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組織コミットメントとは?ワークエンゲージメントとの違い、組織文化との関係性

組織コミットメントとは?ワークエンゲージメントとの違い、組織文化との関係性

近年、人的資本開示の流れを受けて「従業員エンゲージメント」の重要性が一段と高まっています。従業員が主体的に仕事へ打ち込む“ワークエンゲージメント”に加えて、組織への愛着や帰属意識を意味する“組織コミットメント”の両面が企業の成長エンジンとなることが明らかになってきました。

本記事では、組織コミットメントの定義や注目される背景、組織文化とのつながり、さらに具体的な向上施策を解説します。従業員エンゲージメントの全体像を捉えながら、組織コミットメントを経営に活かすためのヒントを提示しますので、企業価値向上の施策を検討する際の参考にしてください。

目次

組織コミットメントとは何か

「組織コミットメント」は、社員が企業の目的やビジョンに対して示す情熱や責任感をを指します。

これは必ずしも「仕事そのもの」への情熱(ワークエンゲージメント)と一致しません。組織コミットメントは、従業員が会社のミッション・ビジョン、価値観に共感し、長期的に貢献しようとする意識の表れです。

従業員エンゲージメントは、

  • ワークエンゲージメント:仕事への没頭、成長意欲
  • 組織コミットメント:企業や組織への愛着、ロイヤリティ

という2本の軸で構成されると考えられ、両者のバランスが企業全体の健康状態を反映します。

この記事では、「組織コミットメント」を、従業員の組織に対する情緒的な結びつきとして定義します。

組織コミットメントとワークエンゲージメントの相互作用が重要

ワークエンゲージメントが高い従業員は仕事に情熱を注ぎ成果を出しやすいものの、その後のキャリア上の選択肢として「より面白い仕事を求めて転職する」可能性もあります。

一方で、組織コミットメントが高い従業員は会社への愛着から離職しにくいですが、仕事へのモチベーションが不足しているとパフォーマンスが伸び悩むリスクがあります。

したがって、ワークエンゲージメントと組織コミットメントの両方が高い状態こそが理想的な従業員エンゲージメントといえます。すなわち「この会社の仕事が好きで、会社への愛着もある」という従業員を増やすことが、企業全体の生産性やイノベーション創出力を高め、人的資本経営を成功に導くカギとなるのです。

なぜ組織コミットメントが注目されているのか?背景とメリット

1.離職率低下

組織コミットメントが高い従業員は「会社に居続けたい」と感じやすく、外部からの誘惑に対しても離職意向が低くなります。

世界的なコンサルティング機関であるGallup社の調査によれば、従業員の組織への帰属意識が高い企業ほど離職率が低く、生産性が約20%高い傾向が認められるとされています。

2.業績・生産性の向上

従業員が組織に強い帰属意識を持つことで、日常業務への取り組み姿勢が向上し、自発的な改善提案や協力が促されます。

日本国内の大手企業を対象としたある研究でも、組織コミットメントの高い社員が多い企業ほど、平均勤続年数が長期化し、業務品質や顧客満足度が向上したという報告があります。
これらの調査結果から、組織コミットメントが企業の持続的成長と人材の定着率、パフォーマンスに直結することが示唆されます。

3.人的資本経営とステークホルダーからの評価

近年、ESG投資や人的資本開示の潮流が進んだことで、企業の“無形資産”に注目が集まっています。たとえば経済産業省の「人材版伊藤レポート」では、従業員エンゲージメント指標の開示を通じて、投資家やステークホルダーに対して企業が抱える人材力を示すことが推奨されています。

組織コミットメントは「社員が会社にどれだけ貢献したいと考えているか」という点で無形資産(関係資本)の一部と捉えられます。高いコミットメントを持つ社員が多い企業は中長期的に安定成長する基盤が強いとみなされるため、市場や投資家からの評価向上にも寄与する可能性があります。

