インナーコミュニケーションとは?エンゲージメント向上に役立つ手法と企業事例

昨今、インナーコミュニケーションが注目されています。これには少子高齢化やグローバル化、テレワークの拡大といった環境の変化に対し、人材の確保や、成果向上の取り組みとして各企業が関心を寄せているという背景があるのです。
社内イベントの開催やオフィスのレイアウト変更、社内報などによって既にいる社員のモチベーション向上に取り組んだり、社員間のコミュニケーションを促進したりすることによって、業務の効率化や社員充実度の向上に働きかけます。
この記事では、インナーコミュニケーションの概要から、社員のモチベーションを高める施策、効果、成功事例など網羅的に解説いたします。
具体事例のみ参考にしたい方は、以下の記事に企業のインナーコミュニケーション事例80選超をまとめていますので、是非ご覧ください。

インナーコミュニケーションとは?

インナーコミュニケーションとは、社員のエンゲージメント向上や社員間コミュニケーションの促進、また企業の理念やビジョンの浸透などを目的に行う、社内を横断するコミュニケーション全般を指します。
具体的には、社内報や社内イベントの開催、社内SNSやオフィス環境の工夫などを行い、経営層の掲げる会社の理念やビジョンを浸透させたり、社員間がコミュニケーションをしやすい環境を作ったりします。
そして最終的なゴールとして、人材の定着による離職率の低下や組織全体の成果向上が掲げられます。
インナーコミュニケーションとインターナルコミュニケーションの違いとは
「インナーコミュニケーション」と「インターナルコミュニケーション」は、言葉の意味合いが日本と海外で異なることがあります。日本ではこれらの用語は、社内のコミュニケーションを指すためにほぼ同じように使用されています。しかし、米国など海外では、これらの用語には明確な違いがあります。インナーコミュニケーションは個人と自己の対話を指し、個人の成長と自己理解に焦点を当てています。一方、インターナルコミュニケーションは、組織内のメンバー間で情報と目標を共有し、組織全体の効率性を向上させることに焦点を当てています。文脈に応じて、これらの用語を正しく理解し、適切に使用することが重要です。

インナーコミュニケーションが重要視される背景
社員のモチベーションや従業員満足度の向上が見込まれるインナーコミュニケーションですが、なぜ今重要だと言われているのでしょうか?
人材の流動化
日本は少子高齢化が進み、今いる社員の数・質を中長期に渡って担保することが困難になっています。生涯ひとつの会社に勤めあげるという従来の終身雇用制に対する見方も変化しており、1つの会社に捉われない働き方が広がっています。国際化による人材獲得競争も激しさを増している状況です。
この日本を取り巻く環境を例の1つにとっても、人材の流動化はこれまでに比べて加速しています。
その中で、働き手に定着してもらう企業になるためには、その会社のビジョン・理念の浸透や社員間の交流が活発に行われ、社員の充実度を高くするインナーコミュニケーションが大切になるのです。
多くの企業がインナーコミュニケーションに課題を感じている
またHR総研の調査によると、社内コミュニケーションに課題を持つ企業は少なくありません。
社内コミュニケーションに関するアンケート(【図表1】)によれば、2022年・2021年で大きな変化はなく、70%以上の企業が社内のコミュニケーションに課題があると感じています。
【図表1】社内のコミュニケーションに課題があると思うか(2022年1月調査)

インナーコミュニケーションを必要とする組織は、規模が大きくマネジメントが難しい大企業だけにとどまりません。
同調査を参照すると、社内のコミュニケーションに課題を感じている企業は、1,000名以上の規模の企業に限らず、300名〜1,000名規模、300名以下の中・小規模の企業にまで及ぶことが分かります。
また、コミュニケーションの課題は、普段関わりの薄い部門間に加え、経営層と社員間、また、部署内の課長とメンバー間など、さまざまな関係において存在しています。詳しくは以下の記事をご覧ください。

デジタルでごっちゃになった効果と効率。「社長のおごり自販機」開発者が語る、インナーコミュニケーションの大切さ
「社長のおごり自販機」を開発したサントリー食費んインターナショナル株式会社の森さんに、インナーコミュニケーションの重要性について語っていただきましたので、ぜひご覧ください。

インナーコミュニケーションを活性化させるメリット

ここでは、インナーコミュニケーションによってもたらすことができる効果を紹介します。効果は主に5つあります。
- 企業ビジョン・理念の浸透
- 従業員のモチベーションを高める
- 従業員のエンゲージメントを高める
- 人材の流出を防ぐ
(1)企業ビジョン・理念の浸透
インナーコミュニケーションの効果の2つ目は、企業ビジョン・理念の浸透です。
社内イベントや社内報・オフィスレイアウトなどによって、その企業の掲げるビジョンや大切にする理念・行動指針などを従業員に浸透させることができます。
従業員にとっても、自身が所属する会社のビジョンや理念に触れる機会が多いことで、それを意識することができます。理念や行動指針は、評価基準にもなることも多く、会社・従業員の両方にとって大切な事柄であると言えるでしょう。

