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スタートアップの成功は宗教化がカギ!非連続な成長を起こし続けるためには

スタートアップやベンチャーは宗教そのものであり、優れた企業の経営者ほど「うちは宗教組織みたいなものなんですよ」と自社を表現する。経営学者として、多くの経営者と接点を持つ早稲田大学 大学院経営管理研究科(ビジネススクール)の入山教授はこう話す。

企業が事業を伸ばし、競争優位を獲得し続けるには宗教化が欠かせない。今回はスタートアップ、ベンチャーはなぜ宗教化するべきなのか?ということについて池上彰氏との共著「宗教を学べば経営がわかる」をもとに入山教授の見解を伺いました。

入山教授

入山 章栄
(いりやま あきえ)

インタビュイー

早稲田大学
大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授

慶應義塾大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科修士課程修了。三菱総合研究所を経て2008年に米ピッツバーグ大学経営大学院よりPh.D.を取得。同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクール助教授。19年4月より現職。『Strategic Management Journal』『Journal of International Business Studies』など国際的な主要経営学術誌に論文を発表している。著書に『世界の経営学者はいま何を考えているのか』(英治出版)、『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』(日経BP)、『世界標準の経営理論』(ダイヤモンド社)ほか。


髙橋さん

髙橋 新平
(たかはし しんぺい)

インタビュアー

ourly株式会社 取締役COO

WEB 社内報CMS「ourly」事業責任者。京都芸術大学非常勤講師。新卒でダイキン工業株式会社に入社。技術営業として都内の再開発案件に多数携わる。その後、株式会社ENERGIZEに入社。4年間主にベンチャー、中小企業の事業コンサル、組織コンサル等に従事して独立。2022年4月からourly 株式会社へ執行役員CSOとして参画。2023年4月より現職。

目次

優れた企業経営の要素は宗教で説明がついてしまう

──著書『宗教を学べば経営がわかる』では、経営理論で宗教を解説するという試みをされていますが、池上彰氏との対談共著でこういった取り組みをしようと思われた背景を教えてください。

優れた企業ほど宗教化されているということを以前から感じていました。今回の書籍では、池上彰氏の知見をお借りしながら宗教の基本や最新情報を伝えることで、ビジネスパーソンに宗教の深い理解を促すことを試みています。
また、私が専門にしている経営学は「人と組織の学問」とも言えるので、経営学の観点から宗教を解説することで、宗教の要素をどのようにして経営に活かすか?ということも解説しています。

──宗教化についてセンスメイキング理論( = 腹落ち)で解説されていますが、これは具体的にどのような内容なのでしょうか?

出典:入山 章栄(2019). 世界標準の経営理論 ダイヤモンド社

センスメイキング理論というのは、要は組織内に腹落ち感をつくることがイノベーション創出や事業成長につながるというものです。
スタートアップは世の中に対して、「自分たちの会社はこういう未来を作りたい」という方向性を示して腹落ちを醸成し、それが結果として組織の一体感とやりきる力を生み出します。

ある種、その宗教的な取り組みによって既存の企業が創り出せなかったイノベーションを実現できるというものです。

宗教はまさにこのセンスメイキング理論(腹落ち)をつくる仕掛けや要素が随所に散りばめられており、これはスタートアップが非常に参考にするべき点です。

スタートアップ、ベンチャーは宗教そのもの

──スタートアップ、ベンチャー企業が事業を伸ばすためにはどのように宗教化に取り組むべきでしょうか?

そもそもスタートアップやベンチャーは存在自体が宗教なんですよね。世の中にまだないものを生み出して、それで実現できる社会を示し続ける。最初は実績も根拠も無い、でも「こういう社会を実現するんだ!」という経営者の強い意思のもとに社員が集まったり、周囲が共感してサポートしてくれたりして少しずつ実現に近づいていくものです。

なので、そもそも宗教化できないと人も集まらないですし、事業がうまくいくことなんてありえないわけです。

いろいろな経営者とお話させていただきますが、優れた経営者ほど、センスメイキング(腹落ち)の達人なんですね。新しい事業はあらゆる問題や困難が起こり続けます。でもそういうときに腹落ちしていないとすぐ諦めが生じてしまう。イノベーションを実現しようと思ったら宗教化していて経営者が示す世界に全社員が腹落ちしているからこそ、目の前の問題解決に取り組み続けられる。そういうものです。

──組織が拡大していくなかでも宗教化するために大事なことは何でしょうか?

著書の中でも「 エコロジーベースの進化理論」というもので解説をしていますが、要は組織が一定規模より大きくなると組織やカルチャーを変えるのが難しくなるということです。

多くの場合はベンチャーが上場の前後で監査法人が入るなどして、社会的正当性を獲得するために普通の会社と同じことをしないといけないという力学が働きます。
ただ、これをそのまま見過ごしていると上場前後で「なんだかつまらない会社になったな」となってしまいがちです。

大事なことは創業時からコツコツと宗教化するためにカルチャーを濃くし、宗教化することをやり続けないといけません。

なので、上場しても成長できているリクルートやサイバーエージェントのような企業は社会的正当性を獲得しながらもカルト的な宗教的な要素が残っているのが特徴的です。

──宗教化するために具体的に取るべきアクションはどんなものがあるでしょうか?

まずは経営者が実現したい世界について繰り返し語り続けるということでしょうね。宗教法人の教祖だって説法という形で信者に繰り返し語りかけます。それを社長自身がやりきらないとダメです。

宗教化がうまくいく会社とそうでない会社の違いはシンプルに社長の本気度、やりきる力だと思います。

宗教化成功の鍵は意図的なカルチャー醸成と透明性

──宗教化に成功する組織と失敗する組織はどんな違いがありそうでしょうか?

繰り返しになりますが、創業時からコツコツとパーパスやビジョン、バリューなどの行動指針を通じて自社のカルチャーを醸成していくことです。企業のカルチャーはなんとなくつくられるものではなく、経営者やリーダーが意思をもって意図的に醸成する必要があります。

もう一つは透明性です。

近年の経営においては情報が透明なことが当たり前になりつつあります。経営者やリーダーが何を考えているか分からないという状態では信頼されようがありません。

これからのリーダーは人間臭い人で自分の弱さすらもオープンにできる人かもしれません。そして会社の意思決定もブラックボックス化せずに背景や意図も含めて社員に語り続ける。そんなリーダーが求められていると思います。

■ 髙橋の感想

ourlyというスタートアップを経営する身として、経営者が実現したい未来を描き語りかけ続けることの重要性を再認識しました。
日本では宗教がネガティブに捉えられやすい側面もあり、自社を宗教化することに躊躇する瞬間もあります。しかしながら経営陣がリーダーシップを発揮して宗教化しないと人も集まらず、事業もうまくいかないという入山先生のお話を聞き、自社をより宗教化するアクションを起こそうと決心しました。

次回は引き続き入山先生に大手企業が宗教から学べることについてお伺いします。

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