4.ポジティブな組織文化醸成とイノベーション促進

コミットメントが高い組織では、社員が自発的にチームを支援したり顧客満足を向上させたりするなど、主体的な貢献行動(従来「組織市民活動」と呼ばれていた概念)も活発化します。具体的には、部門を越えて他のチームをサポートしたり、新しいアイデアを積極的に提案したりといった行動が増え、イノベーションや顧客ロイヤリティ向上の原動力となるのです。

組織コミットメントが高い社員は、「会社のために何かしたい」「自分が会社や仲間に貢献できるなら、多少の負担も惜しまない」という意識を自然に持ちやすいため、組織全体にポジティブな影響を及ぼします。

組織コミットメントの3要素

組織コミットメントの要素

組織コミットメントは、学術界で広く用いられているAllen & Meyerによる三次元モデルで説明されます。

以下の3要素が複合的に絡み合い、最終的な組織コミットメントの度合いが決まります。
企業としては情緒的コミットメントを中心に、存続的・規範的なコミットメントとのバランスを考慮しながらマネジメント施策を設計することが重要です。

1.情緒的コミットメント

従業員が組織文化や理念に共感し、感情的な愛着を感じる状態です。
情緒的コミットメントが高い場合、社員は「自分の居場所」として組織を認識し、積極的な貢献や創意工夫が促される傾向にあります。

実証研究では、情緒的コミットメントが高い従業員は、高いパフォーマンスや離職率低下につながるとされています。

2.存続的コミットメント

報酬や福利厚生、退職時の損失など、経済的・機能的な理由に基づき、組織に留まらざるを得ない状態です。

存続的コミットメントは確かに定着を促す要因となる一方で、必ずしも高いパフォーマンスに直結しないという研究結果もあります。

3.規範的コミットメント

組織から受けた恩恵や社会的・倫理的な価値観によって生じる「義務感」、すなわち、ある種の忠誠心です。

規範的コミットメントが高い場合、従業員は「恩返し」を意識し、高いパフォーマンスや積極的な貢献を期待されますが、同時に受動的な側面が強くなる可能性も指摘されています。

組織コミットメントと組織文化

組織文化がコミットメントを育む

組織文化は、組織メンバー内に共有された価値観・信念・慣習・行動様式の総体を指します。

エドガー・シャインによると、組織文化は経営者のリーダーシップや歴史的経緯、従業員の相互作用から形成されるとされます。

組織コミットメントの中でも、特に情緒的コミットメントが高まる背景には、従業員が文化に共感し「ここで働くことに意義がある」と感じられるかが大きく影響します。たとえば、経営理念やミッションの浸透度が高く、互いを尊重し合う文化を持つ企業では、社員が情緒的コミットメントを抱きやすいといえます。

組織文化醸成とコミットメント向上の好循環サイクル

一方で、コミットメントが高い社員が増えることで、新しい文化や行動様式が組織内に根付きやすくなるという逆方向の作用もあります。

  • ミッションの共有度が高い → 自発的な貢献行動が増える
  • 社員同士の結束力が高い → 相互支援や協働が促進される
  • 新しい試みに挑戦しやすい → イノベーティブな文化が育つ

こうしたポジティブな循環が生まれれば、組織コミットメントと組織文化は相乗的に高まり続け、結果として従業員満足度や業績向上にもつながるのです。

組織コミットメントを高めるための具体的アプローチ

ビジョン・理念の徹底浸透

「この会社の価値観に心から共感できる」状態こそが、情緒的コミットメントを育む最初のステップです。理念やビジョンに社員が心の底から共感できると、「この会社のために頑張りたい」「自分の成長を通じて組織に貢献したい」という情緒的コミットメントが形成されやすくなります。