(2)従業員のモチベーションを高める
インナーコミュニケーションの効果の3つ目は、従業員のモチベーションを高めることです。
インナーコミュニケーションを行うことによって、企業ビジョンの共有や社員間交流の促進に繋がり、従業員のモチベーションを高めることを見込めます。
社員数の多い企業で、大きな仕事の内の一部分として仕事を行なっていると、その社員は企業全体のビジョンへの意識が薄くなってしまうものです。
経営層の持つ企業全体としてのビジョンを、社員一人一人に浸透させることによって、目の前の仕事に意義を持って取り組めます。各社員のモチベーションが向上することで、各社員の成果が上がり、組織全体、そして企業全体としての成果の向上に寄与します。

(3)従業員のエンゲージメントを高める
インナーコミュニケーションの効果の4つ目は、従業員のエンゲージメントを高めることです。
前提として、従業員のエンゲージメントとモチベーションは異なるものとして扱われることが多いです。
エンゲージメントは、会社と社員の双方向的な繋がりを示すのに対し、モチベーションは、社員の会社に対する一方向的な繋がりを指します。
インナーコミュニケーションは、社内イベントや社内報、社内SNSなどの施策による、社員間コミュニケーションの促進や企業ビジョン・理念の浸透を通して、社員と従業員の双方向的なつながりで会社への貢献意欲を意味する従業員のエンゲージメントを高める効果を持ちます。
(4)人材の流出を防ぐ
インナーコミュニケーションは、人材流出の防止にも効果があります。
人材流出の防止を考える上で、会社の人間関係という項目は非常に重要です。エン・ジャパングループが行った『退職理由調査』では、その理由第1位に「人間関係が悪かった」がランクインしています。
社員間コミュニケーションの促進によって、より多くの社員との関わり合いを持つようになり、新たな友人や良き相談相手を得たり、他社員との意見交換を行ったりすることで、人間関係の課題解消を期待できます。
また、インナーコミュニケーションは社員のエンゲージメント・モチベーションの両方の向上にも効果があります。社員が仕事に前向きに取り組めるようになり、この点においても、人材流出の防止に効果が期待できます。

インナーコミュニケーションを活性化させる手法

ここまではインナーコミュニケーションの効果を見てきました。ここからは、インナーコミュニケーションの施策を紹介していきます。
本記事で紹介する施策は以下4つです。
- 社内報
- 社内SNS
- 社内イベント
- オフィス環境の整備
より多くの施策をお探しの方はこちらの記事(社内コミュニケーションを活性化させる施策8選)もご覧ください。

(1)社内報
社内報は、全社員に対して一斉にコミュニケーションを取ることが可能であり、非常に便利です。また最近の働き方の多様化や感染症の蔓延対策としてweb社内報も注目されています。
しかし、その容易さゆえに、実際に社員に読んでもらえているかや、発行者の想いを社員が理解しているのかなど不透明なところもあるのが現実です。
そういった際にWeb社内報を活用することで、
- 閲覧率(どのくらい読まれているのか)
- 読了率(記事のどこまで読んだのか)
などを簡単に分析することができ、社員に人気の記事や、重要なメッセージが読まれているかなどを分析することができます。
それらは最終的に、社内報の内容の質の向上や、各社員の興味・関心を知ることによる適切な人事配置などに役立たせることにもつながります。
社内報に関してはこちらの記事で解説していますので、ぜひご覧ください。

(2)SNSツール
社内のSNSツールを用いることで、社員間の容易な交流を促進することができます。
ツールによっては、絵文字やスタンプを用いた柔らかなコミュニケーションを行うことも可能であり、また、社員間の意見の交換、伝達事項の一斉共有など、即時性と利便性にも特徴があります。
導入するからには管理・運営する仕組みづくりを行わないと、ツールのみが存在し、宙ぶらりんになってしまうため注意が必要です。

(3)社内イベント
研修やワークショップ、アウトドアアクティビティ、オンラインアクティビティなどの社内イベントでは、これまで関わりを持てなかった社員とも交流ができます。これまでは見られなかったような一面を、お互いに見ることができ、インナーコミュニケーションの施策としてはとても効果的です。
しかし、オフラインが主流だった社内イベントも、新型コロナウイルスや働き方改革の影響でオンライン化がどんどん進んでいます。
オンラインでも楽しむことができる社内イベントの企画ネタについてはこちらの記事で解説しています。

(4)オフィス環境の整備
オフィス環境を整備することで、社員間交流の促進や企業の理念や行動指針の浸透に役立たせることができます。
働く場所を固定しないフリーアドレス制や、従業員が食を共有したりリラックスした会話を楽しんだりできるカフェテリアのような空間など、オフィス空間を多様に用いることで、社員間の交流を促進することができます。
また、会社の理念や行動指針に合うようなオフィスのレイアウトを用いることで、その浸透を図ることができます。
インナーコミュニケーション活性化の成功事例
それでは、具体的にどういう企業がインナーコミュニケーションを実践しているのか、その事例として5社をご紹介いたします。
その他、より多くの事例をお探しの方はこちらの記事(社内コミュニケーション活性化の施策事例80選)もご覧ください。

