社員エンゲージメントを高める鍵は、明確な目的と全体設計
株式会社ホープ(以下ホープ)は、株式会社リンクアンドモチベーションが発表した「Best Motivation Company Award 2024 中堅・成長ベンチャー企業部門」にて10位入賞を果たしました。社員エンゲージメントスコアは最高ランクのAAAを連続で獲得しています。
今回は、社員エンゲージメントの高さの秘密に迫るため、ホープ人事部管掌である安藤さんに、実践している施策について伺っていきます。
目的から逆算して全体設計を構築することが重要
──まずは会社として、社員エンゲージメントを重要視している理由を教えてください。
弊社代表 時津の、人・組織に対する考え方が根幹にあります。それは、「会社の理念や価値観に共感してくれている人を採用し、そして働いている間にその共感をより一層強めてもらうことが会社の成長につながる」、という考えです。弊社の企業理念は「自治体を通じて人々に新たな価値を提供し、会社及び従業員の成長を追求する」というものです。
理念を実現するため、つまりは、会社及び従業員の成長のために、社員エンゲージメントが重要であると認識しています。
ちなみに前期は約40名が入社しており、その何倍もの数の採用面接がありました。その全てにおいて、時津自身が必ず最終面接を行い、会社への共感度・価値観がマッチしているかの判断をしています。
──なるほど。会社の理念に共感してくれる人を採用することが、まずはスタートということですね。
はい。ただ、もちろんそれだけではなく、弊社は全体設計から施策を考えることを徹底しています。
企業理念に共感している人を採用すること、評価制度を明確にすること、社内報を発行すること、など社員エンゲージメントを向上させるための施策は多くあります。しかし、あくまでこれらは1つのツール。単発の施策だけでは、一時的に結果が出たとしても継続的な効果にはつながりません。
弊社ではまず、会社として何を成し遂げたいのかというビジョンを明確にするところからスタートし、達成するためにはどういった組織になるべきなのか、というところまで落とし込む。そこまでのことを明確にしてから、「繋がり」・「一貫性」のある施策を考えるという一連の流れで、全体設計を構築しています。
──ホープが、ここまで結果につながる全体設計ができたのはなぜでしょうか?
企業理念や文化・価値観の軸を、代表や経営陣だけではなく部長クラスのメンバーが共通認識として腹落ちしているからだと思います。
会社の土台になるべきマネジメント層が、会社と同じ方向を見ていなければ、どんな施策も表層的で薄っぺらいものになってしまいます。弊社は、部長クラス以上のメンバーが心から会社が目指すものに共感しているからこそ、その熱が施策を通じて全社員に一定以上届くし、全体設計に抜け漏れがあったとしても、現場レベルで補完してくれるんだろうと思います。
日々のフィードバックこそ、会社の価値観を伝えるチャンス
──全体設計を行なってからツールとしての施策を考えるべきとのことですが、ホープでは現在の組織を作りあげるまでにどういった施策を実施してきましたか?
まずは上述の通り、1つ目は採用です。弊社が掲げる理念やビジョン、価値観に心から共感しているかどうかを、採用するうえでの最重要事項にしています。どれだけ素晴らしい経歴やスキルを持っていたとしても、ここが合わなければ採用しません。
入社後に関わる施策では、例えば月に1~2回、取締役陣の1人と社員6名を集めて「ななかい」というものを開催しています。ななかいでは、社員から経営陣に対して仕事に関わることからプライベートなことまで自由に質問をすることで、社員が経営陣の考えに直接触れる機会を作ることを目的にしています。
他にも、毎年5月に社員総会という年1回の全員参加で経営方針の発表や表彰を行う日があります。そこでその年のテーマが発表され、1年間同じ目的に向かって進んでいくための全社員の方向性の一致を図るのですが、毎年皆楽しみにしながら参加しています。
年に2回発行している社内報も施策の1つ。CCO(チーフクリエイティブオフィサー)を中心とした編集メンバーによって、その時の会社の状況を踏まえて今社内報が果たすべき役割は何なのかをしっかりと議論した上で企画を立案します。またそれを表現するための軸となるデザインは何がふさわしいのか、という点までこだわり尽くして制作し、正社員以外の従業員も含めた全員が読むことができます。そのこだわりも評価され、2018年には「社内報アワード」を受賞しております。
表紙 シルバー賞
受賞概要
特集・単発企画7頁以下 ブロンズ賞
連載・常設企画 ブロンズ賞
また、執行役員以下全員が毎週書いている「週報」も、重要な役割を果たしています。当社の週報は、単なる業務報告ではなく、各自の成長を促進するツールとして活用されています。会社からの発信だけでなく、その発信を咀嚼し、自分の言葉でアウトプットする「週報」があるからこそ、一定以上の浸透がなされていると思います。
