健康経営の取り組み10事例!中小企業や大企業の最新施策を紹介
健康経営とは、社員の健康が企業の収益性を高めるという考えのもと、経営の観点から戦略的に健康づくりを進める取り組みを指します。
日本国内では経済産業省が旗振り役となって推奨していますが、
「自社に合った取り組みが分からない」
「導入するための手順を知りたい」
このような疑問を抱える経営者や担当者の方も多いのではないでしょうか。
本記事では、2022年に経産省が健康経営優良法人に認定した企業のうち、代表的な10事例を紹介します。導入するための4ステップも解説するので、ぜひお役立てください。
健康経営とは
健康経営とは「従業員等の健康保持・増進の取組が、将来的に収益性等を高める投資であるとの考えの下、健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践すること」と定義されています。(引用:経済産業省ヘルスケア産業課「健康経営の推進について」)
つまり、従業員の健康管理による業務パフォーマンス向上を目指す経営手法と言えるでしょう。
反対に、不健康な従業員が多くなってしまうと業務への集中力を欠きやすく、見えない損失が増えていきます。場合によっては体調不良が原因の早退・遅刻・欠勤や休職が増えてしまい、会社の経営に著しいダメージを与えることもあるでしょう。そのため、健康経営を重視する企業が増えているのです。
健康経営が必要とされる背景
健康経営が重視されるようになった背景として、企業の評価軸が変わってきていることや、ワークライフバランスを重視する労働者が増えてきたことが挙げられます。
多様な働き方が認められると同時に人材の流動性が上がっている昨今、「自分にとって働きやすい環境」を求める労働者が増えました。健康経営もそのひとつであり、無理な残業・休日出勤による過労が生じにくく、食事・運動・睡眠をサポートしてくれるような企業は人気が高まっています。
また、投資市場においても同様の傾向が見られており、従業員を大切にする会社が高い評価を得るようになってきました。健康経営について優れた取り組みをしている東証一部上場企業は「健康経営銘柄」として知られるなど、国内の投資市場にも変化が出ています。
こうした背景を受けて健康経営のニーズが高まり、企業側も積極的に取り組むようになったのです。
健康経営の取り組み10事例
ここでは、国内における主な健康経営の取り組みを紹介します。大規模なプロジェクトを打ち出している企業もあれば、できる範囲からコツコツ健康経営に着手している企業もあるので、まずは参考にしてみましょう。
なお、下記は経済産業省における「2022年健康経営優良法人認定」を受けている企業のなかからピックアップしています。他の事例が気になる方は、併せてチェックしてみることをおすすめします。
(※)参考:健康経営優良法人認定制度(METI/経済産業省)
中小企業の健康経営の取り組み5事例
まずは、中小企業における健康経営の取り組みを紹介します。業態に合わせた取り組みや企業ごとの課題に合わせた取り組みなど、さまざまな事例が存在します。
1. toBeマーケティング株式会社|バーチャルオフィスで交流
toBeマーケティング株式会社では、魅力に富み働きがいのある職場の実現と、多様な人材がその能力を最大限に発揮できる環境の整備を強力に推進するため「健康宣言」を制定しています。
睡眠の質向上研修・女性の健康研修などさまざまな取り組みをしていますが、バーチャルオフィスをいち早く導入していることも特徴です。事業拡大に伴う社内コミュニケーションの減少やリモートワーク時のスムーズな情報共有を目的としてバーチャルオフィスを取り入れるようになり、社内での会話が増えるようになりました。
バーチャルオフィス導入後、従業員の7割が「以前よりコミュニケーションが改善した」とアンケート回答するなど、効果が現れています。
2. 豊国工業株式会社|若手社員の悩みをサポート
豊国工業株式会社では、副社長の提案により健康経営への着手を始めています。もともと大卒就職者の3年以内離職率が高いことに課題を感じていた豊国工業では、若手社員の悩みをサポートする動きに力を入れ、階層別研修や社内レクリエーションを始めました。
