福利厚生とは?種類や企業の補助費用の目安とユニークな事例を解説
福利厚生とは、企業が従業員に対して提供する「賃金を除いた報酬やサービス」のことです。法律で義務付けられた健康保険等のほか、企業が独自に導入するユニークな休暇など、従業員の満足度向上や企業のブランディングを後押しする施策として注目されています。
福利厚生にはさまざまな種類がありますが、やみくもに取り揃えるのは現実的とは言えません。従業員のニーズを踏まえ、企業の目的や予算に合った制度の導入が必要です。
本記事では、代表的な16種類の福利厚生について解説した上で、補助費用の目安やユニークな企業の取り組みについて紹介します。さまざまな福利厚生の種類を知ることで、効果的な制度の構築にお役立ていただければと思います。
福利厚生とは
福利厚生とは、企業が従業員に対して提供する「賃金を除いた報酬やサービス」のことです。
近年、福利厚生の充実度合いを重視して就職先・転職先を選定する人が増えました。より自分のニーズに合った福利厚生が整っている企業や、オリジナリティがあり独創的な取り組みをしている企業に人気が集まりやすくなっています。
また、福利厚生を充実させることで従業員満足度や企業ブランドが向上するなど、企業側にとってのメリットも注目されています。
福利厚生の種類は2つに大別可能
福利厚生の種類は、大きく分けて「法定福利」と「法定外福利」とに分かれます。
法定福利とは、法律や制度で導入が義務付けられている福利厚生のことです。例えば健康保険・厚生年金・介護保険・雇用保険・労災保険などへの加入や子ども・子育て拠出金などの納付が義務として定められています。
反対に、法定外福利には上記以外の全てが含まれます。義務づけられていない自社独自の福利厚生は、全て法定外福利に含まれると考えてよいでしょう。
【法定】6種類の福利厚生内容
ここからは、法定福利と法定外福利について詳しく解説します。まずは法定福利に含まれるものを紹介するので、万が一にも自社で提供していないものがないか確認していきましょう。
1. 健康保険
健康保険は最もメジャーな法定福利です。健康保険組合に加入することで健康保険証を交付してもらえるので、ほとんどの方にとって馴染みがあるでしょう。
病気や怪我をしたときの窓口負担額を抑えられるだけでなく、国民健康保険より手厚い傷病手当金がもらえるなど、万が一働けなくなったときの対策を万全にできます。誰しもが使う可能性のある保険だからこそ、重視する人が多いともいえます。
2. 介護保険
介護保険は、社会全体で要介護者およびその家族を支えることを目的に創設された公的保険制度です。40歳の誕生日を迎えた月の給料から控除され始めるので、40歳以下で家族の介護が必要ない人であれば、まだ実感がわかないかもしれません。
要介護認定を受けた場合、加入している医療保険次第では適用されない可能性も出てきます。加齢や傷病によるリスクを考えると、意義の大きい保険といえるのです。
3. 厚生年金保険
厚生年金保険は、高齢になり収入が下がったときに備えて加入する保険です。国民年金に追加する形で加入できるので将来の手取り額が増えやすく、より安定した生活を構築できるメリットがあります。
職域国保の適用除外を受ける場合など一部の事例を除き、ほとんどの場合は健康保険とセットで加入します。給与からの控除額も「社会保険料」として合算している可能性もあるので、チェックしてみましょう。
4. 雇用保険
雇用保険は、労働者の生活および雇用の安定・就職の促進のために制定された保険制度です。健康保険組合や年金事務所ではなく所轄のハローワーク(厚生労働省)に加入を届け出ることが大きな違いです。
万が一失業して収入が途絶えてしまったときは、雇用保険から失業手当の給付を受けられます。また、育児休業給付金も雇用保険からの拠出なので、覚えておきましょう。
他にも、早期再就職が決まった際に支給される「再就職手当」など、保障が手厚いのも特徴です。
5. 労災保険