全社員参加型のweb社内報|GMO NIKKO株式会社

新型コロナウイルスの流行に伴う「コミュニケーション不足」と「理念浸透」に課題を感じていたGMO NIKKO株式会社は、新たにweb社内報を導入しました。
web社内報は、リモートワーク環境でもメッセージを簡単に届けることができます。また、ツールによってはコメントやリアクション機能が充実しているため、コミュニケーションツールとしての活用もできるのです。GMO NIKKO株式会社が導入したweb社内報「ourly」は上記の機能に加え、豊富な分析データを閲覧できます。
これらの機能を使い、文字数と読了率の関係性などを発見しながら、組織・従業員に最適な記事を更新し続けることで、課題解決を実現しています。

社内報の記事がカルチャーを示すツールになっている|株式会社Cygames
「最高のコンテンツを作る会社」をビジョンに掲げる株式会社Cygamesさんは、web社内報での発信を通してカルチャーの浸透を促進してるといいます。
ourly Mag.では、どのような想いでweb社内報をやられているのか。Cygamesさんの社内報担当の方にお話を伺いましたので、ぜひご覧ください。

社員が作るユニークな社内イベントや制度|株式会社キュービック

株式会社キュービックでは、社内ファミリー制度やコミュニケーション活性化委員会など、社員が主体となってコミュニケーションをとるようになる仕組みが作られています。
キュービックの社内ファミリー制度とは、部署や社歴や職種など関係なく15人弱から構成される社内のコミュニティです。1年間で再構成され、3ヶ月ごとにメンバーの関係構築という目的に沿う活動を行うための予算が割り当てられます。
従業員数の拡大に伴い希薄になっていく、タテ・ヨコ・ナナメのコミュニケーションを活性化するために行われています。
また、コロナの影響で在宅とオフィスのハイブリット勤務がはじまってから立ち上げられたのが、コミュニケーション活性化委員会です。有志で集まった、役職や部署バラバラのメンバーが、さまざまなイベントを企画・実行しています。

フリーアドレス制度と運用ルールの制定|47ホールディングス株式会社

「ワークプレイスで、ゆたかな未来を」という理念を掲げる47ホールディングス株式会社では、1年に1度自社オフィスのあり方を改善するワークプレイスプロジェクトを行っています。
その中で2020年、リモートワークの増加に伴い「部署を超えたコミュニケーションが自発的に生まれる」ことを最も重要視して、フリーアドレス制度を採用しました。
フリーアドレス制度は社員の座席を決定しない制度で、オフィスにいる人数が不確実な「出社とリモートワークを併用している企業」に適しています。また、47ホールディングスでは制度の導入に合わせて、「同じ席に2日連続で座らないこと」という新しい運用ルールを制定しました。
これによりイノベーションの生まれやすい部署横断的なコミュニケーションが活性化しています。

社内の透明性担保でインナーコミュニケーション活性化|株式会社LayerX
すべての経済活動を、デジタル化する。を掲げ、請求書処理、経費精算、稟議申請、法人カードなどの支出管理をなめらかに一本化するサービスである『バクラク』などを手がけ、シリーズA累計82億円の資金調達も実施したLayerX社。
そんなLayerX社では、情報の透明性がインナーコミュニケーション活性化につながるとして、ドキュメント文化が根付いていると言います。
以下の記事では、幹部陣と従業員のコミュニケーションハードルを低くするための施策やメンバー間のコミュニケーションを加速させる後押しなど、さまざまな点についてお話しいただいてますので、ぜひご覧ください。

インナーコミュニケーションのきっかけ作りなら ourly profile

ourly profile(アワリープロフィール)は、個人のプロフィール機能や組織図機能などにより、組織のサイロ化を解消する社内コラボレーション創出ツールです。
3つの大きな特徴により、リモートワーク下でも部署を超えた相互理解や社内のコミュニケーション活性化を実現します。
- 人となりが一目でわかる自己紹介画面
- 独自の探索機能により、思いがけない出会いを創出
- 組織図により、チーム・部署を超えて組織を理解できる
顔写真や部署、役職などの基本的な項目以外に、強みや趣味、スキルなどが一目でわかりコミュニケーションのきっかけが生まれます。
また、全メンバーに共通のQ&Aを設定することができるので、部署・拠点・役職を超えたメンバー同士の相互理解促進にも役立ちます。
料金については、従業員規模に応じて幅広くご用意しております。詳しくはサービスページをご覧ください。
インナーコミュニケーション施策を導入しよう
この記事ではインナーコミュニケーションの概要から、その効果や種類、そして、他社での事例、よくある失敗例とその対策まで、インナーコミュニケーションに関して幅広く解説しました。
今回紹介した内容以外にもインナーコミュニケーションにはさまざまな効果や種類、具体的な方策等があるので、是非これからも理解を深め、自社に合う方策を考えていただければ幸いです。
読者のみなさんがインナーコミュニケーションについて少しでも理解を深め、実際に会社や組織におけるその導入の検討の一助となることを願っております。