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社会構成主義とは?企業がアプローチすべき理由や実践ポイントを解説

社会構成主義とは、人間が認知するからこそ、世界のさまざまな人や物、事象が存在するという考え方を指します。人種や民族といったカテゴリに重きを置く「本質主義」とは反対の概念として、社会学の分野で提唱されました。現在は、物事を多面的に観察する立場の一つとして、心理学や教育の分野などで注目されています。

社会構成主義の考え方を取り入れ、企業の組織づくりを効果的に進めるには、どのようなポイントがあるのでしょうか。

本記事では、企業が社会構成主義にアプローチするべき理由や、実践するためのポイント、理解する際の注意点などを解説します。チームや従業員間の思い込みの解消や、正しい理解に基づく組織づくりにお役立ていただけると幸いです。

目次

社会構成主義とは

社会構成主義とは、社会に存在するさまざまな事象は、人間の認知が作り上げるものと捉える概念です。社会学を基礎とした考え方であり、「本質主義」に相反する概念として論じられるようになりました。

本質主義では「日本人は勤勉だ」というような人種・民族・性別といったカテゴリーにより、その本質を定義しようとします。社会構成主義は本質主義の偏った見方を助長しかねない側面の反証です。世の中の物事はすべて人間の頭で考えたことが作り上げるもので、特定のカテゴリーに本質は存在しないという立場をとるものです。

社会構成主義は、物事を多面的に捉える手法として心理学や教育の分野だけでなく、企業の組織づくりにも応用されるようになっています。

社会構成主義への理解が求められる背景

近年多くの企業は、社会構造の目まぐるしい変化への対応を迫られています。柔軟に組織構造を変化・対応させなくては、市場における競争力を失う恐れがあるからです。社会構成主義においては、対話が重視されます。物事は人々の対話により認識されるという社会構成主義は、組織変革において有効に作用するため、近年注目を集めているのです。

組織の現状は、属する人々の状態や活動、共通認識により刻一刻と変わります。「あるべき姿・なりたい姿」に近づくためには、従業員同士の対話により問題点を浮き彫りにし、「共有のビジョン」や「思い」を紡ぎだす必要があるのです。

社会構成主義に企業がアプローチするべき理由

時代に即した企業運営を実現するには、これまでの経験や歴史からくる思い込みを排除する必要があります。企業運営に社会構成主義のアプローチを加えることにより、こうした思い込みが「果たして正解なのか」といった視点を持つことにつながるからです。

このことは人事評価における評価エラーの防止に役立つだけでなく、「健全な組織とは」という根本的な問いかけに客観性をもたらすでしょう。

個人の思い込みによる人事評価を避けるため

人事制度に社会構成主義のアプローチを加えることにより、思い込みによる評価エラーの排除が期待できます。ハロー効果に代表されるような、優れた一点をその人材すべての評価と思い込こむエラーを改善できるのです。

他者からの評価だけでなく、自己評価に対しても思い込みは作用します。過去の失敗や叱られた経験から、必要以上に自己を過小評価してしまうことはよくあることです。こうした自己評価の低さが自信のなさや消極性につながり、その後の職業人生に不利に作用します。思い込みを払拭するためには、社会構成主義のアプローチを用いたカウンセリングが有効な手だてとなるでしょう。

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客観的事実に基づく健全な組織をつくるため

社会構成主義では、組織風土は属する人材の認識がつくるものとされます。従業員の認識をあらためて確認することで、現状の組織風土を客観的に把握できるでしょう。従業員の意識を変える努力が、健全な組織風土への改善にも役立つ可能性があるのです。

社会構成主義では、個人は価値観のフィルターを通して現実を見ていると考えます。同じ現象を目の前にしても、人により感じ方は異なります。対話により、それぞれが感じる現実を再構成できれば、より客観性を持った組織改革を実行できるでしょう。

社会構成主義が臨床心理学の世界に与えた影響

臨床心理学の分野では、「ナラティブ・アプローチ」というカウンセリング手法があります。ナラティブ・アプローチは、社会構成主義をベースとした会話を重ねていく手法です。カウンセラーは相談者が語る内容(物語)を細かくチェックしながら聴き、相談者の主観(思い込み)に注目していきます。