トップメッセージの反復発信
経営トップが定期的に全社集会や動画メッセージなどでビジョンを共有し、“なぜこの目標を追うのか”を繰り返し語る。

現場との対話を重視
タウンホールミーティングや部門別ディスカッションを通じ、従業員の率直な質問や意見を吸い上げながらビジョンを再確認する。

行動指針への落とし込み
理念や価値観が抽象的なままでは浸透しにくいため、日々の業務や行動に結びつく具体的な行動指針を設ける。

キャリア支援と適材適所の配置

社員一人ひとりの成長意欲や自己実現への期待を満たすことも、組織コミットメントを高めるために欠かせません。「この企業は自分の可能性を尊重してくれている」「新しいスキルを身につけ、やりがいを感じられる」という認識が強まるほど、社員は組織に愛着を持ち、意欲的に貢献するようになります。

キャリアパスの明示
昇進・昇格の条件やスキルアップのロードマップを整備し、「この会社で働き続ければ将来自分はこうなれる」という展望を具体化する。

業務挑戦のサポート
やりたい仕事に立候補できる社内公募制度、ジョブローテーション、研修・資格取得補助といった仕組みを設け、挑戦機会を提供する。

1on1やメンター制度
上司やメンターが定期的に面談を行い、本人のキャリア目標や困りごとを把握しながら伴走する。

オープンなコミュニケーションと心理的安全性

良好な人間関係や安心感のある職場は、情緒的コミットメントを高める最大の鍵です。ミスや異論をも許容し、率直な意見交換が行われる風土が整っていると、社員は「この会社なら自分らしく働ける」と感じられます。

定期的な情報共有
経営・部門の最新状況や課題を積極的に共有し、“大事なことは隠さない”姿勢を示す。

1on1やチームミーティングでの対話促進
個々人が日々抱える課題やアイデアを上司・同僚へ気軽に相談できる時間を設ける。

心理的安全性の醸成
話し手を否定せず受け止める、失敗を糾弾しないなど、リーダーが率先して“聞く姿勢”を示すことでメンバーにも波及させる。

フェアな評価と報酬の設計

給与や福利厚生は「存続的コミットメント」の要素につながる側面が大きいですが、公平性・納得感が担保されると、結果的に情緒的コミットメントを底上げする効果も期待できます。

評価軸の透明化
評価ポイントや査定プロセスをオープンにし、社員が「報われる」仕組みに納得できるようにする。

フィードバックの充実
結果だけでなくプロセスや行動姿勢に対しても適切なフィードバックを行い、社員を正当に評価していると伝わるようにする。

評価面談の対話重視
一方向的に評価が下されるのではなく、互いの考えを擦り合わせる場として設計する。

ボトムアップ文化とリーダーシップ

社員の主体性を引き出す文化づくりも情緒的コミットメントを高めるうえで重要なポイントです。
自分たちの意見が尊重され、意思決定に参加できると感じられるほど、組織へのポジティブな愛着が増します。

現場の声を生かす制度
アイデア提案・新規事業公募・ワークショップなど、社員が積極的に発言・行動できる仕組みを設ける。

権限委譲を実施
リーダーがメンバーへ一定の裁量を与え、自分ごととして業務を推進できる環境を作る。

サーバント(支援型)リーダーシップ
トップが命令するだけでなく、従業員を支援・育成する姿勢を重視することで、メンバーのモチベーション向上を図る。

組織コミットメントの強化がエンゲージメント全体を底上げする

組織コミットメントの高い従業員がいる企業は、生産性の向上・離職率の低下などさまざまなメリットが得られます。個人にとっても業務のモチベーションにつながるなど多くの効果があるので、まずは組織コミットメント向上施策を考案していきましょう。

なお、社内コミュニケーションの促進で組織コミットメント向上を目指すのであれば、社内報の導入がおすすめです。近年は従業員同士がコミュニケーションできるオンライン社内報なども盛んなので、チェックしておきましょう。

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この記事を書いた人

大学卒業後、大手施工管理会社を経て、株式会社ネオキャリアへ入社。中途採用領域における法人営業や採用支援、マーケティングに従事する。2024年にourly株式会社へ中途入社し、BtoBマーケティング領域における、ウェビナーや展示会の企画運営やオウンドメディアの運用などに携わっている。

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