メンター制度やグループディスカッションなども加わり、結果として3年以内離職率は約40%から18%程度にまで半減しています。健康経営が人材の定着にも貢献するとわかる事例です。
3. 株式会社新井精密|高ストレス指数の社員を早期発見
株式会社新井精密では、ストレスチェックにおける高ストレス者の早期発見・発生予防に努めています。これまでも高ストレス者に対する面接指導などは提供していましたが、予防に対する取り組みが不十分であると社内における課題意識が高まったことからスタートしました。
上司や人事部だけでなく産業医などプロフェッショナルとの関わりが増えたことで従業員自身の健康意識が高まり、適切なセルフケアができるようになったこともポイントです。また、職場におけるケアなども充実できるようになり、新たな取り組みとして定着するようになりました。
4. 新関西製鐵株式会社|心療内科と提携
新関西製鐵株式会社は健康診断における有所見者率が88%と、全国水準と比較して高い傾向にあることへ危機感を抱いたことから健康経営に着手し始めました。具体的には、メンタルヘルス関連の相談窓口の設置・個別面談の実施・産業医だけでなく専門医療機関との連携などを始めています。
特に心療内科と提携したことでプロへ相談できる環境が作れるようになり、職場のリワークプログラムも改善されるようになりました。現在でのリワークプログラム参加者は100%の職場復帰を叶えており、高い効果があることが可視化されています。
5. 株式会社マルハナ|年間休日表で業務を「見える化」
URL:健康経営 – 株式会社マルハナ-建築・金物販売/建築金物のプロ集団
株式会社マルハナでは、休日予定を年間休日表に落とし込んで可視化したことで、業務の可視化も進むようになりました。あらかじめ休日の予定が分かっているため逆算しての業務が可能になり、業務効率が格段に向上しています。
また、お互いに支えあいながら有給休暇を取得する社風が根付き、従業員のワークライフバランスも取りやすくなっています。経営の改善だけでなく、従業員満足度の向上にも効果があった事例です。
大企業の健康経営の取り組み5事例
次に、大企業における健康経営施策の事例を紹介します。中小企業ではなかなか難しい大規模なプロジェクトとなっている事例もあるので、チェックしてみましょう。
なお、下記は経済産業省における「2022年ホワイト500認定」企業からピックアップしています。
(※)参考:健康経営優良法人認定制度(METI/経済産業省)
1. 味の素|睡眠改善プログラム
URL:健康経営|味の素グループ
味の素では、アルゴリズムとAIによる健康アドバイスアプリを導入しています。従業員の生活習慣をより正確に把握し、健康管理や生活習慣病の予防・改善をするための取り組みとして始まりました。
特に睡眠改善プログラムが特徴的で、睡眠サポートサプリメントを活用して睡眠の重要性を啓発を進めています。睡眠の質向上による集中力アップが期待でき、結果的に業務パフォーマンスの向上も叶うなどのメリットが発揮されました。
2. サッポロホールディングス株式会社|禁煙サポートの充実
URL:安心して働ける職場環境づくり|個性かがやく人財の輩出
サッポロホールディングスでは禁煙サポートを充実させており、サッポロホールディングスと事業会社4社の平均喫煙率は2020年から2021年に2.5%低下させています。就業時間内の禁煙、喫煙所の撤廃、オンライン禁煙プログラム受講費用の全額補助など大胆な取り組みも多く、禁煙外来補助制度なども打ち出しました。
ヘルスリテラシー向上や生活習慣病の予防にも効果があり、外部の専門家と連携した取り組みになっていることが特徴です。
3. Zホールディングス株式会社|社内レストランを活用
Zホールディングスでは、栄養バランスに配慮したメニューを提供する社内レストランを運営しています。脂質を抑えたメニュー、野菜を多く摂れるメニュー、減塩メニューなどを提供し、食事の楽しみを残しながら健康にも配慮できるよう工夫を凝らしました。