労災保険は、業務中の事件・事故により労働者の健康が害されたときに適用される保険です。骨折・打撲などの怪我はもちろん、薬剤を使っていたときのトラブルやハラスメントが原因の精神疾患など、業務中の出来事が原因だと認定されれば労災保険を使えます。
なお、労災保険料は全額事業者が納付することになっており、従業員の給料から控除されることはありません。
6. 子ども・子育て拠出金
子ども・子育て拠出金とは、子育て支援のために充てられる税金のことです。社会保険料と併せて年金事務所が徴収していますが、保険料ではなく税金である点に注意しましょう。
拠出金の納付は企業もしくは個人事業主がおこなうものであり、労災保険料と同じく従業員の給料から控除されることはありません。その分従業員への還付・給付もありませんが、国や地方の子育て支援に活用されます。
【法定外】10種類の福利厚生内容
法定外福利は近年さまざまなバリエーションで提供されており、内容やルールも企業ごとに千差万別です。下記では大乗的な法定外福利を紹介するので、チェックしてみましょう。
1. 住宅
家賃手当・住宅手当・寒冷地手当のように、住む場所や家に応じて提供する福利厚生です。なかには社員寮を提供する企業もあり、住まいの心配をせず業務に集中できるとしてさまざまな企業で採用されてきました。
近年は住宅ローン補助をする企業も多く、持ち家か賃貸かで手当金の額が変動することもあります。寒冷地手当は冬の暖房代が重くのしかかるため、企業側で配慮して支給することが多いです。
2. 健康と医療
従業員の健康維持・増進に福利厚生を使うことも可能です。
例えば法定健診以外の項目を含む健康診断や人間ドックが実施されれば、病気の早期発見・早期治療につながるでしょう。義務化されていない企業規模であってもストレスチェックを導入し、従業員のメンタルヘルスに最大限配慮するケースもあります。
また、産業医や事業場内産業保健スタッフと定期的に面談できたり、カウンセラーが常駐していたりする福利厚生もあるのでチェックしておきましょう。
3. 慶弔や災害
結婚・出産などの祝いごとがあった場合に祝い金を支給したり、身内が亡くなったときに使える有給の特別休暇を付与したり、さまざまな福利厚生があります。さらに手軽な例を挙げると、会社から誕生日プレゼントを送るのも福利厚生のひとつです。
また、地震・落雷・水害などの天災や火災がおきたとき、見舞金を支給する福利厚生も存在します。従業員の生活基盤を早めに安定させる福利厚生ですが、誰にとってもメリットのある施策です。
4. 育児や介護
法律で定められている以上の育児休暇を付与したり、子どもの年齢を問わず時短勤務を承認したりすれば、パパ社員・ママ社員にとって働きやすい環境を整備できます。また、ベビーシッター利用料やチャイルドシートの支給なども、子育て関連の福利厚生と言えるでしょう。
同様に、介護分野での福利厚生も広がっています。病院の付き添いをする日に有給の特別休暇が使えるなど、介護と就労の両立を手助けする福利厚生であることが多いです。
5. 自己啓発
セミナーや勉強会を開催し、自己啓発を支援する福利厚生を充実させている企業もあります。業務に直接関係のあるセミナーにすることもあれば、ライフプランづくりやマイホーム購入ノウハウなど従業員の興味・関心に合ったセミナーにすることもあり、多彩なラインナップを考案できるのが特徴です。
他にも、図書の購入費用を補助したり、大学院・専門学校・ITスクールへの進学を推奨したりするケースもあり、選択肢が広い福利厚生と言えます。
6. 働き方
テレワークやフレックスタイム制度などを導入し、フレキシブルな働き方を支援するのも福利厚生のひとつです。他にも、時短勤務・ノー残業デー・プレミアムフライデーなどワークライフバランスを充実させる施策や、裁量労働制など労務管理工数削減も兼ねた施策も存在します。
「家庭の事情で時短勤務したい」「時間や場所に捉われず働きたい」という労働者を獲得しやすく、スキルある人材の安定雇用につながることも多いです。また、フルリモートであれば海外の人材も登用できるなど、採用の幅が広がります。
