの制約を取り払ったうえで、住宅・不動産業界にはどのような課題があるのか、どうやったら解決できるのか、もしリブ・コンサルティングとしてアプローチするならどのようなアプローチができるのかなどを、みんなで議論するんです。
そこで考えたことすべてがビジネスにつながるわけではありません。しかし仲間とアイデアを出し合い、熱く議論し合うことがモチベーションの向上につながりますし、自分のキャリアビジョンや成し遂げたいことを共有し合い、共鳴できる仲間がいることで「こんな夢や目標を語ってもいいんだ」と感じ取ってくれます。そのように、成し遂げたいことを熱く語ることが、ひいては我々のミッションである「“100年後の世界を良くする会社”を増やす」につながっていくのではと考えています。
まだ住宅・不動産業界のグループでしか実践できていませんが、いずれ全社やその他の事業部でも取り組めたらと思っています。
ドライな印象のコンサルティング企業でも、青臭く、泥臭い組織づくり
──現場発信で始まった取り組みなどはありますか。
他の企業でも行っていると思いますが、サークル活動とオフィスでの飲み会ですね。
コロナ禍でリモートワークが増え、やはりコミュニケーション量が減っていましたし、仕事以外でのコミュニケーションの場があったほうがいいとの話が持ち上がり、サークル活動を始めました。今あるのはゴルフやサッカー、テニス、料理、ダンス等のサークル、あと変わりダネとしては「馬」のサークルです。乗馬や競馬、そして馬肉を食べるといった、馬に関連する活動を幅広く行っています(笑)。
趣味でつながるサークル活動から、意外な人間関係やコミュニケーションが生まれ、会社に対するエンゲージメントが上がる場面が出てきました。それを受けて会社側も制度として認め、一定の条件を満たすと補助金を出すようになりました。
飲み会とは、月に1度、全社集会がある日の夜に開催するオフィスバー「リブ de ないと」という取り組みです。食事や飲み物を用意し、ゲーム大会も開いています。ゲーム大会の企画は、若手同士の絆を深めてもらうため、新卒・中途問わず入社年次の浅い社員に担当してもらっていますね。
毎回、社長も参加していますし、予算を取ってゲーム大会のちょっとしたプレゼントも用意してもらい、カジュアルに盛り上がっています。
──コンサルティング企業にはドライな印象を持っていましたが、ある意味とてもウェットに泥臭く組織づくりをされているんですね。
当社はかなり青臭く、泥臭いと思います(笑)。
でも組織づくりには「これをやればいい」という正解はないですし、人間は飽きっぽい生き物だからこそ、同時多発的に手を変え品を変え、色々な取り組みをしていくことが大事だと思いますね。そしてボトムアップで良さそうな活動があったら、会社としても推していく。そういう姿勢で取り組んでいます。
仕事もウェルビーイングも、どちらも達成できる環境づくりが今後の目標
──今後取り組みたいことはありますか?
職業上の自己実現だけでなく、仕事の枠を超えた人生目標の達成、家族や親戚、地域社会と関わるなかで生まれる幸福、いわゆるウェルビーイングが実現できるように、会社として環境づくりをしていきたいと考えています。
実は入社時、”おせっかい文化”が根付いていることが少し意外だったんです。例えば、夜遅くに若手社員がポツンと残っていると、「手伝えることある?」などと絶対に誰かが声をかけるんですよね。リモートワークで直接顔を合わさなくても、日報の文面から変化を感じ取ったらご飯に誘ったり、悩んでいる様子だったら必ず助けるんです。
そんな文化が根付いている組織だからこそ、全社員の人生まるごとを大事にしていきたい。
やはりコンサルタントはハードワークなので、現状どうしても家族などと過ごす時間とのトレードオフが生じているのは事実です。もちろんお客さんである経営者は命かけて事業に向き合っているので、それに応えるためのハードワークは、時には必要です。
ですが、そういったなかでも休むときには休むなど、心身の健康を守っていく意識を持つことが、結果的に仕事のパフォーマンスを上げることにつながっていく。その意識付けをしていくことが、これからの当社には求められていると考えています。
「仕事か、ウェルビーイングか」の二者択一ではなく、どちらも実現する。人生をまるごと大事にする感覚は、コンサルタントとしての器を深くすることにもつながるはずですから。
ですから当社としては今後、その意識付けをしていくためのサポートや環境づくりをしていきたいですね。
Interview:Shimpei Takahashi
Write:Etsu Kitamori
Edit / Design:Sachi Kagayama
Photo:Kenta Nakanishi