欠食による集中力低下を防いだり、社食を通して他部署とコミュニケーションができたり、健康経営以外のメリットも増えています。「健康な食事・食環境(通称:スマートミール)」認証制度で最高位の三ツ星を獲得するなど、目に見える成果も出るようになりました。
4. 株式会社ベネフィット・ワン|副社長がトップで指揮
ベネフィット・ワンでは、全社における従業員の健康保持・増進の担当役員を代表取締役副社長にしたうえで、効果的な施策を実行しています。また人事部内にも健康推進担当を設置したり、産業医や衛生委員会との連携も増やすよう改善しました。
健康診断の受診率向上・時間外労働の削減・喫煙率低下・運動習慣者比率の向上などさまざまな取り組みを同時進行で実行できるようになり、高いスピード性が評価されています。
5. フジ住宅株式会社|健診項目や制度の見直し
URL:健康の保持・増進 | 社員と社員の家族のために | サステナビリティ::フジ住宅株式会社
フジ住宅では、法定検診以外の項目を含む健康診断・人間ドック・再検査の受診費用などを全額会社が負担する取り組みを始めています。健康に不安なく就業してもらうための支援であり、病気の早期発見にもつながることから、従業員の健康意識も高まるようになりました。
他にもパート・アルバイトなど短時間勤務者に対する健康診断やがん検診などの費用も負担するなど、健康管理に貢献する内容を拡大しています。
健康経営を導入する4ステップ
健康経営を導入するには、下記の4ステップを踏むのが近道です。下記で具体的なルートを紹介するので、参考にしてみましょう。
1. 健康経営を宣言
まずは自社が抱えている健康上の課題を認識し、健康経営を宣言します。健康診断の有所見者率・慢性的な残業および休日出勤・メンタルヘルス不調者の増加・朝食や昼食の欠食など、課題となっている部分を掘り下げます。
そのうえで、何のために健康経営に着手するのか、5年後10年後に向けてどんな目標を掲げるかなど、可能な限り具体化していきましょう。宣言だけして形骸化しないよう、具体的な目的意識を持つことが大切です。
2. 施策を推進する組織づくり
健康経営施策を推進するための組織づくりをおこないます。誰がリーダーシップを取るのか、実務を担当するのがどの部署か、現場に任せるべき項目やマネージャーなど管理職に追加するべき業務があるか、など検討していきましょう。
なお、健康経営意識の高い数人だけが先走ってしまわないよう、社内報などを活用して広く健康経営に対する理解を促進していくことも大切です。組織体制についても同様に広く周知しておくことがポイントです。
3. 目標に向かって課題を改善
策定した目標に向かって課題を改善するため、施策を実行します。健康課題に合った取り組みになっているか、期待していたような効果が現れそうか、組織側と従業員側との間で意識の差が開いていないかなど、検討しながら進めましょう。
場合によっては産業医など産業保健スタッフの力を借りたり、加入している健康保険組合の担当者に相談したりすることも可能です。時には外部の力も借りながら、自社の課題に合った取り組みをしていきます。
4. 取り組みを評価
取り組み内容と効果は定期的に評価し、目標との乖離があれば改善・修正を図ります。得られた効果だけでなく従業員の反応や満足度も可視化しながら進めることができれば、社風として根付く健康経営施策となっていくでしょう。
従業員の本音はヒアリングだけでなくサーベイツールなどを使って可視化していくことで、効果的なPDCAサイクルが回せるようになります。
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健康経営の事例をヒントに社員の健康づくりを推進しよう
健康経営の事例は企業や業態によりさまざまであり、明確な正解がありません。自社の課題や今後伸ばしたい強みなどに合わせて施策を考案し、事例も参考にしながら計画を立てていきましょう。
なお、健康経営は従業員を巻き込んだ全社的な取り組みにすることが大切であり、社内報による訴求が欠かせません。健康経営の目的や目標も含めて広く共有しながら、従業員個人の健康意識も高めていくことがポイントです。