社会構成主義では、個人の主観と客観的な事実は独立した存在とは考えません。相談者の語る内容が現実を作り出していると捉えます。例えば大きな失敗をした相談者が、失敗はすべて自分の能力不足が原因と思い込み悩んでいるとします。これが相談者が作り出している現実です。しかし客観的な視点を加えると、本人の能力不足ではなく、周囲のサポートが手薄だったことが真の原因だったりするのです。

社会構成主義を実践するためのポイント

企業活動において社会構成主義を実践することは、あらたな視点を持ち込むことにつながり、組織を活性化させるきっかけとして期待できるものです。これまで当たり前としてきた価値観を疑ってみることは、組織改革において必要な視点です。

また、対話によって認識している現実が書き換えられることを知れば、建設的な議論が深まり組織全体の活性化が図られるでしょう。これらを踏まえ、社会構成主義の概念を事業運営に取り入れる際には、以下2つのポイントを押さえておきましょう。

当たり前とされている存在を疑ってみる

これまでの経験に由来する思い込みは、組織を改革していくプロセスにおいて足かせとなるものです。個人の価値観はその人物の過去の経験に由来します。近い価値観を持つ他人は存在しても、まったく同じ価値観を持つ他人が存在しないのはそのためです。

それぞれの個人が、これまで当たり前としていた価値観を疑ってみることは、変革には不可欠な要素です。ある人物にはピンチと映る現実は、他の人物にはチャンスに映ることもあります。価値観の再構成は、活路を見い出す有効な手段といえるでしょう。

対話によって物事の意味が決まることに注目する

心理学者のガーゲンは、「人々はお互いの言葉のやり取り(対話/ダイアログ)のなかで『意味』をつくっていくのであり、『意味』とは話し手と聞き手の相互作用の結果である」と説いています。そのうえで、「言葉が世界を創る」という表現も残しました。


これらの言葉は対話の重要性を示唆しています。人々が対話により形成した合意が、あらたな現実として立ち上がるのです。このことに注目すれば、おのずと対話や議論が活発になり、建設的な考えを持つ人材が増えていくでしょう。

社会構成主義を理解する際の注意点

社会構成主義を理解し企業運営に取り入れる際には、いくつか注意が必要な点があります。それは、社会構成主義に批判的な立場をとる人もいることです。また、社会構成主義に偏りすぎないバランス感覚も必要です。

社会構成主義への批判

社会構成主義の考え方は極めて哲学的であり、分析により客観的な事実を追求する手法と相いれない部分があります。こうしたことが理由で、かつて社会学者の間では社会構成主義がすたれていった経緯があることも忘れてはいけません。

社会構成主義に偏りすぎるあまり、客観的な事実を軽視してしまうことも問題です。客観的な事実を否定してしまえば、物事の判断はすべて個人の主観によるものになってしまいます。こうした組織には、危うさがつきまとうでしょう。

本質主義とのバランス

本質主義とは、人種・民族・性別といったカテゴリーに応じた普遍的な性質があるといった考え方で、社会構成主義とは対立の関係にあります。しかし、本質主義を否定し社会構成主義に偏りすぎることは危険です。


構成主義よりも、より狭義で社会的な意味合いを強くした構築主義においては、本質化したカテゴリーを解体してしまう恐れがあります。例を挙げると、ハンディキャップを抱える人材に配慮した働き方を否定し、働き方改革を断行してしまうようなことです。社会には本質化したカテゴリーでの連帯が必要な集団も存在します。社会構成主義を理解するには、こうした連帯を否定するのではなく、バランス感覚を持つことも必要です。

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社会構成主義を理解して組織づくりに役立てよう

社会構成主義とは、人々の認知が事象を作り上げ世の中を構成するといった概念です。既存の価値観や慣習を見直し、あらたな思考を構築する点では優れた効果を発揮するでしょう。組織づくりにおいてはこうした視点が重要です。

社会構成主義におけるあらたな認知は、対話のなかから生まれます。自社の人材に対話の重要性を熱心に説き、活発な議論がなされる組織を目指していく必要があります。こうした啓蒙活動には、社内広報の取り組みが有効です。ぜひ検討してみてください。

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この記事を書いた人

masayuki yamamotoのアバター masayuki yamamoto ライター

ライター。大手小売チェーンにて、店舗マネジメントを経て人事部門を経験。新卒・中途採用では年間1000人以上の応募者に対応。
そのほか教育研修や労務管理、人事制度構築や労務トラブル解決など、人事全般のさまざまな業務経験あり。
豊富な実務経験をもとに人事系の記事を中心に執筆活動をおこなう。

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