7. 休暇
法律で義務づけられている有給休暇の他に、リフレッシュ休暇・ボランティア休暇・アニバーサリー休暇などを付与する企業もあります。ワークライフバランスの充実が図れるだけでなく、従業員の家族に配慮するような取り組みもでき、従業員満足度向上に貢献します。
また、有給休暇を時短単位で使えるようにしたり、中抜け制度を作ったりして仕事とプライベートのスイッチを支援する方法もあるので注目しておきましょう。
8. レクリエーション
社内運動会・社員旅行・忘年会・新年会・納涼会などのレクリエーションを通し、社内コミュニケーションの促進を図る福利厚生です。部署の壁を超えたコミュニケーションが生まれやすく、仕事の場以外でフランクな会話をすることによってイノベーションが起きることもあるので、会社にとってメリットのある手法といえます。
近年は従業員の自宅に食事を配送し、飲食しながらオンラインで実施するレクリエーションも増えています。従業員のニーズや時代のトレンドに合ったレクリエーションになるよう、企画してみましょう。
9. 財産形成
財形貯蓄制度・社内預金制度・社内貸付制度など、従業員の財産形成を支援する福利厚生もあります。また、持株会やストックオプション制度も、福利厚生のひとつです。
他にも、マネーリテラシー向上に向けたセミナーや、将来に向けた資産運用に関するセミナーを提供するのもよいでしょう。
10. その他
他にも、企業ごとにオリジナリティのある福利厚生を導入しているケースがあります。昼寝を挟んで午後の集中力を上げる「シエスタ制度」や、従業員の視野を広げるため海外旅行の資金を一部負担する「ゴーグローバル制度」などが話題です。また、ゲームの発売日に合わせて休暇を申請できる企業もあり、従業員や会社のカラーに合わせてさまざまな制度があるとわかります。
福利厚生に必要な補助費用の目安
福利厚生にどれだけの費用をかけるかは、企業ごとに柔軟な設定が可能です。ただし、金額や範囲次第では福利厚生費として経費計上できないケースもあるので、注意しましょう。
下記では、代表的な福利厚生に関する補助の目安を紹介します。
- 通勤手当の平均:ひとり当たり月8,600円程度
- 住宅手当の平均:ひとり当たり月12,000円程度
- 結婚・出産祝い金の平均:1案件当たり10,000~20,000円程度
- 専門学校や通信教育支援金の平均:ひとり当たり月10,000~20,000円程度
自社で整備する福利厚生の内容や、従業員のニーズに合わせて予算感を掴んでいくことが大切です。
(出典:経団連:第64回 福利厚生費調査結果報告 (2020-12-18), 2023年1月閲覧)
福利厚生のユニークな企業事例
ユニークな福利厚生の例として、ジークレストの「推しメン休暇制度」が挙げられます。「推し」であるタレントやアニメキャラクターを支援するための休暇制度であり、ライブの日や新作発表日に休暇を取得できます。また、活動費として上限5,000円が支給され、メリハリのついた働き方ができるようになりました。
また、サイバーエージェントの「macalonパッケージ」では、女性が出産・育児を経ても働きやすいよう、特別休暇や育児関連の制度をパッケージにしています。女性特有の体調不良の際に使える「エフ休」制度なども整備されており、女性の社会進出を支えています。
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福利厚生の種類をヒントに制度を充実させよう
福利厚生にはさまざまな種類があり、最低限整備すべき法定福利からオリジナリティを追求できる法定外福利まで存在します。まずは本記事で紹介した福利厚生の種類を参考にしながら、自社への導入ニーズが高そうな施策を探っていきましょう。
導入後は、社内報を通して定期的に福利厚生の内容を発信するなど、利用率を上げる取り組みをすることも大切です。