──数ある施策のなかで、もっとも大切にしているものを教えてください。
会社の価値観に準じたフィードバックを社員に対して行うことです。日々の業務のなかで、フィードバックは頻繁に行われています。しかしそのフィードバックの基準がする側によってバラバラになってしまうと、それを受ける社員の考えにもブレが出てしまいます。
そうならないために、弊社では会社として大切にしている行動指針を「クレド」に落とし込み、評価基準の中に入れたり、日々の会話でもクレドに言及したりと、一貫性のあるフィードバックを徹底しています。このように、日常的なフィードバックから会社の考えに触れることによって、企業理念や文化について深い部分まで全員で共有することを目指しています。
目的がない社内報を発行するのは、ただただもったいない
──社内報も施策の1つとして注力されているとのことですが、社内報を制作するうえで大切にしていることを教えてください。
常に目的から逆算した内容にすることです。
せっかく社内報を発行していても、いつも同じコンテンツばかり掲載するのはもったいないでしょう。弊社では、社内報を通じて会社として何を達成したいのかという制作目的を明確にしてから制作しているので、弊社の社内報はメインコンテンツが毎号違います。
──コンテンツは目的から生まれると。
そうでなければ、ただの面白い雑誌になってしまいます。
例えば、コロナ禍では社内コミュニケーションが不足していました。「じゃあ社内報で忘年会をやろう」ということで宴会号を発行することになり、一冊を通して社員に対していろんな質問が行われていくコンテンツを企画しました。
最初は軽い質問や仕事に関わる質問がされていくんですが、飲み会なので質問者も徐々に酔っ払っていき、質問内容も砕けていきます。最終的には酩酊状態になり、「会社のなかで風、炎、毒、氷それぞれの属性を持っていると思う人に投票してください」という、仕事とは何も関係ない質問がされていて、私は毒部門で一位に選ばれました(笑)。
──なんとなく制作していては思いつかないコンテンツですね!
ほかにも、会社が新たなステージに入った時には「あらためて会社のことを自分ゴトとして捉えてほしい」と、「自分ゴト万博」というコンテンツだったり、若手メンバーのモチベーションアップのきっかけになればと、現在第一線で活躍しているメンバーの新人時代にフォーカスした「私の新人時代」というコラムコーナーだったり。
単純に読み物として面白いことも当然目指しますが、毎号惰性で発行するのではなく、明確な目的を持ってコンテンツを考えることこそ、社内報では重要だと思います。
ホープが掲げる指を、自分の意思で掴んでほしい
──社員エンゲージメントの低下から退職につながっていることに悩んでいる会社も少なくないと思いますが、ホープでは社員が退職することをどう捉えていますか?
個人の意思決定の一つとして尊重しています。なので、会社として、社員が退職することは止めていません。自分の人生やキャリアを考えた時、最適解がこの会社でないのであれば、その時はぜひ新しい道に進んでほしいと伝えています。
ただそれは、全員が辞めても構わない、というような意味ではありません。この会社で働くのであれば、覚悟をもって、同じ方向を向いて仕事をして欲しい、という意味です。
代表の時津は、大学在学中に弊社を創業して今に至ります。創業してから暫くの間は、新卒採用しか行っていませんでした。ですので初めての退職者が出たときに強く動揺したと話していました。そしてそれをきっかけに、会社と社員が同じ価値観を持って同じ目標を目指すことを、以前より大切にするようになったのかなと想像しています。
もちろん社員が辞めないことが、いい会社の条件とは思っておりません。弊社の企業理念は会社と従業員の成長を追求すること。目標を持たず、なんとなく在籍している社員がいることは望んでいませんから。
──最後に会社としての今後の展望を教えてください。
事業面では、終始一貫して自治体向けの総合サービス会社を目指しています。現状4つしか事業がないため、自治体に提供できる価値や問題解決ができる領域は限られています。
今後は少なくとも10以上の事業を展開し、自治体が抱える悩みを解決できる会社を目指していきます。
そして組織面では、全社員が明確な意思を持って会社に所属し、事業を通じて会社も個人も成長を追求できている状態にすることが目標です。
時津は「この指止まれ」という言葉をよく使います。働く会社は、他人が勝手に決めるものではなく、自分で選ぶことができるものです。だからこそ、あらためて自分の人生に対して真摯に向き合い「私は自分の意思でホープを選び、そして働いているんだ」と、全員が胸を張って言える組織を実現したいと考えています。
interview / Design:Sachi Kagayama
Write:Shun Miyazaki
Photo:株式会社ホープ