「一体感の醸成だけじゃない」太鼓一筋33年のプロが提供するチームビルディング
働き方の多様化などにより、チームビルディングに課題がある企業は増えてきています。チームビルディングにもいろいろな方法がありますが、みなさんは「和太鼓によるチームビルディング」を知っていますか?
「知っている」と答えた方は、かなりレアだと思います。
本インタビューでは、一見繋がりが薄そうな「和太鼓を通してチームビルディング」というユニークなチームビルディング施策を企業に提供をしている、株式会社太鼓センターの筧様に、和太鼓だからこそ得られる効果や企業からの声など、幅広く伺いました。
インタビュイー:筧さま
2000年3月神戸学院大学大学院人間文化学研究科修了。
日本語学校講師、学習塾講師、学校法人向けシステム会社の営業を経て、2008年5月株式会社太鼓センター入社。和太鼓及び邦楽器の販売や新規教室の開拓に加え、幼保・学校・企業向けの出張指導や出張演奏、インバウンド向け文化体験企画等、各種イベントの企画運営を担当。
株式会社太鼓センター:https://www.taiko-center.co.jp/
太鼓一筋33年。プロが行う太鼓を通じたチームビルディングとは?
ーー「太鼓でチームビルディング」。
なかなか興味深い内容ですが、まず御社はどのような事業を展開している会社なのでしょうか?
元々は和太鼓の演奏や製造販売を中心に行ってきた、今年で33年になる会社です。
和太鼓の主な売り先として学校や児童館、幼稚園などが多かったこともあり、納品するついでに「和太鼓を教えてくれないか?」と言われたのがきっかけで和太鼓教室を始めました。
気がつけば会社の収益の7割が和太鼓教室なんですよ。笑
コロナ前は、保育園からシニアの方、外国の方向けなどさまざまな方に向けた和太鼓の指導をしてました。
ーー外国人の方などからしたら「和太鼓」は日本的文化で人気があるんですかね。
ここからは、和太鼓を通して企業向けにどんな研修プラグラムを提供しているかについて教えてください。
企業向けの和太鼓プログラムは大きく3つに分かれています。
- 福利厚生の一環として、1時間程度で簡単な曲を覚えてもらうコース
- 2~3時間かけて曲を覚えてもらうコース
- 周年行事などに向けて、2~3ヶ月みっちり練習するコース
大阪で研修を受けてくれている企業さんは、毎年夏に地域の住民を集めたお祭りを開催していて、そのお祭りで「チーム対抗で新入社員が演奏をする」というのが慣例になってたりします。
なので、新入社員研修の一環として毎年夏に向けて2~3ヶ月活用していただいたりしてます。
「もともとはそんなつもりじゃなかった。」チームビルディング需要の高まりを襲ったコロナ
ーー新入社員研修の一環として、長期的に和太鼓を導入している企業様もいらっしゃるんですね。
和太鼓を通して研修やチームビルディングを提供し始めたのはいつ頃からなのでしょうか?
そうですね。最初に企業向けに提供し始めたのは確か25年前くらいでした。
ただ、正直にいうとその当時はチームビルディングという認識はなかったです。
いわゆる出張指導として、新入社員の方などに教えていた形です。
チームビルディングの需要は25年前よりは増えていて、正直コロナ前までは企業向けの需要はかなり多くありました。
100名規模の社員旅行のプログラムとして2~3時間の和太鼓研修をやる企業がいたり、30名規模で2チームに分け、各課題曲を習得し、最後に勝利チームを決める研修をやる企業がいたり、シンガポールの企業は報奨旅行の一環でチームビルディング研修をしたりとさまざまなチームビルディングを支援していました。
ただ、和太鼓研修は
- 2~3名で1つの和太鼓を叩く
- 掛け声を出して音を合わせる
- 貸しホールという密閉空間
といった特徴があり、コロナの感染拡大でどうしようもない時期が続きました。
今は徐々に落ち着いてきてるのでよかったですが、当時はキャンセルが続きどうしようもなかったですね。
「和太鼓の演奏で個性がわかる」一体感の醸成だけじゃない和太鼓の魅力
ーー和太鼓をチームで取り組むことで得られる効果・メリットにはどんなものがありますか?
和太鼓はチームで行うので、やはり団結力や絆が生まれやすいです。
音や振動をチームで合わせるためには、チームメンバーが叩く音に耳を傾ける必要があります。
それ以外にも、和太鼓を叩くとその人の個性が表れたりします。一見大人しいけど、和太鼓を叩くと力強く演奏する人もいたり、中心となってチームを引っ張る人がいたり、など。
団結力や一体感を生むというのはもちろんですが、和太鼓の演奏という非日常を通して、普段見れない一面を見ることができるのは和太鼓でチームビルディングをする大きな効果だと思います。
あと、和太鼓を叩くことで生まれる振動が手のあらゆるツボに響くことで、脳に良い影響を与えるということも大学の研究でわかっていたりします。
和太鼓を叩くことはリラックスの効果があるだけでなく、メンタルヘルスや鬱病予防などの効果もあるそうです。
役員陣がこっそり和太鼓の練習をし、従業員が退職届を撤回
ーーたしかに和太鼓の振動は地響きのように伝わるイメージがありますが、手から伝わる振動にはそんなパワーがあるんですね、ありがとうございます。
実際に、御社のプログラムをやられた企業様からはどんな声があがっていますか?
前にあったのは、会長、社長、部長クラスの8名が2ヶ月後にある決算報告会に向けて内緒で和太鼓の練習をして、決算報告会後の懇親会でお揃いの衣装で和太鼓を演奏して「がんばるぞ」と社員を鼓舞したことがありました。
ここからは後から分かったことなんですが、決算報告前に退職届を出していた社員がいたらしいんですが、和太鼓を演奏している役員陣を見て「退職届を撤回させてくれ」という方がいたらしいです。
そこからは毎年役職やチームごとに演奏会をするというのが定番になった企業もあります。
ーーなんと・・!ただ、社長や役員クラスの方々が従業員のためにこっそり和太鼓の練習をしている企業は、従業員の方からしても良い印象ですよね。和太鼓で研修をやる上でネガティブな意見はあがったりしないんですか?
正直なところ、長期間の研修だと「なんでこんなことやらないといけないの」という声があるのは事実です。
ただ、時間をかけて曲を覚えてもらいチームで発表をすると、最終的には「楽しかったし、チームメンバーとも仲良くなれてよかった」という声が圧倒的に多いです。
1日などの研修だと、そこまでネガティブな意見は生まれずにみなさん楽しんでやってくれてます。
ーー最終的にチームで曲を発表するというゴールに向かって進むことが、一体感醸成に繋がっているんですね。
最後に、今後の展望をお聞かせください。
国内の方に、もっと和太鼓の良さを知って活用してもらいたいです。
和太鼓の研修を通してチームビルディングしてもらうのはもちろんですが、和太鼓を叩くことで、チームだけではなく個人のストレスやメンタルヘルスの解消にも繋がるので、そういった目線でも和太鼓を活用してほしいなと思います。
編集後記
個人としてはストレスやメンタルヘルスの解消、チームとしては一体感や団結力醸成が実現できる「和太鼓」。
そんな和太鼓を通して、自分を表現しつつチームとして音を合わせて行うチームビルディングは、業種業界問わず企業における組織づくりに良い影響を与えるだろうと私自身感じました。
「和太鼓×チームビルディング」というユニークな取り組みが、日本だけではなく世界的にさらに広がることを楽しみにしています。
筧さん、貴重なお話をありがとうございました!